○持続可能な交通安全施設等の整備の在り方に関する報告書の策定について(依命通達)

令和3年3月19日

達(交規)第93号

みだしのことについては、次のとおり策定したので、適切に対応されたい。

1 概要

現在、全国の都道府県警察において、自らの都道府県の将来を見据えた交通安全施設等の整備の在り方が検討されているところであるが、本県においても有識者を招き、検討会を開催したところである。

検討会では、今後、人口減少と少子高齢化の更なる進展が予想されており、厳しい財政状況の下、限られた予算の中で効果的かつ効率的な整備を推進するため、社会情勢や交通環境の変化を見据え、将来にわたって持続可能な交通安全施設等の整備の在り方等が検討され、様々な分野からの意見等を踏まえて、持続可能な交通安全施設等の整備の在り方に関する報告書(以下「報告書」という。)をまとめたものである。

2 交通安全施設等の適正な管理

今後、信号機を始めとする交通安全施設等の整備に当たっては、報告書にある本県の現状、課題及び整備の在り方を念頭に適切な整備を進めるなど、交通安全施設等の適正な管理に努めること。

3 報告書

別添のとおり

持続可能な交通安全施設等の整備の在り方に関する報告書

令和3年3月

福島県警察本部交通部交通規制課

【はじめに】

警察では、交通の安全と円滑を確保するため、信号機を始めとする交通安全施設等の整備を進めているが、福島県は、今後、人口減少や少子高齢化の更なる進展が予想されており、交通安全施設等についても人口減少や財政動向等に合わせた整備が求められている。

こうした中、厳しい財政状況の下、限られた予算の中で効果的かつ効率的な整備を推進するため、今後の社会情勢や交通環境の変化を見据え、将来にわたって持続可能な交通安全施設等の整備の在り方について検討を行った。

本報告書は、有識者等から幅広く意見を聴取し、検討を行った結果を取りまとめたものである。

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出席者

○ 福島大学共生システム理工学類教授 永幡幸司

○ 国土交通省福島河川国道事務所道路管理課保全対策官 斎藤幸一

○ 福島県土木部道路計画課長 小野寺豊

○ 福島県土木部道路整備課主幹兼副課長 高坂宏哉

○ 福島県教育庁義務教育課主任指導主事 佐藤敏宏

○ 福島県教育庁健康教育課指導主事 渡邊亮

○ 福島県生活環境部生活交通課長 川名義則

○ 福島県交通安全母の会連絡協議会 遠藤貴美子

第1章 福島県の交通を取り巻く現状

1 県内人口

福島県の総人口は、昭和から平成にかけて増加していたが、平成9年の約213万人をピークに減少傾向に転じ、令和元年12月末現在で約184万人となっている。

今後、更に減少していくことが予測されている。

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2 県内の車両保有台数の推移

福島県の人口は減少傾向にあるものの、車両保有台数は増加傾向にある。

福島県は、広い県土に7つの生活圏が形成され、多極分散型の県土構造となっており、それぞれの生活圏を結ぶ交通網が整備されている。その一方で、移動手段としての公共交通機関が不足していることなどから、自動車利用の依存度が高くなっている。今後も、車両保有台数は高水準で推移すると予測されている。

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3 県内の道路整備状況

福島県では、東日本大震災及び原発事故からの復旧・復興に向け、道路ネットワーク基盤強化を図ることとしており、避難指示区域等と周辺の都市等を結ぶ、ふくしま復興再生道路等の整備を進めている。

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4 県内の交通事故発生状況の推移

県内の交通事故の推移については、発生件数、死者数とも減少傾向にある。

令和2年の発生件数は3,266件、死者数は57人と前年より減少し、死者数は、現行の統計が始まった昭和28年以降最小で、初めて60人を下回った。

令和2年中の交通死亡事故では、

○高齢死者は全体の半数以上

○夜間事故は全体の半数以上

○交差点事故は全体の約4割

等の特徴が見られる。

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第2章 信号機の管理状況

1 信号機設置数(総数)の推移

県内の信号機設置数は、平成28年度までは増加傾向にあり、総数で4,000基を超えているが、平成29年度以降は、交通環境の変化等により必要性の低下した信号機の廃止を推進したことにより微減している。

