○運転技能検査等実施要領の制定について(依命通達)

令和4年4月21日

達(運免)第238号

[原議保存期間 5年(令和10年3月31日まで)]

[有効期間 令和10年3月31日まで]

対号1 令和4年4月21日付け達(運免)第233号「高齢者講習び臨時高齢者講習の事務処理要領の制定について」

2 令和4年4月21日付け達(運免)第234号「運転技能検査の事務処理要領の制定について」

みだし要領を別紙のとおり制定し、令和4年5月13日から施行することとしたので、運用上誤りのないようにされたい。

別紙

運転技能検査等実施要領

目次

1 運転技能検査の趣旨等

(1) 趣旨

(2) 公正性の確保等の必要性

(3) 安全指導の重要性

2 基本的留意事項

(1) 課題等

(2) 使用車両

ア 福島県公安委員会が提供する車両

イ 受検者等により持ち込まれた車両

(3) コース設定

3 課題等の実施要領

(1) 事前説明

(2) ならし走行

(3) 課題走行

(4) 安全指導

4 採点等の実施要領

(1) 採点等の基本的要領及び検査の合格基準

(2) 採点等の範囲及び場所

(3) 留意事項

(4) 具体的実施要領

ア 指示速度による走行

イ 一時停止

ウ 右折・左折

(ア) 右側通行

(イ) 脱輪

エ 信号通過

オ 段差乗り上げ

カ 補助ブレーキ等

(ア) 課題走行実施中の場合

(イ) (ア)以外の場合

キ 検査等を道路又はその他適切な場所において実施する場合の要領

ク 実車指導において運転シミュレーターでの代替措置をとる場合の要領

ケ その他

(ア) 時間超過

(イ) 指示違反

(ウ) 事故

(5) 走行順路の教示等

ア 走行順路の教示

イ 助言

(6) 検査等の中止

(7) 運転評価票の活用

5 その他

(1) 検査の使用車両への録画装置等の設置

(2) 受検者等への配慮

(3) 検査員等の教養

1 運転技能検査の趣旨等

(1) 趣旨

従前の高齢運転者対策では、主に認知機能の低下に着目した対策が進められてきたところ、高齢運転者による死亡事故のうち認知機能の低下がみられない者によるものが約6割を占めていること等を踏まえ、認知機能だけでなく加齢による運転技能の低下に着目した対策も必要であるとの観点から、今般、運転技能検査(以下「検査」という。)が導入された。

検査は、新規免許取得者と同等の運転技能があることを確認するものではなく、加齢に伴う身体機能の低下等により安全運転が期待できないほど運転技能が低下している者について、運転免許証の更新をしないこととするものである。

(2) 公正性の確保等の必要性

検査は、運転免許証の更新をしないという重大な効果につながり得るものであることから、公正性及び公平性の確保が強く求められる。

また、運転免許が全国で効力を有することに鑑みると、検査が全国的に統一された方法で実施される必要がある。

(3) 安全指導の重要性

検査の導入に伴い、高齢者講習における実車による指導(以下「実車指導」という。)について、受講者の運転技能を客観的に評価し、その結果を踏まえた安全指導を行うこととしている。

同様に、検査についてもその結果を踏まえた安全指導を行うものの、検査は75歳以上の高齢運転者のうち、将来的に交通事故を起こす危険性が高いと認められる者が受けるものであることから、安全指導の必要性という点では、検査を受ける者は実車指導を受ける者と比較して同等以上であると考えられる。

したがって、検査及び実車指導(以下「検査等」という。)のいずれにおいても実施後の安全指導の重要性について認識し、受検者又は受講者(以下「受検者等」という。)の運転技能を客観的に評価するということにとどまらず、その結果を踏まえていかに指導を行い、どのように今後の安全運転を支援していくかについて熟考した上、交通事故防止に資する安全指導となるよう十分配意すること。

