○組織的な捜査管理の更なる徹底について(通達)

平成28年7月15日

達(刑総、務、監、生企、地企、交企、公)第265号

某警察において、長年にわたり、各部門において捜査書類等や証拠物件が適切に保管・管理されていなかった事案が明らかとなった。

また、全国的に見ても、証拠物件の保管・管理が適切になされないまま公訴時効を徒過した事案、重要事件の引継ぎが適切になされず解決までに長期間を要した事案、証拠物件を紛失した事案等が発生している。

これらに関し、先般、参議院において、警察捜査における捜査書類及び証拠品の不適切な管理についての警告決議が内閣に対してなされた。

この種事案を防止し、警察捜査に対する県民の信頼に応えるため、下記により、組織的な捜査管理の更なる徹底を図られたい。

1 捜査管理の重要性の再認識

事件及び証拠物件の管理については、犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)等の関係法令及び平成22年3月11日付け達(刑総、務、生企、地企、交企、公)第107号「福島県警察事件管理事務取扱要領の制定について(通達)」、平成8年1月19日付け例規(刑総)第2号「証拠物件管理要綱の制定について(通達)」等の関係通達に基づき組織的に行わなければならない。

こうした捜査管理が厳格かつ適正に行われることが捜査運営及び捜査指揮の基本となるものであることを再認識し、部下職員に対して、その重要性を改めて徹底すること。

2 事件及び証拠物件の確実な把握

捜査管理の出発点は、事件を認知し、又は証拠物件を押収した際に、これらを確実に組織的管理の対象とすることである。

そこで、捜査幹部は、認知した事件を適切に把握した上で、犯罪事件受理簿等への確実な登載を徹底し、また、証拠物件の保管・管理について具体的な指示を行うことにより、証拠物件管理簿等への確実な登載及び所定の保管庫等における保管を徹底し、事件及び証拠物件を確実に組織的管理の対象とすること。

また、被害届(犯罪捜査規範別記様式第6号)は、あらかじめ所属ごとの一連番号を付与し、その交付及び使用の状況を管理簿等により管理の徹底を図っているところ、被害の届出を受けて認知した事件を漏れなく組織的管理の対象とするため、管理責任者は、毎月1回、関係簿冊と被害届の交付及び作成状況を確実に照合して厳格に管理すること。

3 捜査の進捗状況の組織的管理

捜査を迅速的確に推進するためには、幹部において、捜査の進捗状況を把握した上で、適時に必要な指揮をする必要がある。

ところが、捜査に具体的な進展がない場合には、捜査担当者から幹部に対する報告が行われる機会が乏しくなり、組織的管理が不十分となるおそれがある。そこで、毎月1回、未処理事件管理(引継)簿(様式第4号)を作成印字した上で署長決裁を受け、組織的に各事件の進捗状況を把握し、その後の捜査方針を定めることとするなどにより、捜査の進捗状況の組織的管理を徹底すること。

4 組織的な引継ぎの徹底

(1) 異動時等における確実な引継ぎ

犯罪事件受理簿等への登載によって事件を組織的管理の対象とした場合であっても、その後の引継ぎが不十分な場合は、結果的に捜査が行われないままとなりかねないため、捜査主任官指名簿等を利用した確実な引継ぎを行うこと。

(2) 部門間における確実な引継ぎ

例えば、遺留指掌紋等の現場資料が少年のものと判明した場合において、鑑識部門から少年事件捜査部門に対して、組織的な判断がないまま担当者間の連絡しか行われないようなとき等、部門間の事件引継ぎが組織的に行われないときは、結果として捜査管理がなされなくなるおそれがある。

そこで、他部門に事件を引き継ぐ必要が生じた場合は、担当者間のみの引継ぎによることなく、捜査主任官が事件指揮簿等により指揮伺いを行った上で、捜査書類等や証拠物件とともに、書面により責任の所在を明確にして引き継ぐこと。

5 保管場所の適正

(1) 所定の場所への保管

事件及び証拠物件が適正に管理されなくなる原因の一つとして、捜査書類等や証拠物件の所定の場所への保管が徹底されないことが考えられる。また、本来当該場所に保管すべきでない書類や物品が蔵置された場合は、保存すべき捜査書類等や証拠物件の誤廃棄や紛失を招きかねない。

そこで、捜査書類等及び証拠物件を所定の保管場所に保管することを徹底するとともに、平素から、所定の保管場所等以外の場所も含め、環境整備に努めること。

(2) 保管場所の確保等

捜査書類等や証拠物件が所定の保管場所で保管されず、結果として組織的な管理がなされなくなる要因の一つとして、取扱事案の増加や職員数の増加等により相対的に庁舎が狭隘化し、十分な保管場所が確保できないことが考えられる。

そこで、(1)のとおり平素からの環境整備により必要なスペースの確保に努めるとともに、捜査書類等及び証拠物件の十分な保管場所の確保に努めること。

6 必要な体制の確保

県内各署における管内の犯罪情勢等に応じて、十分な捜査及び捜査管理を行うための必要な体制が確保できるよう、署刑事課等の体制を不断に点検し、必要に応じた検討を行うこと。

7 点検の実施

(1) 点検の徹底

捜査書類等及び証拠物件については、関係通達等に基づき、定期及び随時に幹部において点検を確実に実施すること。

また、本部庶務担当課及び事件主管課等による業務監察や業務指導の際にもこれらの点検を実施するほか、適宜の時期を選定して捜査書類等及び証拠物件の全般を対象とした点検も実施すること。

(2) 点検に際しての留意事項

点検に際しては、捜査書類等や証拠物件の所定の保管場所のみならず、書庫、会議室、倉庫、車庫等も含め、所定の場所以外に捜査書類等又は証拠物件が存在しないかといった点にも留意の上行うこと。

また、点検に当たっては、被害届等について、受理番号記載の有無を確認することにより、犯罪事件受理簿を作成していない事件の有無を把握するなど、受理した事件が組織的管理の対象となっているかとの観点からも行うようにすること。

組織的な捜査管理の更なる徹底について(通達)

平成28年7月15日 達(刑総、務、監、生企、地企、交企、公)第265号

(平成28年7月15日施行)

体系情報
刑事部
沿革情報
平成28年7月15日 達(刑総、務、監、生企、地企、交企、公)第265号