○認知機能検査の実施要領の制定について(依命通達)

令和4年4月21日

達(運免)第239号

[保存期間 5年(令和10年3月31日まで)]

[廃棄時期 令和10年3月31日まで]

対号 令和4年4月21日付け達(運免)第235号「認知機能検査及び臨時認知機能検査の事務処理要領の制定について」

みだし要領を別紙のとおり制定し、令和4年5月13日から施行することとしたので、運用上誤りのないようにされたい。

なお、認知機能検査実施の手引きの制定について(平成29年3月7日付け達(運免)第75号)は、廃止する。

別紙

認知機能検査の実施要領

福島県警察本部運転免許課

目次

第1 実施要領の目的

第2 検査実施に当たっての心構え

1 検査の性質

2 各検査項目における検査の機能

3 高齢者の特性や心情に配慮した検査の実施

4 検査結果の取扱い

第3 検査の実施要領

1 検査員の要件

2 補助者

3 検査に必要な用具等

4 検査実施時の基本的留意事項

5 検査の進行要領

第4 検査の採点

1 採点用紙

2 採点基準

3 総合点の算出と結果の判定

4 採点と判定の点検

第5 検査結果の通知要領

1 検査結果を通知する書面の交付

2 受検者への説明

3 検査結果について、受検者から苦情や不服の申出があった場合の対応

第1 実施要領の目的

この実施要領は、認知機能検査(以下「検査」という。)の適正かつ円滑な実施を図るため、検査の実施に当たり必要な事項について定めることを目的とする。

第2 検査実施に当たっての心構え

検査を実施する者(以下「検査員」という。)は、次の基本的事項を理解し、検査を適正かつ円滑に実施しなければならない。

1 検査の性質

検査は、受検者の認知機能の状況を確認する簡易な手法の一つであり、受検者の認知症の診断を行うものではない。認知症の診断は、あくまでも専門の医師により行われるものであり、検査の実施に当たっては、検査の性質について確実に説明を行い、受検者の誤解を招かないよう留意しなければならない。

2 各検査項目における検査の機能

(1) 手がかり再生

16の記憶項目を再生することによる記憶力についての検査である。

(2) 時間の見当識

現在の自己及び自己がおかれている状況についての認識を見当識といい、時間の見当識は、受検者が自らがおかれている時を正しく認識しているかについての検査である。

3 高齢者の特性や心情に配慮した検査の実施

検査は75歳以上の高齢者を対象に実施されるものであることから、高齢者の特性や心情に配慮して実施しなければならない。

4 検査結果の取扱い

検査の結果は、簡易なものであるとはいえ、受検者の認知機能の状況を示すものであり、受検者の個人の秘密に関する情報であることから、その取扱いには十分に注意しなければならない。

第3 検査の実施要領

1 検査員の要件

検査員は、検査の実施、採点及び結果の説明はもとより、高齢者の心理、認知機能の低下の様々な態様その他高齢者への対応に当たり留意すべき事項について知見を有することが必要である。

このため、検査員は、21歳以上の者で、都道府県公安委員会が行う検査の実施に必要な技能及び知識に関する審査に合格し、又は都道府県公安委員会が行う検査の実施に必要な技能及び知識に関する講習を終了した者でなければならない。

2 補助者

検査員の事務を補助するため、補助者を置くことができる。補助者は、検査員の指導監督の下、各種事務の補助を行う。

なお、補助者が事務の補助を行う場合には次の点に留意しなければならない。

(1) 検査の実施要領等を厳守すること。

(2) 各種事務の補助は検査員の指示により行うこと。

(3) 受検者からの質問に対しての回答は行わないこと(検査員の要件を満たしている者を除く。)。

(4) 補助に当たっては、検査結果に影響を及ぼさないようにすること。

3 検査に必要な用具等

検査は、検査用紙による検査(以下「ペーパー検査」という。)又は検査に必要なソフトウェアが搭載されたタブレットによる検査(以下「タブレット検査」という。)のいずれかにより行うことができる。

