○福島県警察被害者支援要員制度実施要領の制定について(通達)
平成12年7月31日
例規(務)第13号
被害者対策の推進については、警察組織一丸となって取り組むべき重要な課題であり、かつ、業務の根幹に関わるものである。
本制度は、平成12年2月以降、モデル所属を指定して試行実施してきたところであるが、その結果を踏まえ、この度、新たに「福島県警察被害者支援要員制度実施要領」を別紙のとおり制定し、平成12年8月1日から本格的に実施することとしたので、本制度の効果的な推進に努められたい。
記
1 実施の趣旨
精神的被害が大きいと認められる事件・事故発生後の初期的段階において、被害者に対する緊急支援措置をより一層充実するため、予め指定した被害者支援要員(以下「支援要員」という。)を早期に現場等に臨場させ、被害者への直接的な支援などを行い、もって被害者の精神的負担の軽減を図ろうとするものである。
2 被害者支援に対する基本的考え方と本制度との関係
被害者支援については、個人の権利と自由を保護することを目的に設置された機関である警察本来の業務であり、すべての被害者に対して、職員一人一人が被害者の心情に理解を示し、適切に対応することが求められているところである。
本制度は、上記のとおり、精神的被害の大きい事件・事故の発生直後において運用するものであるが、これは、被害者への最初の対応のありようがその後の精神的被害の回復に大きな影響を及ぼすことになるため、予め指定した支援要員により、発生直後の段階において迅速かつ的確な支援を行おうとするものであり、被害者支援に関する基本的な考え方を変更するものではない。
各所属においては、本制度を効果的に運用するため、指導・教養の徹底を期すること。
別紙
被害者支援要員制度実施要領
第1 目的
この要領は、犯罪(刑事事件として立件されていない犯罪及び犯罪に類する行為を含む。以下同じ。)の被害者及びその家族(以下「被害者等」という。)に対する事件・事故発生後の初期的段階における支援措置(以下「緊急支援」という。)を任務とする被害者支援要員(以下「支援要員」という。)の指定及び運用に関して必要な事項を定め、もって適切な被害者支援を推進することを目的とする。
第2 実施体制
1 緊急支援体制
署長及び高速道路交通警察隊長(以下「署長等」という。)は、本制度を的確に推進するため、総括責任者、実施責任者及び支援要員を指定するとともに、職員に対する指導・教養の徹底を図るものとする。
(1) 総括責任者
総括責任者は、署にあっては副署長等を、高速道路交通警察隊(以下「高速隊」という。)にあっては副隊長をもって充て、署長等の指揮を受け、本制度の運用に係る業務の総括的管理及び調整を行うものとする。
(2) 実施責任者
実施責任者は、署にあっては事件・事故主管課の課長(係長制にあっては係長)を、高速隊にあっては事件・事故発生地を活動区域とする分駐隊長をもって充て、総括責任者の指示を受け、緊急支援に係る具体的指揮及び支援要員に対する指導・教養を行うものとする。
(3) 支援要員
支援要員は、第3により指定された者をもって充て、第5に定める任務に当たるものとする。
2 被害者支援係
被害者支援係(署については総合相談係)は、総括責任者を補佐し、支援要員の運用状況を管理するとともに、必要な業務調整を行うものとする。また、事案の内容により、支援要員としての活動に当たるものとする。
第3 支援要員の指定及び解除
1 支援要員の指定
支援要員は、警部補以下の警察官又は女性警察職員の中から適任と認められる者を署長等が指定するものとし、指定する支援要員の種別及びその数は、原則として、次のとおりとする。
(1) 主管課支援要員
署においては、事件・事故主管課(係)ごとに1名以上指定するものとする。
高速隊においては、分駐隊ごとに1名以上指定するものとする。
(2) 女性支援要員
署の女性警察職員の中から1名以上指定するものとする。
