○融雪出水期における防災態勢の強化について(通達)

令和5年3月17日

達(災対、地企、総指、交規)第116号

[原議保存期間 1年(令和7年3月31日まで)]

[有効期間 令和6年3月31日まで]

みだしのことについては、次により災害警備態勢の強化に努め、災害発生に対する警備の万全を期されたい。

なお、「雪害防災対策の更なる推進について」(令和4年3月18日付け達(災対)第5号)は、廃止する

1 趣旨

今般、中央防災会議会長(内閣総理大臣)から今冬の融雪出水期における防災態勢の強化について協力要請がなされ、これを受け警察庁から各都道府県警察に対し、融雪出水期における防災態勢の強化について通達されたところである。

昨年、本県においては、除雪作業中の事故による人的被害や雪崩による集落の孤立事案等が発生したところであるが、本年においても今後、気温上昇に伴う雪崩及び落雪等の発生が懸念されるため、引き続き融雪出水期における防災態勢の一層の強化を図ろうとするものである。

2 気象等に関する情報の収集・伝達の徹底

雪崩危険箇所はもとより、雪崩危険箇所とされていない箇所においても、多量の降雪があった場合には、雪崩の危険が高くなることから、積雪状況、なだれ注意報、融雪注意報等の気象に関する情報に注意を払い、現地における融雪の状況等の迅速な把握に努めること。気温上昇に伴う雪崩及び落雪の発生、融雪に伴う出水による河川の氾濫及び土砂災害の発生のおそれのある場合には、住民、地方公共団体、関係機関等に迅速に伝達し、注意喚起すること。特に、土砂災害については、前兆現象が発生する場合もあるため、そのことについて住民への周知に努めること。

3 地域住民への具体的な情報提供

巡回連絡、インターネット(ホームページ、SNS等)、POLICEメールふくしま等を活用し、雪崩による危険箇所、過去に発生した被害に関する情報、被害防止に資する情報を住民(特に高齢者等)へ積極的に発信すること。また、情報発信に当たっては、地域住民や車両運転者等、幅広い対象に対し、わかりやすい表現を用いて行うこと。

4 災害即応態勢の確立

災害時は、職員の対応能力を大幅に上回る業務が発生するため、福島県警察緊急時業務継続計画(平成24年8月1日付け達(災対、務、生企、地企、刑総、交企、公)第301号)に基づき、業務継続性の確保に努めること。

雪崩、河川の氾濫及び土砂災害による被害が発生した場合には、被害規模に関する概括的情報等の被害情報を速やかに関係機関と共有し、連携して対応すること。また、救援等の要請及びその実施を迅速に行うため、あらかじめ関係機関との間で連絡先の確認及び点検を行うとともに、迅速かつ確実な情報共有・伝達方法について周知徹底すること。

雪崩、大雪後の融雪に伴う出水による河川の氾濫及び土砂災害発生時には、迅速に人員及び装備資機材を投入し、救出救助体制を確立して的確に対応すること。

5 当面続く降積雪期に関する改めての留意事項

今後もしばらく降積雪期が続くことから、改めて「降積雪期における防災態勢の強化等について」(令和4年12月19日付け達(災対、地企、総指、交企、交規)第542号))の内容に留意すること。

特に、雪下ろし等除雪作業中の事故防止に向け、作業時の家族・近所への声かけ、複数人での作業の実施、携帯電話の携行、命綱・ヘルメットの正しい着用、はしごの固定、除雪道具の点検・手入れ、ガス設備の損傷事故の防止、速やかな排雪、歩行型ロータリー除雪機による事故の防止等の留意点について普及啓発・注意喚起の取組を促進すること。

6 感染症対策

警備本部等を設置する際は、従事者の健康管理を徹底するとともに、手洗い・手指消毒、状況に応じたマスクの着用等、基本的な感染防止対策を徹底するとともに、部隊活動の際は、活動エリアを細分化して部隊間の接触を回避し、感染防止に配意した宿営地の選定、消毒等の徹底、感染防護資機材の適切な使用に配意する等、感染症対策を確実に行うこと。

7 その他

近年の雪害対策に係る警察措置の好事例や反省・教訓等を踏まえて作成された「警察における雪害対応について」(令和3年2月15日付け警察庁丁備二発第19号ほか)を添付するので、執務の参考とされたい。

