○安全・安心まちづくりの推進について(通達)

令和2年4月10日

達(生企)第172号

みだしのことについては、次により地域の実情を踏まえ適切に推進されたい。

なお、「防犯環境設計による「安全・安心まちづくり」の推進について」(平成18年6月1日付け達(生企)第201号)は、廃止する。

1 「安全・安心まちづくり」の意義

「安全・安心まちづくり」とは、自治体、学校等の関係機関、自治会、事業者団体等の関係団体との連携の下に、道路、公園等の公共施設や住居の構造、設備、配置等について犯罪防止に配慮した環境設計を行うとともに、地域の住民や事業者による多様な自主防犯活動を支援することにより、犯罪被害に遭いにくいまちづくりを推進し、もって、県民が安全に安心して暮らせる地域社会とするための取組のことをいう。

これらは、各種社会インフラの整備を伴うこと、地域住民が日常利用する空間における安全対策であること等から、自治体はもとより、防犯協会、防犯ボランティア、地域住民等と問題意識を共有し、その理解を得て関係者全体が一丸となって推進することが必要であり、推進に当たっては、その地域の特性を尊重するとともに、長期的視点から粘り強く取り組んでいくことが求められる。

2 自治体、地域住民、建築業界等と協働した安全・安心まちづくりの推進

安全・安心まちづくりを推進するためには、地域の特性を踏まえ、街や建物・施設の構造等を犯罪防止に配慮したものとするハード面の対策と、地域住民や事業者による自主的な防犯パトロール、防犯に関する広報啓発や防犯教室等のソフト面の対策を効果的に組み合わせて実施する必要がある。

そのためには、犯罪の発生場所、時間等の特徴を把握するとともに、自治体、地域住民、事業者等が効果的な防犯対策を推進することができるよう助言すること、まちの在り方についてハード面、ソフト面を通じ防犯の観点から問題がないかを調べる防犯診断を行うこと、警察はもとより地域住民等が行う防犯対策の内容や取組状況等についても積極的な広報を実施し、関係者全体の防犯意識の醸成を図ること、まちづくりのための日常的なコミュニティ活動を促進することなどが重要である。

なお、道路、公園、駐車場・駐輪場等(以下「道路等」という。)の個別の施設に着目した取組に当たっては、次の事項に従って推進すること。

(1) 道路等を対象とした取組

ア 道路等の構造・設備等の整備・改善、防犯設備の整備、住民参加の促進

道路等の整備・管理を行う自治体、地域住民等に対し、最近の犯罪の発生状況とともに、犯罪防止のために必要なこれらの施設に係る構造・設備等の整備・改善、防犯設備の整備、地域住民の参加等の意義について説明し、理解を得た上で必要な措置が講じられるよう努めること。

その際、犯罪の発生状況や地域住民の要望等を踏まえ、女性、子供及び高齢者に対する犯罪等を防止するための対策を早急に講じる必要のある地域又は箇所に重点的に対策を実施すること。

イ 取組の方法

アの取組に当たっては、別紙1「道路、公園、駐車場・駐輪場等の整備・管理に係る防犯上の留意事項」に従って行うこと。

なお、安全・安心まちづくりの推進には、自治体、施設の管理者、関係業界等の理解を得て、これらと協働して取り組むことが必要であるので、関係機関等と十分に調整し、円滑に実施することができるよう配意すること。

ウ 自治体の「まちづくり計画」等への反映

自治体による都市計画、都市再開発計画、大規模団地造成計画等のまちづくりに関する計画の策定・見直しや道路等の新設・改良に際し、自治体の理解を得て、犯罪防止に配慮した道路等の設計や防犯設備の整備等が各種計画に反映されるよう努めること。

(2) 共同住宅を対象とした取組

ア 既存の共同住宅の構造・設備の改善、防犯設備の整備等

犯罪の発生状況、共同住宅の管理者や住民の要望等を踏まえ、犯罪を防止するための対策を早急に講じる必要のある共同住宅について、自治体、当該共同住宅の管理者等の理解を得て、当該共同住宅に係る犯罪を誘発するおそれのある構造・設備の改善、防犯設備の整備等が図られるよう努めること。