(1) ペーパー検査

ア 検査用紙

検査用紙は、氏名等を記載する表紙、問題用紙及び回答用紙とし、別添1に示すものを使用する。

検査用紙の大きさはA4版以上とし、次の問題用紙や回答用紙の内容が容易に見えないように片面印刷を原則とする。

なお、問題用紙は、スクリーンに投影する等の方法によることとしても差し支えない。

イ イラスト及び関係資機材

手がかり再生で使用するイラストは、別添2のイラストを用い、全ての受検者に見えるよう、大きなボードを用いたり、スクリーンに投影したりして示すこととし、このための関係資機材を準備する。

なお、検査の結果に影響を及ぼさないよう、イラストには着色等を行わないこと。

ウ ストップウォッチ

各検査項目で時間を計測するために使用する。

エ 筆記用具

検査用紙に回答を記入するために使用する鉛筆等を準備する。

なお、回答の際に記載を誤った場合は、二本線を引き、書き直させることとするため、消しゴムは準備しない。

(2) タブレット検査

ア タブレット本体

あらかじめ受検者情報等がタブレットに反映されているかどうかについて確認すること。

イ 筆記に必要な電子ペン

ウ ヘッドフォン

4 検査実施時の基本的留意事項

(1) ペーパー検査及びタブレット検査共通の留意事項

ア 検査を実施する場所は、教室など外部から遮断された場所とする。

イ 受検者のプライバシーの保護及び検査の適正を図るため、間隔を設けて配席をしたり、受検者の間に衝立を置くなどする。

ウ 検査を実施する場所にあるカレンダーや壁時計等は、あらかじめ外すか覆いを掛けるなどする。

エ 受検者の腕時計や携帯電話、メモ類等の所持品は、あらかじめカバンなどに入れてもらう。

オ 他の受検者と一緒に検査を行うことから、検査中には受検者が声を出さないように注意する。

カ 検査の実施前に、受検者からトイレ等の申出があるかどうかを確認し、できる限り、検査の実施中に受検者がトイレ等に行くことがないようにする。

キ 次に掲げる者については、個別又は事後に検査を行う。

(ア) 検査員の説明を聞き取ることができないと認められる者

(イ) 検査員の説明を理解することができないと認められる者

(ウ) 注意力が散漫で検査に耐えられないと認められる者

(エ) 不正行為を行っていると認められる者

(オ) その他、個別又は事後に検査を行わなければ、検査の進行に支障があると認められる者

ク 検査時において手が震えるなどして文字が書けない状態にあると認められる者については、受検者の回答を聴取して、検査員又は補助者が代筆するなどの措置をとることができる。

ケ 検査中、受検者が不正行為を行っていないかどうかについて確認を行う。

(2) ペーパー検査における留意事項

ア 1回当たりの受検者数は、適正な検査が実施できるよう10人以下とする。

なお、補助者を置く場合は20人以下とすることができるが、その場合には、次の点に配意しなければならない。

(ア) 手がかり再生のイラストは、全員が確認できるよう補助者も掲示するなどの措置をとる。

(イ) 検査を実施する場所は、補助者が余裕を持って移動できるような広さを確保する。

イ 検査前及び検査中は、受検者が緊張することのないよう言動に留意する。

また、説明等は、ゆっくりと大きな声で丁寧な言葉遣いにより、受検者が理解しやすいように配慮する。

ウ 検査は、5「検査の進行要領」により行うこととし、キの場合を除き、検査の順番を入れ替えてはならない。

また、記載されている説明を省略したり、記載されていない説明を行ったりするなど進行要領を取捨選択等して説明することなく、進行要領に従った説明等を厳守すること。

エ 各検査項目の進行に応じ、指示したページを受検者が開いているか、指示した項目について受検者が記入しているかをその都度確認しながら、検査を進める。

オ 各検査項目を行う前に、受検者に質問がないかを確認し、回答方法等について不明な受検者がいるまま検査を進めない。

カ 検査は、受検者を焦らせることがないよう円滑に進めること。なお、各検査項目の回答時間は、正確に時間を測定すること。

キ 検査中に受検者からトイレ等の申出があった場合には、受検者が申出を行った者一人であるときには検査を中断し、トイレ等を済ませた後に中断した検査項目の冒頭から再度行う。受検者が複数のときは、申出を行った者以外の者については検査を継続し、申出を行った者は戻った時点で行っている検査項目の次の検査項目から行い、全ての検査が終了した後に、当該者が受けることができなかった検査項目を行う。