2 基本的留意事項

(1) 課題等

検査等において実施する課題、検査における採点及び実車指導における課題の履行状況の客観的評価(以下「採点等」という。)に係る判断基準等は、別表のとおりとする。

また、採点等は、特定の箇所を走行するに際して1つの課題についてのみ行うこと。

したがって、例えば、道路標識等により一時停止すべきことが指定されている交差点を右折する際、一時停止及び右折(右側通行)の状況について同時に採点等を行うことのないようにすること。

なお、別表に定める課題以外に、方向変換、車両感覚走行(クランク走行及びS字走行)及びパイロンスラローム走行等(以下「難易度の高い走行」という。)を実施することとしても差し支えないが、これを受検者等に行わせる場合は、当該箇所の走行中は採点等の対象とはせず、また、当該箇所に進入及び進出する際に他の車両等との衝突等の危険が発生し、これを回避する目的で補助ブレーキの操作等を行ったときであっても、検査における減点又は実車指導における課題の不履行(危険を回避する目的で行う補助ブレーキの操作等を含む。)の評価(以下「減点等」という。)を行わないものとする。

(2) 使用車両

ア 福島県公安委員会が提供する車両

検査等は、検査等の実施に係る安全性及び円滑性の確保のため、原則として福島県公安委員会が提供する普通自動車を用いて行うこと。また、当該車両は、運転者席の横の乗車装置に検査員又は指導員(以下「検査員等」という。)が乗車して採点等を行うことができ、かつ、検査員等が危険を防止するための応急の措置を講ずることができる装置が備わっているものとすること。

当該車両のうち、衝突被害軽減ブレーキ等の安全運転支援装置が装備されているものについては、当該装置の機能を無効とすることができないもの及び当該装置の機能を無効としてもエンジンを再始動すると自動的に有効になるものを除き、当該装置の機能を無効とした状態とすること。ただし、安全運転支援装置であってその機能を無効とすることができないもの又はその機能を無効としてもエンジンを再始動すると自動的に有効となるもののうち、その機能が検査等の採点等に影響を与えるものを装備している普通自動車は使用しないこと。また、安全運転支援装置の機能を有効な状態とする場合において、当該機能が作動する時点又は感度を調整できるときは、最も遅い時点又は最も低い感度で作動するように調整すること。

検査に用いる普通自動車には、検査中である旨を表示する標識を見やすい位置に掲示するものとするが、検査と実車指導を合同で実施することができることに鑑み、当該標識は講習中の車両に掲示する標識と同じものでも差し支えない。

イ 受検者等により持ち込まれた車両

身体の障害があることを理由に法第71条の5第3項に規定する普通自動車対応免許に条件を付されている場合等のやむを得ない事情がある場合は、当該受検者等の申出により、当該受検者等が持ち込んだ車両を用いて検査等を行うこととしても差し支えない。

この場合においては、検査等の安全確保のため、当該車両は、道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)に適合するものであり、かつ、検査員等が危険を防止するための応急の措置を講ずることができる装置を備えているものである必要があるほか、検査中である旨を表示する標識を当該車両の見やすい位置に掲示しなければならないものとする。

なお、当該車両の乗車定員が1人である場合は、無線による意思伝達装置を使用するなどして走行順路の教示及び口頭による是正措置の指示等を明確に行うとともに、採点等については、検査員等が他の車両により追従する方法等によって公正かつ適正に行うこと。

(3) コース設定

コースは、道路標識及び道路標示等が明確に視認できるように設置され、全ての受検者等に対して各課題を斉一に実施することができるものとすること。また、受検者等1人当たりの走行時間(ならし走行を除く。)がおおむね10分間以上となるよう、走行距離(ならし走行を除く。)を1,200メートル以上に設定すること。

また、実施機関の実情に応じて、あらかじめ各課題の実施箇所を指定し、走行順路を定めておくものとし、検査等は当該走行順路に従って行うこと。ただし、走行順路を変更することについて、やむを得ない事由がある場合は、必要な限度において、これを変更しても差し支えない。

