○第二次再犯防止推進計画について(依命通達)

令和5年5月12日

達(少対、組対)第214号

[原議保存期間 5年(令和11年3月31日まで)]

[有効期間 令和11年3月31日まで]

みだしのことについては、次のとおりであるから、引き続き再犯防止に向けた各種施策を推進されたい。

なお、再犯防止推進計画への対応について(平成30年1月15日付け達(生企、組対)第7号)は、廃止する。

1 第二次再犯防止推進計画について

再犯の防止等に関する施策については、再犯の防止等の推進に関する法律(平成28年法律第104号)第7条第1項に基づき、平成29年12月に策定された「再犯防止推進計画」を踏まえ推進してきたところ、同計画の策定後5年が経過したことから、今般、政府において必要な検討等が行われ、令和5年3月17日、「第二次再犯防止推進計画」が閣議決定されたものである。

閣議決定されたことを受けて、今後、県や各市町村で地方再犯防止推進計画の見直し等も見込まれることを踏まえ、関係機関・団体との緊密な連携による再犯防止の対応を図る必要がある。

2 概要

第二次再犯防止推進計画については別添のとおりであるが、主な警察関係部分の概要は下記のとおりである。

(1) 就労・住居の確保等を通じた自立支援のための取組(計画Ⅲ第1)

非行少年に対する就労支援【施策番号8】

警察庁は、非行少年を生まない社会づくりの活動の一環として少年サポートセンター(都道府県警察に設置し、少年補導職員を中心に非行防止に向けた取組を実施)等が行う就労を希望する少年に対する立ち直り支援について、都道府県警察に対する指導や好事例の紹介等を通じ、少年の就職や就労継続に向けた支援の充実を図ることとされた。【警察庁】

(2) 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための取組(計画Ⅲ第2)

ア 薬物乱用を未然に防止するための広報・啓発活動の充実【施策番号33】

警察庁、法務省、文部科学省及び厚生労働省は、薬物乱用を許容しない環境づくりが最大の再犯防止策であることを踏まえ、薬物乱用を未然に防止するため、広く国民に対し、薬物乱用の危険性や有害性、薬物乱用への勧誘に対する対応方法等について、効果的な広報・啓発を実施することとされた。【警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】

イ 薬物依存の問題を抱える者等に対応する専門医療機関等の拡充及びその円滑な利用の促進【施策番号38】

警察庁、法務省及び厚生労働省は、薬物依存の問題を抱える者等を、保健医療機関等へ適切につなぐことができるようにするため、各関係機関間において、情報共有、課題の抽出及び解決方策の検討をするなどし、連携体制の強化を図る。また、薬物依存の問題を抱える者だけではなく、その親族を始めとした身近な者が適切な機関に相談できるようにするため、精神保健福祉センターを始めとした相談支援機関等の周知を行うなど、支援に関する情報についての広報・啓発活動を推進することとされた。【警察庁、法務省、厚生労働省】

(3) 学校等と連携した修学支援の実施等のための取組(計画Ⅲ第3)

地域における非行の未然防止等のための支援【施策番号44】

内閣府、警察庁、法務省、文部科学省及び厚生労働省は、非行等を理由とする児童生徒の修学の中断を防ぐため、貧困や虐待等の被害体験などが非行等の一因になることも踏まえ、地域社会における子供の居場所作りや子供、保護者及び学校関係者等に対する相談支援の充実、民間ボランティア等による犯罪予防活動の促進、高等学校卒業程度資格の取得を目指す者への学習相談・学習支援など、児童生徒の非行の未然防止や深刻化の防止に向けた取組を推進する。また、同取組を効果的に実施するために、子ども・若者育成支援推進法(平成21年法律第71号)に基づき、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者の支援を行うことを目的として、地方公共団体に「子ども・若者支援地域協議会」の設置及び「子ども・若者総合相談センター」としての機能を担う体制の確保について努力義務が課されていることなどについて、関係機関等に周知し、連携の強化を図ることとされた。【内閣官房、内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】

