○外国人等との共生社会の実現へ向けた取組について(通達)

令和4年6月6日

達(務)第299号

[原議保存期間 5年(令和10年3月31日まで)]

[有効期間 令和10年3月31日まで]

みだしのことについて、次のとおり定め、令和4年6月6日から施行することとしたので、適切に対応されたい。

なお、訪日外国人等の急増への対応について(平成29年11月28日付け達(務)第347号)及び訪日外国人等の急増への対応に向けた各種施策の推進について(平成29年11月28日付け達(務、生企、地企、組対、交企、外)第348号)は、廃止する。

1 趣旨

近年、訪日外国人数は増加傾向にあり、令和元年に約3,188万人と過去最高を記録し、その後、新型コロナウイルス感染症拡大防止のための水際対策により、大きく減少したものの、同感染症が収束した後には、再び増加することが見込まれる。また、我が国に中長期的に滞在する在留外国人数は、令和2年末には約289万人となっており、中でも我が国で就労する外国人は、令和3年10月時点で約173万人と過去最高を記録するなど、新型コロナウイルス感染症の世界的流行下にあっても、我が国に滞在する外国人の更なる増加が今後も見込まれる。

このような情勢を踏まえ、政府としては、感染症収束後を見据えた訪日外国人旅行者の受入環境整備に係る取組や、外国人材の受入れ・共生のための取組を推進していく方針であるところ、県警察としても、これら訪日・在留外国人を含む、日本語を母語としない外国人等が「世界一安全な国、日本」を目指す我が国の良好な治安を体感できるような環境を整備する取組をより一層推進する必要が生じている。そこで、外国人等とのコミュニケーションの円滑化、我が国警察に係る制度、手続等の分かりやすさの確保及び警察活動に係る基盤の整備に関する施策を下記2から4までのとおり取りまとめ、本施策の推進に係る担当部署を中心に各部門間の連携を図りつつ、実効ある対策を推進することとしたものである。

2 外国人等とのコミュニケーションの円滑化

外国人等からの急訴、各種届出等にも対応できるよう、事案に応じ、日本語を母語としない者にも分かりやすい「やさしい日本語」(外国人等にも分かるように配慮した簡単な日本語)を使用することを含めた、多言語での対応を図る。特に、コミュニケーション支援のための資料・資機材の一層の整備・活用のほか、これらを使用した訓練・教養の実施等により、事案への迅速な対処に努める。

なお、外国人等とのコミュニケーションに際しては、職員一人一人が外国人等の人権を尊重し、この観点から疑念を抱かれるような対応を行うことがないよう、日頃から各種訓練・教養を徹底する。

(1) コミュニケーション支援のための資料・資機材の活用(地域企画課、総合運用指令課及び組織犯罪対策課)

外国人等からの急訴や各種届出等の対応のため、イラストを用いた資料や基本会話集等を活用するほか、多言語翻訳機能を搭載した高度警察情報通信基盤システムのデータ端末(以下「PⅢ端末」という。)をはじめとしたICT(情報通信技術)機器等を整備し、これらを積極的に活用するよう努める。

(2) 多言語コールセンターの活用(組織犯罪対策課)

県警察における通訳体制を補完する仕組みとして、多言語コールセンターを活用することを検討する。

(3) 110番通報受理時における三者通話対応の強化(総合運用指令課及び組織犯罪対策課)

外国人等からの110番通報受理時における三者通話システムの利用に当たっては、県警察部内及び部外の通訳人に加え、上記(2)の多言語コールセンターを活用するなど、通報受理体制のより一層の強化を図る。

(4) 通訳機能及び相互連携の強化(組織犯罪対策課)

ア 昼夜を問わず迅速かつ適切に通訳人の選任・手配等の運用を行うことができる体制を整備する。また、事案を担当する部署と、部内通訳人が配置されている部署との連携を促進し、通訳人の運用が円滑に行われるよう努める。

イ 他の都道府県警察との間において、管轄区域を超えた通訳人運用に係る相互連携が円滑に行われるよう、連絡方法等をあらかじめ取り決めておくなど、実効ある協力体制を構築する。

(5) 外国語対応可能職員の配置(警務課)

有名な観光地や繁華街・歓楽街その他の外国人等コミュニティ等を管轄するなどにより外国人等対応の機会が多い署、交番等において、外国人等からの急訴、各種届出等に対応できるよう、外国語による対応が可能な職員を配置するなど体制の整備に努める。

(6) 現場対応等に係る訓練の実施(教養課、地域企画課、総合運用指令課、組織犯罪対策課、警備課及び機動隊)

外国人等に係る事案への対応力を高めるため、コミュニケーション支援資料やPⅢ端末をはじめとしたICT機器等の資機材や、三者通話システムを使用した通訳を活用するなどして、外国人等に係る現場対応を想定した訓練を実施する。

3 制度・手続等の分かりやすさの確保

外国人等が各種手続等を円滑に行い、また、防犯・防災情報をはじめとした必要な情報を容易に入手できるよう、事案に応じ、「やさしい日本語」の使用を含む多言語(以下「多言語」には「やさしい日本語」の使用を含むものする。)対応を図り、効果的な情報伝達に努める。

(1) 各種手続に係る多言語対応(会計課、生活安全企画課、交通規制課及び運転免許課)

