○障がいを理由とする差別の解消に関する理解の促進について(依命通達)
令和2年7月21日
達(教)第285号
みだしのことについて、次により職員の理解の促進に努められたい。
記
1 目的
今後ますます障がい者の社会参加が進み、県警察においては、職員が障がい者と接する機会が増えると考えられることから、全ての職員が、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第7条に規定する事項(行政機関等における障害を理由とする不当な差別的取扱いの禁止・合理的配慮の提供)等に関する理解を一層進めようとするものである。
2 具体的な取組
職員に対して、下記資料等の活用により、障がい者接遇に係る意識の向上、必要な知識の習得などが図れるよう、幹部会議や全体会議の機会を利用するなど、適時適切な教養を実施すること。
3 資料等
(1) 別添 障害を理由とする差別の解消を推進するための教養
(2) 映像教材「障害者への接遇の在り方」(FP-WAN県警アーカイブシステムに掲載)
4 その他
(1) 映像教材は、DVDによる貸出しが可能であるので、集合教養等で活用する場合は、教養課教養係まで連絡すること。
(2) 所属において、これら教養の取組を実施した場合は、教養課まで申報すること。
別添
本資料は、障害を理由とする差別の解消を推進するための教養資料です。
障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)は、「障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資すること」(第1条)を目的に制定され、平成28年4月に施行されました。
警察庁においては、本法律を受け、警察庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令(平成27年警察庁訓令第19号)を定めています。
また、各都道府県警察においても、警察庁訓令の内容を参考に、警察職員が障害者に適切に対応するために必要な要領を定めています。
本資料では、法律・訓令の概要を説明します。
1 本法律制定の経緯
平成18年12月、国連において、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、「障害者の権利に関する条約」が採択されました。
我が国は、平成19年9月に同条約に署名し、平成23年の障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正、平成24年の障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)の改正(障害者自立支援法の題名の改正等)等、同条約の締結に向けた国内法の整備に取り組んできました。
本法律は、障害者基本法第4条に規定された差別の禁止の基本原則を具体化するものであり、全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害者差別の解消を推進することを目的として、平成25年に国会に提出され、5月31日に衆議院において、6月19日に参議院において、それぞれ全会一致で可決され、制定されました。平成25年6月26日に公布され、平成28年4月1日に施行されました。
我が国は、本法律の制定を含めた一連の障害者施策に係る取組の成果を踏まえ、平成26年1月に障害者の権利に関する条約を締結しました。
2 本法律の概要
本法律は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的としています(第1条)。
本法律には、次の事項等が規定されています。
(1) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針の策定(第6条)
政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針を定めなければならないこととされています。
(2) 行政機関等における障害を理由とする差別の禁止(第7条)
行政機関等がその事務又は事業を行うに当たり、障害を理由とする差別を行うことを禁止しており、障害を理由とする差別について、
・ 不当な差別的取扱いの禁止(第1項)
・ 合理的配慮の提供(第2項)
の2つに分けて規定されています。
(3)―1 国等職員対応要領の策定(第9条)
国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第7条に規定する事項(不当な差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供)に関し、職員が適切に対応するために必要な要領を定めることとされています。
(3)―2 地方公共団体等職員対応要領の策定(第10条)
地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第7条に規定する事項(不当な差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供)に関し、職員が適切に対応するために必要な要領を定めるよう努めることとされています。
地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、地方分権の観点から、対応要領の策定が努力義務とされています。
(4) 相談体制整備・啓発活動等の支援措置(第4章)
国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止等を図ることができるよう必要な体制の整備を図ることとされています(第14条)。
国及び地方公共団体は、障害を理由とする差別の解消について国民の関心と理解を深めるとともに、特に、障害を理由とする差別の解消を妨げている諸要因の解消を図るため、必要な啓発活動を行うこととされています(第15条)。
○ 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(第6条)
政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針を定めなければならないこととされています(第1項)。
この基本方針には、
