○学校におけるいじめ問題への的確な対応について(通達)

令和元年8月6日

達(少)第279号

対号1 平成23年1月27日付け達(少)第35号「少年の非行防止・保護に関する対策の推進について(通達)」

対号2 平成25年4月26日付け達(少)第176号「少年を守る仕組みの構築について」(通達)

みだしのことについては、下記のとおり実施することとしたので、運用上誤りのないようにされたい。

1 趣旨

児童生徒(以下「児童等」という。)に対する学校におけるいじめ問題については、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号。以下「法」という。)に基づくほか、学校におけるいじめ問題への的確な対応について(平成25年5月7日付け達(少)第187号)等により適確に対応してきたところであるが、いじめを受けていた児童生徒(以下「被害児童等」という。)が自殺するなど、憂慮すべき事案が発生している現状にある。

よって、警察としては、このような現状に対応するため、学校や教育委員会等(以下「学校等」という。)との緊密な連携を図るほか、いじめ事案を把握した際の事案の重大性及び緊急性、被害児童等及びその保護者の意向、学校等の対応状況等を踏まえつつ、捜査又は調査(以下「捜査等」という。)を尽くした上での事件化や通告など、積極的かつ適切に対処し、学校におけるいじめ問題への的確な対応を一層推進するものである。

2 学校におけるいじめ問題への対応に関する基本的な考え方

学校におけるいじめ問題については、教育上の配慮等の観点から、一義的には教育現場における対応を尊重しつつも、犯罪行為(触法行為を含む。以下同じ。)がある場合には、被害児童等や保護者(親権を行う者(親権を行う者のないときは未成年後見人)をいう。以下同じ。)の意向、学校における対応状況等を踏まえながら、警察として必要な対応をとっていかなければならない。特に、被害児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じている、又はその疑いのある事案(以下「重大ないじめ事案」という。)の場合は、迅速に捜査等を推進し、検挙、補導等の措置を講じていく必要がある。

3 いじめ事案の早期把握

(1) 少年相談活動による早期把握

少年相談活動は、学校におけるいじめ事案(以下「いじめ事案」という。)に関する情報が警察に寄せられる機会であり、事案を早期に把握する上で重要であるため、次の点に配意して活動を推進すること。

ア 少年相談活動の周知

警察の少年相談活動において、いじめ事案に関する相談にも対応していることを非行防止教室等の様々な機会を活用して、児童等や保護者に対して積極的に周知すること。また、少年相談窓口について、各署のホームページや各種広報媒体に掲載するなど、被害児童等が早期に相談することができるよう効果的な広報にも配慮すること。

イ 相談内容等の的確な把握

いじめ事案に関する相談が寄せられた場合には、事案の内容や被害児童等の置かれている状況を的確に把握するため、事案の経過、その具体的な内容等を可能な限り詳細に聴取すること。そのため、まず第一に、相談者の心情に配意した対応を行い、相談者との信頼関係の構築に努めること。

ウ 的確な対応

把握した事案の内容等に応じ、相談者の立場に立った適切な指導・助言を行うとともに、相談者が求める場合には、警察から学校等に連絡の上、連携した対応を迅速に行う旨説明するなど、相談者に安心感を与えられるよう努めること。

エ 少年相談活動に従事する警察職員の対応能力向上

少年相談活動に従事する警察職員については、相談者と信頼関係を築き、安心感を与えられる対応が可能となるよう、児童等の心理等に関する知識や、いじめの実態等に関する知識を習得させるなど、いじめ事案に関する相談への対応能力の向上を図ること。

(2) その他の警察活動を通じた早期把握

児童等の問題行動の背景にいじめがある場合もあり得ることから、いじめ事案の早期発見を図るため、非行少年の取調べや不良行為少年の街頭補導のほか、地域警察官の街頭活動を始めとするあらゆる警察活動に際し、いじめ事案が潜在している可能性を念頭に置いて活動するよう努めるとともに、いじめ事案に関する情報を把握した場合には、少年警察部門に情報集約すること。

