○国家戦略特別区域法の一部を改正する法律の施行等に伴う交通警察の対応について(依命通達)

令和2年9月7日

達(交規、交企)第321号

本年6月3日に公布された国家戦略特別区域法の一部を改正する法律(令和2年法律第34号。以下「改正法」という。)が本年9月1日に施行された。また、改正法の施行に伴い、国家戦略特別区域法第25条の2の内閣府令で定める実証事業等を定める内閣府令(令和2年内閣府令第57号。以下「特区法第25条の2関係府令」という。)等も本年9月1日に施行された。

これらの改正のうち、交通警察に関係する部分及び対応上の留意事項等は下記のとおりであるので、対応に誤りのないようにされたい。

1 改正の経緯

国家戦略特別区域法(平成25年法律第107号)は、国家戦略特別区域に関し、規制改革その他の施策を総合的かつ集中的に推進するために必要な事項を定め、もって国民経済の発展及び国民生活の向上に寄与することを目的としている。

自動車の自動運転等の高度な産業技術については、第4次産業革命を実現する上で不可欠な技術として、研究開発及び実証実験が行われているところであり、国家戦略特別区域においても、これらの実証実験を一層迅速かつ円滑に行うことを可能とする枠組みの整備が求められてきたところである。

今般の改正は、こうした情勢を背景として、国家戦略特別区域内にいわゆる「規制のサンドボックス」を創設し、特例措置を設けることで、自動車の自動運転等の高度な産業技術の有効性の実証を行う事業が、同区域において積極的に行われるようにするものである。

2 改正の内容

(1) 概要

改正法による改正後の国家戦略特別区域法(以下「特区法」という。)では、国家戦略特別区域会議において、国・地方公共団体・事業者が一体となって、同法第25条の2第1項に規定する国家戦略特別区域革新的技術実証事業を定めた区域計画(以下「技術実証区域計画」という。)を作成することとされており、当該計画が内閣総理大臣による認定を受けたとき、認定を受けた技術実証区域計画(以下「認定技術実証区域計画」という。)については、規制の特例措置を受けることとなる。

道路交通法(昭和35年法律第105号。以下「道交法」という。)第77条第1項第4号の規定に基づく都道府県公安委員会規則では、同項の規定による道路使用許可を受けなければならない行為として、道路において、自動車から遠隔に存在する運転者が電気通信技術を利用して当該自動車の運転操作を行うことができる自動運転技術を用いて自動車を走行させる実証実験をする行為が挙げられている。今般、改正法により、特区法に基づき、遠隔自動走行(道路において遠隔操作を行いながら自動運転の技術を用いて自動車を走行させる行為のうち、道交法第77条第1項第4号に規定する行為に該当し、道路使用許可を受けなければならないものをいう。以下同じ。)を含む技術実証区域計画について内閣総理大臣の認定を受けたときは、道交法の特例措置として、道路使用許可があったものとみなされ、道交法の規定が適用されることとされた(特区法第25条の4第1項)

(2) 特区法に基づく対応の概要

ア 技術実証区域計画の策定に係る対応

国家戦略特別区域会議においては、遠隔自動走行に係る技術実証について技術実証区域計画を定めようとする場合、あらかじめ、所轄警察署長に協議し、その同意を得なければならない(特区法第25条の2第4項)

所轄警察署長は、特区法第25条の2第4項の規定による協議(以下「同意協議」という。)があった場合、当該遠隔自動走行が

(ア) 現に交通の妨害となるおそれがないと認められるとき

(イ) 道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑をはかるために必要として同条第10項により定められる条件に従って行われることにより、交通の妨害となるおそれがなくなると認められるとき

(ウ) 現に交通の妨害となるおそれはあるが公益上やむを得ないものであると認められるとき

のいずれかに該当するときは、同意をするものとされており、上記イ又はウに該当する場合で、必要があると認めるときは、当該遠隔自動走行について必要な条件(以下「同意条件」という。)を定めることができることとされている(特区法第25条の2第9項及び第10項)

このとき、所轄警察署長は、当該同意の判断に当たって、国家戦略特別区域会議に対し、必要な情報の提供を求めることができる(特区法第25条の2第6項)

