○アダルトビデオ出演被害問題に係る対策の推進について(依命通達)

令和4年7月7日

達(生環)第350号

[原議保存期間 3年(令和8年3月31日まで)]

[有効期間 令和8年3月31日まで]

みだしのことについては、次のとおりであるので、効果的な推進に努められたい。

なお、アダルトビデオ出演強要問題に係る対策の推進について(令和4年4月1日付け達(生環)第23号。以下「旧通達」という。)は、廃止する。

1 趣旨

アダルトビデオ出演被害問題については、令和4年3月31日、いわゆるアダルトビデオ出演強要問題・「JKビジネス」問題等に関する関係府省対策会議において、アダルトビデオ出演被害に係る緊急対策パッケージが取りまとめられ、政府一体となって対策を推進しているところであるが、さらに、令和4年6月22日、性をめぐる個人の尊厳が重んぜられる社会の形成に資するために性行為映像制作物への出演に係る被害の防止を図り及び出演者の救済に資するための出演契約等に関する特則等に関する法律(令和4年法律第78号。以下「AV出演被害防止・救済法」という。)が公布され、性行為映像制作物への出演に係る被害の発生及び拡大の防止を図り、並びにその被害を受けた出演者の救済に資するための諸規定が設けられた。

アダルトビデオ出演被害は、撮影された者の心身と私生活に将来にわたって取り返しの付かない重大な被害を生じさせるものであることから、県警察としてもこの問題に継続的に取り組み、必要な対策の推進を図るものである。

2 アダルトビデオ出演強要問題専門官の指定等

(1) アダルトビデオ出演被害問題統括官の指定

県本部にアダルトビデオ出演被害問題統括官を置き、生活環境課課長補佐をもって充てる。

(2) アダルトビデオ出演被害問題統括官の任務

アダルトビデオ出演被害問題統括官は、次に掲げる任務を行うものとする。

ア アダルトビデオ出演被害問題に関する各種法令を適用した取締りの推進の統括

イ スカウトに対する検挙及び指導・警告活動の推進の統括

ウ 被害防止に関する広報・啓発活動、警察安全相談窓口の周知活動等の統括

エ アダルトビデオ出演被害問題に関する相談の管理、相談対応者の指導・教養及び関係機関との連携の統括

オ その他アダルトビデオ出演被害問題に適切に対応するために必要な事項

3 取締り等の推進

(1) 各種法令の適用を視野に入れた取締りの推進

アダルトビデオ出演被害に関する相談、被害申告等を受理した際は、以下のような各種関係法令を視野に入れた取締りを推進すること。

○ AV出演被害防止・救済法違反

○ 刑法(明治40年法律第45号)(わいせつ物頒布等罪、不同意性交等罪、淫行勧誘罪、強要罪、傷害罪、暴行罪、脅迫罪等)

○ 私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(平成26年法律第126号)違反

○ 職業安定法(昭和22年法律第141号)違反

○ 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)違反

○ 売春防止法(昭和31年法律第118号)違反

○ 著作権法(昭和45年法律第48号)違反

○ 児童福祉法(昭和22年法律第164号)違反

○ 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)違反

○ 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)違反

また、相談等の受理のほか、各種警察活動を通じた端緒情報の入手に努めること。

(2) スカウトに対する検挙及び指導・警告活動の推進

アダルトビデオ出演被害問題は、悪質なスカウト行為を端緒とすることもあるところ、各種警察活動を通じて把握したスカウトに関する情報等を踏まえ、主要な駅や繁華街等の路上等で行われるスカウト行為やSNSを利用して行われるスカウト行為に対し、迷惑防止条例、軽犯罪法(昭和23年法律第39号)、職業安定法等の関係法令を適用した検挙及び指導・警告活動を推進するとともに、関係機関や地域と連携した合同パトロール等を実施するなど、総合的な取組を推進し、被害の防止に努めること。

4 広報・啓発活動の推進

(1) 大学・高校、企業等における広報・啓発活動の推進

政府においては、毎年4月を「若年層の性暴力被害予防月間」とし、当該期間中、関係機関が相互に連携しつつ、政府と一体となって必要な取組を集中的に実施することとしていることから、4月中は、特に教育委員会や学校等の関係機関、企業等と連携し、大学、高校におけるイベントやオリエンテーション、被害防止教室等の機会を利用して、アダルトビデオ出演被害問題等に関する被害防止に係る広報・啓発活動を推進すること。