(4) 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等のための取組(計画Ⅲ第4)

ア 子供を対象とする暴力的性犯罪をした者の再犯防止【施策番号52】

警察庁は、法務省の協力を得て、子供を対象とする暴力的性犯罪をした者について、刑事施設出所後の所在確認を実施するとともに、その者の同意を得て面談を実施し、必要に応じて、関係機関・団体等による支援等に結び付けるなど、再犯の防止に向けた措置の充実を図ることとされた。【警察庁、法務省】

イ 被害者への接触防止のための措置【施策番号53】

警察庁及び法務省は、ストーカー・DV加害者による重大な事案が発生していることを踏まえ、これら加害者の保護観察実施上の特別遵守事項や問題行動等の情報を共有し、被害者への接触の防止のための指導等を徹底するとともに、必要に応じ、仮釈放の取消しの申出又は刑の執行猶予の言渡しの取消しの申出を行うなど、これら加害者に対する適切な措置を実施することとされた。【警察庁、法務省】

ウ ストーカー加害者等に対するカウンセリング等【施策番号54】

警察庁は、ストーカー加害者への対応を担当する警察職員について、研修の受講を促進するなどして、精神医学的・心理学的アプローチに関する技能や知識の向上を図るとともに、ストーカー加害者に対し、医療機関等の協力を得て、医療機関等によるカウンセリング等の受診に向けた働き掛けを行うなど、関係機関・団体と連携して、ストーカー加害者に対する精神医学的・心理学的なアプローチを推進することとされた。【警察庁】

エ 暴力団からの離脱、社会復帰に向けた指導等【施策番号55】

警察庁及び法務省は、警察・暴力追放運動推進センター等と矯正施設・保護観察所との連携を強化するなどして、暴力団員に対する暴力団離脱に向けた働き掛けの充実を図るとともに、離脱に係る情報を適切に共有する。また、警察庁、法務省等の関係省庁は連携の上、暴力団からの離脱及び暴力団離脱者等の社会への復帰・定着を促進するため、離脱・就労や預貯金口座の開設支援などの社会復帰に必要な社会環境・フォローアップ体制の充実を図ることとされた。【警察庁、金融庁、法務省】

オ 非行少年に対する立ち直り支援活動の充実【施策番号58】

警察庁は、非行少年を生まない社会づくり活動の一環として、少年サポートセンター等が民間ボランティアや関係機関と連携して行う、修学、就労に向けた支援や社会奉仕体験活動等への参加機会の確保等、個々の非行少年の状況に応じた立ち直り支援について、都道府県警察に対する指導や好事例の紹介等を通じ、その充実を図ることとされた。【警察庁】

(5) 民間協力者の活動の促進等のための取組(計画Ⅲ第5)

ア 少年警察ボランティア等の活動に対する支援の充実【施策番号69】

警察庁は、少年警察ボランティアの活動を促進するため、少年警察ボランティアの活動に対して都道府県警察が支給する謝金等の補助や、都道府県警察や民間団体が実施する少年警察ボランティア等に対する研修への協力を推進するなどして、少年警察ボランティア等の活動に対する支援の充実を図ることとされた。【警察庁】

イ 民間協力者の活動に関する広報の充実【施策番号75】

警察庁及び法務省は、国民の間に、再犯の防止等に協力する気持ちを醸成するため、少年警察ボランティアや更生保護ボランティア等、民間協力者の活動に関する広報の充実を図ることとされた。【警察庁、法務省】

(6) 再犯防止に向けた基盤の整備等のための取組(計画Ⅲ第7)

ア 関係機関における人的体制の整備【施策番号88】

警察庁、法務省及び厚生労働省は、関係機関において、本計画に掲げる具体的施策を適切かつ効果的に実施するために必要な人的体制の整備を着実に推進することとされた。【警察庁、法務省、厚生労働省】