2 指定の解除
署長等は、支援要員に人事異動、疾病その他やむを得ない事由が生じたときは、指定を解除するものとする。
なお、支援要員を解除したときは、これに替わる支援要員を指定しなければならない。
3 被害者支援要員名簿の備え付け
署長等は、所属に被害者支援要員名簿(様式第1号)を備え付け、支援要員の指定及び解除の状況を明らかにしておかなければならない。
4 当務支援要員
署長は、閉庁時間帯に勤務する宿日直勤務員及び当番勤務員(以下「当務員」という。)の中から当務支援要員を1名以上指定するものとする。この場合において、閉庁時間帯においても的確な緊急支援を行うため、可能な限り主管課支援要員又は女性支援要員を指定できるよう、当務員の勤務の割振りに配意するものとする。
第4 支援対象者
別表「被害者支援要員制度対象事件・事故」(以下「対象事件」という。)の被害者等とする。
第5 除外事由
第4の規定にかかわらず、次の(1)から(4)までに掲げる場合は、支援対象から除くものとする。
(1) 被害者等が支援を希望しない場合
(2) 被害者等が集団的に、又は常習的に暴力的不法行為を行うおそれがある組織に属している場合
(3) 加害者の行為が正当防衛又は正当行為に該当する場合
(4) 上記(1)から(4)までのほか、支援を行うことが事後の捜査に支障を及ぼすおそれがある、又は被害者等に報復の言動があるなど、社会通念上適切でないと認められる場合
第6 支援要員の任務
支援要員は、対象事件が発生したときは直ちに臨場し、実施責任者の指揮の下、次の任務に当たるものとする。
1 付添い等の措置
(1) 被害者等への面接及び支援活動の説明(自己紹介及び支援の申出)
(2) 実況見分等の捜査活動時における付添い
(3) 医師の早期診察が必要な場合における病院の手配、搬送、付添い、医師への説明(証拠資料の採取、性病・HIV等の検査依頼等)
(4) 自宅等への送迎
(5) その他必要な措置
2 被害者への説明等の措置
(1) 「被害者の手引き」の交付及び説明
(2) 捜査員による事情聴取、被害調書作成等の趣旨、必要性に関する説明
(3) 公判までの刑事手続等の説明
(4) 被害者の意向に基づいた家族等への説明
(5) 各種相談機関等の紹介及び連絡・調整
(6) 捜査状況、被疑者の検挙状況等の被害者連絡
(7) 被害者カウンセリング制度の説明及び意思の確認
(8) 犯罪被害者等給付金支給法(適用事件に限る。)の概要説明
(9) 再被害防止のための防犯指導
(10) 被害者からの相談への対応
(11) その他必要な措置
3 捜査活動の補助等の措置
(1) 事情聴取又はその補助
(2) 被害届、供述調書等捜査書類の作成又はその補助
(3) 証拠資料の採取、押収、還付又はその補助
(4) その他必要な措置
第7 支援要員の運用
1 担当者の指定
総括責任者は、対象事件を認知したときは、署長等の指揮を受け、緊急支援を講ずべき被害者ごとに、支援要員の中から担当者(以下「支援担当者」という。)を指定するものとする。この場合において、総括責任者は、努めて対象事件・事故主管課の支援要員を支援担当者として指定するものとする。
2 閉庁時間帯における運用及び引継ぎ
(1) 当務責任者は、閉庁時間帯において対象事件を認知したときは、総括責任者の指定する支援担当者に引き継ぐまでの間、当務支援要員の中から担当者を指定し、必要な措置を行わせるものとする。
(2) 当務責任者は、当務支援要員により緊急支援を行うことが困難であると認める場合には、総括責任者に報告の上、主管課支援要員等を招集するなど、必要な措置をとるものとする。
第8 支援担当者が対応すべき期間
1 支援担当者が対応すべき期間は、原則として、対象事件を認知したときからおおむね1週間とする。ただし、署長等は、事件の内容、被害者等の状況等により、期間を延長し、又は短縮することができるものとする。