(2) 関係機関、関係部門等との連携による被害防止活動の推進

アダルトビデオ出演被害問題に関する被害防止活動に当たっては、内閣府が実施する「青少年の非行・被害防止全国強調月間」(毎年7月)、「子供・若者育成支援強調月間」(毎年11月)、「女性に対する暴力をなくす運動」(毎年11月12日~同月25日)等の機会を活用するなど、関係機関等と連携して取り組むこと。また、性犯罪被害防止や非行防止等の各種防犯教室、商店街のイベントなどの各種地域活動など関係部門と連携の上、あらゆる機会を捉え、被害防止活動を推進すること。

(3) 各種広報媒体を活用した被害防止の広報啓発の推進

各署のホームページ、交番だより、地域安全だより、自治体の広報誌(紙)、テレビ・ラジオ、ポスター、リーフレット等各種広報媒体を活用し、アダルトビデオ出演被害問題に対する警察の取組や相談窓口等について広報するなど被害防止のための広報啓発を推進すること。

5 相談支援体制の強化及び関係機関との連携

(1) 相談しやすい環境の整備と警察の相談窓口の周知

被害者の心情に配慮した場所において被害者の要望に応じて女性警察職員が対応できるようにするなど、相談者が相談しやすい環境の整備に努めるとともに、傷ついた心理に寄り添う対応を図ること。

また、学校等における被害防止に関する広報・啓発活動の機会や、ホームページを始めとした様々な媒体を活用し、県本部、署、交番等の相談窓口において、アダルトビデオ出演被害問題に関する相談を24時間受け付けていること、また、プライバシーが守られることについて、積極的に周知すること。

(2) 相談受理担当者、取締担当者等に対する教養

署においてアダルトビデオ出演被害問題に関する相談を受ける相談窓口担当者、夜間に事件相談に対応することが想定される女性警職員等に対して、アダルトビデオ出演被害問題の現状、相談を受理した際や事件捜査に当たっての留意事項、AV出演被害防止・救済法の概要、関係機関との連携方策等について教養を行い、対応に遺漏のないようにすること。

(3) 関係機関との情報共有・連携強化

アダルトビデオ出演被害に関する相談がなされる機関としては、警察のほか、性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター、法務省の人権擁護機関、日本司法支援センター(法テラス)、違法・有害情報相談センター(総務省委託事業)等が想定されるところ、被害者がいずれの窓口にアクセスしたとしても、相談内容に応じて最も適切な関係機関に確実に引き継がれるようにする必要がある。そこで、他機関において警察が対応すべき事案を認知した場合には、速やかに警察への連絡がなされるよう、また、警察に相談があった場合で、その内容、相談者の意向等に照らして、警察以外の機関による対応が必要と認められるときには当該機関へ迅速に引き継がれるよう、平素から関係機関との情報共有及び連携の確保・拡充に努めること。

6 留意事項

アダルトビデオへの出演被害に係る相談者等から事情聴取を行う際には、相談者等の置かれた状況や心情を十分に酌み取り、契約書があること等を理由に相談に十分に応じないなどの不適正な対応はしないこと。

また、相談の内容が性的プライバシーに関するものを含むものであるという特徴から、聴取の方法、時間、場所等についても十分に配意すること。

7 報告

(1) 認知時の報告

アダルトビデオ出演被害問題に係る相談、事件を認知した場合には、その都度、生活環境課に関係資料の写しを送付すること。

(2) 取組結果の報告

アダルトビデオ出演被害問題の相談受理・事件処理状況及び取組結果については、生活環境課環境犯特捜係宛てにFP-WANメールにより報告すること。

なお、報告期日、報告様式等については、別途連絡する。

アダルトビデオ出演被害問題に係る対策の推進について(依命通達)

令和4年7月7日 達(生環)第350号

(令和5年7月13日施行)

体系情報
生活安全部
沿革情報
令和4年7月7日 達(生環)第350号
令和5年7月13日 達(刑総)第291号