1 障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向
2 行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
3 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項
4 その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項
を定めることとされています(第2項)。
政府は、障害者政策委員会(障害者基本法第32条に基づき内閣府に置かれている機関。障害者や学識経験者等を委員として構成。)における検討等を経て、平成27年2月24日、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」を閣議決定しました。
○ 国等職員対応要領/地方公共団体等職員対応要領
(1) 国の行政機関の長及び独立行政法人等は、基本方針に即して、第7条に規定する事項(不当な差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供)に関し、その職員が適切に対応するために必要な対応要領を定めることとされています(第9条第1項)。
対応要領は、行政機関等ごとに定められるものであり、当該行政機関等における、基本方針に即した障害を理由とする差別の基本的考え方や障害を理由とする不当な差別的取扱いに該当するような行為の具体例、社会的障壁の除去について必要な合理的配慮として考えられる好事例等を示すものです。
これを受け、警察庁は、平成27年11月17日、「警察庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令」を定めました。
(2) 地方公共団体の機関及び地方独立行政法人は、基本方針に即して、第7条に規定する事項(不当な差別的取扱いの禁止、合理的配慮の提供)に関し、職員が適切に対応するために必要な要領を定めるよう努めることとされています(第10条第1項)。
各都道府県警察においては、警察庁訓令の内容を参考に、都道府県警察職員が障害者に適切に対応するために必要な要領を定めています。
※ 「警察庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令の制定について(通達)」(平成27年11月17日付け警察庁丁人発第759号ほか)
(略)
また、法第10条第1項においては、地方公共団体の機関の職員が適切に対応するために必要な要領を定めるよう努めることとされていることから、各都道府県警察にあっては、法施行に向けて所要の措置を講じる際には、同訓令の内容を参考とされたい。
(参考)
事業を所管する各主務大臣は、基本方針に即して、不当な差別的取扱いの禁止や合理的配慮の提供に関し、事業者が適切に対応するために必要な事項、各事業分野における合理的配慮の具体例等を盛り込んだ対応指針を定めることとされています(第11条)。
○行政機関等における障害を理由とする差別の禁止(第7条)
1 趣旨
本条は、障害者基本法第4条に定められている差別の禁止を具体化するものとして、行政機関等について、作為による差別に係る「不当な差別的取扱い」と不作為による差別に係る「合理的配慮の不提供」を禁止するものです。
「不当な差別的取扱い」以外に、「合理的配慮の不提供」という差別類型が規定されたのは、障害者が日常生活や社会生活において受ける制限は、障害者自身が持つ障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生じるものだとする、いわゆる「社会モデル」の考え方に基づいており、障害者権利条約にも規定されている「合理的配慮」の趣旨を踏まえ、「合理的配慮の不提供」を差別として規定するものです。
2 不当な差別的取扱い(第1項)
行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
この作為類型による差別としては、例えば、障害者であることのみを理由に商品やサービスの提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりするような行為が該当します。
ただし、このような取扱いをすることについて、正当な理由がある場合には、「不当な差別的取扱い」には該当しません。
(不当な差別的取扱いの例)
障害を理由に
・入場を拒否する
・窓口対応を拒否する
・商品の販売を拒否する
・(必要がないのに)介助者の同行を条件とする
・(支障がないのに)介助者の同行を拒否する
○行政機関等における障害を理由とする差別の禁止(第7条)
3 合理的配慮の提供(不提供の禁止)(第2項)
行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
合理的配慮を行うことが求められ、合理的配慮を行わないという不作為により障害者の権利利益が侵害された場合には、差別に当たります。
(合理的配慮の提供の例)
・物理的配慮:車椅子利用者のために段差に携帯スロープを渡す、高い所に陳列された商品を取って渡すなど
・意思疎通の配慮:筆談、読み上げ、手話などによるコミュニケーション、分かりやすい表現を使って説明をするなど
・ルール・慣行の柔軟な変更:障害の特性に応じた休憩時間の調整など
ここからは、「職員対応要領」の概要について、説明します。
警察庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令(平成27年11月17日付け警察庁訓令第19号)の概要を説明します。
都道府県警察職員に係る「地方公共団体等職員対応要領」は、各都道府県警察ごとに定められていますが、都道府県警察は警察庁訓令の内容を参考に要領を定めていることから、ここでは、警察庁訓令の概要を説明することとします。
この説明内容を参考に、各自が所属する都道府県警察の対応要領を確認してください。
訓令第3条は、「職員は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。」ことを規定しています。
訓令第4条は、「職員は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮の提供をしなければならない。」ことを規定しています。
