○福島県警察被害者カウンセラー運用要綱の制定について(通達)

平成11年5月21日

例規(務)第9号

みだしの要綱を別紙のとおり制定したので、次により、適切かつ効果的に運用されたい。

1 制定の趣旨

犯罪(刑事事件として立件されていない犯罪及び犯罪に類する行為を含む。以下同じ。)により被害を受けた者及びその遺族並びに犯罪の被害に遭うおそれや不安感を持っている者(以下「被害者等」という。)は、その直接的な被害だけでなく、被害後に生じる様々な問題に苦しめられており、中でも精神的被害は最も深刻なのである。

県警察では、被害者等に最も身近に接する機関として各種支援活動を実施しており、精神的被害についても、カウンセリングアドバイザーの助言・指導を受けるなどして職員が支援活動を行っているところであるが、精神的ダメージが大きい被害者等には、その回復に大きく影響する初期的段階において、専門家による高度なカウンセリングを実施することが望まれているところである。

このため、カウンセリングに関する専門的知識及び技能を有する部外の専門家をカウンセラーとして委嘱し、これらの事案に適切に対応することによって、被害者等の精神的被害からの回復等を支援しようとするものである。

2 要綱の解釈及び運用上の留意事項

(1) 委嘱及び解嘱(第4関係)

ア カウンセラーの委嘱は、県内に居住地又は勤務地を有し、臨床心理学、精神医学、カウンセリング等の専門的知識・技能を有することなど一定の条件を満たす部外の専門家の中から、適任者を本部長が委嘱することとした。

イ カウンセラーの意思により、又は委嘱の要件を欠くに至ったときは、本部長は解嘱できることとした。

ウ 委嘱は委嘱状(様式第1号)、解嘱は通知書(様式第2号)をそれぞれ交付して行うこととした。

(2) カウンセリング対象者の定義(第5関係)

カウンセリング対象者は、身体犯、ひき逃げ事件、交通死亡事故又は全治3か月以上の交通事故の被害者及びその遺族並びに精神的被害の特に大きい被害者等としたが、本人の意思に反してカウンセリングを行っても効果が期待できないことから、本人がカウンセリングを希望していることを要件として加えた。

(3) カウンセリングの実施(第6関係)

ア カウンセリング対象者の存在を知るケースは、事件事故を管轄する署が認知するものに限らず、県本部の相談窓口を通じて認知する場合など様々である。また、他県で発生した犯罪の被害者が本県に在住するケースも本要綱のカウンセリングの対象となり得る。このようなことから、カウンセリングの実施要請は、署長に限らず、県本部の課長も含めて全ての所属長が行えることとした。

イ 県本部総合相談課長(以下「総合相談課長」という。)は、原因となった犯罪の態様、カウンセリング対象者の精神的被害の程度、生活環境、カウンセリングの有効性などの諸要素を総合的に勘案して、カウンセリングの要否を決定しなければならない。

なお、カウンセリング実施通知書(様式第4号)の送付を受けた所属長は、速やかにカウンセリング対象者に連絡するとともに、カウンセリングに必要な措置を構じること。

ウ カウンセリング対象者が少年であるときは、少年自身がカウンセリングを受けることを積極的に望んでいない場合であっても、その保護者の強い意向を受けてカウンセリングを実施する場合もあり得るので、保護者との連絡を密にし、カウンセリングに関する意向を確認することが必要である。

エ カウンセリング対象者が居住地等から離れた場所でのカウンセリングを希望したり、担当カウンセラーの都合上、要請所属の所在地又は管轄区域以外の場所でのカウンセリングを実施する場合もあり得るので、このような場合は、総合相談課長は、実施場所を管轄する署長に対し、実施場所の確保、準備等の必要な協力を依頼することができることとした。