イ 関係機関の職員等に対する研修の充実等【施策番号89】

警察庁、法務省、文部科学省及び厚生労働省は、再犯の防止等に関する施策が、犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進するだけでなく、犯罪予防対策としても重要であり、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するものであることを踏まえ、刑事司法関係機関の職員のみならず、警察、ハローワーク、福祉事務所等関係機関の職員、学校関係者等に対する教育・研修等の充実を図ることとされた。【警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】

3 添付資料

「第二次再犯防止推進計画」

第二次再犯防止推進計画

令和5年3月17日

目次

Ⅰ 第二次再犯防止推進計画策定の目的

第1 再犯防止の現状と再犯防止施策の重要性

第2 第二次推進計画策定の経緯

Ⅱ 基本方針及び重点課題

第1 基本方針

第2 重点課題

第3 計画期間と迅速な実施

Ⅲ 今後取り組んでいく施策

第1 就労・住居の確保等を通じた自立支援のための取組(推進法第12条、第14条、第15条、第16条、第21条関係)

1.就労の確保等

(1) 現状認識と課題等

(2) 具体的施策

① 職業適性の把握と就労につながる知識・技能等の習得

② 就職に向けた相談・支援等の充実

③ 協力雇用主の開拓・確保及びその活動に対する支援の充実

④ 就労した者の離職の防止及び離職した者の再就職支援

⑤ 一般就労と福祉的就労の狭間にある者の就労の確保

2.住居の確保等

(1) 現状認識と課題等

(2) 具体的施策

① 矯正施設在所中の生活環境の調整の充実

② 更生保護施設等の機能の充実・一時的な居場所の確保

③ 地域社会における定住先の確保

第2 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための取組(推進法第17条、第21条関係)

1.高齢者又は障害のある者等への支援等

(1) 現状認識と課題等

(2) 具体的施策

① 関係機関における福祉的支援の実施体制等の充実

② 保健医療・福祉サービスの利用に関する地方公共団体等との連携の強化

③ 被疑者等への支援を含む効果的な入口支援の実施

④ 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための研修・体制の整備

2.薬物依存の問題を抱える者への支援等

(1) 現状認識と課題等

(2) 具体的施策

① 薬物乱用を未然に防止するための広報・啓発活動の充実

② 刑事司法関係機関等における効果的な指導の実施等

③ 治療・支援等を提供する保健医療機関等の充実及び円滑な利用の促進

④ 薬物事犯者の再犯防止施策の効果検証及び効果的な方策の検討

第3 学校等と連携した修学支援の実施等のための取組(推進法第11条、第13条関係)

1.学校等と連携した修学支援の実施等

(1) 現状認識と課題等

(2) 具体的施策

① 児童生徒の非行の未然防止等

② 非行等による学校教育の中断の防止等

③ 学校や地域社会において再び学ぶための支援

第4 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等のための取組(推進法第11条、第13条、第21条関係)

1.特性に応じた効果的な指導の実施等

(1) 現状認識と課題等

(2) 具体的施策

① 刑事司法関係機関におけるアセスメント機能の強化と関係機関等が保有する情報の活用

② 特性に応じた指導等の充実

i 性犯罪者・性非行少年に対する指導等

ii ストーカー・DV加害者に対する指導等

iii 暴力団からの離脱、社会復帰に向けた指導等

iv 少年・若年者に対する可塑性に着目した指導等

v 女性の抱える困難に応じた指導等

vi 発達上の課題を有する犯罪をした者等に対する指導等

vii 各種指導プログラムの充実

③ 犯罪被害者等の視点を取り入れた指導等

第5 民間協力者の活動の促進等のための取組(推進法第5条、第22条、第23条関係)

1.現状認識と課題等

2.持続可能な保護司制度の確立とそのための保護司に対する支援

(1) 具体的施策

① 持続可能な保護司制度の確立に向けた検討・試行

② 保護司活動のデジタル化及びその基盤整備の推進

③ 保護司適任者に係る情報収集及び保護司活動を体験する機会等の提供

④ 地方公共団体からの支援の確保

⑤ 国内外への広報・啓発

3.民間協力者(保護司を除く)の活動の促進

(1) 具体的施策

① 民間ボランティアの活動に対する支援の充実

② 民間協力者との連携強化

③ 民間の団体等の創意と工夫による再犯防止活動の促進

④ 民間協力者の確保及びその活動に関する広報の充実

第6 地域による包摂を推進するための取組(推進法第5条、第8条、第24条関係)

