○幹部職員に求められるマネジメント行動について(依命通達)

令和4年2月3日

達(務)第32号

[原議保存期間 5年(令和9年3月31日まで)]

[有効期間 令和9年3月31日まで]

みだしのことについては、別添のとおり、幹部職員に求められるマネジメント行動を整理したので、この内容を参照しつつ、幹部職員のマネジメント能力向上のための取組に努められたい。

1 趣旨

県警察では「福島県警察ワークライフバランス等推進のための行動計画」(令和3年7月20日付け達(務)第255号別添)のうち、マネジメントに関する取組等の働き方改革に必要不可欠な事項を「働き方改革等推進重点」と定め、優先的に取り組むこととしている。

幹部職員には、自所属・課係(以下単に「所属」という。)の課題や目標の提示、所属の規律保持に向けた行動のほか、所属の目標を踏まえて職務を具体的に部下職員に割り振り、その職務の達成までを支援・指導する「成果を上げる組織運営」を中核として、人材育成やワークライフバランス、人的・時間的制約等のコスト意識を踏まえた組織運営を行うことが求められるところ、これらマネジメント行動について具体的に示すことで、幹部職員のマネジメント能力向上のための取組の推進を図るものである。

2 幹部職員に求められる具体的なマネジメント行動

別添1のとおり

3 その他

(1) マネジメント行動の考え方

幹部職員としてのマネジメント行動は、「成果を挙げる組織運営」を中核として、「リーダーとしての行動」、「資源の有効活用」及び「組織の規律保持」に分類され、幹部職員がこれらの行動を一体的なものとして捉え、確実に取り組むことにより、業務を円滑に行うことが可能となるほか、日々の業務の中で人材育成が進み、ワークライフバランス及びコスト意識を踏まえた組織運営も可能になるものと考えられている。

このような整理は、政府が示す国家公務員向けのマネジメント行動に係る資料に掲載されており、本件は同資料を県警察向けに検討・再整理したものである。

(2) 資料の活用

上記記載の要点をまとめた資料及び「幹部職員に求められるマネジメント行動のポイント」を別添2及び別添3として添付するので、参照の上、活用を図られたい。

別添1

幹部職員に求められる具体的なマネジメント行動

【A リーダーとしての行動】

(1) 組織課題の適切な把握と目標や方向性等の提示

幹部職員は、社会情勢や県警察の重点目標等のほか、所掌する事務の状況、管内の治安情勢等を踏まえ、所属における課題を適切に把握し、自身の知見や経験を活かして所属の目標や方向性、達成すべき成果を具体的に部下職員に示すこと。

(2) 創造的な組織づくり

幹部職員は、治安情勢の変化や県民の要請に柔軟に対応するためには前例を踏襲するだけでは解決が難しい課題が増えていることを認識し、自ら基本を十分に踏まえつつ新たな視点からの対応を考えることはもとより、部下職員の士気を高め、部下職員も新たな視点で創意工夫しながら業務に取り組む職場の雰囲気づくりに努めること。

【B 成果を挙げる組織運営】

(3) 判断・調整・優先順位付け

ア 適時・適切な判断

警察業務は指揮命令に従って行われることから、幹部職員の意思決定は決定的に重要である。また、取り扱う業務も多種多様であるところ、県民の生命等の安全や権利に関わるなど緊急性及び重大性を有するものもあり、幹部職員の意思決定の遅れや合理性を欠く判断で、部下職員の業務に遅滞や滞留、不適切な取扱いを生じさせることがあってはならない。

幹部職員は特定の事案や業務に際し、思い付きで指示することなく、得られた情報の客観性、正確性、重要性、事案の緊急性等について評価した上で、取り得る対応の選択肢を想定し、利点と欠点の比較、選択肢の実現可能性、対応による影響等を考慮するなどしながら、適時・適切な判断を、迅速に、責任を持って行うこと。また、事案や業務の進展に応じ、部下職員の意見も踏まえるなどして、方針を柔軟に見直すこと。