3 課題等の実施要領

(1) 事前説明

検査等の実施前に、コースの走行順路、課題の実施箇所及び検査等における事故防止等検査等の実施に必要な事項のほか、課題の実施方法及び採点等の方法並びに道路交通法令に従った適切な運転方法等について、映像資料等を用いるなどして分かりやすく説明を行うこと。その際には、一方的に説明を行うのではなく、受検者等の理解度を確認しながら理解できるまで繰り返し説明するなど、受検者等の特性を踏まえて丁寧に説明すること。

また、道路交通法令に従った適切な運転方法の説明に当たっては、別記様式1又は別記様式2の裏面を活用すること。

なお、事前説明の実施方法については、受検者等を集合させて合同で実施しても差し支えない。

(2) ならし走行

受検者等ごとに、おおむね300メートルにわたってならし走行を行い、受検者等の緊張を和らげるとともに、車両感覚に慣れさせること。

また、受検者等は、日常使用している車両と異なる車両で受検・受講していること等を踏まえ、受検者等から車両感覚がつかめない等の申立てがあった場合には、安全性への配慮を行った上で、他の受検者等に支障を及ぼさないなど検査等の円滑な実施を損なうことのない範囲内において、例えば、道路標識等によって一時停止が指定された場所で車両を停止させ、その停止位置等を確認させるなどの措置を講じても差し支えない。

なお、ならし走行終了後、車両を停止させることなく課題走行に移行することとして差し支えないが、ならし走行から課題走行に移行する時期については、明確に受検者等に教示すること。

(3) 課題走行

実施機関の実情に応じて設定したコース内を、2(3)の走行時間及び走行距離に従って走行させ、各減点等の項目について別表の判断基準(以下「判断基準」という。)に従って客観的かつ厳正に採点等を行うこと。

また、検査等における事故防止については、特段の配意を行うこと。

(4) 安全指導

検査等の終了後、減点等を行った課題があった場合は、その不履行によって道路交通の場においてどのような交通事故に結びつく危険があるかについて具体的に説明するなど、交通事故の防止に資する適切な運転方法等について受検者等ごとに指導するとともに、安全不確認、操作不適、危険な運転個癖等の不適切な運転行動についても個別・具体的に指導すること。

また、課題における減点等の対象となった運転行為やその他の不適切な運転行動について、加齢に伴う身体機能の低下がこれらに影響を及ぼしている可能性があることを理解させること。

4 採点等の実施要領

(1) 採点等の基本的要領及び検査の合格基準

検査における採点については、別記様式1「運転評価票(運転技能検査用)」を用いて、100点からの減点式採点法により行うものとする。また、実車指導においては、別記様式2「運転評価票(高齢者講習用)」を用いて、課題の履行状況等を客観的に評価するものとする。

また、検査の合格基準については、大型第二種免許、中型第二種免許又は普通第二種免許を受けようとし、又は現に受けている者は80点以上、それ以外の者は70点以上とする。

(2) 採点等の範囲及び場所

採点等は、ならし走行が終了した時点から、コース等における走行を終えて車両を停止した時点までの間について行うこと。

また、別表に掲げる課題の回数及び減点等の項目を遵守するとともに、あらかじめ各課題の実施箇所を具体的に指定するなど、採点等の場所を明確にすること。

ただし、走行中の危険を回避するため、検査員等がハンドル、ブレーキ等の操作を補助し、又は是正措置を指示した場合は、あらかじめ指定した各課題の実施箇所以外の場所であっても、減点等の対象となることに留意すること。

(3) 留意事項

採点等における減点等は、1つの機会において1度のみ行うこと。

例えば、「右折・左折」の課題の実施中において、左折の際に脱輪し、かつ、左折進行先において右側通行を行った場合については、脱輪及び右側通行のいずれも採点等の対象となるものの、減点等については重複して行わず、より大きい減点等の項目1つをもって減点等を行うこと。

