○少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動実施要領の制定について(依命通達)

令和4年6月24日

達(少対)第330号

[原議保存期間 5年(令和10年3月31日まで)]

[有効期間 令和10年3月31日まで]

みだし要領を別紙のとおり制定し、令和4年7月1日から施行することとしたので、効果的な活動の推進に努められたい。

なお、少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動実施要領の制定について(令和2年6月17日付け達(少)第249号)は、廃止する。

別紙

少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動実施要領

第1 少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動の意義

この要領において、少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動(以下「手を差し伸べる支援活動」という。)とは、第2の2(1)で示す連絡対象少年又はその保護者に警察から積極的に連絡を取り、保護者から支援の同意(対象となる少年が特定少年(少年警察活動規則(平成14年国家公安委員会規則第20号)第2条第2号に規定する特定少年をいう。以下同じ。)の場合は、本人からの同意)が得られた少年に対して、その立ち直りを支援する活動を行うことをいう。

なお、手を差し伸べる支援活動は、少年警察活動規則(平成14年国家公安委員会規則第20号)第8条第2項の継続補導と位置付けられるものである。

第2 手を差し伸べる支援活動の実施要領

1 手を差し伸べる支援活動に係る報告

別に定める様式により行うこと。

2 連絡の対象となる少年の報告等

(1) 連絡の対象となる少年の報告

署長は、管轄区域内に居住し、過去に非行少年として取扱いのあった少年について、少年カードの内容や少年事件の処分結果等を活用し、

○ 少年の非行歴・補導歴

○ 保護者の監護能力その他の家庭環境

○ 修学・就労状況、交友関係その他の周囲の環境

○ 警察が把握している少年の近況

等を総合的に勘案した上で、周囲の環境や自身に問題を抱え再び非行に及ぶおそれがある少年又は特に支援が必要と認める少年(少年審判手続中又は保護処分中の少年を除く。以下「連絡対象少年」という。)を連絡対象として少年女性安全対策課長に随時報告すること。

連絡対象少年の報告に当たっては、随時、少年事件選別主任者の意見を聴くものとし、特に、不良交友関係が非行の要因と認められる少年、短期間に非行等を繰り返している少年、保護者の監護がほとんど期待できない少年等、非行に走る可能性がより高いと認められる少年については、確実に報告すること。

(2) 連絡対象少年の選定等

ア 連絡対象少年の選定

少年女性安全対策課長は、県内における少年非行の状況、再非行者数、少年サポートセンターの体制等を踏まえた上で、署長から報告を受けた少年の中から、立ち直りを支援する必要性が認められる少年を連絡対象少年に選定するものとする。

なお、連絡対象少年には、家庭裁判所の終局決定(以下「決定」という。)後の少年が含まれるところ、家庭裁判所においては、決定を行う際にそれまでの間の一切の事情を考慮していることから、決定後の少年を連絡対象少年として選定する場合は、決定後の新たな事情、例えば、審判不開始決定後、深夜はいかい等で繰り返し補導されるようになった場合や、不処分決定後、保護者の指導に従わず非行集団との交友が再開された場合等の事情を勘案すること。

イ 他機関における対応が適当と認められる少年への対応

少年女性安全対策課長は、連絡対象少年の選定段階において、少年の素行・家庭環境等から、臨床心理士等の専門家の知見を踏まえ、他機関における対応が適当と認められるときは、適宜、関係機関への通告・送致等の所要の措置をとるよう各署を指導・支援するものとする。

なお、適切な措置を講じるためには少年の家庭環境を把握しておくことが必要不可欠であることから、署においては、保護者等と密接な連絡を取るなどにより、連絡対象少年の問題状況の把握に努めること。

(3) 連絡の実施

ア 少年に連絡を行う職員

少年女性安全対策課長は、少年サポートセンターに配置された少年警察補導員等の中から生活安全部長の指定する立ち直り支援業務に従事できる者の名前を記載した名簿(以下「支援名簿」という。)を作成し、支援名簿から適任者に連絡を行わせるものとする。ただし、当該連絡を実施する前に、捜査・調査等を通じて少年や保護者との信頼関係がある職員が事前に当該連絡がある旨の通知を行うことを妨げるものではない。

イ 連絡の実施及び同意の獲得

連絡対象少年に連絡を行う職員(以下「連絡担当職員」という。)は、原則として、少年の保護者、少年本人の順で、電話、訪問、手紙等の方法で連絡を取り、当該少年の近況を確認すること。

その結果、少年が周囲の環境や自身に問題を抱え、再び非行に及ぶおそれがある状態にあり、立ち直りのための支援活動(以下「支援活動」という。)を行う必要があると認めた場合には、保護者及び少年に対し、本活動の趣旨、必要性等を説明した上で、保護者の理解と同意を得るよう努めること。

ただし、当該少年が特定少年の場合は、本人の同意を得るものとする。また、この場合に、当該特定少年の非行の防止を図る観点から、その両親等に併せて連絡することは差し支えない。