令和3年2月15日

警察庁丁備二発第19号、丁生企発第117号

丁交企発第52号、丁規発第14号

警察における雪害対応について

近年、北海道や日本海側を中心に、記録的な大雪による被害が断続的に発生している。この点、平成30年2月の福井県を中心とした大雪では、高齢者の除雪・排雪作業中の事故及び車両内における一酸化炭素中毒事案に加え、大規模な車両立ち往生や交通機関の不通等の交通障害が、昨年12月や今年1月の大雪では、高速道路上で大規模な車両の立ち往生が発生し、国民生活に大きな影響が生じたところである。また、今年1月には、雪による視界不良を原因とする多重交通事故も発生している。

雪害については、地震、豪雨、台風等と比べ、危機意識が浸透しづらく、また、被害発生のリスクを実感しにくいことから、被害申告等通報の遅れ等が懸念される。

そこで、近年の雪害対応に係る警察措置の好事例や反省・教訓を踏まえ、「基本的な雪害対応の在り方」(別紙1)及び平素を含む雪害の各段階における警察措置事項を示した「警察における雪害対応」(別紙2)を作成したので、参照の上、雪害防止対策に万全を期されたい。

なお、沖縄県警察にあっては、執務の参考とされたい。

別紙1

基本的な雪害対応の在り方

雪害対応に当たっては、地震、豪雨、台風等他の自然災害との違い及び過去の第一線における対応の反省・教訓を踏まえ、以下の点に留意する必要がある。

1 降雪期から融雪出水期まで長期にわたり、被害発生のリスクが継続するため、長期間にわたり緊張感をもって状況把握を継続し、タイムリーに被害発生の兆しを把握するための取組を徹底する。

2 雪害のリスクは、気象情報等を通じ、事前に予測することが可能であり、それらの情報を常に把握し、具体的な被害を想定しつつ、住民への注意喚起や事案発生時の対処に向けた体制づくりを推進する。

3 比較的積雪の少ない地域では、住民が、雪害のリスクに対する当事者意識を持ちにくく、また、比較的積雪の多い地域においては、大雪が甚大な被害(災害)につながるとの実感を持ちにくいため、平素から住民に対して適切な情報発信を行う。

4 雪害は、軽微な被害が広範囲にわたって発生する場合が多く、個々の被害通報の中には、人の生命に関わる事案(車両の立ち往生に伴う凍死・一酸化炭素中毒等)が潜在している場合がある。したがって、現場から報告される(現在進行形の)情報を楽観的に捉えずに、必要に応じて人員や装備資機材を集中的に投入し、人の生命に関わる事案の兆しや被害状況を迅速に把握するとともに、他の災害対応機関や民間企業・団体、地域住民と情報共有・連携しながら適切に対応する。

5 現場における対応に当たっては、自治体、国土交通省(道路管理者)、防衛省(自衛隊)等の関係機関と緊密に連携し、それぞれの役割分担を明確にすることで、警察が本来対応すべき人の生命、身体に危険を及ぼす事案への対応がおろそかにならないようにする。

別紙2

警察における雪害対応

1 平素の措置

(1) 都道府県警察内共通・通信指令(本部各部・署)

ア 降雪時の機動力確保

○ 多くの職員が参集困難となる事態等を想定し、あらかじめ要員を指定するなど、様々な情勢に対応できる体制を検討する。

○ 積雪等によりパトカー等が使用不能となる場合を想定し、徒歩による臨場、雪上でも走行可能な警察車両の運用、隣接交番・警察署からの応援体制、県境付近における隣接県との相互支援体制をあらかじめ確認するなど、機動力の確保に努める。また、必要に応じ、機動力がある四輪駆動式の高床式パトカーについて、積雪時等における警察署から遠隔地に所在する交番、駐在所への配備を検討する。

○ 警察用航空機については、救助活動をはじめ、被害状況に関する情報収集、警察官又は物資の搬送等雪害発生時における各種活動を想定し、災害対応機関や隣接都道府県警察と航空機整備期間を調整するなど、突発時の確実な運用が図られるよう配意する。

○ 被害発生場所、天候、積雪の状態等により、スノーモービルや雪上車、スキー等の装備資機材を活用できるよう、その配備を検討する。

イ 降雪時の対応に必要な装備・資機材の確保

○ 警察本部、警察署等に配備されているスコップ、ライト、発動発電機等の資機材や除排雪用具の管理・点検、修繕等を徹底しておくとともに、資機材の取扱要領を習得する訓練を行う。また、必要に応じて除雪機等の整備を検討する。

