○道路交通法の一部を改正する法律の一部施行に伴う適切な運用について(依命通達)
令和2年6月18日
達(交企、交指、運免、交規)第253号
みだしのことについては、次のとおり施行されることから誤りのないようにされたい。
記
1 趣旨
道路交通法の一部を改正する法律(令和2年法律第42号。以下「改正法」という。)が、本年6月10日公布され、改正法附則第1条第1号に掲げる規定は、本年6月30日から施行されることとなった。
また、改正法の施行に伴い、関係する政令等の一部改正が本年6月12日公布され、本年6月30日から施行されることとなった。
今回施行される改正規定は、妨害運転に対する罰則の創設等に関するものであり、その適切な運用を図るものである。
2 関係法令
(1) 道路交通法の一部を改正する法律(令和2年法律第42号)
(2) 道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和2年政令第181号)
(3) 道路交通法施行規則及び自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の施行に伴う道路交通法施行規則の規定の読替えに関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(令和2年内閣府令第45号)
(4) 指定講習機関に関する規則等の一部を改正する規則(令和2年国家公安委員会規則第8号)
3 今回施行される改正規定の趣旨、内容及び留意事項
別紙のとおり
別紙
(凡例)
「改正法」: 道路交通法の一部を改正する法律(令和2年法律第42号)
「法」: 改正法による改正後の道路交通法(昭和35年法律第105号)
「改正令」: 道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和2年政令第181号)
「令」: 改正令による改正後の道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)
「府令」: 道路交通法施行規則及び自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の施行に伴う道路交通法施行規則の規定の読替えに関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(令和2年内閣府令第45号)による改正後の道路交通法施行規則(昭和35年総理府令第60号)
1 妨害運転に対する罰則の創設等
(1) 趣旨
平成29年6月、神奈川県内の東名高速道路上において、他の自動車を執ように追跡し、進路を塞ぐなどの妨害行為を繰り返した上、当該自動車を停止させて後続の自動車に追突させ、停止させられた自動車に乗車していた一家4人を死傷させる事件が発生した。
また、この事件以降も、同様の悪質・危険な運転行為が相次いで発生しており、いわゆる「あおり運転」として重大な社会問題となっている。
このような状況を踏まえ、この種の悪質・危険な運転行為を抑止するため、他の車両等の通行を妨害する目的で一定の違反行為をした者に対する罰則の創設等が行われるものである。
(2) 内容
ア 妨害運転に対する罰則の創設
(ア) 他の車両等の通行を妨害する目的で、以下の行為であって、当該他の車両等に道路における交通の危険を生じさせるおそれのある方法によるものをした者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処される(法第117条の2の2第11号)。
a 法第17条(通行区分)第4項の規定の違反となるような行為
b 法第24条(急ブレーキの禁止)の規定に違反する行為
c 法第26条(車間距離の保持)の規定の違反となるような行為
d 法第26条の2(進路の変更の禁止)第2項の規定の違反となるような行為
e 法第28条(追越しの方法)第1項又は第4項の規定の違反となるような行為
f 法第52条(車両等の灯火)第2項の規定に違反する行為
g 法第54条(警音器の使用等)第2項の規定に違反する行為
h 法第70条(安全運転の義務)の規定に違反する行為
i 法第75条の4(最低速度)の規定の違反となるような行為
j 法第75条の8(停車及び駐車の禁止)第1項の規定の違反となるような行為
(イ) (ア)の罪を犯し、よって高速自動車国道等において他の自動車を停止させ、その他道路における著しい交通の危険を生じさせた者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処される(法第117条の2第6号)。
イ 運転免許を受けることができない期間等に関する規定の整備
公安委員会は、運転免許を受けた者がア(イ)の行為をしたときは、その者の運転免許を取り消すことができるとともに、3年以上10年を超えない範囲内で当該処分を受けた者が運転免許を受けることができない期間を指定すること等ができる(法第90条、第103条及び第107条の5)。
ウ 運転免許の効力の仮停止に関する規定の整備
ア(イ)の行為をし、よって交通事故を起こして人を死亡させ、又は傷つけた場合について、運転免許の効力の仮停止の対象とされる(法第103条の2第1項第2号)。
エ 妨害運転に付する基礎点数に関する規定の整備
法第117条の2の2第11号の罪に当たる行為(「妨害運転(交通の危険のおそれ)」)を一般違反行為とし、基礎点数25点が付される。
また、法第117条の2第6号の罪に当たる行為(「妨害運転(著しい交通の危険)」)を特定違反行為とし、基礎点数35点が付される(令別表第2の1の表及び第2の2の表)。
オ 重大違反に関する規定の整備
重大違反唆し等の対象となる重大違反に、妨害運転(著しい交通の危険)及び妨害運転(交通の危険のおそれ)が追加される(令第33条の2の3第4項)。
カ 仮運転免許の取消しの基準に関する規定の整備
仮運転免許の取消処分の対象となる違反に、妨害運転(著しい交通の危険)及び妨害運転(交通の危険のおそれ)が追加される(令第39条の3第1項第3号)。
キ 危険行為に関する規定の整備
自転車運転者講習の対象となる危険行為に、妨害運転(著しい交通の危険)及び妨害運転(交通の危険のおそれ)が追加される(令第41条の3第15号)。
ク 安全運転管理者等の欠格要件に関する規定の整備
安全運転管理者等の欠格事由に、妨害運転に係る罪が追加される(府令第9条の9第1項第2号ロ)。
(3) 留意事項
ア 妨害運転の抑止を図るため、関係機関・団体と連携して、改正規定の内容について周知徹底するとともに、妨害運転を誘発しない運転の必要性や妨害運転を受けたときの対処法等についても一層の広報啓発活動を推進すること。
イ 妨害運転に対する厳正な指導取締りを徹底するとともに、妨害運転を行った者に対する迅速な行政処分を推進すること。
2 その他
仮運転免許の取消処分の対象となる違反に、携帯電話使用等(交通の危険)(法第71条第5号の5の規定に違反する行為(同号の規定に違反し、よって道路における交通の危険を生じさせた場合に限る。))が追加される(令第39条の3第1項第3号)。
3 経過措置
(1) 施行前にした行為を理由とする運転免許(法第84条第1項に規定する運転免許をいう。)の拒否、保留、取消し若しくは効力の停止又は自動車等(法第84条第1項に規定する自動車等をいう。)の運転の禁止については、なお従前の例による(改正法附則第3条)。
(2) 施行前にした行為に対する反則行為の取扱いに関しては、なお従前の例による(改正法附則第8条)。
(3) 施行前にした行為を理由とする仮運転免許の取消しの基準については、なお従前の例による(改正令附則第2項)。
(4) 施行前にした違反行為に付する点数については、なお従前の例による(改正令附則第3項)。
(参考資料)
○ 道路交通法の一部を改正する法律(令和2年法律第42号)の官報の写し及び新旧対照条文
○ 道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和2年政令第181号)の官報の写し及び新旧対照条文
○ 道路交通法施行規則及び自動車運転代行業の業務の適正化に関する法律の施行に伴う道路交通法施行規則の規定の読替えに関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(令和2年内閣府令第45号)の官報の写し
○ 指定講習機関に関する規則等の一部を改正する規則(令和2年国家公安委員会規則第8号)の官報の写し