イ 関係機関等との信頼関係の構築と折衝・調整等

捜査を的確に実施し、あるいは県民の行政ニーズに適切に対応するためには、検察庁や自治体はもとより、防犯や交通、防災等の関係機関・団体等と信頼関係を構築し、連携を強化することが必要である。よって、幹部職員は、自らこれら機関・団体等の幹部とのコミュニケーションを図り、所属の方針への理解と協力を求めるほか、相手機関・団体等の意見、要望の把握に努め、必要に応じ所属を代表して折衝・調整を行うなどして、その後の業務遂行の円滑化・効率化を図ること。また、事件・事故等の捜査や行事等の各種施策を推進するに当たり、隣接又は同一方部の署と必要な情報を共有するなど連携した対応に努めること。

ウ 業務間の優先順位付けと見直し

警察業務は、新たな治安事象への対応が常に発生する一方、担当している業務はどれも重要との意識から業務負担が過重になりやすい。幹部職員は、県警察や所属の方針、管内の実態等を踏まえた上で、各業務の緊急性、重要性、費用対効果等を考慮し、業務間の優先順位を明らかにして取り組むこと。また、優先順位が低いと判断した業務や前例踏襲のまま行われている行事については、廃止も含め抜本的な見直しを検討すること。

(4) 風通しの良い一体感のある職場づくり

組織一丸となって業務を推進するためには、部下職員と双方向のコミュニケーションが必要不可欠であるが、階級組織である警察では、部下職員から業務上必要不可欠ではない会話を幹部職員に持ち掛けるのは難しく、幹部職員が一方的に話をすることにもなりかねない。よって、幹部職員は、業務以外のことも含め、自ら積極的に話し掛けるとともに、部下職員から話を引き出すことを心掛け、聴く姿勢を示すなどして、風通しの良い一体感のある職場づくりに努めること。

(5) 組織力の発揮

ア 目標の共有と部下職員の理解の浸透

所属の目標や方針を実現するためには、部下職員の所属に対する貢献意識を向上させるとともに、所属から期待される役割を各自が認識し、目標等の実現を目指して協同することが必要である。そのため、幹部職員は、単に目標を掲げるのみではなく、部下職員への下命に際し、個別の業務が目標等の達成に向けて持つ意味を意識し、部下職員にも分かりやすく説明して理解させること。その上で、目標の達成に向け、部下職員が個々の役割に応じて期待される貢献や働きを自覚させること。

イ 部下の能力・適性等を踏まえた業務の分担

組織の目標を効率的に達成するためには、部下職員が持つ能力を最大限に発揮させることが重要である。幹部職員は、日々変化する業務について優先順位や業務量、難易度等を勘案し、部下職員の能力や業務負担等に応じた柔軟な業務の割当てを行うとともに、必要に応じて支援や指導を行うなど、サポートと育成にも配意すること。また、部下職員の希望部門等を踏まえた業務配分など、職員の士気を高め、能力を最大限に発揮させるよう努めること。

ウ 進捗の管理と成果の最大化

部下職員が業務を円滑に進め、成果を挙げるためには、業務に問題が生じていないか確認し、遅滞や滞留が発生している場合には、業務の遂行に向けた支援や指導等の対応をする必要がある。このため、幹部職員は、期限を意識した業務の遂行と報告・連絡・相談の徹底を指示し、業務の進捗を適時確認するとともに、進捗に応じて業務の遂行に向けた必要な対応を行うこと。

また、得られた成果については、分析や大局的な見地からの評価を加えるなどして功績を高めるほか、部内周知・報告(申報)、賞揚・表彰、対外的な発信等により成果としての認知を図るなどして、従事者の意欲の向上に努めること。

【C 資源の有効活用】

(6) 人材育成

ア 部下職員の実務能力の向上と適切な指導

幹部職員は、部下職員の知識や技能の習得意欲、希望部門等を把握し、機会を捉えて、それらを踏まえた業務経験の付与に努めるとともに、各種研修制度や実戦塾等に積極的に参加させるなど、部下職員の主体的な働き方を促して育成を図ること。また、自身の業務の取組全体の中での位置付けや業務の成果、成功・失敗の原因等を、報告書の作成等を通じて考える機会を与えるとともに、更なる成長のために適切な指導を行うこと。