イ 新たに建築しようとする共同住宅に関する措置

共同住宅の建築に係る自治体、建築事業者(団体)等に対し、最近の共同住宅における犯罪の発生状況、犯罪防止のために必要な構造・設備及び防犯設備の整備等の必要性について広報啓発活動を行い、これらの者の理解を得て防犯性に優れた共同住宅が建築されるよう努めること。

ウ 取組の方法

ア及びイの取組に当たっては、別紙2「共同住宅に係る防犯上の留意事項」及び国土交通省が策定した「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」に従って行うこと。

なお、共同住宅については特に、管理組合等の施設の管理者等の理解を得て協働して同施設内の防犯の向上に取り組むことが必要であるので、これらと十分に調整し、円滑に実施することができるよう配意すること。

また、取組については、構造・設備の改善、防犯設備の整備等による管理者等の負担に十分配意するとともに、共同住宅の防犯性能に係る認定の仕組みを効果的に活用すること。

3 資機材の整備

防犯灯、防犯カメラ、防犯ベル等安全・安心まちづくりの推進に必要な資機材の整備について、必要な措置を講じるよう努めること。

別紙1

道路、公園、駐車場・駐輪場等の整備・管理に係る防犯上の留意事項

項目

留意事項

備考

道路

1 「人の目」の確保(監視性の確保)

(1) 照度

ア 夜間において人の行動を視認できるよう、光害にも注意しつつ防犯灯、街路灯等により必要な照度(おおむね3ルクス以上)を確保する。

イ 照明が樹木に覆われたり汚損したりすること等により予定した照度を維持できなくなるおそれがあるので、適時に点検する。

ウ 道路が暗い場合で防犯灯、街路灯等の新増設が難しいときには、沿道住民の理解と協力を得て、門灯等の活用も検討する。

(2) 見通し

ア 道路における植栽について、計画の段階より、通行人や周辺住民からの見通しに配慮して、配置や樹種の選定にあたるものとし、例えば視線の高さよりも上に樹冠のある高木や視線よりも低い樹種を選定することや、視線を連続して遮らない配置等を考慮する。

また、植栽の時点では問題がなくとも、生長に伴い、枝葉が繁茂して、見通しを悪くする可能性があるため、適時に点検するとともに、必要に応じてせん定等の樹木管理を行う。

イ 住宅、学校等の囲障は、ブロック塀はできる限り避け、柵など見通しの良いものにする。

ウ 狭い道路に面した家屋は、建替え等の際に壁面を後退させると道路空間の見通しが良くなり、交通安全、防災に加えて防犯上も有効である。角地の隅切りも効果がある。

エ 地下道等で犯罪発生の危険が大きいものについては、できる限り防犯カメラその他の防犯設備を設置する。

○「監視性の確保」とは、多くの人の目(視線)を自然な形で確保し、犯罪企図者に「犯罪行為を行えば第三者に目撃されるかもしれない」と感じさせることにより犯罪抑止を図ることをいう。

2 犯罪企図者の接近の制御

特にひったくりの被害が多い道路については、犯罪企図者がオートバイに乗ったまま歩行者に接近するのを防止するのが犯罪抑制に効果的である。

安全な交通の確保の観点から必要な範囲において、ガードレールの設置、道路交通環境の整備等の観点から必要な範囲において植栽の設置その他の適切な方法により接近の制御を図る。

○「接近の制御」とは、犯罪企図者が被害対象者・対象物に接近することを妨げることにより犯罪の機会を減少させることをいう。

公園

1 「人の目」の確保(監視性の確保)

(1) 照度

ア 夜間において人の行動を視認できるよう、光害にも注意しつつ防犯灯等により必要な照度(おおむね3ルクス以上)を確保する。

イ 照明が樹木に覆われたり汚損したりすること等により予定した照度を維持できなくなるおそれがあるので、適時に点検する。

(2) 見通し

ア 公園の周囲における植栽について、計画の段階より、通行人や周辺住民からの見通しに配慮して、配置や樹種の選定にあたるものとし、例えば視線の高さよりも上に樹冠のある高木や視線よりも低い樹種を選定することや、視線を連続して遮らない配置等を考慮する。