○ スタッドレスタイヤ等の雪路用タイヤ、冬用ワイパー、タイヤチェーン、スノーブラシ、スタック時の脱出用具、毛布、車窓用凍結防止剤(ウィンドウォッシャー液)等冬用車両部品、スコップ等除雪に係る装備資機材等を計画的に整備する。また、気象予報等を踏まえ、時期を捉えた冬用タイヤへの交換やタイヤチェーンの脱着訓練を行う。

○ ドローン、スノーモービル等の活用や、これらの資機材を保有する民間企業等との協定を事前に締結するなどして連携を図ること。

なお、ドローンの活用に係る協定の締結に当たっては、十分な時間的余裕をもって警察庁担当に報告すること。

ウ 本部・署における通信指令体制の確保

○ 大雪時には、110番通報の増加により通常の110番通報受理指令体制では対応が困難となることを想定し、警察本部通信指令課(室)及び、警察署通信指令業務担当者(当直対応含む)の双方において、あらかじめ支援要員を指定するなどして受理、指令体制を確保する。支援要員数については、雪害対応が長期間に及ぶことも想定し、交替要員の十分な確保を含めて検討を行う。

○ 降雪期に入る前に、事案発生を想定した110番通報受理無線指令訓練等を行う。また、支援要員が応援時に的確な対応が出来るよう、通信指令システムの取扱いに習熟させる。

エ 地域・交通・警備各部門の相互連携の確保

110番通報を受けて初動対応に当たる地域部門、機動隊等の部隊運用を行う警備部門及び交通対策を担当する交通部門が、一体となって迅速な事案対処ができるよう、担当者の連絡先、各々の役割(任務)等の情報を相互共有するとともに、事案発生時の対応要領等について事前に打合せを行うなど、降雪期に向けて緊密な連携を図る。

オ リエゾンの適切な指定

○ 刻々と変化する被害状況に適切に対応するため、自治体の災害担当者及び関係機関から災害対策本部等へ派遣されたリエゾンとの調整を適時適切に行う。また、タイムリーな情報収集ができるようにするため、自治体へ派遣するリエゾンの指定に当たっては、関係機関から派遣されているリエゾンの職種や階級を踏まえつつ、経験豊富な幹部警察官を充てるよう留意する。

○ 事案への対応現場、警察部内の災害対策本部及び都道府県の災害対策本部等に派遣されたリエゾンの間で、情報が迅速、正確かつ網羅的に共有できる連絡方法(連絡先)を事前に取り決め、関係職員に周知する。

カ 自治体等関係機関との連携

雪害対応を担当する警察本部等の各担当者は、災害対応の最高責任者である都道府県知事の下で災害対応全般を統括する、危機管理監等の災害対応責任者以下の知事部局の担当スタッフと、事案発生時に情報共有・連携が図れるよう、日頃から、人事異動や担当部署の変更を踏まえた最新の連絡先や任務内容を共有し、必要時に直接相互に連絡を取れる体制を構築する。また、積雪シーズンを迎える前には、事案発生時の対応要領等の事前打合せを確実に行う。道路管理者、自衛隊、消防等の関係機関との間においても、知事部局の場合と同様、各級実務担当者が各々のカウンターパートと日頃から連絡体制の構築、連絡先等情報の共有、事案発生時の対応要領の事前打合せ等を確実に行う。

キ JAF等関係機関との連携

一般社団法人日本自動車連盟(以下「JAF」という。)等との間で、日頃から、担当スタッフとの連絡体制の構築を図るとともに、相互に円滑な情報の共有が図れるよう協定の締結等の取組を推進する。

なお、JAF等の関係機関が、単独での対応等により遭難等の二次被害に遭うことがないよう、積極的な警察への通報・相談を励行するよう働き掛けを行う。

ク 大雪に伴う被害の防止に関する情報発信

巡回連絡や警察本部等のホームページ、SNSをはじめとする各種広報媒体を活用し、雪崩による危険箇所、高速道路や国道等の主要幹線道路の通行止め、過去に発生した集落の孤立や大規模な車両立ち往生に関する情報、雪道における安全な運転方法等、被害防止に資する情報を積極的に発信する。また、情報発信に当たっては、地域住民のみならず、車両の運転者等を含め、必要な発信先に漏れなく、かつタイミングよく情報が到達するよう、サービスエリア等の施設との連携を図るとともに、公益財団法人日本道路交通情報センターに情報発信を依頼するなど、多様な情報媒体や情報発信ルートを幅広く活用する。

(2) 交通渋滞への対応(主に交通部)