1.現状認識と課題等

2.地方公共団体との連携強化等

(1) 国と地方公共団体の役割

① 国の役割

② 都道府県の役割

③ 市区町村の役割

(2) 具体的施策

① 地方公共団体による再犯の防止等の推進に向けた取組の支援

② 地方再犯防止推進計画の策定等の支援

③ 地方公共団体との連携の強化

3.支援の連携強化

(1) 具体的施策

① 更生保護に関する地域援助の推進

② 更生保護地域連携拠点事業の充実等

③ 法務少年支援センターにおける地域援助の充実

4.相談できる場所の充実

(1) 具体的施策

① 刑執行終了者等に対する援助の充実

② 更生保護施設による訪問支援事業の拡充

第7 再犯防止に向けた基盤の整備等のための取組(推進法第18条、第19条、第20条、第22条関係)

1.再犯防止に向けた基盤の整備等

(1) 現状認識と課題等

(2) 具体的施策

① 関係機関における人的・物的体制の整備

② 業務のデジタル化、効果検証の充実等

③ 再犯防止関係者の人材育成等

④ 広報・啓発活動の推進

Ⅳ 再犯の防止等に関する施策の指標

第1 再犯の防止等に関する施策の成果指標

第2 再犯の防止等に関する施策の動向を把握するための参考指標

Ⅰ 第二次再犯防止推進計画策定の目的

第1 再犯防止の現状と再犯防止施策の重要性

我が国の刑法犯の認知件数は、平成8年以降毎年戦後最多を記録し、平成14年(285万3,739件)にピークを迎えたが、平成15年以降は減少を続け、令和3年(56万8,104件)には戦後最少となった。

この数字は、諸外国と比較しても、我が国の治安の良さを示しており、令和4年3月に公表された内閣府の世論調査では、8割を超える国民が現在の日本は治安が良く、安全で安心して暮らせる国だと回答している。

他方、刑法犯により検挙された再犯者数は減少傾向にあるものの、それを上回るペースで初犯者数も減少し続けているため、検挙人員に占める再犯者の人員の比率(再犯者率)は上昇傾向にあり、令和3年には48.6パーセントと刑法犯検挙者の約半数は再犯者という状況にある。

このような再犯の傾向は、第一次の再犯防止推進計画(以下「第一次推進計画」という。)を策定した平成29年当時においても同様であり、政府は、新たな被害者を生まない安全・安心な社会を実現するために、再犯の防止等に向けた取組が重要であるとの認識の下、第一次推進計画を策定し、これに基づき、様々な取組を行ってきた。

国・地方公共団体・民間協力者等の連携が進み、より機能し始めた再犯の防止等に向けた取組を更に深化させ、推進していくためには、これまでの取組を検証して必要な改善を図るとともに、新たな施策をも含めた、第二次再犯防止推進計画(以下「第二次推進計画」という。)を策定することが必要とされる。

第2 第二次推進計画策定の経緯

〔第一次推進計画の策定〕

平成28年12月、再犯の防止等に関する国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、再犯の防止等に関する施策を総合的かつ計画的に推進していくための基本事項を示した「再犯の防止等の推進に関する法律」(平成28年法律第104号、以下「推進法」という。)が制定、施行された。

政府は、推進法において、再犯の防止等に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための計画を策定することとされ、これを受け、平成29年12月、再犯の防止等に関する政府の施策等を定めた初めての計画である第一次推進計画を閣議決定した。

第一次推進計画は、5つの基本方針の下、①就労・住居の確保、②保健医療・福祉サービスの利用の促進、③学校等と連携した修学支援、④特性に応じた効果的な指導、⑤民間協力者の活動促進、⑥地方公共団体との連携強化、⑦関係機関の人的・物的体制の整備、という7つの重点課題と115の具体的施策により構成され、その計画期間は平成30年度から令和4年度までの5年間とされた。