なお、特区法第25条の2に規定する所轄警察署長の権限に属する事務のうち、高速自動車国道等に係るものについては、高速道路交通警察隊長等に委任することができることとされている(特区法第25条の2第15項の規定により準用する道交法第114条の3)

イ 認定技術実証区域計画に基づき実証事業者が行う遠隔自動走行への対応

実証事業者が認定技術実証区域計画に従って遠隔自動走行を行う場合、所轄警察署長は、同意協議への同意をもって、当該実証事業者に対し、当該計画において定められた遠隔自動走行について、当該計画において定められた期間を許可の期間、同意条件を許可の条件として、道路使用許可をした(以下、当該許可を「みなし許可」という。)こととなり、国家戦略特別区域会議が当該実証事業者に対して交付する特区法第25条の2第1項の規定による書面(特区法第25条の2第1項第1号(遠隔自動走行に係る部分に限る。)及び同項第3号に係る部分に限る。)が、みなし許可に係る許可証(以下「みなし許可証」という。)の効力を有することとなる。

この場合において、道交法に基づく規定が適用され、

(ア) 所轄警察署長は、実証事業者が同意条件に違反したとき、又は道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため特別の必要を生じたときは、みなし許可を取り消し、又はみなし許可の効力を停止することができる(道交法第77条第5項)

(イ) 実証事業者は、

a みなし許可の期間が満了したとき

b 道交法第77条第5項の規定により、所轄警察署長がみなし許可を取り消したとき

c 遠隔自動走行に係る認定技術実証区域計画について、特区法第9条第1項の規定に基づき、内閣総理大臣が、遠隔自動走行に係る技術実証事業を定めないものとする旨の変更を認定したとき

d 特区法第11条第1項又は第25条の2第17項の規定に基づき、内閣総理大臣が認定を取り消したとき

は、すみやかに工作物の除去その他道路を原状に回復する措置を講じなければならない(特区法第25条の4第1項の規定により読み替えて適用する道交法第77条第7項)

(ウ) 実証事業者は、みなし許可証の記載事項に変更が生じたときは、所轄警察署長に届け出て、当該みなし許可証に変更に係る事項の記載を受けなければならない(道交法第78条第4項)

(エ) 道交法上の各種罰則が適用される

こととなる(特区法第25条の4第1項)

なお、技術実証区域計画について、内閣総理大臣が認定をしたとき、又は特区法第11条第1項若しくは第25条の2第17項の規定に基づく認定の取消しをしたときは、所轄警察署長は、遅滞なく、内閣総理大臣からその旨の通知を受けることとなる。また、上記アにおいて、道交法第77条第5項の規定により、所轄警察署長がみなし許可の取消しをしたときは、所轄警察署長は、遅滞なく、その旨を内閣総理大臣に通知しなければならない(特区法第25条の2第18項及び第25条の4第2項)

ウ 認定技術実証区域計画の変更に係る対応

国家戦略特別区域会議は、認定技術実証区域計画を変更しようするときは、所轄警察署長に協議し、その同意を得なければならないこととされており(特区法第25条の2第14項の規定により準用する同条第4項)、その場合における交通警察の対応は、当該計画の策定時と同様である(特区法第25条の2第14項の規定により準用する同条第6項、第9項及び第10項)

この点、認定技術実証区域計画が変更されようとする場合のうち、地域の名称の変更等、国家戦略特別区域法施行規則(平成26年内閣府令第20号)第8条で定める軽微な変更については、その他の変更の場合と異なり、特区法第25条の2第1項の規定によるみなし許可証は新たに交付されないが、その場合であっても、特区法第25条の2関係府令第3条の規定により書面が交付されることとされているため、上記(2)ウのとおり、実証事業者は、みなし許可証の記載に変更が生じたときは、所轄警察署長に届け出て、当該みなし許可証に変更に係る事項の記載を受けなければならない。

3 対応上の留意事項

関係所属において遠隔自動走行を含む技術実証区域計画の策定に向けた取組を認知した場合は、速やかに交通規制課及び交通企画課に連絡し、必要な調整を図ること。

国家戦略特別区域法の一部を改正する法律の施行等に伴う交通警察の対応について(依命通達)

令和2年9月7日 達(交規、交企)第321号

(令和2年9月7日施行)

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