ア 情報共有体制の確保

各道路管理者等と都道府県警察の担当間で豪雪時の連絡窓口を明確化し、連絡体制を確保する。

イ 立ち往生車両の発生が懸念される道路の把握

降・積雪による、過去の車両立ち往生事案の発生場所等について、道路管理者と共に把握する。

また、道路管理者がチェーン規制を実施する道路の区間について、事前に調整を受けた場合には、降雪の範囲が広域にわたるおそれを考慮し、隣接都府県と調整しながら、当該区間に係る広域的なう回路について検討した上で、交通管理上必要な意見を述べる。さらに、必要に応じ、チェーン装着場所や立ち往生車両の移動先となる待避場所の設置について道路管理者に要請する。

ウ 交通安全教育・事前広報啓発

積雪地域における雪路用タイヤの装着、タイヤチェーン、スコップ、牽引ロープ、防寒着、手袋、長靴等の装備の携行及び雪道における安全な運転方法(例:速度を十分に落とし、車間距離を十分にとったり、急発進、急ブレーキ、急ハンドル等は避けたりすること。視界が悪いときは霧灯や前照灯を早めに点灯すること。)について、運転免許に関する各種講習、自動車教習所における教習、交通安全に関する講習会、ラジオ、ホームページ等様々な機会やツールを活用して幅広い広報に努める。特に、積雪により立ち往生した場合には、排気ガス(一酸化炭素)による中毒を防止するために、車内の換気やマフラーが埋まらないよう除雪を行うべきことや、除雪できない場合であればエンジンを切るべきことについて注意喚起を行う。

(3) 家屋倒壊・孤立・雪崩・遭難への対応(主に地域(生安)部・警備部)

ア 雪崩危険箇所等の把握

雪崩発生時に迅速な部隊の投入を可能とするため、平素から雪崩による大規模な被害が発生するおそれがある箇所の把握に努める。

イ 警察署員で構成する部隊の体制整備と救出救助訓練

技能指導官又は特別救助班員を指導者として活用するなどして、警察署員等に対して救出救助訓練を実施する。

ウ 除雪作業中の事故防止対策

高齢者世帯等に重点を置き、除雪作業中の転落等の事故防止に係る啓発活動を行う。

エ 警察署における署員の招集、機動隊等本部員の派遣要請等体制の確認

事案発生時の自署の体制を整備しておくほか、大雪等により署員が出勤できないなどの事態が生じ、自署又は自県での対応が困難な場合における機動隊等の本部執行隊や管区機動隊等の派遣要請を行う場合の方法、手順を含めた計画を策定する。

2 大雪により災害が発生するおそれがあると予想されたとき

(1) 都道府県警察内共通・通信指令

ア 体制の確認、資機材の点検等

○ 体制の決定・示達

積雪等による被害の発生が予想される場合には、招集指示が遅れれば担当職員の参集が困難となり得ることを念頭に置き、招集のタイミングについて検討を行う。

○ 警察署における署員の招集

警察署においては、管内における気象状況、交通状況その他管内の情勢を把握するとともに、110番通報受理件数の推移や通報内容・種別、事案対応の経過や処理結果を確認しつつ、事案に応じて臨機応変に署内体制の変更・改善を図る。

○ 必要な資機材の点検・整備

あらかじめ、大雪時に必要となる除雪用具や照明等夜間資機材等を点検、整備する。特に、バッテリー等消耗品については、事前に機能点検を行うなど有効性を確認するとともに、それらが不足している場合には補充確保に努める。

イ 地域・交通・警備部門が対策等の事前打合せによる連携の強化

地域部門、交通部門及び警備部門が一体となって迅速な事案対処ができるよう、事案発生時の対応要領等について、気象状況等を踏まえた具体的な事前打合せを行う。

ウ 関係機関との早期連携

被害の発生を待つことなく、知事部局、道路管理者等関係機関のカウンターパートと積極的に連絡を取り、情勢に係る情報共有や、関係機関相互の連携による各種対策の実施に向けた準備を行う。

エ 地域住民への情報発信

交番や駐在所の勤務員は、平素から管内住民や町内会等と必要時に連絡が取れる体制を構築し、被害発生が予想される状況となれば、積雪状況、交通状況、被災状況、孤立事案等の発生状況等の確認のため、積極的に管内住民等と連絡を取り合う。

なお、住民等に対する捜索・救助等への協力依頼は、住民の遭難等二次被害が発生するおそれがあるため、慎重に判断する。

(2) 交通渋滞への対応(主に交通部)