令和元年12月、政府は、第一次推進計画に基づき実施している再犯防止施策のうち、より重点的に取り組むべき課題への対応を加速化させるため、犯罪対策閣僚会議において、「再犯防止推進計画加速化プラン」(以下「加速化プラン」という。)を決定した。加速化プランでは、①「満期釈放者対策の充実強化」、②「地方公共団体との連携強化の推進」、③「民間協力者の活動の促進」の3つの取組を加速化させることとし、具体的な成果目標として、「令和4年までに、満期釈放者の2年以内再入者数を2割以上減少させる」こと、及び、「令和3年度末までに、100以上の地方公共団体で地方再犯防止推進計画が策定されるよう支援する」ことが設定された。

〔第一次推進計画に基づく取組〕

政府は、第一次推進計画や加速化プランに基づき、地方公共団体や民間協力者等の理解・協力も得て、各種施策に取り組み、一定の成果も上がってきた。

例えば、就労の確保については、矯正施設・保護観察所とハローワークが連携した就労先確保に向けた取組等により、矯正施設在所中から支援を受けて就職した者の数が増加し、住居の確保については、更生保護施設等による住居確保支援や矯正施設在所中の生活環境の調整の強化等により、適当な帰住先が確保されていない刑務所出所者数が減少している。また、満期釈放者対策の充実強化については、矯正施設在所中の生活環境の調整の強化や更生保護施設退所者に対する継続的な相談支援等の実施により、加速化プランにおいて設定された上記目標が達成された。

さらに、地方公共団体の取組としては、国と地方公共団体の協働による地域における効果的な再犯防止施策の在り方について調査するための「地域再犯防止推進モデル事業」の実施や、協議会等を通じた同事業の成果や好事例等の共有等が行われるとともに、令和4年10月1日現在で402の地方公共団体で地方再犯防止推進計画等が策定され、地域の実情に応じた様々な取組が進められている。また、民間協力者等の取組については、民間資金の活用などにより、地域における草の根の支援活動など多様な活動が更に広がった。

こうした一つ一つの取組の結果、「再犯防止に向けた総合対策」(平成24年犯罪対策閣僚会議決定)において設定された「出所年を含む2年間において刑務所に再入所する割合(2年以内再入率)を令和3年までに16%以下にする」という数値目標を令和元年出所者について達成するに至った。

〔第一次推進計画に基づく取組の検証〕

政府は、第二次推進計画の策定を見据え、法務副大臣を議長とし、関係省庁の課長等や外部有識者を構成員とする「再犯防止推進計画等検討会」(以下「検討会」という。)において、4回にわたる議論等を経て、第一次推進計画下における取組状況や成果を検証するとともに、今後の課題について整理した。

その結果、「個々の支援対象者に十分な動機付けを行い、自ら立ち直ろうとする意識を涵養した上で、それぞれが抱える課題に応じた指導・支援を充実させていく必要があること」、「支援を必要とする者が支援にアクセスできるよう、支援を必要とする者のアクセシビリティ(アクセスの容易性)を高めていく必要があること」、「支援へのアクセス自体が困難な者が存在するため、訪問支援等のアウトリーチ型支援を実施していく必要があること」、「地方公共団体における再犯の防止等に向けた取組をより一層推進するため、国と地方公共団体がそれぞれ果たすべき役割を明示するとともに、国、地方公共団体、民間協力者等の連携を一層強化していく必要があること」などの課題が確認された。

その上で、検討会は、これらの課題を踏まえ、第二次推進計画の策定に向けた基本的な方向性として、以下の3つを取りまとめ、議論を進めた。

① 犯罪をした者等が地域社会の中で孤立することなく、生活の安定が図られるよう、個々の対象者の主体性を尊重し、それぞれが抱える課題に応じた“息の長い”支援を実現すること。