(4) 具体的実施要領

ア 指示速度による走行

内容

指定した走行区間を、指示した速度で走行することができるかどうかについて、判断基準に基づき採点等を行う。

要領

○ 本課題は1回行う。

○ コースを走行中に、具体的な走行区間及び速度について、受検者等に対して「この道路で時速40キロメートルまで加速して走行してください。」などと明確に指示すること。

○ 指示した速度よりおおむね時速10キロメートル遅い速度に一度も達しなかった場合又は指示した速度よりおおむね時速10キロメートル以上速い速度に一度でも達した場合は、検査においては10点の減点とし、実車指導においては課題速度不履行と評価すること。

留意事項

指定区間の距離については、実施機関の実情に応じて設定して差し支えないが、速度については、少なくとも時速30キロメートル以上に設定すること。

イ 一時停止

内容

道路標識等によって一時停止が指定された場所を走行させて、一時不停止の態様に応じて、一時不停止(小)又は一時不停止(大)のいずれかに該当するかどうかについて、判断基準に基づき採点等を行う。

要領

○ 本課題は2回行う。

○ 車体の一部が、停止線を越えるまでに停止しなかったものの、車体の一部が交差道路の側線を延長した線を越えるまでには停止した場合は、検査においては10点の減点とし、実車指導においては一時不停止(小)と評価すること。

○ 車体の一部が、停止線を越えるまでに停止せず、かつ、車体の一部が交差道路の側線を延長した線を越えるまでに停止しなかった場合は、検査においては20点の減点とし、実車指導においては一時不停止(大)と評価すること。

○ 判断基準に示す用語の意義

・ 「車体の一部」とは、車体の最も先端の部分をいう。

・ 「停止線を越える」とは、停止線の最も交差点寄りの部分(図(A)の点線)を越えた場合をいう。


(A)

画像

・ 「交差道路の側線を延長した線を越える」とは、交差道路の路端を延長した線(図(B)の点線)を越えた場合をいう。


(B)

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留意事項

○ 交差道路の側線を延長した線は、いわゆる仮想線であるため、検査員等の乗車位置から確認できるよう工夫を行う。

○ 本課題では、停止位置不適に係る減点等の項目は設けていないことから、受検者等が当該一時停止の道路標識等を認知してこれに従うために停止線の手前からおおむね2メートル以上手前で停止した場合は、停止線の手前まで進行するよう指示するものとする。この場合において、停止線の手前で停止するよう指示することは、(5)イの助言には当たらないものとする。

なお、この際に停止線を越えて停止した場合には、判断基準に基づき減点等を行う。

○ 交差点の形状等によって採点等に差異が生じることのないよう、丁字路又は十字路において行う。

ウ 右折・左折

(ア) 右側通行

内容

交差点を右折又は左折させる際、車体が道路の中央線から右の部分にはみ出した態様に応じて、右側通行(小)又は右側通行(大)のいずれかに該当するかどうかについて、判断基準に基づき採点等を行う。

要領

○ 本課題は、右折・左折それぞれ2回ずつ、合計4回行う。

○ 車体の一部が、道路の中央線から右の部分にはみ出して通行した場合(車体の全部がはみ出した場合を除く。)は、検査においては20点の減点とし、実車指導においては右側通行(小)と評価すること。

○ 車体の全部が、道路の中央線から右の部分にはみ出して通行した場合は、検査においては40点の減点とし、実車指導においては右側通行(大)と評価すること。

○ 判断基準に示す用語の意義

・ 「車体」とは、車両からドアミラーを除いたものをいう。

・ 「道路の中央線から右の部分にはみ出す」とは、車両の進行方向に向かい、道路の中央線の右端(図(C)の点線)を越えた場合をいう。


(C)

画像

留意事項

○ 道路の損壊、道路工事その他の障害のため当該道路の左側部分を通行することができないときなど、道路交通法第17条第5項各号に該当する場合は、本課題の減点等の項目に該当した場合であっても、減点等の対象とはならない。

○ 右折を開始する前に、図(D)に示すように道路の中央線から右の部分にはみ出した場合についても、右折と同様に右側通行(小)又は右側通行(大)のいずれかで減点等を行う。