ア 広報啓発の実施

早めの雪路用タイヤの装着やスコップ等装備の携行のほか、排気ガスによる一酸化炭素中毒防止について、あらゆる機会を捉えて注意喚起する。

イ 降雪情報の把握

気象庁(https://www.jma.go.jp/jma/)の情報から降雪が予想される具体的な地域や降雪量の時間的推移を把握し、特に降・積雪量が多い地域を管轄する警察署に対し、立ち往生車両等の迅速な把握、報告等について注意喚起を行う。

ウ 必要な体制の確保

積雪に伴う交通障害の発生が予想される場合には、講じるべき警察措置を検討した上で、必要な体制を確保する。また、対応を警察署任せにすることなく、警察本部で情報収集を行い、適切な対応を指示するとともに、機動隊、交通機動隊等の応援を積極的に検討する。通行禁止規制の実施や交通誘導における人員不足が見込まれる場合は、警察庁・管区警察局を通じて広域緊急援助隊(交通部隊)又は特別交通部隊の派遣要請を実施する。

エ 道路管理者による規制協議に係る要請

道路管理者による通行の禁止又は制限の実施に先立つ道路法(昭和27年法律第180号)第95条の2第1項に基づく意見の聴取について、十分な時間的余裕をもって行うよう道路管理者に要請する。

(3) 警察署における署員の招集、機動隊等本部員の派遣要請等体制の確認(主に地域(生安)部・警備部)

警察署員の招集及び機動隊等本部員の派遣要請に係る方法・手順について再確認する。

3 大雪により重大な災害が発生するおそれがあると予想されたとき

(1) 都道府県警察内共通・通信指令

ア 災害警備連絡室又は同対策室等の設置

災害警備連絡室等が十分に機能するよう、必要となる業務の内容と分量に応じた要員を十分に確保し、実効性のある体制を構築する。

イ 通信指令体制の確保

降雪時の110番通報増加に対応できるよう、あらかじめ本部通信指令課(室)及び署通信室への支援体制を確立する。

ウ 110番通報受理内容及び受理件数の推移に係る状況把握の開始

○ 110番通報の内容及び件数の推移等は、災害の被害規模を把握する上で重要な要素となることを認識する。

○ 110番通報件数については、正確な数を把握できない場合であっても、初動時から概数と通報内容の傾向を警察庁へ報告する。その後、時間の経過に伴って確実な集計と分析を行い、警察庁へ定期的に報告する。

エ 情報収集と部門間の連携

関係部門が速やかに事案処理に当たれるように、110番通報件数や集中する通報内容、気象情報、自治体の保有する被害情報等を、関係する部門間で共有する。また、事案処理に当たっては、適切な処理が可能となるよう関係部門が緊密に連携して対応に当たる。

オ 通信指令課(室)による雪害注意喚起指令

雪害対応に従事する現場警察職員の安全を確保する観点から、災害関連情報の提供や対応方針、留意事項に関する注意喚起を行う。

カ 各署等への指示・連絡

各署等に対し、情報収集、警戒体制の強化及び雪害情報の本部即報について指示する。

キ 時系列の作成

全ての部内関係部署に対する報告・連絡・指示・対応結果、道路管理者や民間も含めた関係機関との情報共有・連携を含めた事案対応の経過について、時系列による確実な記録化を図る。

ク 自治体との連携

(ア) 自治体の災害対策本部との連携

自治体に災害対策本部等が設置された場合は、リエゾンを介して、自治体及び関係機関が保有する情報の収集、警察が保有する情報の提供を行うなどして情報を共有し、自治体との連携を密にした迅速な事案対応を行う。

(イ) リエゾン派遣した警察職員の役割

① リエゾンは、特に人的被害及び広報に関する情報を正確に掌握するとともに、各機関のリエゾンの意見や要望を取りまとめ、その内容を確実に災害警備本部等の指揮本部に速やかに報告する。