(3) タブレット検査における留意事項

ア 1回当たりの受検者数の制限は設けない。ただし、検査会場の規模に応じて受検者の案内や質疑対応等が可能な範囲で実施し、必要に応じて補助者を配置すること。実施方法については、一斉又は個別を問わない。

イ 検査員は、各受検者の進行状況等について、随時確認を行うこと。

ウ 検査中に受検者からトイレ等の申出があった場合には、検査を中断し、戻った時点で中断したところから再度始めること。なお、離席中は検査時間が進行しないようタブレットを操作すること。

5 検査の進行要領

ペーパー検査の具体的な進行要領は、別添3の「認知機能検査進行要領」によるものとする。また、タブレット検査については、タブレットからの音声ガイダンスにより、同要領に準拠して実施するものとする。

この際、手がかり再生については、別添2の4つのパターン(パターンA、パターンB、パターンC、パターンD)のうち、任意に選んだ1パターンを使用(タブレット検査の場合は任意に選択して設定)する。

第4 検査の採点

1 採点用紙

ペーパー検査の採点に当たっては、手がかり再生において使用する各イラスト(パターンA、パターンB、パターンC又はパターンD)に対応する採点補助用紙(別添4)を用いる。

タブレット検査の採点は、ソフトウェアにより自動で行うことを可能とする。

2 採点基準

採点基準は、別添5のとおりとする。

3 総合点の算出と結果の判定

(1) 総合点の算出

総合点は、手がかり再生及び時間の見当識の2つの検査の点を、次の計算式に代入して算出する。

算出した総合点は、少数点以下を切り捨て、整数で表記するものとする。

(計算式)

総合点=2.499×A+1.336×B

A 手がかり再生の点

B 時間の見当識の点

(2) 総合点と結果の判定

総合点によって、認知症のおそれがある者又は認知症のおそれがない者に判定する。

ア 認知症のおそれがある者

総合点が36点未満

イ 認知症のおそれがない者

総合点が36点以上

(3) 採点の合理化

手がかり再生の点が32点満点中15点以上となる受検者は、総合点で36点以上となることが計算上明らかである。このような場合は、総合点の算出をすることなく、「総合点が36点以上」と採点することとしても差し支えない。

4 採点と判定の点検

採点と判定については、必ず複数人による点検を行い、採点及びその点検をした者は採点補助用紙(別添4)の欄に氏名を記入する。

なお、タブレット検査において、自動採点機能により総合点が36点に達した者については、検査員による採点結果の点検は要しないこととするが、総合点が36点に達しない者については、文字認識結果に誤りがないことを複数人により確認した上で判定を行うこと。

第5 検査結果の通知要領

1 検査結果を通知する書面の交付

検査を受検した者に対しては、検査結果を通知する書面を交付すること。

検査結果を通知する書面は、別添6に示す様式によることとし、検査の結果に対応する通知文書により行う。

なお、検査結果は、受検者の重要な個人情報であることに十分留意し、通知に当たっては、検査結果を他の受検者に知られることのないよう、封書に入れるなどして伝達する。

2 受検者への説明

検査結果を通知した後、「認知機能検査進行要領」(別添3)に従い、受検者に説明を行う。

3 検査結果について、受検者から苦情や不服の申出があった場合の対応

検査結果について、受検者から苦情や不服の申出があった場合は、検査終了後に個別に説明を行う。この場合、必要に応じて、検査用紙及び採点補助用紙を示し、採点方法や採点結果について説明を行う。

委託先において、受検者が説明を受けても納得しない場合は、当該受検者に対して検査場所を管轄する都道府県警察に相談するように教示する。

これらの苦情や不服の申出と対応状況については、必要に応じ記録を行う。

別添1

 略

別添2

 略

別添3

 略

別添4

 略

別添5

 略

別添6

 略

認知機能検査の実施要領の制定について(依命通達)

令和4年4月21日 達(運免)第239号

(令和4年5月13日施行)

体系情報
交通部
沿革情報
令和4年4月21日 達(運免)第239号