(D)

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○ 直進走行時に、道路の中央線から右の部分にはみ出すなど、本課題実施中以外の場合に道路の中央線から右の部分にはみ出した場合については、本課題の減点等の項目に該当しない。

(イ) 脱輪

内容

交差点を右折又は左折させる際、縁石に車輪を乗り上げたとき又はコースから車輪が落輪したときに、それぞれ減点等の対象とする。

要領

小回りなどによって脱輪した場合は、検査においては20点の減点とし、実車指導においては脱輪と評価すること。

留意事項

○ 車輪が縁石に接触する接輪の場合や、車輪の接地面部の一部がコースから逸脱したのみの場合は、減点等の対象とならない。

○ 右折・左折ともに2回行うため、脱輪については4回の採点等の機会があることに留意する。

エ 信号通過

内容

信号機のある交差点を走行させて、信号無視の態様に応じて信号無視(小)又は信号無視(大)のいずれかに該当するかどうかについて、判断基準に基づき採点等を行う。

要領

○ 本課題は2回行う。

○ 赤色信号が表示されているときに、車体の一部が停止線を越えるまでに停止しなかったものの、車体の一部が横断歩道に入るまでには停止した場合には、検査においては10点の減点とし、実車指導においては信号無視(小)と評価すること。

○ 赤色信号が表示されているときに、車体の一部が停止線を越えるまでに停止せず、かつ、車体の一部が横断歩道に入るまでに停止しなかった場合には、検査においては40点の減点とし、実車指導においては信号無視(大)と評価すること。

○ 判断基準に示す用語の意義

・ 「車体の一部」とは、車体の最も先端の部分をいう。

・ 「停止線を越える」とは、停止線の最も交差点寄りの部分(図(A)の点線)を越えた場合をいう。

・ 「横断歩道に入る」とは、車体の最も先端の部分が、横断歩道上にかかった場合をいう。

・ 「赤色信号が表示されているとき」とは、車体の一部(車体の最も先端の部分)が停止線(停止線の最も交差点寄りの部分)を通過するときに赤色信号が表示されていることをいう。

留意事項

○ 黄色信号又は赤色点滅信号が表示されているときに、停止線手前で安全に停止することができたにもかかわらず、車体の一部が停止線を越えて停止した場合は、減点等の対象としない。

○ 本課題では、停止位置不適に係る減点等の項目は設けていないことから、受検者等が当該信号機を認知してこれに従うために停止線の手前からおおむね2メートル以上手前で停止した場合は、停止線の手前まで進行するよう指示するものとする。この場合において、停止線の手前で停止するよう指示することは、(5)イの助言には当たらないものとする。

なお、この際に停止線を越えて停止した場合には、判断基準に従って減点等を行う。

オ 段差乗り上げ

内容

アクセルペダルを操作して段差に乗り上げ、その後、アクセルペダルとブレーキペダルを踏み換える操作を行い、車両を直ちに停止させることができるかどうかについて、判断基準に基づき採点等を行う。

要領

○ 本課題は1回行う。

○ 段差に両方の前タイヤが当たるところまで受検者等に車をゆっくりと前進させ、段差に対して垂直に一旦停止させる。

○ 次に、アクセルを踏んで発進させ、段差に乗り上げたと同時に直ちにブレーキを踏んで停止するよう明確に指示する。

○ 段差に乗り上げて停止した際、タイヤの中心から垂直に路面と交わる点から段差の端までの距離が、おおむね1メートルを超えた場合(図(E))は、検査においては20点の減点とし、実車指導においては乗り上げ不適と評価すること。


(E)

画像

○ アクセル操作の不適等により、段差に乗り上げることができなかった場合は、上記と同様に減点等を行うこと。

留意事項

○ 検査員等の乗車位置から、段差の端からおおむね1メートルの地点が確認できるよう工夫を行う。

○ 段差については、クリープ現象では乗り越えられない程度の高さで差し支えないため、実施機関の実情に応じて適切に設定する。

カ 補助ブレーキ等

走行中の危険を回避するため、検査員等がハンドル・ブレーキ等の操作の補助又は是正措置の指示(以下「補助ブレーキの操作等」という。)を行ったときは、以下の場合に応じて、判断基準に基づき採点等を行う。