イ 専科教養等の積極的な受講と各種検定取得に向けた必要な支援

幹部職員は、業務を通じた知識・経験の蓄積や人脈形成のほか、多様な経験につながる専科教養や合同捜査等に従事する機会を部下職員に積極的に与え、終了後は、関連業務に従事させるなどして、知識の定着化と自身の課題の明確化を図らせること。また、各種検定の受検に当たり、実質的な講習を実施するなど組織的な支援を行うこと。

(7) ワークライフバランスの推進等

ア ワークライフバランスの推進

部下職員がそれぞれの実情に応じた柔軟な働き方ができる勤務環境を整備する観点からは、各種休暇の取得及び超過勤務の縮減を可能にすることが必要である。このため、幹部職員は、業務の優先順位や業務の遂行に必要な目安時間・期限を考慮し、求める成果を可能な限り超過勤務に依存せず達成できるものとして設定し、その認識を部下職員と共有した上で、計画的な業務の遂行を指導するほか、超過勤務が過重となっている職員について原因を分析し、業務指導や業務分担の見直し、外的要因があればその解消などの改善を図ること。

また、幹部職員自らが率先して超過勤務を縮減し、休暇を取得するなどワークライフバランスを確保するとともに、これらを部下職員にも奨励し、部下職員自身がワークライフバランスを意識した業務管理を行うよう促すこと。

なお、警察業務の特殊性から、突発的な重大事案の対応等で超過勤務が長時間に及ぶこともあり得るところ、その場合には事案対応が終了した節目に連続休暇を取得させるなど、必要な代替措置を講じること。

イ 職員の支援

幹部職員は、性別や年齢、育児・介護等の事情や障害の有無にかかわらず、組織内の全職員が能力を最大限に発揮することができるよう、自分の言動が与える影響に注意しながら、適切な業務付与や各種支援制度の活用推進に努めること。

また、日頃から職員の業務等の情報を職場内で共有し、あるいは係単位で協同して業務を推進するなど、突然の欠員を想定した措置を講じておくこと。

(8) コスト意識を踏まえた業務の推進

ア 治安情勢等の変化を予測した対応

幹部職員は、経済情勢の変化、全国あるいは隣県の治安情勢等から近い将来に本県で生じ得る治安上の課題を予測し、人的・物的資源が限られていることを前提とした対応を想定するとともに、個別の事案においても、事件・事故や災害の予兆を見逃さず、情報の分析等を基に先制かつ機動的な予防活動を行うなど、事案の発生リスクや発生時の負担を軽減する活動に留意すること。

イ コスト意識を持った実効性のある警察活動の推進

コスト意識が希薄であると超過勤務に依存する状況が常態化し、部下職員の疲弊や士気の低下が懸念される。幹部職員は、人的・時間的資源に制約があることを強く意識し、費用対効果を十分に考慮した上で、個々の業務に投入する人的・時間的資源や、求める成果の程度を部下職員と共有の上、より実効性のある警察活動を推進すること。

また、特に各種報告や執務資料の作成等において、情報の正確性、信頼性等に影響を与えない、体裁等を殊更に重視した過度な修正指示や繰り返しの修正指示は、従事する職員の疲弊感を強めることから、指示の内容及び回数に留意して、事務の負担軽減に努めること。

【D 組織の規律保持】

(9) 高い指揮能力と厳正な規律を有する組織の確立

幹部職員は、公平・公正であることや、組織の課題に責任を持って取り組む姿勢を保持し、自己研鑽に努めるなど、日々の業務遂行や服務規律の実践において、部下職員の模範となること。また、あらゆる機会を通じて部下職員に対して職務倫理教養を実施し、厳正な規律を有する組織を確立すること。

別添2

◎ 幹部職員に求められるマネジメント行動(要約版)

(1) 組織課題の適切な把握と目標や方向性等の提示

社会情勢、県警察の重点目標及び管内の治安情勢等を踏まえ、所属における課題を把握し、自身の知見や経験を活かして、所属の目標や達成すべき成果を具体的に部下職員に示すこと。