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2 交通安全施設等整備予算額の推移

交通安全施設等整備事業に係る予算は、平成24年度までは年々減少していたが、平成25年度以降は東日本大震災に伴う復興関連予算の確保により増額し、ここ数年は横ばいで推移している。

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3 信号機新設数の推移

各年度毎に新たに設置した信号機の推移をグラフ化すると下記のとおりである。

平成2年度から平成11年度までは、年度内に100基以上の信号機を設置し、平成14年度には最大設置数となる130基を設置している。平成15年度以降は設置数が減少し、平成28年度以降は20基未満となっている。

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4 信号制御機製造年度別ストック数

令和2年3月末現在で県内に設置されている信号制御機を製造年度別にグラフ化すると下記のとおりである。信号制御機の耐用年数は19年であり、設置から19年を経過した信号制御機は1,275基と信号制御機全体の約3割となっている。

平成29年度以降は、老朽化対策として耐用年数が超過した制御機の解消に向けて、集中的に更新を推進したことにより、各年度のストック数が多くなっている。

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第3章 交通安全施設等整備の課題

1 信号機を始めとする交通安全施設等の整備

福島県内では、骨格となる道路網の整備や地域開発等が進められており、特に、復興に伴う道路の新設や改良工事等が行われている。これら道路整備等により、交通量や交通流が変化しており、こうした交通環境の変化に適切に対応し、交通の安全と円滑を図るためには、信号機を始めとする交通安全施設等を効果的に整備する必要がある。

また、道路整備等が進められる一方で、交通量の減少等により、信号機の効果や必要性が低下するなど、交通実態に適合しなくなった信号機も散見される。

2 交通安全施設等の老朽化

福島県では、平成元年頃から平成10年代にかけ年間100基以上の信号機を整備してきたが、この時期に整備した信号機が大量に更新時期を迎えている。特に、信号制御機については約3割が耐用年数を超過しているほか、信号柱や灯器についても設置から相当の期間が経過しているものが散見される。

また、道路標識や道路標示についても、褪色や腐食した標識、摩耗により消えかかっている横断歩道も散見される。

こうした現状を放置すれば、老朽化を起因とする故障や倒壊等が発生するおそれがあるため、計画的な更新や補修を推進する必要がある。

3 予算の減少

福島県では、今後、更なる人口の減少等による税収の減少など、財政不足が見込まれる状況の中、交通安全施設等整備事業の予算についても減少することが想定される。

第4章 持続可能な交通安全施設等の整備の在り方について

1 信号機を始めとする交通安全施設等の効果的な整備

福島県では、東日本大震災及び原発事故からの復興・再生を推進するために、道路整備を始め各種公共土木施設等の整備が進められており、これら復興関連事業に伴い、通行車両の増加による渋滞の発生等、県内の交通環境の変化が見られている。特に、ふくしま復興再生道路等の広域ネットワーク道路の整備により、信号機の整備が必要な交差点が見られる。

これら、道路交通環境の変化に適切に対応し、交通の安全と円滑を確保するためには、交通量の変化等を的確に把握し、必要性、緊急性の高い箇所を選定し、信号機を始めとする交通安全施設等を効果的に整備する必要がある。

2 交通安全施設等の点検調査による必要な見直しの推進

信号機は、交通の安全と円滑を図ることを目的としたものであり、適切に設置されれば、交差点又は横断歩道において交通流を時間的に分離し、交通流の交錯による交通事故の発生を防止するとともに、一定以上の交通量がある場合は交差点の処理能力を改善し、遅れ時間を減少させることができる。しかし、設置が適切でない場合及び必要性の低下した信号機を撤去しない場合には、逆に信号無視を誘発するほか、自動車等を不要に停止させ遅れ時間を増加させるなど、交通の安全と円滑に支障を及ぼすおそれがある。

このため、既に設置されている信号機については、信号機設置の指針に照らしつつ、その効果や必要性について点検調査を行い、設置が交通の安全と円滑の確保を阻害する信号機や、必要性が低下した信号機については、撤去又は移設を推進することが求められる。また、道路標識や横断歩道等道路標示についても、同様にその設置について交通の安全と円滑に寄与するか否かの観点から、同様の点検調査や見直しを不断に進める必要がある。