② 災害警備本部等を通じて把握した人的被害情報等については、自治体の災害対策本部等に速やかに連絡し、対策についての協議や自治体の適切な意思決定に貢献する。

ケ 気象状況を踏まえた各種映像を活用した情報の収集

警察用航空機ヘリテレ映像、モバイル映像、交通監視カメラ、高度警察情報通信基盤システム(PⅢ)、災害情報投稿サイト等の映像を活用した雪害情報の収集に努める。

コ 通報内容の正確な把握

除雪要請の中にも救助を要する事案が潜在していることから、通報を受理した際には、通報内容を正確に把握し、救助の要否について十分に見極める。

サ 通報内容に応じた的確な対応

○ 近接した時間又は場所において、同種事案の通報が複数あるなど、事案が輻輳すると、事案の取り違えや取りこぼしが発生するおそれがあるため、警察本部等から正確な現場臨場を指示した上で、現場到着時の状況報告、通報者や現場に居合わせた者等からの事情聴取、処理の経過及び結果の報告等を確実に実施させるとともに、現場警察官、警察本部、警察署等複数で事案の同一性を確認する。また、事案が輻輳すると、通報から数時間経過しても処理状況が未処理のままとなっている場合も散見されることから、未処理事案の進捗状況を把握する専従員を指定して対応する。

○ 以下の例のような未処理や取り違え等を引き起こしやすい事案については、事案に応じた適切な対応が必要であり、事案の認知時点から処理の進捗状況を把握し、適切に対応する。

例1) 積雪等によるスリップに起因する車両の立ち往生等

積雪又は凍結路面上でのスリップ事故や車両の立ち往生は、短時間で渋滞を引き起こすことがある。また、同一路線上で大型車両の立ち往生が点在して発生した場合は、大規模な渋滞につながることが考えられるため、発生場所が近接している場合や同一路線上において複数の車両滞留が発生している場合等は、道路管理者等と通行止めに関する協議と規制の実施、渋滞状況の推移の確認、う回措置等交通整理を目的とした警察官やパトカーの増員配置の検討と現場派遣等を行う。

例2) 積雪により走行不能となった車両運転者からの除雪要請

大雪による積雪が始まると、交通量が多い国道等の主要幹線道路を優先して自治体等の除雪作業が開始されることが多く、住宅街等の生活道路、山間部の国道等の除雪が後回しとされ、最初の除雪要請の通報から数時間経過しても状況が一向に改善されず、何度も通報が寄せられる場合がある。このような場合は、時間の経過とともに通報当初の状況に変化が生じ、車両が雪に埋没したり、降車して暴風雪の中を徒歩にて避難を始めるなど運転者等に命の危険が及ぶことが予想されることから、関係機関等と緊密に連携を図りつつ、警察官を現場に臨場させて現場の状況を確認し、適切に対応する。

例3) 雪崩等による救助要請

雪崩に巻き込まれる事案、大雪による車両埋没等の要救助事案は、第一報の時点では限られた情報の中で、迅速かつ集中的に機動隊等の部隊を投入して救出救助活動を開始することとなる。そのため、現場の状況、救助を要する対象を可能な限り迅速正確に把握するため、氏名、年齢、性別、身体特徴、服装、住所、地番、建物の居住者に関する情報、車両の登録番号及び塗色等車両に関する情報等を集約し、通報内容と現場の状況報告との突合、精査を行い、事案を取りこぼすことのないよう留意する必要がある。

シ 正確な情報の収集

大雪時には、署員が出動できないなど限られた人員により情報収集等に当たらなければならないほか、除雪が行き届かずにパトカー等の車両による迅速かつ広範囲な情報収集が困難となるため、交番、駐在所や事案処理中の警察官から随時情報を収集・集約するとともに、現場で救助や除雪等に携わる関係機関との連絡を密にすることにより、可能な限り被害情報の把握に努める。

ス 指揮官の派遣

現場の指揮官については、現地で関係機関との活動調整等を行うことが求められるため、災害に関する知見や指揮能力等を有するしかるべき立場の者を充てる。

(2) 交通渋滞への対応(主に交通部)

ア 広報啓発の実施

雪路用タイヤの装着やスコップ等装備の携行について、幅広く広報する。特に、排気ガスによる一酸化炭素中毒防止の注意喚起や交通総量抑制を目的とした不要不急の外出を控える旨の呼び掛けを徹底する。

イ 降雪情報の把握

2.(2)イ 参照

ウ 必要な体制の確立

2.(2)ウ 参照

エ 迅速な情報共有の実施と道路管理者に対する通行止め規制等の協議開始要請

110番通報や、現場警察官、道路管理者等からの立ち往生車両、交通事故等の発生に係る情報については、早期の通行止め規制の実施への判断要素となることから、道路情報連絡室、災害警備連絡室等に即報し、関係機関で情報の共有を図る。また、道路管理者に対しては、十分な時間的余裕をもって通行止めに係る協議等を行うよう要請する。