② 就労や住居の確保のための支援をより一層強化することに加え、犯罪をした者等への支援の実効性を高めるための相談拠点及び民間協力者を含めた地域の支援連携(ネットワーク)拠点を構築すること。

③ 国と地方公共団体との役割分担を踏まえ、地方公共団体の主体的かつ積極的な取組を促進するとともに、国・地方公共団体・民間協力者等の連携を更に強固にすること。

〔第二次推進計画の策定〕

政府は、検討会における更に計4回にわたる議論等を経て、第二次推進計画の案を取りまとめ、ここに第二次推進計画を定めるに至った。

Ⅱ 基本方針及び重点課題

第1 基本方針

第一次推進計画では、犯罪をした者等が、円滑に社会の一員として復帰することができるようにすることで、国民が犯罪による被害を受けることを防止し、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するために、個々の施策の策定・実施や連携に際し、実施者が目指すべき方向・視点として、推進法第3条の「基本理念」を踏まえ、以下の5つの基本方針が設定された。

本基本方針は、施策の実施者が目指すべき方向・視点として、第二次推進計画においても踏襲する。

〔5つの基本方針〕

① 犯罪をした者等が、多様化が進む社会において孤立することなく、再び社会を構成する一員となることができるよう、あらゆる者と共に歩む「誰一人取り残さない」社会の実現に向け、関係行政機関が相互に緊密な連携をしつつ、地方公共団体・民間の団体その他の関係者との緊密な連携協力をも確保し、再犯の防止等に関する施策を総合的に推進すること。

② 犯罪をした者等が、その特性に応じ、刑事司法手続のあらゆる段階において、切れ目なく、再犯を防止するために必要な指導及び支援を受けられるようにすること。

③ 再犯の防止等に関する施策は、生命を奪われる、身体的・精神的苦痛を負わされる、あるいは財産的被害を負わされるといった被害に加え、それらに劣らぬ事後的な精神的苦痛・不安にさいなまれる犯罪被害者等が存在することを十分に認識して行うとともに、犯罪をした者等が、犯罪の責任等を自覚し、犯罪被害者の心情等を理解し、自ら社会復帰のために努力することの重要性を踏まえて行うこと。

④ 再犯の防止等に関する施策は、犯罪及び非行の実態、効果検証及び調査研究の成果等を踏まえ、必要に応じて再犯の防止等に関する活動を行う民間の団体その他の関係者から意見聴取するなどして見直しを行い、社会情勢等に応じた効果的なものとすること。

⑤ 国民にとって再犯の防止等に関する施策は身近なものではないという現状を十分に認識し、更生の意欲を有する犯罪をした者等が、責任ある社会の構成員として受け入れられるよう、再犯の防止等に関する取組を、分かりやすく効果的に広報するなどして、広く国民の関心と理解が得られるものとしていくこと。

第2 重点課題

第一次推進計画では、推進法第2章が規定する基本的施策に基づき、多岐にわたる再犯防止施策が7つの重点課題に整理された。第二次推進計画においては、第一次推進計画の重点課題を踏まえつつ、前記第二次推進計画の策定に向けた基本的な方向性に沿って、以下に掲げる7つの事項を重点課題とする。

〔7つの重点課題〕

① 就労・住居の確保等

② 保健医療・福祉サービスの利用の促進等

③ 学校等と連携した修学支援の実施等

④ 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等

⑤ 民間協力者の活動の促進等

⑥ 地域による包摂の推進

⑦ 再犯防止に向けた基盤の整備等

第3 計画期間と迅速な実施

推進法第7条第6項が、少なくとも5年ごとに、再犯防止推進計画に検討を加えることとしていることから、計画期間は、令和5年度から令和9年度末までの5年間とする。

第二次推進計画に盛り込まれた施策は、可能な限り速やかに実施することとし、犯罪対策閣僚会議の下に設置された再犯防止対策推進会議において、定期的に施策の進捗状況を確認するとともに、施策の実施の推進を図ることとする。