なお、信号機の撤去等を進めるためには、地域住民に対し効果が低下した理由や信号機に代わる安全対策について、客観的な根拠を示しながら提示するなど、丁寧な説明を行い撤去等の合意を得ることが必要である。

3 適正な維持管理と中長期的計画による更新の実施

交通安全施設等の機能を維持し、交通の安全と円滑を確保するためには、これまで述べたように交通安全施設等の重要性や効果を十分に認識し、必要な場合には、見直し等を実施するとともに、有効性や効果が確認された施設についても、施設の老朽化の現状を把握し、老朽化に対処するため必要な対策を推進する必要がある。具体的には、定期的な点検を継続して行い、信号柱等の腐食等危険要素、道路標識の褪色や横断歩道の摩耗等について早期発見に努め、これら点検で把握した箇所については、優先順位に基づき早急に修繕、更新、撤去等の必要な対策を講じるとともに、老朽化等により交通の安全と円滑の確保に支障を来すことがないよう計画的な維持管理、更新を進めることが重要である。

例えば、老朽化した信号制御機については、可能な限り早期に更新を行うことが求められる一方、更新時期について、中長期的観点から更新の平準化を図る必要もあるため、それぞれの交通安全施設等に応じた更新時期や更新数を検討し、計画的に業務を推進する必要がある。

4 信号機のみに頼らない安全対策の推進

(1) 交通安全教育の推進

歩行者が道路横断中に被害に遭う交通事故や、交差点における出会い頭等の交通事故の発生を防止する安全対策としては、信号機の整備も一つの選択肢となり得るが、運転者や歩行者の交通安全意識を向上させることにより交通事故を防止することも同様に可能である。

例えば、信号機の設置されていない横断歩道において、歩行者がいるにもかかわらず停止しない車が多く見られるが、言うまでもなく、運転者が横断歩道において歩行者を見つけた場合には横断歩道の手前で停止することが交通ルールにより定められている。

このように、信号機が設置されていない横断歩道においても、車両が横断歩道の手前で停止し、歩行者は左右の安全を確認して横断することにより、交通事故防止が図られることから、警察による交通指導取締りの強化や関係機関団体と連携した交通安全教育を推進し、交通ルールの遵守と正しい交通マナーの実践に係る意識の向上を図る必要がある。

(2) 関係機関と連携した各種対策の推進

交通事故を防止する安全対策として、一時停止などの交通規制を主体とした対策に加えて、道路管理者が行うカラー舗装、狭窄やハンプなどの対策も有効である。したがって、信号機の設置要望が既になされている場合はもとより、その設置が困難な場合や既設の信号機の撤去を行おうとする場合にも、信号機の代替手段としてこれら安全対策を検討するなど、関係機関と連携し現地の実情に応じた対策を進める必要がある。また、子供が犠牲となる交通事故の発生を受け、通学路における安全対策が求められていることから、通学路対策を進める際には、小中学校等教育機関が積極的に参画できるよう、対策の必要性、対策内容を丁寧に説明し、教育機関の意見を含め、交通安全施設等整備のハード対策と通学路の見直しや見守り等のソフト対策など、関係機関が緊密に連携し対策を推進する必要がある。

5 新たな財源の確保

交通安全施設等は交通の安全と円滑を図る上で極めて重要な役割を果たしており、これらを定期的に点検調査し計画的に整備を進めることが極めて重要である。

そのため、今後策定される予定の第11次福島県交通安全計画を踏まえながら、抑止目標の達成に向け、可能な限り財源を確保する必要がある。また、東日本大震災及び原発事故からの復興・再生を推進するため、復興に関連する事業に伴う交通安全施設等整備についても、復興関連予算の確保に努める必要がある。さらに、交通安全施設等の整備は、前述のとおり、交通の安全と円滑に極めて有用であるほか、防災、福祉、環境等にも大きく寄与することから、防災政策、福祉政策、環境政策、次世代技術政策等の関連する分野からの予算措置に向けて働き掛けを強化する必要がある。

持続可能な交通安全施設等の整備の在り方に関する報告書の策定について(依命通達)

令和3年3月19日 達(交規)第93号

(令和3年3月19日施行)

体系情報
交通部
沿革情報
令和3年3月19日 達(交規)第93号