(3) 学校等との連携強化による早期把握

ア 学校等との情報共有体制の構築

犯罪行為として取り扱われるべきと認められるいじめ事案について、学校から相談又は通報(以下「相談等」という。)があった場合には、警察としても、学校等と連携して必要な対応を適確に行わなければならない。よって、警察と学校等が日頃から緊密に情報共有できる体制の構築が重要であることから、次の取組を積極的に進めること。

(ア) 連絡窓口の指定

警察と学校等との間で連絡窓口となる担当職員を指定しておくこと。その際、自殺予告等緊急を要する事案に適切に対応できるよう、休日等執務時間以外の時間帯における連絡体制の構築にも留意しておくこと。

(イ) 学校警察連絡協議会等の活用

学校において、いじめを行っている児童生徒(以下「加害児童等」という。)に対して指導を行っているにもかかわらず、十分な効果を上げることが困難である場合において、当該加害児童等の行為が犯罪行為として取り扱われるべきと認められる場合や被害児童等の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるおそれがある場合には、直ちに警察に通報が行われるよう、学校警察連絡協議会等の場において、認識の共有を図ること。また、学校が相談等を行うべきか否か判断に迷うような場合には積極的に相談するよう申し入れるなど、早期に連携した対応が可能になるよう取組を推進すること。

イ スクールサポーター制度の活用

スクールサポーターは、警察と学校との緊密な連携を図る上での架け橋として重要な役割を果たしていることから、次の活動を行わせるなどして活用を推進すること。

(ア) 学校への訪問活動の強化による情報の収集

学校への訪問活動を強化し、校内の巡回、教員等からの聞き取り等により、いじめを始めとする児童等の問題行動等に関する情報収集に努めるとともに、把握した情報については、学校及びスクールサポーターが配置された警察署等(以下「配置署等」という。)に確実に連絡・報告すること。

なお、活動を通じて、被害児童等や保護者等からいじめ事案に関する相談を受けた場合には、相談者の立場に立った適切な指導・助言を行うこと。

(イ) 犯罪行為として取り扱われるべきと認めるいじめ事案の速やかな連絡等

犯罪行為として取り扱われるべきと認めるいじめ事案を認知した場合には、学校及び配置署等に速やかに連絡・報告するほか、警察に相談等を行うべきか否か学校が判断に迷うような場合等には必要な助言を行い、警察と学校等が連携して早期に対応できるよう努めること。

4 いじめ事案に関する情報の集約及び共有等

(1) 管轄署への情報の集約

いじめ事案への対応は学校等との連携を密にして行う必要があることから、いじめ事案に関する情報を学校の所在地を管轄する署(以下「管轄署」という。)以外の署等が把握した場合には、その内容を速やかに管轄署に連絡すること。

(2) 関係する署等における情報の共有等

被害児童等の求め等により管轄署以外の署等がいじめ事案への対応を主として行う場合には、管轄署にその旨連絡した上、管轄署及び対応を行う署等は当該事案に関する必要な情報を共有して、緊密に連携すること。

(3) 重大ないじめ事案の報告等

署において、いじめが背景にあると疑われる児童等の自殺等重大ないじめ事案の発生を認知した場合には、少年警察部門と刑事警察部門が緊密に連携を図るとともに、県本部少年課に対し、迅速かつ確実に事案の報告を行うこと。

県本部少年課長は、事案の報告を行った当該署に対し、必要に応じて、当該事案の捜査等に係る事件化・通告の可否及び要否の判断、学校等関係機関との調整、被害児童等への支援等が的確に行われるよう指導・助言を行うこと。

5 把握したいじめ事案への適確な対応

法第23条第6項に基づく学校からの通報のほか、110番通報、少年相談等を通じて把握したいじめ事案については、事案の重大性及び緊急性、被害児童等及びその保護者の意向、学校等の対応状況等を踏まえ、次の点に配意して、警察として適確な対応を行うこと。