また、Ⅳの第1に掲げる成果指標については、第二次推進計画に盛り込まれた施策の速やかな実施により、その向上を図り、このうち、出所受刑者の2年以内再入率及び3年以内再入率を更に低下させることを目標として定める。

Ⅲ 今後取り組んでいく施策

第1 就労・住居の確保等を通じた自立支援のための取組(推進法第12条、第14条、第15条、第16条、第21条関係)

1.就労の確保等

(1) 現状認識と課題等

不安定な就労が再犯の要因となっていることに鑑み、政府においては、これまで、犯罪をした者等の就労を確保するため、法務省と厚生労働省の協働による刑務所出所者等総合的就労支援対策の実施、矯正就労支援情報センター室(通称「コレワーク」)の設置、刑務所出所者等就労奨励金制度の導入等に取り組んできた。

さらに、第一次推進計画策定後は、就労やその継続の大前提となるコミュニケーション能力等の基本的な能力の強化、職場定着に向けた取組の強化等にも努めてきた。

その結果、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けつつも、矯正施設在所中から支援を受けて就職した者の数や犯罪をした者等を実際に雇用している協力雇用主の数が第一次推進計画策定前に比べて増加するなど、就労の確保に向けた政府の取組は、着実に成果を上げてきた。

しかしながら、依然として、保護観察終了時に無職である者は少なくないこと、実際に雇用された後も人間関係のトラブル等から離職してしまう者が少なくないことなどの課題があるほか、職業訓練を社会復帰後の就労に結び付くものとしていく必要があるとの指摘もある。

これらの課題に対応するため、適切な職業マッチングを促進するための多様な業種の協力雇用主の開拓、寄り添い型の就職・職場定着支援、コミュニケーションスキルやビジネスマナーといった就労やその継続に必要な知識・技能の習得、社会復帰後の自立や就労を見据えた職業訓練・刑務作業の実施等を更に充実させる必要がある。

(2) 具体的施策

① 職業適性の把握と就労につながる知識・技能等の習得

ア 職業適性の把握等【施策番号1】

法務省は、矯正施設において、厚生労働省の協力を得て、就労意欲や職業適性、個々の受刑者等が持つ能力等を把握するためのアセスメントを適切に実施するとともに、その結果を踏まえ、刑期の早い段階から、社会復帰後を見据え、職業訓練や就労支援指導を計画的に実施していく体制の整備を検討する。【法務省、厚生労働省】

イ 施設内から社会内への一貫した指導・支援スキームの確立【施策番号2】

法務省は、厚生労働省の協力を得て、効果的に就労支援を実施するため、出所後の本人を取り巻く生活環境を踏まえるなどし、矯正施設在所中から出所後の職場定着までの計画的かつ一貫した指導・支援に取り組む。【法務省、厚生労働省】

ウ 就労に必要な基礎的能力等の習得に向けた処遇等【施策番号3】

法務省は、矯正施設及び保護観察所において、コミュニケーションスキルの付与やビジネスマナーの体得を目的とした刑務作業や指導を行うなど、犯罪をした者等の勤労意欲の喚起及び就職に必要な知識・技能等の習得を図るための処遇の充実を図る。【法務省】

エ 刑事施設における受刑者の特性に応じた刑務作業の充実等【施策番号4】

法務省は、拘禁刑下において、刑務作業が、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰に必要な場合に行わせるべきものと位置付けられたことを踏まえ、アセスメント結果を基に動機付けを十分に行って就労意欲を喚起した上で、個々の受刑者の特性に応じた刑務作業を適切に課す。また、社会復帰後の自立や就労を見据えて、実社会で必要となる社会性や自発性を身に付けさせるためのコミュニケーション能力やマネジメント能力等を養成する刑務作業等を実施するほか、高齢の受刑者や心身に障害のある受刑者のうち、福祉的支援の対象とならない者に対しても、就労につながるよう、その心身の機能の維持・向上を図る刑務作業等を実施する。【法務省】