オ カウンセリング実施結果通知書(様式第5号)は、実施したことを証する資料であるため、要請所属長は、実施の都度、提出するよう、カウンセラーに促すこと。

なお、確認書の欄については、当該通知書を受領した職員において、その内容を確認の上、署名・押印すれば足りるものとする。

カ 総合相談課長は、カウンセリングの継続の要否を判断するため、要請所属長及びカウンセラーから意見を求めるなどして、カウンセリングの効果を常に検証しなければならない。

キ カウンセリングを継続するときは、カウンセリング実施要請書(様式第3号)を省略することができる。ただし、要請所属長は、カウンセリングの希望日時、場所及び継続の必要性等について総合相談課長に連絡しなければならない。

なお、打ち切る際は、対象者及びその保護者に誤解を生じさせないよう、これまでの経過、事後の措置等を十分に説明し、トラブルのないように留意すること。

(4) 運用上の留意事項(第7関係)

ア カウンセリングの勧奨

所属長は、早期のカウンセリングが被害者等の精神的被害の進行を食い止め、その回復・軽減を図るために重要な役割を果たすことを十分認識するとともに、所属の職員に対し、本制度の趣旨を徹底し、その有効な活用について指導すること。また、カウンセリング対象者を把握した際は、弱い立場に立たされている被害者等の心情に配意し、本制度の内容、カウンセリングの効果等を説明した上で、これを受けるか否かの意思を確認すること。

イ カウンセラーへの協力

所属長は、カウンセラーからカウンセリングに関する協力要請を受けた際は、業務に支障のない範囲で可能な限りこれに協力するなど、カウンセリングの円滑な運営に配意しなければならない。

別紙

福島県警察被害者カウンセラー運用要綱

(趣旨)

第1 この要綱は、被害者等の精神的被害の回復のためにカウンセリングを行う福島県警察被害者カウンセラー(以下「カウンセラー」という。)の運用について必要な事項を定めるものとする。

(用語の定義)

第2 この要綱において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。

(1) 被害者等 犯罪(刑事事件として立件されていない犯罪及び犯罪に類する行為を含む。以下同じ。)により被害を受けた者及びその遺族並びに犯罪の被害に遭うおそれや不安感を持っている者をいう。

(2) カウンセリング 被害者等の精神的被害の回復又は軽減のために、初期的段階(精神的被害を受けて間がない時期かつ医療行為を必要としない程度)においてカウンセラーが行う精神的支援活動をいう。

(3) カウンセラー 臨床心理士、精神科医等カウンセリングの専門家の中から、本部長がカウンセラーとして委嘱した者をいう。

(カウンセラーの職務)

第3 カウンセラーは、第5に規定するカウンセリング対象者に対するカウンセリングを行うものとする。

(カウンセラーの委嘱及び解嘱)

第4 カウンセラーは、次に掲げる要件を満たす者のうちから、適任と認められる者を本部長が委嘱するものとする。

(1) 臨床心理士、精神科医等の職にある者で、被害者等に対する精神的支援活動に必要な専門的知識及び技能を有すること。

(2) 警察が行う被害者等支援に深い理解を示し、かつ、人格及び行動について社会的信望を有すること。

(3) 原則として、県内に居住地又は勤務地を有すること。

2 本部長は、カウンセラーが辞意を表明したとき又は次の各号のいずれかに該当することとなったときは、解嘱することができるものとする。

(1) 前項に掲げるいずれかの要件を欠くに至ったとき。

(2) 心身の故障等により、カウンセラーとしての職務を遂行することができなくなったとき。

(3) その他職務の遂行上不適切な事由が生じたとき。

3 委嘱期間は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間とし、再任を妨げない。ただし、年度途中に委嘱された者の任期は、同年度末までとする。

4 委嘱状及び解嘱に係る通知書の様式は、様式第1号及び様式第2号のとおりとする。

(カウンセリング対象者)