(1) 重大ないじめ事案等への対応

重大ないじめ事案及びこれに発展するおそれが高い事案については、迅速に捜査等に着手するとともに、学校等に対しても被害児童等の保護のため必要な措置を要請するなど、被害の更なる深刻化の防止を図ること。

また、インターネットを利用した名誉毀損、児童ポルノ関連事犯等の犯罪行為として取り扱われるべきいじめ事案については、匿名性が高く、拡散しやすい等の性質を有していることを踏まえて適切に対応し、必要に応じて県本部サイバー犯罪対策課等に支援を求めること。また、被害の拡大防止を図るため、サイト管理者等への削除依頼等必要な措置を講じること。

なお、この種事犯の捜査等に当たっては、二次被害を防止するため、被害児童等のプライバシーに配慮するとともに、その保護者及び学校等との緊密な連携にも十分留意すること。

(2) 被害児童等又はその保護者が犯罪行為として取り扱うことを求めるいじめ事案への対応

(1)に当たらない事案であっても、被害児童等又はその保護者が犯罪行為として取り扱うことを求めるときは、その内容が明白な虚偽又は著しく合理性を欠くものである場合を除き、被害の届出を即時受理した上、学校等と緊密に連携しつつ、被害児童等の立場に立った捜査等を推進すること。

なお、警察による捜査等を契機として加害児童等から謝罪等がされた結果、被害の届出が取り下げられるなどにより、立件に至らない場合もあり得るが、いじめ事案の円満な解決に寄与すること自体が被害児童等の立場に立った警察活動であるという認識を捜査幹部・捜査員に徹底すること。

(3) その他のいじめ事案への対応

重大ないじめ事案及びこれに発展するおそれが高い事案とはいえない事案であって、被害児童等及びその保護者が警察で犯罪行為として取り扱うことを求めないものについては、一義的には、教育現場における指導により解決されるよう、その対応を尊重することが適当である。

そのような事案を警察で把握した場合には、被害児童等又はその保護者の同意を得て、学校等に連絡の上、必要に応じて、加害児童等の健全な育成を図るため注意・説諭をするほか、学校が加害児童等に指導する際の助言、いじめ防止を主眼とした非行防止教室の開催等の適切な支援を行うとともに、学校等から対応状況や事案の経過について引き続き連絡を受けるなど、緊密に連携すること。

なお、学校等が加害児童等に繰り返し指導を行っているにもかかわらず、十分な効果が見られないような場合には、必要に応じて、スクールサポーターを常駐させ、また、被害児童等や保護者の意向を再度確認するなど、警察としてのより主体的な対応を検討すること。

(4) いじめ事案に関する適切な記録等

いじめ事案を把握した場合には、重大ないじめ事案等に発展するおそれがあることを踏まえた組織的な対応が必要となることから、いじめ事案の適正な捜査等に資するため、把握したいじめ事案の経過等を適切に記録するとともに、当該いじめ事案に係る捜査等担当者間及び被害児童等の転校による署間の情報共有にも十分留意すること。

(5) 被害児童等に対する支援

被害児童等の精神的被害を回復するために特に必要と認められる場合には、保護者の同意を得た上で、少年サポートセンターを中心として、少年警察補導員等により、カウンセリング等の継続的な支援を行うとともに、支援をより効果的に実施するため、少年カウンセリングアドバイザー等の活用を図ること。

また、スクールサポーターによる被害児童等への助言等についても、学校に配置されたカウンセラーや少年警察補導員の行うカウンセリング等と連携して効果的に行うよう努めること。

6 関係通達の廃止

(1) 学校におけるいじめ問題への的確な対応について(平成25年5月7日付け達(少)第187号)

(2) いじめ事案に対する的確な対応の徹底について(平成24年8月23日付け達(少)第318号)

学校におけるいじめ問題への的確な対応について(通達)

令和元年8月6日 達(少)第279号

(令和5年4月1日施行)

体系情報
生活安全部
沿革情報
令和元年8月6日 達(少)第279号
令和5年3月20日 達(務)第126号