オ 道路管理者に対する通行の禁止規制の要請等

道路管理者と緊密に連携し、道路利用者に対してタイヤチェーンの携行及び装着の呼び掛けを行った上で、必要な道路においては、早期に、道路管理者による通行の禁止、制限等が実施されるよう要請する。また、優先的に除雪を行うべき路線の除雪を強く要請する。

さらに、通行止め等を行う場合には、道路管理者と連携して、テレビ、ラジオ等において、夜間帯や広域的に行うときも含め、通行止めを行う場所等について早期の事前広報を確実に実施し、その周知を徹底する。

カ 早期の交通規制の検討と交通誘導の実施

交通事故や大型車の立ち往生等が発生すると、当該道路を通行する車両や流入する車両による著しい渋滞が発生する可能性が高くなることから、交通事故や大型車の立ち往生等を認知した場合には、発生現場に早期臨場し、当該現場の状況、道路形状及び交通量、周辺道路の交通状況等を把握するとともに、通行車両や流入車両の滞留を想定し、当該現場付近への更なる車両流入を防止するため、必要な体制を確保した上で、周辺交差点における早期の交通誘導を実施する。

なお、積雪に伴い多数の車両の立ち往生等が生じているにもかかわらず、道路管理者による通行の禁止又は制限が早期に実施されない場合には、警察による交通規制を実施した後に道路管理者による措置へと引き継ぐことを検討する。

(3) 家屋倒壊・孤立・雪崩・遭難への対応(主に地域(生安)部・警備部)

ア 部隊出動待機

大規模な雪害(集落の孤立、雪崩等)の発生が予想される場合は、機動隊等の部隊を出動待機させる。

イ 部隊の援助要求の検討・実施

被害規模及び対応の見通しを踏まえ、警察災害派遣隊、隣接都道府県警察等への援助要求を検討し、実施する。この場合、大雪による渋滞や車両のスタックにより、速やかに現場に到達できないことが予想されるため、気象や道路状況を勘案して援助要求を早めに行うことに配意する。

なお、土地勘のない派遣部隊が受援部隊と情報を共有し、滞りなく部隊活動を展開できるよう受援体制を十分に確立する。

4 大雪により何らかの災害が発生している可能性が極めて高いとき

(1) 都道府県警察内共通・通信指令

ア 警察庁への報告

○ 人的被害、110番通報件数等の情報種別ごとに、警察庁との連絡に専従する職員を複数指定する。

○ 警察庁からの調査指示等が確実に受理され、かつ、速やかに調査結果が報告されるよう、必要な人員を確保して報告担当者として指定する。

○ 雪害の被害規模を推定し得るような象徴的な事案(雪崩、大規模な交通渋滞等)については、情報源(誰からの通報なのか)を明らかにした上で速報する。

イ 警察職員の殉職・受傷事故の防止指示

行方不明者の捜索に伴い、警察職員が遭難するなど二次被害発生のおそれがあることを踏まえ、各種事故防止に万全を期するよう指示する。

ウ 県災害対策本部会議等の参加、情報共有

災害対策本部会議等に幹部を出席させ、関係機関との情報共有・連絡調整等を図る。

エ 安否不明者相談窓口の開設

安否不明者相談ダイヤルへの対応要員を確保するなど、安否不明者情報の処理体制を構築する。

オ 人的被害の広報対応

○ 雪害をはじめとする各種災害に係る人的被害数の広報については、原則として都道府県が行うこととなっていることから、警察署も含め警察において都道府県との間で調整なく先んじて人的被害の広報をすることがないようにする。

○ また、報道発表ととられかねない発言がないよう、災害警備本部において情報管理を確実に行う。

カ 自治体へのリエゾンの増強

被害発生地域の自治体へのリエゾンを増強派遣する。

キ 人的被害に関する情報の集約

○ 被害実態を早期に把握するとともに、災害警備本部において情報の一元的管理を徹底する。

○ 災害警備本部は、検視担当部門と適切に情報共有を図る。

○ 都道府県に対し、人的被害に関する情報を速やかに連絡する。

○ 適切な災害死認定のために都道府県へ積極的に働き掛ける。

○ 都道府県からの死者認定等人的被害関連情報については、タイムリーに収集し、警察庁へ報告する。

○ 捜索救助活動の経過を都度把握し、時系列として記録する。

(2) 交通渋滞への対応(主に交通部)