各種届出関係書類及び外国人対応マニュアルを多言語化するなど、一層の整備を図る。

(2) 運転免許学科試験に係る多言語対応等(運転免許課)

運転免許に係る各種試験や講習等において、更なる多言語化を含む一層の整備を図る。また、外国免許切替え時の確認の簡素化に関し、外国等の要望を踏まえつつ、その対応について検討する。

(3) 刑事手続等の理解に資する情報の提供(県民サービス課、留置管理課、刑事総務課及び交通指導課)

ア 刑事訴訟手続、公的弁護制度、交通反則通告制度等に関する教示を円滑に行うため、外国語版の説明資料の多言語化を含む一層の整備及び活用を図る。

イ 外国語版「被害者の手引」について、必要に応じて、その内容の充実・見直しを図りつつ、確実な提供に努める。

(4) 防犯・防災、警察制度・活動等に係る情報の提供(総務課、生活安全企画課、地域企画課、交通規制課及び災害対策課)

ア 防犯・防災等に資する情報の多言語による提供を推進する。その際には、外国人等が我が国で生活するため必要な基礎的情報(防犯・交通安全を含む。)を掲載した「生活・就労ガイドブック」等の活用にも留意する。また、大規模災害の発生時等においては、状況に応じて、多言語による避難広報の実施に努める。

なお、この場合、外国人等の迅速な避難に資するよう、「やさしい日本語」を使用した避難広報を積極的に検討する。

イ 大規模雑踏警備の現場においては、状況に応じて、外国語表示可能な電子表示板の活用等により、事故防止、交通規制等に関する情報発信の多言語化に努める。

ウ 外国人等が我が国の警察制度・活動を正しく理解できるよう、県警察ホームページへの多言語による情報掲載を推進する。

エ これら情報へのアクセシビリティの向上に向け、NPO等他機関との連携を視野に入れつつ、SNS等を含む多様なメディアを通じた効果的な情報発信を行うことを検討する。

(5) 県警察の施設、車両、被服、道路標識等への多言語表示(施設装備課、地域企画課及び交通規制課)

署等の案内表示や車両、被服等への多言語による表示・併記を進める。また、必要に応じて、外国人運転者にも分かりやすい道路標識に更新するなど、外国人等に配意した交通環境の整備を推進する。

4 基盤の整備

通訳人材等の確保及び能力向上のほか、文化・宗教及び外国人等に係る各種制度等に係る理解の促進、関係機関・団体との連携強化等に努めること等を通じて、国内における外国人等に対応するための基盤整備を継続的に図る。

(1) 通訳人材等の確保及び能力向上(警務課、教養課、組織犯罪対策課及び外事課)

ア 県警察において、言語別の通訳需要等を的確に把握の上、通訳需要等の高い言語の通訳体制整備等を進める。具体的には、適任者を選考して国際警察センターに入所させるよう努めるほか、部外通訳人の登録の拡大等による通訳人の確保に努める。また、部内通訳人等として指定した職員に対しては、その計画的な育成及び功績に応じた処遇を図る。

イ 通訳人等の語学能力を的確に把握した上で、県警察の実情に応じて、再研修や民間委託語学研修の実施等、その能力の維持向上のための教養の充実に努める。

(2) 世界各国・地域の文化・宗教、外国人等に係る各種制度等に係る理解の促進(警務課、教養課、留置管理課、組織犯罪対策課及び警察学校)

様々な文化圏から我が国に訪れ、滞在する外国人等との円滑な意思の疎通に資するため、各種教養の機会を通じて、世界各国・地域の文化・宗教のほか、政府が推進する在留外国人支援の取組や各種条約等に基づく外交特権等の基本知識等に係る職員の理解を促進し、これら外国人等に係る各種事案に対して職員が適切に対応できるよう、各種指導を徹底する。教養の実施に当たっては、ICT機器の活用による効率的な伝達に配意するとともに、大学等他機関と連携しつつ、多言語による外国人等対応に係る教養を盛り込むなど、効果的な実施方法を検討する。また、世界各国・地域の制度・文化等に触れる機会を平素から提供し得る関係機関・団体との連携にも配意する。

(3) 関係機関・団体や外国人等コミュニティとの連携強化(警務課、生活安全企画課、生活環境課、地域企画課、組織犯罪対策課、交通企画課及び外事課)

ア 外国人等に係る事案に関わる行政機関をはじめ日本語学校や専門学校等外国人等が多く在籍する教育機関、国際交流協会を含むNPO、各地の観光案内所等と相互の連絡経路を確認しておくなど、平素からの協力体制を構築することにより、外国人等の要望等を的確に把握するとともに、外国人等からの相談等のうち他の機関等が対応することがふさわしいものについて、当該機関等に迅速かつ正確に引き継ぐよう努める。

イ 外国人等が集まる各種イベントへの参加、外国人等との合同パトロールの実施等により、外国人等の居住が多い地域における外国人等コミュニティとの連携を強化し、その要望等を把握するなどして、当該コミュニティの人々が、言語や生活習慣の相違等から生ずる犯罪やトラブルに巻き込まれる事案の未然防止等に努める。

外国人等との共生社会の実現へ向けた取組について(通達)

令和4年6月6日 達(務)第299号

(令和4年6月6日施行)

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令和4年6月6日 達(務)第299号