2 実施責任者は、被害者等が被害者支援を拒否したり、他の相談機関への依頼を申し出るなど支援担当者による対応を継続することが適当でないと認める事情がある場合には、署長等の指揮を受けて当該支援を打ち切るものとする。ただし、その後に緊急支援を行うべき事情が新たに生じたときは、署長等に報告し、その指揮を受けて支援を再開するものとする。
第9 被害者支援状況報告書の作成等
1 被害者支援状況報告書の作成
支援担当者は、緊急支援の開始から終了までの間、支援活動を行った日毎に被害者支援状況報告書(様式第2号)を作成し、実施責任者等を経て署長等に報告しなければならない。この場合において、当該報告書の写しを、被害者支援係(署については総合相談係)に提出するものとする。
2 被害者支援状況報告書の管理
被害者支援状況報告書は、緊急支援終了後、事件・事故主管課において保管するものとする。
第10 報告
1 被害者支援要員名簿
署長等は、被害者支援要員名簿の写しを、指定及び解除の都度、県民サービス課長に報告するものとする。
2 被害者支援状況報告
署長等は、緊急支援を行った場合には、当該支援を終了するまでの間、被害者支援状況報告書の写しを県民サービス課長に送付するものとする。
第11 運用上の留意事項
1 署長等は、本制度の趣旨を理解し、支援要員による被害者支援を的確に推進するとともに、所属職員一人一人が、被害者等の心情に配意し、適切な対応を行うことができるよう、具体的な指導・教養を実施すること。
2 署長等は、支援要員の運用に当たっては、事案の態様、被害者の精神状況、性別等を勘案し、女性支援要員の指定、被害者支援プロジェクトチームの編成等弾力的な運用に努めること。
3 署長等は、本制度による緊急支援後においても、被害者連絡制度、カウンセリング制度等の運用により、適切な被害者支援に努めること。
4 総括責任者は、支援要員の業務実態等を把握し、支援要員の代理受傷及び特定の支援要員の負担が過重なものとならないよう配意すること。
別表(第4関係)
被害者支援要員制度対象事件・事故
1 身体犯
(1) 殺人罪(刑法第199条。未遂を含む。)
(2) 強盗致死傷罪(刑法第240条。未遂を含む。)
(3) 強盗・不同意性交等罪、強盗・不同意性交等致死罪(刑法第241条。未遂を含む。)
(4) 不同意性交等罪(刑法第177条。未遂を含む。)
(5) 不同意わいせつ罪(刑法第176条。未遂を含む。)
(6) 監護者わいせつ罪・監護者性交等罪(刑法179条。未遂を含む。)
(7) 不同意わいせつ等致死傷罪(刑法第181条)
(8) 傷害致死罪(刑法第205条)
(9) 傷害罪(刑法第204条)のうち、被害者が全治1か月以上の重傷害を負ったもの
(10) 上記以外で、致死傷を結果とする結果的加重犯において致死の結果が生じたもの又は致傷の結果が生じたもののうち、被害者が全治1か月以上の重傷害を負ったもの
2 交通事件・事故
(1) ひき逃げ事件(車両等の交通による人の死傷のあった場合において、道路交通法第72条第1項前段に規定する措置を講じなかった違反に係るもの)
(2) 交通死亡事故
(3) 全治3か月以上の交通事故の被害者
(4) 危険運転致死傷罪等に該当する事件
(1)から(3)までのほか、危険運転致死傷罪(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律第2条及び第3条)、無免許危険運転致傷罪(同法第6条第1項)及び無免許危険運転致死傷罪(同法第6条第2項)に該当する事件
3 その他
強盗事件、放火事件、暴力団関与事件、配偶者等からの暴力事案、児童虐待事案、ストーカー事案等、上記1及び2以外の事件事故において被害状況等から本部長又は署長等が支援の必要性を認めた事案
様式第1号(第3、第10関係)
略
様式第2号(第9、第10関係)
略