(2) 創造的な組織づくり

前例踏襲にこだわることなく、自ら基本を踏まえた新たな視点からの対応を考えるとともに、部下職員も創意工夫しながら業務に取り組む職場の雰囲気づくりに努めること。

(3) 判断・調整・優先順位付け

ア 適時・適切な判断

特定の事案や業務に際し、思い付きで指示することなく、情報の重要性や事案の緊急性等を評価の上、取り得る対応の選択肢を想定して適時・適切な判断を行うともに、事案等の進展に応じ、方針を柔軟に見直すこと。

イ 関係機関等との信頼関係の構築と折衝・調整等

検察庁や自治体、防犯・防災等の関係機関等と信頼関係を構築し、意見・要望の把握に努め、必要に応じて折衝等を行うなどして業務の円滑化を図ること。

ウ 業務間の優先順位付けと見直し

県警察等の方針や管内の実態等を踏まえ、緊急性等を考慮して業務の優先順位を明らかにして取り組むとともに、優先順が低いと判断した業務や前例踏襲のまま行われている行事について、廃止や抜本的な見直しを検討すること。

(4) 風通しの良い一体感のある職場づくり

業務以外のことも含め、自ら積極的に話し掛けるとともに、部下職員から話を引き出すことを心掛け、聴く姿勢を示すなどして風通しの良い一体感のある職場づくりに努めること。

(5) 組織力の発揮

ア 目標の共有と部下職員の理解の浸透

個別の業務が目標達成のために必要であることを部下職員に分かりやすく説明して理解させ、期待する貢献や働きを自覚させること。

イ 部下の能力・適性等を踏まえた業務の分担

日々変化する業務負担につき、能力等に応じた柔軟な業務の割当てを行うとともに、必要に応じて支援や指導を行うこと。

ウ 進捗の管理と成果の最大化

業務の進捗を適宜確認し、業務が遅滞や滞留している場合は、必要な支援、指導等の対応をするとともに、得られた成果は大局的な評価等を加えて功績を高め、表彰等によって従事者の意欲の向上に努めること。

(6) 人材育成

ア 部下職員の実務能力の向上と適切な指導

習得意欲や希望部門も踏まえた業務の付与に努め、実戦塾等に積極的に参加させるなどして育成を図るとともに、自身の業務が成果にどのように関与したのかなどを報告書の作成等を通じて考えさせ、成長のために指導を行うこと。

イ 専科教養等の積極的な受講と各種検定取得への必要な支援

専科教養や合同捜査等に従事する機会を与え、終了後は関連業務に従事させるなどして知識の定着化と課題の明確化を図るほか、各種検定の取得に向けて支援を行うこと。

(7) ワークライフバランスの推進等

ア ワークライフバランスの推進

柔軟な働き方ができるよう、求める成果を超過勤務に依存せずに達成できるものとして設定し、その認識を部下職員と共有した上で計画的な業務の遂行を指導するほか、超過勤務が過重となっている職員については、業務分担の見直し、外的要因の解消などの改善を図ること。

イ 職員の支援

年齢・性別や家庭の事情、障害の有無にかかわらず、組織内の全ての職員が能力を最大限に発揮することができるよう、自分の言動が与える影響に注意しながら、適切な業務付与や各種支援制度の活用促進を図ること。

(8) コスト意識を踏まえた業務の推進

ア 治安情勢等の変化を予測した対応

経済情勢や全国の治安情勢等から、近い将来に本県で生じ得る治安上の課題を予測し、人的・物的資源が限られていることを前提とした対応を想定するとともに、個別の事案においても、事件・事故や災害の予兆を見逃さず、機動的な予防活動を行うこと。

イ コスト意識を持った実行性のある警察活動の推進

人的・時間的資源に制約があることを強く意識し、費用対効果を考慮の上、個々の業務に投入する資源や求める成果の程度を部下職員と共有し、より実効性のある警察活動を推進すること。

(9) 高い指揮能力と厳正な規律を有する組織の確立

組織の課題に責任を持って取り組む姿勢を保持し、自己研鑽に努めるなど、日々の業務遂行や服務規律の実践において模範となるとともに、部下職員への職務倫理教養を徹底すること。

別添3

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幹部職員に求められるマネジメント行動について(依命通達)

令和4年2月3日 達(務)第32号

(令和4年2月3日施行)

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令和4年2月3日 達(務)第32号