○被疑者の公開捜査について(通達)

令和4年3月18日

達(刑総、少対)第155号

[原議保存期間 5年(令和9年3月31日まで)]

[有効期間 令和9年3月31日まで]

みだしのことについて、次のとおり定め、令和4年4月1日から施行することとしたので、適切に運用されたい。

なお、「被疑者の公開捜査について(通達)(令和3年3月1日付け達(刑総、少)第52号。以下「旧通達」という。)は、廃止する。

1 趣旨

被疑者の公開捜査については、旧通達に基づき運用してきたところであるが、少年法等の一部を改正する法律(令和3年法律第47号)の施行に伴い、新たに本通達を発出し、引き続き適正な運用を図るものである。

2 公開捜査の意義

この通達において被疑者の公開捜査とは、被疑者の発見、検挙及び犯罪の再発防止を目的として、被疑者の氏名、画像、映像等の捜査資料を不特定多数の者に公表することにより、積極的に国民の協力を求める捜査手法をいう。

したがって、例えば、報道機関等を通じて広く一般に公表するような場合は、被疑者の氏名のみでも公開捜査に含むが、被疑者が立ち回ることが予測される箇所(以下「立回り先」という。)に限定して資料を配布し、捜査への協力を依頼するような場合は、公開捜査に含まない。

3 公開捜査の要件

公開捜査は、次に掲げる3つの要件全てに該当する場合において、犯罪反復のおそれ、捜査上の必要性、被疑者や関係者の名誉、信用、プライバシー等への影響等の諸要素を総合的に勘案して行うものとする。

(1) 次のいずれかに該当する事件であること。

ア 凶悪犯(殺人、強盗、放火及び不同意性交等)に係る事件

イ 財産犯のうち、犯行の手段、方法が悪質で被害額も相当多額にわたり、又はわたることが見込まれる事件

ウ 反社会性の強い集団の構成員と認められる者等により敢行された事件

エ その他社会的反響が大きいと認められる事件

(2) 公開する人物が被疑者であると認められる十分な根拠があること。

公開捜査の対象事件は、前記(1)の事件について、指名手配が行われているものとする。

ただし、人定が明らかでないなどの理由により指名手配が行われていないときであっても、犯罪反復のおそれが極めて高いなど、公開捜査の必要性が特に高い場合は、各種証拠、資料に基づき、公開する人物が前記(1)の事件の被疑者であると認められる十分な根拠があることを確認した上で、公開捜査を行うことができるものとする。

(3) 20歳以上の被疑者であること。

公開捜査の対象事件は、少年法第22条第2項、同法第61条及び犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)第209条の趣旨に鑑み、20歳以上の被疑者に係る事件でなければならない。

ただし、被疑者が20歳未満の者(以下「少年」という。)の場合であっても、例えば、凶悪犯に係る事件の被疑者であって、その手段、方法が特に悪質で犯罪反復のおそれが高く、社会的に大きな不安を与えており、当該被疑者を早急に発見、検挙するために他にとるべき手段がないといったときは、少年自身の保護と社会的利益の均衡等の諸要素を総合的かつ慎重に勘案した上で、例外的に公開捜査を行うことができるものとする。

また、人定が明らかでなく、被疑者が少年である可能性が認められる場合は、当該被疑者が少年である可能性の程度や公開捜査に代替する手段等を見極めた上で、公開捜査の可否やその方法等を判断すること。

4 公開捜査の時期、方法等

(1) 公開捜査を行うに当たっては、対象事件を主管する県本部の課長(以下「事件主管課長」という。)は、必要に応じて警察庁の事件主管課長と協議した上で、個別具体的な事案に応じて、実施時期、活用する資料、広報媒体、公開する内容等を検討し、公開捜査が効果的かつ適切なものとなるようにすること。