また、植栽の時点では問題がなくとも、生長に伴い、枝葉が繁茂して、見通しを悪くする可能性があるため、適時に点検するとともに、必要に応じてせん定等の樹木管理を行う。

イ 公園の内部においても、植栽、遊具等により見通しの悪い空間ができないように配慮する。特に公衆便所は危険の大きい場所になりがちであるので、周辺の道路、住宅等からの見通しを確保する。

ウ 公衆便所については、建物の入口付近及び内部において人の顔及び行動を明確に識別できる程度以上の照度(おおむね50ルクス以上)を確保する。


駐車場・駐輪場

1 「人の目」の確保(監視性の確保)

(1) 照度

ア 夜間において人の行動を視認できるよう、光害にも注意しつつ必要な照度(人の行動を視認できる程度は、おおむね3ルクス以上、自動車の車路の路面は10ルクス以上、自動車の駐車の用に供する部分の床面は2ルクス以上)を確保する。

イ 照明が汚損すること等により予定した照度を維持できなくなるおそれがあるので、適時に点検する。

(2) 見通し

駐車場・駐輪場の外周のフェンス、柵等はできる限り見通しの良いものとして周囲からの見通しを確保するとともに、管理者が常駐若しくは巡回し、又は防犯カメラその他の防犯設備を設置する。

2 犯罪企図者の接近の制御

駐車場・駐輪場については、その外周において柵等により周囲と区分し、可能であれば出入口には自動ゲート管理システムの設置、管理人の配置等を行う。ただし、その柵等が隣接家屋の2階等への侵入経路とならないよう注意する。


その他

1 特に犯罪の多い地区の公共施設等においては、防犯カメラ、緊急通報装置、防犯ベル等の設置を推進することが重要である。特に公衆便所の各個室など犯罪発生の危険が大きいものについては、できる限り防犯ベルを設置する。

2 低コストで高い照度を得られる照明設備の開発・導入に努める。

3 地区に対する住民等の帰属意識・共同意識の向上(領域性の強化)

(1) 地域住民が愛着を持って利用し、自発的に維持管理に参加するような施設は、犯罪の抑制に効果的であると考えられるため、道路等の植栽、公園の整備・管理等において、ワークショップによる計画づくり等を含めてできる限りの住民参加を促進する。

その際、軽微な犯罪であっても放置されれば地域全体の治安の悪化につながるとの考えに沿って、落書きやゴミの不法投棄への対応等も行う。

(2) 住宅地における侵入窃盗その他の犯罪防止効果に鑑み、通過交通の抑制、道路空間を通じた地域のコミュニティ意識の活性化等が必要な場合に「コミュニティ道路」等の整備を積極的に行う。

(3) 問題意識の共有を図るため、当該地区の公共的な空間における犯罪の発生状況その他の具体的な情報について、被害者のプライバシー等に十分配慮しつつ、地域住民及び自治体等に積極的に提供する。

(4) 自治体や、自治会、商店街等の地域住民による組織が公共施設や公共空間に防犯カメラを設置・管理するに当たっては、自治体、防犯設備の専門家等と協働しつつ、防犯カメラの適正かつ効果的な設置・管理のために必要な情報の提供、助言等を行う。

○「防犯ベル」とは、犯罪の発生のおそれがある場合等非常の場合において、押しボタンを押すことによりベルが吹鳴する、赤色灯が点灯するなどの機能を有する装置をいう。

○「領域性の強化」とは、住民等が「我々のまち」であるという強い意識を持ち、強固なコミュニティを形成するとともに地区の施設等の十分な維持管理を行うことを通じ、住民等による防犯活動を活発化させるとともに、犯罪企図者に「立ち入れば部外者として目立ってしまう」と意識させて犯罪抑止を図ることをいう。

○「コミュニティ道路」とは、通過交通の進入を抑制し、歩行者等が安全かつ快適に通行できる交通環境を形成するため、歩道部の幅員を広く取る、車道部分をジグザグに変化させるなどして整備される歩行者優先の道路をいう。

別紙2

共同住宅に係る防犯上の留意事項

【共用部分】

項目

留意事項

備考

共用出入口

1 周囲からの見通しを確保する。

2 共用玄関は、各住戸と通話可能で通話者及び共用玄関の外側の状況を撮影・録画可能なインターホンとこれに連動した電気錠を有した玄関扉によるオートロックシステムを導入することが望ましい。