(ア) 課題走行実施中の場合

基本的要領

○ 「衝突等の危険があると認められる場合」で、当該危険を回避する目的の場合に、補助ブレーキの操作等を行うことができる。

○ この場合においては、補助ブレーキの操作等を行って車両を停止させることができる(衝突等の危険が認められない場合においては、当該課題の減点等の項目における最も大きい減点等を行うこととなるかどうかの判断が可能となるまで(例えば、信号通過の課題の場合は、赤色信号が表示されているときに停止線を通過した後、車体の一部が横断歩道上にかかるかどうかの判断が可能となるまで)は、補助ブレーキの操作等を行わない。)

減点等を行う必要がある場合

○ 衝突等の危険があると認められる場合で、これを回避するために補助ブレーキの操作等を行う場合。

○ 危険を回避するために安全運転支援装置が作動してアクセル、ブレーキ又はハンドルの操作が行われた場合。

減点等を行ってはならない場合

○ 衝突等の危険があると認められない状況で、補助ブレーキの操作等を行う場合。

○ 補助ブレーキ等による減点等と、課題における減点等の項目による減点等が競合した場合で、当該減点等の項目による減点等が、補助ブレーキ等による減点等より大きい場合。

○ 他の車両との衝突等の危険があると認めて補助ブレーキの操作等を行ったものの、これに至った原因が専ら当該他の車両の運転者側にある場合。

留意事項

○ 用語の意義

「衝突等の危険があると認められる場合」とは、

・ そのまま進行を続ければ、衝突等の差し迫った危険が発生する場合

・ 見通しの悪い交差点を進行するに当たり、交差道路を進行してくる車両の有無が判然としないなど、明らかに危険がないとはいえない場合において、減速及び安全確認を怠ったまま同交差点に進入しようとするなど、その運転行動自体に危険性が認められる場合

をいう。

(イ) (ア)以外の場合

基本的要領

○ 衝突等の危険の存否にかかわらず、補助ブレーキの操作等を行うことができ、かつ、これによって車両を停止させることができる。

減点等を行う必要がある場合

○ 衝突等の危険があると認められる場合で、これを回避するために補助ブレーキの操作等を行う場合。

○ 危険を回避するために安全運転支援装置が作動してアクセル、ブレーキ又はハンドルの操作が行われた場合。

減点等を行ってはならない場合

○ 衝突等の危険があると認められない状況で、補助ブレーキの操作等を行う場合。

○ 難易度の高い走行の実施中又は当該箇所に進入及び進出する際に、補助ブレーキの操作等を行う場合。

○ 検査員等が走行順路を誤って教示したため受検者等が走行順路を誤った場合又はやむを得ない事由が発生したため検査員等の指示によって走行順路を変更した場合において、正規の走行順路に復帰するまでの間に、補助ブレーキの操作等を行う場合。

○ 他の車両との衝突等の危険があると認めて補助ブレーキの操作等を行ったものの、これに至った原因が専ら当該他の車両の運転者側にある場合。

留意事項

○ 用語の意義

「衝突等の危険があると認められる場合」については、(ア)に同じ。

キ 検査等を道路又はその他適切な場所において実施する場合の要領

検査等を道路又はその他適切な場所(以下「道路等」という。)で実施する場合にあっては、各課題等の条件をコースとおおむね同等に設定するとともに、受検者等のみならず他の交通参加者等の安全確保についても十分な配意を行うなど、検査等の実施に係る安全性の確保に万全を期すこと。

また、課題等の実施要領等については、原則としてコースにおいて行う場合と同様とするが、検査等を道路等で実施するという特殊性に鑑み、以下について留意すること。

基本的要領

○ 検査等の実施中において、そのまま走行を続ければ道路交通法令に違反する行為となると認められる場合には、補助ブレーキの操作等を行い、車両を停止させることができる。