ウ 連絡対象外と判明した少年への対応

連絡担当職員が少年の近況を確認した結果、再び非行に及ぶおそれが低く、支援活動を行う必要がないと認められる場合であっても、保護者から支援の求めがあるときは、必要に応じて継続補導の対象とすること。

また、少年が保護観察中又は児童福祉施設入所中であることが判明した場合であっても、保護者から支援の求めがあるときは、保護観察所又は児童福祉施設の長に対し、本活動の趣旨及び保護者が支援を求めていることを連絡し、協力要請があった場合に限り支援活動を行うものとする。

なお、当該連絡の結果については、確実に保護者に連絡すること。

3 支援対象となる少年への対応等

(1) 少年の支援を担当する職員

少年女性安全対策課長は、前記第2の2(3)イにより支援に係る同意があった少年(以下「支援対象少年」という。)に対する支援活動を中心となって行う職員(以下「支援担当職員」という。)には、支援名簿から適任者を充てるものとする。

また、少年女性安全対策課長は、支援担当職員の指定に当たり、対象少年の性別、年齢、性格等や職員の業務経験等を考慮の上、最もふさわしい者を指定するとともに、必要に応じて他の職員を支援担当職員の補助者として指定するなど、支援活動について管理を徹底すること。

特に、女児の支援を行うに当たっては、必ず、女性職員を支援担当職員に充てるよう留意すること。

なお、男性職員を女児の支援担当職員の補助者に指定する場合には、必要性を十分に審査し、生活安全部長までの了解を得た上で指定すること。

(2) 支援活動の記録

支援活動の開始及び経過の記録について、支援担当職員の所属長(少年女性安全対策課長を除く。以下「所属長」という。)は、少年女性安全対策課長に随時報告の上、必要な指示等を受けること。

(3) 目標の設定

支援担当職員は、支援対象少年が抱える問題を一定程度把握した段階において、支援対象少年及び保護者と相談の上、真に立ち直りに資する目標を設定し、第2の1の別に定める様式に記録すること。また、おおむね半年ごとに達成状況及び当該少年の改善状況を踏まえ、必要に応じ修正、変更、追加等を行うこと。

(4) 支援活動の実施

ア 継続的な連絡

支援担当職員は、支援対象少年及び保護者と継続的に連絡を取り、相互の信頼関係を構築し、求めに応じて指導・助言を行うものとし、月数回の実施に努めること。

なお、支援対象少年への連絡に当たっては、必ず保護者へも連絡すること。

ただし、当該少年が特定少年の場合は、本人に連絡するものとする。また、この場合に、当該特定少年の非行の防止を図る観点から、その両親等に併せて連絡することは差し支えない。

支援対象少年及び保護者への連絡に当たっては、あらかじめ連絡手段(電話、メール、手紙等)、連絡時間等のルールを定めておくほか、面接を行う場合には、当該少年が面接しやすい時間及び場所を選定するよう配意すること。

イ 少年が参加しやすい環境の醸成

社会奉仕体験活動、生産体験活動、スポーツ活動等(以下「社会奉仕体験活動等」という。)への参加は、少年を取り巻くきずなを強化する手段として効果が認められることから、必要により個々の少年の状況に応じた社会奉仕体験活動等の実施に努めるものとし、実施に当たっては少年の保護者、友人等にも参加を求めるなど、少年が参加しやすい環境の醸成に努めること。

(5) 支援活動の終了

次の場合は、支援活動を終了するものとする。

ア 支援活動を継続する必要がないと認められる場合

少年女性安全対策課長は、所属長から報告のあった少年について、前記(3)で設定した目標の達成状況、修学・就労の状況、家庭、学校、交友その他の環境改善の状況等を総合的に勘案し、支援活動を更に継続する必要がないと認められる場合には、支援活動を終了するものとし、支援担当職員から支援対象少年及び保護者にその旨を説明させること。

ただし、当該少年が特定少年の場合には、本人に説明した上で支援活動を終了するものとする。また、この場合に、当該特定少年の両親等に併せて説明することは差し支えない。

なお、当該少年又は保護者から引き続き支援を求められたときは、必要に応じて継続補導の対象とするものとする。

イ 検挙された場合等

支援対象少年が再び非行によって検挙等された場合、保護者が支援の継続を断った場合等においても、支援活動を終了するものとする。

第3 支援活動実施上の留意事項

1 検挙・補導時等における説明等の実施

少年を検挙又は補導した際には、取調べ担当者等から当該少年及び保護者に対し、支援活動の内容や保護処分等が決定した後に連絡する場合があること等を説明するとともに、その実施状況を少年事件選別主任者等が確認するなど、確実な説明を行うこと。また、支援活動について適時適切な広報に努め、少年や保護者が支援活動を理解し、支援を求めやすい環境づくりに努めること。

