○児童を被害者等とする事案への対応における検察及び児童相談所との連携について(通達)

令和4年6月10日

達(刑総、少対、捜一)第305号

[原議保存期間 3年(令和8年3月31日まで)]

[有効期間 令和8年3月31日まで]

みだしのことについて、次のとおり定め、令和4年6月10日から施行することとしたので、検察及び児童相談所(以下「関係機関」という。)と連携し、取組を進められたい。

なお、児童を被害者等とする事案への対応における検察及び児童相談所との連携について(令和3年11月29日付け達(刑総、少対、捜一)第368号。以下「旧通達」という。)は、廃止する。

1 趣旨

児童が被害者又は参考人(以下「被害者等」という。)となる虐待事案や性犯罪については、旧通達等により、関係機関と連携し、児童の心情や特性に配意した事情聴取等が進められてきたところであるが、本取組に関係する事項を整理の上、新たに本通達を発出し、引き続き関係機関との緊密な連携を図るものである。

2 基本的な考え方

児童からの事情聴取については、繰り返し重複した事情聴取が行われる場合には、児童にとって過度な心身の負担となるおそれがあるほか、誘導や暗示の影響を受けやすい児童の特性により供述の信用性に疑義が生じるといった指摘もある。

こうした指摘に対し、県警察では、これまでも関係機関と連携して、代表者による聴取を行うなど、児童の負担軽減及び児童の供述の信用性担保の双方に資する取組を推進してきたが、引き続き、早期の情報共有、聴取方法等について検討・協議するなど、関係機関との緊密な連携を図るものである。

3 関係機関と連携を図る際の対応

(1) 児童相談所からの通報を受ける場合

ア 通報の受理と部門間の情報共有

児童相談所において、刑事事件として立件が想定される重篤な虐待事案その他児童からの聴取方法等について協議を要すると判断した事案について、予め通知している管轄署の生活安全(刑事生活安全)課に対して通報がなされ、これを受理した場合は、個別の事案の内容に応じて部門間での情報共有を行うこと。

イ 検討・協議

事案の内容に応じ、事件捜査を行う部門(刑事部門若しくは生活安全部門又は双方)の捜査員が関係機関と、関係機関の代表者による聴取の実施を念頭に、聴取方法等について検討・協議すること。

(2) 県警察から通報する場合

県警察において児童を被害者等とする事案を認知した場合には、刑事事件としての立件が見込まれるものについて検察へ連絡した上、このうち、児童の保護の要否の判断や効果的な聴取のために児童相談所の関与・協力が必要と認められるものについて、児童相談所へも連絡し、上記(1)イに準じて、聴取方法等の検討・協議を行うこと。

(3) 関係機関との連携時の留意事項

上記(1)又は(2)により関係機関と連携する場合においても、再被害及び被疑者の逃走の防止や証拠の保全を図るため、早急な対応が求められる場合に、協議の開始や進展の状況にかかわらず、児童からの聴取及び供述調書の作成を含め、早期に実施すべき捜査を的確に実施することは差し支えない。

4 代表者による聴取実施時の留意事項

(1) 実施前における配慮

事案の認知後、代表者による聴取を実施するまでの間における、児童の記憶の変容防止等に留意すること。

(2) 必要な検討の実施

代表者による聴取を実施する場合は、聴取者、聴取の実施場所、聴取状況の記録の方法等について、関係機関と十分に検討すること。

(3) 聴取状況の記録

聴取状況の記録については、録音・録画を行うなど、客観的な方法によって記録することとし、録音・録画を行う場合には、保護者が被疑者である場合を除き、児童及びその保護者の同意を得ること。

なお、聴取状況の記録のための機材については、警察施設に配備されている取調べの録音・録画装置を用いることも差し支えない。

5 代表者による聴取実施後の情報共有

(1) 三機関による情報共有

児童を被害者等とする事案に適切に対処する観点から、代表者による聴取を実施した場合には、県警察及び関係機関の三機関による打合せの実施等の適切な方法により、必要な情報の共有に努めること。