なお、法律第7条は、行政機関等は、不当な差別的取扱いをしてはならないこと、合理的配慮を提供しなければならないことを規定しています。
訓令第5条には「所属長の責務」が、訓令第8条には「研修・啓発」が規定されています。
訓令別紙の具体例には、「不当な差別的取扱い」に該当する具体的事例(不適切な事例)、「合理的配慮の提供」に該当する具体的事例(好事例)が記載されています。
本資料には、訓令に規定されている具体例の概要を記載していますので、別途、警察庁訓令又は都道府県警察の対応要領に規定されている具体例を直接確認するようにしてください。
警察庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令(平成27年11月17日付け警察庁訓令第19号)
別紙 第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方 参照
警察庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令(平成27年11月17日付け警察庁訓令第19号)
別紙 第2 不当な差別的取扱いの具体例 参照
警察庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令(平成27年11月17日付け警察庁訓令第19号)
別紙 第3 合理的配慮の具体例 参照
○ 合理的配慮の基本的な考え方
「合理的配慮は、障害者が受ける制限は、障害のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものだとする、いわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものであり、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、障害者が個々の場面において必要としている社会的障壁を除去するための必要かつ合理的な取組であり、その実施に伴う負担が過重でないものである。」、「合理的配慮とは、警察庁の事務又は事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること、障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること、事務又は事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないことに留意する必要がある。」等とされています。
警察庁における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令(平成27年11月17日付け警察庁訓令第19号)
別紙 第3 合理的配慮の具体例 参照
A1.
この法律は、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげることを目的としています。
そのためには、日常生活や社会生活における障害者の活動を制限し、社会への参加を制約している社会的障壁を取り除くことが重要であることから、この法律は、障害者に対する不当な差別的取扱い及び合理的配慮の不提供を差別と規定し、行政機関等及び事業者に対し、差別の解消に向けた具体的取組みを求めるとともに、普及啓発活動等を通じて障害者も含めた国民一人ひとりが、それぞれの立場において自発的に取り組むことを促しています。
特に、法律に規定された合理的配慮の提供に当たる行為は、既に社会の様々な場面において日常的に実践されているものもあり、こうした取組を広く社会に示すことにより、国民一人ひとりの、障害に関する正しい知識の取得や理解が深まり、障害者との建設的対話による相互理解が促進され、取組の裾野が一層広がることが期待されています。
A2.
この法律の対象となる障害者は、第2条に規定された「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」です。これは、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。)のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえています。
したがって、対象となる障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限られません。なお、高次脳機能障害は精神障害に含まれます。
A3.
不当な差別的取扱いとは、例えば、障害を理由に、正当な理由なく、財・サービスや各種機会の提供を拒否したり、制限したり、条件を付けたりするような行為をいいます。
正当な理由となるのは、障害を理由として、財・サービスや各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが、客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。正当な理由に当たるか否かについては、様々な観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要です。
A4.
社会的障壁とは、障害のある方にとって、日常生活や社会生活を送る上で障壁となるようなものを指します。例えば、車椅子を利用する方にとっては3cm程度の小さな段差も障壁となります。このような事物に関する障壁だけでなく、利用しにくい制度や障害のある方の存在を意識していない文化、障害のある方への偏見等も含まれます。
A5.
この法律は、「不当な差別的取扱い」を禁止し、「合理的配慮の提供」を求めています。
不当な差別的取扱いについては、「国の行政機関・地方公共団体等」及び「民間事業者」がこれを行うことが禁止されています。
合理的配慮の提供については、「国の行政機関・地方公共団体等」には義務が課され、民間事業者には努力義務が課されています。
障害者と社会という対峙する関わりにばかり着目をせず「かけがえのない個人を尊重しあう」、このことをいかにそれぞれが実践できるのか、もっと対話を深め、違いのあるそれぞれを知る機会を増やしていくことが大切です。日常生活の中での一人ひとりの配慮や工夫が、障害のある人の社会参加を広げることに繋がります。職場の環境も同様で、互いにその人らしさを認め合いながら、障害のある人にも適切に財・サービスや各種機会を提供できる職場作りを心掛けることが大切です。