2 支援対象少年に関する情報等の把握と活用

支援担当職員は、支援活動中、少年の生活状況、修学・就労状況、不良行為による補導状況等の把握や、学校・警察連絡制度等を活用した学校を始めとする関係機関が把握している当該少年に関する情報の入手に努め、これらを活用したタイミングの良い効果的な支援活動を行うこと。

また、支援活動の成否は、保護者の監護能力や家庭環境に左右される場合が多いことから、保護者に関する情報の把握にも努め、必要に応じ関係機関と連携するなど、保護者に対する指導・助言を行うこと。

なお、支援活動を通じ、支援対象少年が犯罪少年、ぐ犯少年等に当たると思料されるときには、遅滞なく必要な捜査・調査、関係機関への送致等を行うこと。

3 支援対象少年に応じた効果的な支援の推進

少年女性安全対策課長は、支援活動の推進状況を確実に把握するとともに、随時検証し、カウンセリング等の専門的な指導・助言のほか、他機関による支援が必要と認めた場合には、専門的知見に基づく支援が少年に対して行われるよう、関係機関との連携を推進し、支援対象少年に対する効果的な支援を行うこと。

4 少年警察ボランティア等と連携した効果的な支援活動の推進

社会奉仕体験活動等は、周囲の人々とのつながりの中で少年に自己肯定感や達成感を感じさせるほか、他人から感謝される体験を通じてきずなを実感させるなど、少年の心のよりどころとなる新たな「居場所」を作るものである。

よって、支援担当職員は、署の少年担当職員と連携し、少年警察ボランティア等の社会奉仕体験活動等への積極的な参画を促進するとともに、地域住民等を巻き込んだ活動の実施に努めること。

また、地域住民等の間に支援活動等に協力する気持ちを醸成するため、少年警察ボランティア等の活動に関する広報の充実に努めるとともに、当該活動の促進を図るため、少年警察ボランティア等に対する研修の充実に努めること。

なお、社会奉仕体験等を少年警察ボランティア等と協働して実施するに当たっては、少年及び保護者に係る個人情報について、保護者の同意を得てから少年警察ボランティア等に伝えること。ただし、個人情報が特定少年に係るものの場合は、本人の同意を得てから伝えるものとする。また、伝える個人情報も支援に必要な範囲にとどめるなど、その取扱いには慎重を期すこと。

5 関係機関等との連携の強化

(1) 支援活動における関係機関との連携の確保等

支援活動を推進するに当たっては、平素よりその趣旨を学校等の教育関係機関、家庭裁判所、矯正・更生保護関係機関、児童福祉関係機関、労働関係機関等の関係機関に説明した上、必要に応じ、支援活動を行う際の連携を求めること。

(2) ハローワーク等との連携強化による就労支援の推進

支援活動として就労支援を行うに当たっては、ハローワーク等との連携強化により積極的な就労支援に努めること。

特に、問題を抱えた少年の雇用に協力的な特定の企業等と少年との橋渡しを行おうとする場合には、職業安定法(昭和22年法律第141号)の趣旨に鑑み、あらかじめ地域を管轄するハローワークに支援活動の内容を説明し協力を求めた上で、当該企業等及び少年に関する情報提供を行うなど、ハローワークが少年に職業紹介や職業相談等の就労支援を行うのに合わせた、側面的支援に努めること。

第4 少年を見守る社会気運を向上するための情報発信の推進

1 地域住民等に対する非行情勢等の積極的な情報発信

少年の規範意識の向上を図るための活動を推進するには、少年を取り巻く地域住民等の理解と協力が不可欠であり、また、少年を見守る社会気運を向上するためには、地域ぐるみの取組へと発展させる必要があることから、自治会、企業、各地域の保護者会等に対し、地域の非行情勢や非行要因等について積極的な情報発信を行うこと。

2 企業等に対する積極的な情報発信による支援活動への理解・協力の促進

支援対象少年に対する就労支援や社会奉仕体験活動等の支援活動を推進する上で、企業等の参加・協力を得ることがより効果的であることから、企業等に対し、地域の非行情勢や非行要因等について情報発信を行うとともに、具体的な支援活動の内容や少年の立ち直り事例の紹介等により、企業等の理解や参加・協力の促進を図ること。

第5 少年相談活動、街頭補導活動等に基づく継続補導の推進

少年相談活動、街頭補導活動等を通じ把握した不良行為少年等に対して実施する継続補導については、手を差し伸べる支援活動と同様、「非行少年を生まない社会づくり」を推進する上で必要かつ重要な取組であることから、引き続きその推進に努めること。

第6 記録の保存期間

支援活動の記録の保存期間は、連絡対象少年として報告した年から10年間とする。

少年に手を差し伸べる立ち直り支援活動実施要領の制定について(依命通達)

令和4年6月24日 達(少対)第330号

(令和4年7月1日施行)

体系情報
生活安全部
沿革情報
令和4年6月24日 達(少対)第330号