なお、情報共有を図る際に、県警察が把握している情報の提供を求められた場合には、上記の観点から必要かつ相当と認められる範囲において、適切に対応すること。

(2) 児童相談所に対する記録媒体の提供

ア 記録媒体の提供の可否の判断

県警察において代表者による聴取を行った児童虐待事案につき、児童相談所から、代表者による聴取の状況を録音・録画した記録媒体(以下「記録媒体」という。)の提供(閲覧、貸与を含む。以下同じ。)を求められた場合には、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第47条ただし書の趣旨を踏まえ、個別具体的な事案に即して、提供の必要性及び相当性を適切に判断すること。

そのため、次の(ア)及び(イ)を踏まえ、個別具体的な事案ごとの記録媒体の使用目的・使用方法や児童相談所における記録媒体の保管・管理体制等、適切な判断に必要となる事項について児童相談所から十分に聴取を行うこと。

(ア) 必要性の判断

児童相談所長が、家庭裁判所の承認を得て引き続き一時保護を行うとき(児童福祉法(昭和22年法律第164号)第33条第5項)、親権喪失・停止の審判の請求を行うとき(同法第33条の7)などにおいて、記録媒体を証拠として家庭裁判所に提出する必要がある場合は、記録媒体を児童相談所に提供する必要性が高いことが多いものと考えられる。

また、記録媒体が家庭裁判所に提出される場合以外であっても、児童相談所においてこれらの措置の要否を検討するなどの業務を遂行するに当たって、反訳や報告書では児童の供述状況や信用性を十分に把握することができないといった理由から、児童相談所に記録媒体を提供する必要性が認められる場合があると考えられる。

(イ) 相当性の判断

記録媒体を提供することの相当性判断に当たっては、関係者の名誉・プライバシーや今後の捜査・公判への影響等の事情を総合的に勘案すること。

具体的な事情として、

○ 保管方法を含め児童相談所における記録媒体の取扱いが適切であるといえるか

○ 当初の提供目的と離れて被疑者等の第三者に提供されることはないか

といったことにも留意すること。

イ 記録媒体を提供することとした場合の具体的方法

記録媒体の提供の具体的方法については、警察施設内における閲覧、必要な期間中の貸与、必要な条件を付した上での交付等が考えられるところ、児童相談所における業務上の必要性等に鑑み、事案に即した適切な方法を選択すること。

なお、家事審判事件の記録については、当事者から閲覧・謄写等の請求があった場合には裁判所はこれを許可しなければならず(家事事件手続法(平成23年法律第52号)第47条第1項から第3項まで)、事件の関係人である未成年の利益を害するおそれ等がある場合には裁判所はこれを許可しないことができるとされている(同条第4項)ことに鑑み、記録媒体が家庭裁判所に提供されることが見込まれる場合には、記録媒体が家庭裁判所に提供された後の当該記録媒体の取扱いについて、当該児童相談所等との間で、あらかじめ必要な協議を行っておくこと。

6 連携の強化及び効果的な聴取実施のための取組

県本部及び関係機関による連絡会議を実施するなどの方法により、適切な連携体制を強化すること。

また、県警察において児童から聴取する場合に備え、聴取者の技能向上を図るための効果的な教養等の実施に努めるとともに、聴取方法等に関する関係機関との検討・協議を円滑に実施できるよう、平素より、関係機関を交えた勉強会を開催するなどして認識の共有を図ること。

7 報告

上記5(2)により児童相談所からの記録媒体の提供の求めがあった場合には、県本部事件主管課を通じ、刑事総務課に報告すること。

なお、本件に関する定期報告の要領については、別に定める。

児童を被害者等とする事案への対応における検察及び児童相談所との連携について(通達)

令和4年6月10日 達(刑総、少対、捜一)第305号

(令和4年6月10日施行)

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令和4年6月10日 達(刑総、少対、捜一)第305号