ア 早期の交通規制の検討と交通誘導の実施

3.(2).カ 参照

イ 広域的かつ効果的な広報の実施

豪雪地域への車両流入抑制を図るため、豪雪地域への流入防止や広域なう回路等の交通情報について、豪雪地域周辺の交通情報板に表示することや、日本道路交通情報センターや道路管理者を通じて、隣接府県を含め広域的な交通情報の発信に努めるとともに、豪雪地域においては通行止め情報を強調した上で、う回路を通行するよう具体的な広報を行う。

また、立ち往生車両が生じた場合、通行止め規制解除まで待機しようとする運転者に対し、排気ガス(一酸化炭素)による中毒の防止に関する呼び掛けを確実に行うとともに、移動が可能であればう回路へ誘導する。

さらに、通行止め等を行う場合には、道路管理者と連携して、テレビ、ラジオ等において、夜間帯や広域的に行うときも含め、通行止めを行う場所等について早期の事前広報を確実に実施し、その周知を徹底する。

ウ う回路の確保

高速道路又は主要一般国道・県道の通行止めが実施された場合は、その周辺道路における交通量の増加が見込まれ、特に規制区間の両端から立ち往生車両による渋滞の発生が想定される。

そのため、現場の交通状況、交差道路の形状、他の道路への接続状況を考慮し、交通誘導のための人員配置を含め、う回路として有効な道路を選定した上で、高速道路又は主要一般国道・県道の通行止め規制を実施するよう道路管理者に要請する。

また、通行止め規制実施区間の除雪のほか、う回路とした道路や当該道路に接続する道路において優先的な除雪が行われるよう、道路管理者に確実に要請する。

エ 道路管理者との協議

道路管理者がチェーン規制等を実施する道路の区間について、道路法第95条の2の規定による意見聴取を受けた場合には、降雪の範囲が広域にわたるおそれを考慮し、隣接都府県と調整しながら、当該区間に係る広域的なう回路について検討した上で、交通管理上必要な意見を述べる。

(3) 家屋倒壊・孤立・雪崩・遭難への対応(主に地域(生安)部・警備部)

ア 大規模な雪害事案に対する的確な対応

大型施設における屋根の崩落事故、スキー場等における雪崩事故等が発生した際は、集中的に人員及び装備資機材を投入し、救出救助体制を確立して的確に対処する。

イ 警察部隊の大量・集中的投入

降雪時には、渋滞や車両の立ち往生等により、速やかな部隊展開が困難となることが予想されるため、部隊を早めに集中的に投入するほか、雪害対応が長期間に及ぶことも想定し、交替要員の十分な確保に努める。

5 警報解除(天候回復、大規模交通渋滞の解消)

(1) 交通渋滞(主に交通部)

○ 早期復旧

主要幹線道路を中心とした信号機、道路標識その他交通安全施設等の早期復旧を行う。

(2) 家屋倒壊・孤立・雪崩・遭難(主に地域(生安)部・警備部)

○ 二次災害防止

二次災害のおそれのある危険地域を把握し、立入禁止措置を徹底する。

6 融雪出水期における雪害防止対策

(1) 都道府県警察内共通・通信指令

ア 危険個所の把握

通常のパトロール活動等を通じて、気温上昇に伴う雪崩及び落雪の発生や、大雪後の融雪に伴う出水による河川氾濫及び土砂災害による被害発生のおそれがある場所を把握する。

イ 地域住民への具体的な情報提供

巡回連絡、警察本部等のホームページ、SNSを始め各種広報媒体を活用し、雪崩による危険箇所、過去に発生した被害に関する情報、避難経路、緊急避難場所等、被害防止に資する情報を住民(特に高齢者等)へ積極的に発信する。また、情報発信に当たっては、地域住民や車両運転者等、幅広い対象に対し、分かりやすい表現を用いて行う。

ウ 融雪による雪害発生時の即応体制の確立

気温上昇に伴う雪崩及び落雪の発生や、大雪後の融雪に伴う出水による河川氾濫及び土砂災害の発生を想定し、事態対処に向けた体制を確立する。

(2) 家屋倒壊・孤立・雪崩・遭難(主に地域(生安)部・警備部)

○ 雪崩、河川の氾濫及び土砂災害危険個所等の把握

気温上昇に伴う雪崩、大雪後の融雪に伴う出水による河川の氾濫及び土砂災害発生時には、迅速に人員及び装備資機材を投入し、救出救助体制を確立して的確に対応する。

融雪出水期における防災態勢の強化について(通達)

令和5年3月17日 達(災対、地企、総指、交規)第116号

(令和5年3月17日施行)

体系情報
警備部
沿革情報
令和5年3月17日 達(災対、地企、総指、交規)第116号