特に、被害者を始め、被害者や被疑者の家族等の関係者、被疑者本人の名誉等を尊重し、社会的に相当かつ妥当な方法で行うこと。

また、ウェブサイト、ソーシャル・ネットワーキング・サービス等を活用するときは、公開した被疑者の写真等を第三者が複製することにより、インターネット上に残存するおそれがあることなどに配意すること。

(2) 公開捜査は、既に被疑者の人定が判明している場合は、正確な資料により確認した被疑者の氏名、年齢、身体特徴、職業、出身地等、被疑者の人定が判明していない場合は、捜査により判明した被疑者の推定年齢、身体特徴、着衣、所持品等、公開捜査を効果的かつ適切に行うために必要な事項を公開して行うものとする。

ただし、被疑者の素行、経歴、精神的障害及び家族関係に関する事項並びに被疑者以外の者に関する事項は公開してはならない。

また、犯罪事実の概要を公開する場合には、捜査上の支障に加え、被害者等の関係者の名誉等に十分配意すること。

(3) 個別具体的な事案に応じて効果的かつ適切と認められるときは、写真、防犯カメラ等の画像や映像(以下「写真等」という。)、似顔絵、音声記録等を活用すること。

写真等の公開に当たっては、それが被疑者の写真等であることを十分に確認すること。

被疑者が少年である場合又はその可能性が認められる場合の公開捜査に当たっては、例えば、似顔絵等の被疑者の名誉等を侵害する程度が低い資料の公開を先行させ、それでも効果が得られない場合に写真等を公開するなど、活用する資料、広報媒体等について慎重に検討すること。

5 公開捜査の管理

(1) 刑事総務課長による審査等

ア 事件主管課長は、公開捜査を行う場合、刑事総務課長に対し審査を依頼すること。

イ 刑事総務課長は、事件主管課長からの依頼に基づき、公開捜査の対象、必要性、時期、方法等について公開捜査審査表(様式第1号)により、厳正に審査すること。

また、刑事総務課長は、少年被疑者の公開捜査に当たっては、事前に警察庁生活安全局少年課長及び刑事局刑事企画課長と協議すること。

ただし、犯罪反復のおそれが極めて高い場合で、急速を要し、協議するいとまがないときは、事後速やかに報告すること。

(2) 公開捜査の状況の把握等

ア 事件主管課長は、実施した公開捜査の状況を公開捜査実施状況(様式第2号)により、刑事総務課長に報告すること。

イ 刑事総務課長は、公開捜査の状況を把握、管理し、公開捜査に関する通報や問合せへの対応、公開捜査の解除に伴う措置等が迅速かつ的確に行われるよう、事件主管課長と連携して周知徹底を図ること。

6 その他

(1) 被疑者検挙後等における留意事項

被疑者を検挙するなど、公開捜査の必要がなくなった場合は、速やかに公開した被疑者に係るポスター、写真等の撤去やウェブサイト等からの削除を行うとともに、報道機関への告知を確実に行うなど、必要な解除措置を行うこと。

また、公開捜査を行った被疑者が少年であった場合の検挙に係る報道発表については、少年法第61条、犯罪捜査規範第209条等の趣旨を踏まえて行うこと。

(2) 立回り先に対する協力依頼

立回り先に対して行う捜査への協力依頼に当たっては、関係者の名誉等を尊重し、当該事件の捜査状況、罪種、被疑者の行動実態等を総合的に検討の上、立ち回る蓋然性が高い箇所に限定すること。

また、立回り先に資料を配布する場合は、立回り先関係者以外の者の目に触れないよう配慮させるなど、取扱いに関する必要な指導を行うこと。

なお、配布先が全国又は数都道府県に及ぶなど極めて多数にわたる場合には、公開捜査に準じて運用すること。

様式第1号

 略

様式第2号

 略

被疑者の公開捜査について(通達)

令和4年3月18日 達(刑総、少対)第155号

(令和5年7月13日施行)

体系情報
刑事部
沿革情報
令和4年3月18日 達(刑総、少対)第155号
令和5年7月13日 達(刑総)第291号