○ち密な捜査の推進強化要綱の制定について(通達)
平成2年9月29日
例規(刑総、捜一、捜二、鑑、機捜、防、少、生保、鉄警、公、備、交企、交指、交機、高速)第29号
みだしの要綱を別添のとおり制定し、平成2年10月1日から実施することとしたから、運用上誤りのないようにされたい。
記
1 制定の趣旨
近年の裁判実務の変化、弁護活動の活発化等により、公判廷において自白の信用性、任意性が争われる事案が多くなるとともに、事実認定のち密化傾向もみられるところである。
捜査運営に携わる者としては、警察の第一次かつ独立捜査機関としての責務を自覚し、重要事件のみならず日常的に発生し、各署において捜査する通常規模の事件を含めた全ての事件について、ち密かつ適正な捜査を組織的、実践的に推進しようとするものである。
2 運用上の留意事項
(1) 本部要指導事件の性格
本部要指導事件(以下「指導事件」という。)の捜査に対する指導は、その実態が捜査指揮ではなく、あくまで当該事件を捜査する警察署に対する指導であって、第一次的な捜査、捜査指揮の責任が警察署にあることを変更するものではない。したがって当該事件の捜査は、あくまで警察署が主体的に行い、事件主管課は、警察署の捜査の及んでいない点について補完的・補充的立場から指導を行うものとする。
(2) 指導事件の報告、指定(第3関係)
ア 署長は、指導事件の報告に当たっては、別表1に該当し、かつ、所要の捜査を尽くした上、総合的にみて将来公判対応を必要とする事件又はそのおそれがあると認める事件について報告するものとする。
イ 指導事件として指定する事件は、警察署において所要の捜査を尽くした上で、なお起訴された場合に公判において立証上の問題が生じるおそれがあると判断される事件について、本部長が指定するものとする。
(3) 捜査資料等の適正保管(第3関係)
指導事件が起訴された場合、公判において何が争点となるかを常に念頭に置き、これに基づいた適切な資料を作成、保管しなければならない。
(4) 公判対応係の迅速な対応(第4関係)
公判対応係は、指導事件が起訴された段階で、当該事件の問題点、指導状況、捜査結果等を確実に把握した上、早期に公判担当検察官等と連絡をとり、証人出廷する警察職員等との事前検討を行うなど、万全の対応を講ずるものとする。
(5) 無罪事件等の分析、検討(第5関係)
ア 別表3に掲げる「無罪判決が出された事件」とは、責任無能力者によるもの、正当防衛に該当するものを除く全ての事件をいい、少年事件における「非行なし」を理由とする不処分決定及び審判不開始決定を含むものとする。
イ 別表3に掲げる「不起訴処分がなされた事件」とは、被疑者を逮捕(常人逮捕を除く。)した事件及び起訴相当と認めて送致した事件のうち、「罪とならず」「嫌疑なし」「嫌疑不十分」として不起訴とされた事件とする。
ウ 別表3に掲げる「必ずしも十分な直接証拠がないにもかかわらず、有罪判決を得た事件」とは、次のような事件をいう。
(ア) 物証がなく被疑者も否認し又は供述の変遷が著しい事件において、情況証拠の積上げ等により有罪判決を得た事件
(イ) 共犯者の供述以外に有力な物証がなく、被告人も公判で否認しているにもかかわらず、有罪判決を得た事件
3 関係通達の廃止
「公判対応体制の確立について」(昭和62年8月1日付、例規(刑総、防、公、交企)第24号)は廃止する。
別添 略