○ 上記のほか、検査を安全かつ円滑に実施するため必要であると認められる場合は、衝突等の危険の存否にかかわらず、補助ブレーキの操作等を行うことができ、かつ、これによって車両を停止させることができる。

減点等の要領

○ 検査等の実施中において、そのまま走行を続ければ道路交通法令に違反する行為となると認められる場合に補助ブレーキの操作等を行った場合は、補助ブレーキの操作等によって減点等を行う。

○ 衝突等の危険があると認められる場合で、これを回避するために補助ブレーキの操作等を行う場合は、補助ブレーキ等によって減点等を行う。

○ 上記以外の場合に補助ブレーキの操作等を行う場合は、補助ブレーキ等による減点等を行ってはならない。

○ 危険を回避するために安全運転支援装置が作動してアクセル、ブレーキ又はハンドルの操作が行われた場合は、補助ブレーキ等によって減点等を行う。

ク 実車指導において運転シミュレーターでの代替措置をとる場合の要領

受講者の体調や降雪等の悪天候等により、実車指導を行うことが困難であると認められる場合において、その代替措置として運転シミュレーターによる指導を行うときは、以下について留意すること。

基本的要領

○ 運転シミュレーターの操作時間が、受講者1人当たりおおむね10分間以上となるようにする。

○ 道路標識等により一時停止が指定された交差点及び信号機のある交差点を走行する場面を各2回以上設定するとともに、危険を予測した運転について学ぶことができるその他の危険場面を設定する。

○ 上記場面を運転シミュレーターの操作によって走行させ、受講者の運転技能を評価し、その結果に基づいた指導を行う。

留意事項

○ 危険場面の難易度については、受講者の運転技能に応じ、適宜変更する。

○ 受講者の運転技能の評価に当たっては、運転評価票を用いることを要しない。

ケ その他

次のいずれかに該当したときは、検査においては40点の減点とし、実車指導においてはこれを中止するための要件として評価すること。

(ア) 時間超過

運転技能が著しく低いこと等により、おおむね20分間を大幅に超過しても検査等が終了しないと見込まれるとき。

ただし、検査等の実施中における車両の故障等、受検者等の責めに帰すべき事情がない場合を除く。

(イ) 指示違反

検査員等が、検査等を安全かつ円滑に実施するために必要な指示をしたにもかかわらず、危険な走行を行うなど、正当な理由なくその指示に従わないとき。

(ウ) 事故

受検者等が人の死傷又は物の損壊を伴う事故を起こしたとき。

ただし、当該事故について、受検者等の責めに帰すべき事情がない場合を除く。

(5) 走行順路の教示等

ア 走行順路の教示

検査員等が走行中の受検者等に対して走行順路を教示する際には、明瞭に発音し、かつ、動作を交えるなどして明確に教示すること。

また、走行順路の教示に当たっては、当該教示によって課題の実施箇所に設置されている一時停止を指定する道路標識等や信号機の存在を受検者等が認知することが容易となることのないよう、「標識」や「信号機」といった用語を用いないようにするものとし、例えば、「○番の交差点を左に曲がってください。」「つきあたりの丁字路を右に曲がってください。」などと教示すること。

イ 助言

検査等の公正性及び公平性の確保のため、走行順路の教示、減点後の是正措置又は危険防止のための指示を除き、助言は行わないものとする。

ここでいう助言とは、

○ 減点等の項目の判断基準に抵触する内容で、それを伝達することにより受検者等が減点等を回避することを容易にするもの

○ 一時停止を指定する道路標識等や信号機の存在に関する内容で、受検者等が当該道路標識等及び信号機の存在を認知することを容易にするもの

について、受検者等に伝達を行うこととする。

(6) 検査等の中止

検査等は、原則として全ての課題が終了するまで行うものとするが、(4)ケのいずれかに該当し、検査等の安全かつ円滑な実施が困難と認められるときは、検査等を中止することができる。