3 オートロックシステムが導入されている場合には、共用玄関以外の共用出入口は、扉が設置され、当該扉は自動施錠機能付き錠を設置する。

4 共用玄関は、人の顔及び行動を明確に識別できる程度以上の照度(おおむね50ルクス以上)を確保する。

また、共用玄関以外の共用出入口は、人の顔及び行動を識別できる程度以上の照度(おおむね20ルクス以上)を確保する。


管理人室

共用玄関、共用メールコーナー(宅配ボックスを含む。以下同じ。)及びエレベーターホールを見通せる位置又はこれらに近接した位置にする。


共用メールコーナー

1 共用玄関付近からの見通しを確保する。

2 人の顔及び行動を明確に識別できる程度以上の照度(おおむね50ルクス以上)を確保する。


エレベーターホール

1 共用玄関付近からの見通しを確保する。

2 人の顔及び行動を明確に識別できる程度以上の照度(おおむね50ルクス以上)を確保する。


エレベーター

1 かご内に防犯カメラを設置する。

2 非常の場合において、押しボタン等によりかご内から外部に連絡又は吹鳴する装置を設置する。

3 かご及び昇降路の出入口の戸に、外部からかご内を見通せる窓を設置する。

4 かご内は、人の顔及び行動を明確に識別できる程度以上の照度(おおむね50ルクス以上)を確保する。


共用廊下・共用階段

1 周囲からの見通しを確保することが望ましい。

2 人の顔及び行動を識別できる程度以上の照度(おおむね20ルクス以上)を確保する。

3 共用階段は、共用廊下等に開放された形態であることが望ましい。


自転車置場・オートバイ置場

1 周囲からの見通しを確保する。

2 チェーン用バーラックの設置等盗難防止に有効な措置を講じる。

3 人の行動を視認できる程度以上の照度(おおむね3ルクス以上)を確保する。

○「チェーン用バーラック」とは、駐輪場に固定されている棒等のことで、自転車等をチェーン錠で結ぶ設備をいう。

駐車場

1 周囲からの見通しを確保する。

2 人の行動を視認できる程度以上の照度(おおむね3ルクス以上)を確保する。


歩道・車道等の通路

1 周囲からの見通しを確保する。

2 人の行動を視認できる程度以上の照度(おおむね3ルクス以上)を確保する。


児童遊園、広場又は緑地等

1 周囲からの見通しを確保する。

2 人の行動を視認できる程度以上の照度(おおむね3ルクス以上)を確保する。

3 塀、柵又は垣等は、周囲からの見通しが確保されない死角の原因とならないものとする。


【専用部分】

住戸の玄関扉

1 防犯建物部品等である扉(枠を含む。)及び錠を設置する。

2 ドアスコープ等及びドアチェーン等を設置する。


インターホン

1 住戸玄関の外側との間の通話機能を有するものとする。

2 管理人室が置かれている場合には、管理人室との間の通話機能を、また、オートロックシステムが導入されている場合には、共用玄関扉の電気錠と連動し、共用玄関の外側との間の通話機能を有し、通話者及び共用玄関の外側の状況の撮影・録画機能を有するものであることが望ましい。


住戸の窓

1 共用廊下に面する住戸の窓(侵入のおそれのない小窓を除く。以下同じ。)及び接地階に存する住戸の窓のうちバルコニー等に面するもの以外のものは、防犯建物部品等であるサッシ及びガラス(防犯建物部品等であるウィンドウフィルムを貼付したものを含む。以下同じ。)、面格子その他の建具を設置する。

2 バルコニー等に面する住戸の窓のうち侵入が想定される階に存するものは、防犯建物部品等であるサッシ及びガラスその他の建具を設置する。

○「防犯建物部品等」とは、「防犯性能の高い建物部品の開発・普及に関する官民合同会議」が公表している「防犯性能の高い建物部品目録」に掲載された建物部品等をいう。

バルコニー

1 縦樋、手り等を利用した侵入の防止に有効な構造を有するものとする。

2 バルコニーの手りについて、周囲からの見通しを確保することが望ましい。


安全・安心まちづくりの推進について(通達)

令和2年4月10日 達(生企)第172号

(令和2年4月10日施行)

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令和2年4月10日 達(生企)第172号