第5 カウンセリング対象者は、次の各号のいずれかに該当し、かつ、本人がカウンセリングを希望している者とする。

(1) 次に掲げる犯罪の被害者又はその遺族

ア 殺人罪(刑法(明治40年法律第45号)第199条。未遂を含む。)

イ 強盗致死傷罪(刑法第240条。未遂を含む。)

ウ 強盗・不同意性交等罪、強盗・不同意性交等致死罪(刑法第241条。未遂を含む。)

エ 監護者わいせつ罪・監護者性交等罪(刑法第179条。未遂を含む。)

オ 不同意性交等罪(刑法第177条。未遂を含む。)

カ 不同意わいせつ罪(刑法第176条。未遂を含む。)

キ 不同意わいせつ等致死傷罪(刑法第181条)

ク 傷害致死罪(刑法第205条)

ケ 傷害罪(刑法第204条)のうち、被害者が全治1か月以上の重傷害を負ったもの

コ 上記以外で、致死傷を結果とする結果的加重犯において致死の結果が生じたもの又は致傷の結果が生じたもののうち、被害者が全治1か月以上の重傷害を負ったもの

(2) 次に掲げる交通事故・事件の被害者又はその遺族

ア ひき逃げ事件(車両等の交通による人の死傷があった場合において、道路交通法(昭和35年法律第105号)第72条第1項前段に規定する措置を講じなかった違反に係るもの)

イ 交通死亡事故

ウ 全治3か月以上の交通事故

(3) その他の被害者等

犯罪の被害に遭うおそれや不安感を持っている者、いじめを受けている少年などで、精神的被害が特に大きい者

(カウンセリングの実施)

第6 所属長は、カウンセリング対象者の存在を知ったときは、カウンセリング実施要請書(様式第3号)を県本部総合相談課長(以下「総合相談課長」という。)に提出するものとする。

2 総合相談課長は、前項の要請を受けてカウンセリングが必要であると認めたときは、カウンセラーと日時、場所等を調整した上で、要請書を提出した所属長に対し、カウンセリング実施通知書(様式第4号)により通知するものとする。

3 前項の場合において、対象者が少年である場合には、当該少年の保護者の同意を得なければならない。

4 カウンセリングを行う場所を管轄する署長は、カウンセリングの実施につき必要な協力を行うものとする。

5 カウンセラーは、カウンセリングを実施した都度、カウンセリング実施結果通知書(様式第5号)を総合相談課長に提出するものとする。

6 カウンセリングの結果、カウンセリングを継続する必要性が認められる場合は、総合相談課長は、その回数、日時、場所等を決定するものとする。この決定に当たっては、カウンセラーの意見を十分に尊重しなければならない。

(運用上の留意事項)

第7 所属長は、カウンセリングの重要性を十分認識するとともに、職員に対し、本制度の効果的活用について指導するものとする。また、カウンセリング対象者に対し、本制度の趣旨を説明の上、カウンセリングの活用を働きかけるものとする。

2 所属長は、カウンセラーから協力要請があったときは、適切にこれに応じるなど、円滑な運営に配意しなければならない。

3 カウンセラーは、在任中であると否とを問わず、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。

(報償)

第8 カウンセラーには、別に定めるところにより報償金を支給する。

(事務の主管)

第9 本要綱に関する事務は、県本部総合相談課が処理するものとする。

この要綱は、平成11年5月21日から施行する。

様式第1号(第4関係)

 略

様式第2号(第4関係)

 略

様式第3号(第6関係)

 略

様式第4号(第6関係)

 略

様式第5号(第6関係)

 略

福島県警察被害者カウンセラー運用要綱の制定について(通達)

平成11年5月21日 例規(務)第9号

(令和5年7月13日施行)

体系情報
警務部
沿革情報
平成11年5月21日 例規(務)第9号
平成17年3月 達(総相)第76号
平成29年7月12日 達(刑総、務、生企、地企、公)第227号
令和3年3月26日 達(務)第123号
令和5年7月13日 達(刑総)第291号