(7) 運転評価票の活用

運転評価票については、採点等を行う際に活用することはもとより、安全指導を行う際に必要に応じて受検者等に示すなどして、指導に活用すること。

なお、検査で使用した運転評価票は、公安委員会において保管することし、保存期間は4年とする。

5 その他

(1) 検査の使用車両への録画装置等の設置

検査の公正性を確保するため、検査員の採点状況や受検者の言動等に係る映像及び音声を記録することができるドライブレコーダー、車内カメラ等の録画装置等を使用車両(2(2)イの車両を除く。)に備えること。

また、録画装置等については、検査員及び受検者の動静等の把握が可能となる画角に設定して設置するとともに、記録された映像及び音声については一定期間保存すること。

なお、録画装置等によって受検者の言動等に係る映像及び音声を記録することについて、受検者に対してあらかじめ告知するとともに、映像及び音声の記録を行う目的等についても説明すること。

(2) 受検者等への配慮

受検者等は、一般に検査等を受けることに不慣れであること等を踏まえ、受検者等の体調等には十分配意すること。

(3) 検査員等の教養

検査は、その結果によっては高齢運転者の運転免許証の有効期間が更新されないこととなるという法的効果を伴うものであるほか、検査等は、受検者等による交通事故の防止を図るための効果的な指導を行う機会でもあることから、検査員等に対する研修会等を随時開催するなど、適正かつ効果的な検査等の実施に資する教養を恒常的に行い、検査員等の採点技能や指導能力等の維持・向上に努めること。

別表

課題

回数

減点等の項目

判断基準

点数

指示速度による走行

1回

課題速度不履行

速度指定区間を、指示速度よりおおむね10km/h遅い速度に一度も達しなかった場合又は指示した速度よりおおむね10km/h以上速い速度に一度でも達した場合

-10

一時停止

2回

一時不停止(小)

道路標識等による一時停止の指定場所で、車体の一部が停止線を越えるまでに停止しなかったものの、車体の一部が交差道路の側線を延長した線を越えるまでには停止した場合

-10

一時不停止(大)

道路標識等による一時停止の指定場所で、車体の一部が停止線を越えるまでに停止せず、かつ、車体の一部が交差道路の側線を延長した線を越えるまでに停止しなかった場合

-20

右折・左折

各2回

右側通行(小)

車体の一部が道路の中央線から右の部分にはみ出して通行した場合(車体の全部がはみ出した場合を除く。法第17条第5項各号に該当する場合を除く。)

-20

右側通行(大)

車体の全部が道路の中央線から右の部分にはみ出して通行した場合(法第17条第5項各号に該当する場合を除く。)

-40

脱輪

縁石に車輪を乗り上げ又はコースから車輪が落輪した場合

-20

信号通過

2回

信号無視(小)

赤色信号が表示されているときに、車体の一部が停止線を越えるまでに停止しなかったものの、車体の一部が横断歩道に入るまでには停止した場合

-10

信号無視(大)

赤色信号が表示されているときに、車体の一部が停止線を越えるまでに停止せず、かつ、車体の一部が横断歩道に入るまでに停止しなかった場合

-40

段差乗り上げ

1回

乗り上げ不適

段差に乗り上げて停止した際、タイヤの中心から垂直に路面と交わる点から段差の端までの距離が、おおむね1メートルを超えた場合又は段差に乗り上げることができなかった場合

-20



補助ブレーキ等

走行中の危険を回避するため、検査員等がハンドル、ブレーキ等の操作を補助し、又は是正措置を指示した場合(他の減点等の項目にも該当する場合は、より大きい減点等の項目を適用する。)

-30

別記様式1

 略

別記様式2

 略

運転技能検査等実施要領の制定について(依命通達)

令和4年4月21日 達(運免)第238号

(令和4年5月13日施行)

体系情報
交通部
沿革情報
令和4年4月21日 達(運免)第238号