オ 刑事施設における職業訓練等の充実【施策番号5】

法務省は、関係機関や犯罪をした者等の雇用を希望する事業主等から意見を聴取するなどし、雇用ニーズに合わせて訓練種目の整理を行うとともに、就労に必要なパソコンスキルや職場等への定着に欠かせない課題解決能力については、勤労を中心として自立した社会生活を営んでいく必要がある全ての受刑者に対し、訓練・指導する体制を構築する。

また、職業訓練を修了した者に対しては、可能な限り関連する刑務作業に就業させることにより、身に付けた知識や技能を維持・向上させるほか、出所前における訓練内容の再指導や、出所後の就労先となる企業と連携した実践的訓練を積極的に実施するなどし、職業訓練及び刑務作業が、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰に資するものとなるよう、その内容の見直しを含め、より一層の充実強化を図る。

加えて、法務省は、厚生労働省の協力を得て、協力雇用主、生活困窮者自立支援法(平成25年法律第105号)における就労準備支援事業や認定就労訓練事業を行う者等と連携した職業講話や職場定着等に向けた指導・支援を充実させる。【法務省、厚生労働省】

カ 資格制限等の見直し【施策番号6】

法務省は、「前科による資格制限の在り方に関する検討ワーキンググループ」において実施した資格制限の見直しに関するニーズ調査結果、各資格等に関する制限内容及びその趣旨等に関する調査結果や、少年法等の一部を改正する法律(令和3年法律第47号)の審議における資格制限の見直しに関する議論の内容等を踏まえ、関係省庁と協力し、前科があることによる資格等の制限やその運用の在り方・方向性について、総合的な検討を進める。

各府省は、その検討結果を踏まえ、所管する資格等の制限やその運用の在り方について、業務の性質等も考慮して、見直しの要否を検討し、必要に応じた措置を講じる。【各府省】

② 就職に向けた相談・支援等の充実

ア 刑務所出所者等総合的就労支援を中心とした就労支援の充実【施策番号7】

法務省及び厚生労働省は、犯罪をした者等の適切な就労先の確保のため、より効果的な連携体制の在り方を検討するとともに、ハローワーク相談員の矯正施設への駐在や保護観察所等への協力の拡大など、就労支援対策の一層の充実を図る。また、法務省及び厚生労働省は、矯正施設出所後の職場定着につなげるため、矯正施設在所中に内定企業や就労を希望する業種での就労を体験する職場体験を積極的に実施する。さらに、法務省及び国土交通省は、矯正施設及び地方運輸局等の連携による就労支援対策についても、一層の充実を図る。【法務省、厚生労働省、国土交通省】

イ 非行少年に対する就労支援【施策番号8】

警察庁は、非行少年を生まない社会づくりの活動の一環として少年サポートセンター(都道府県警察に設置し、少年補導職員を中心に非行防止に向けた取組を実施)等が行う就労を希望する少年に対する立ち直り支援について、都道府県警察に対する指導や好事例の紹介等を通じ、少年の就職や就労継続に向けた支援の充実を図る。【警察庁】

③ 協力雇用主の開拓・確保及びその活動に対する支援の充実

ア 多様な業種の協力雇用主の確保【施策番号9】

法務省は、犯罪をした者等がそれぞれの適性に応じた業種等に就職できるよう支援するため、社会における労働需要や矯正施設における職業訓練等の内容も踏まえつつ、多様な業種の協力雇用主の確保に努める。また、各府省は、法務省の協力を得て、対象となる公共調達の本来達成すべき目的が阻害されないよう留意しつつ、協力雇用主の受注の機会の増大を図るとともに、関係する各種事業者団体に対し、所属する企業等への協力雇用主の拡大に向けた周知を依頼するなど、積極的な広報・啓発活動を推進する。【各府省】

イ 協力雇用主等に対する情報提供【施策番号10】

法務省は、コレワークにおいて、協力雇用主等に対して、受刑者等が矯正施設在所中に習得・取得可能な技能・資格を紹介するとともに、協力雇用主等の雇用ニーズに合う受刑者等が在所する矯正施設の紹介や、職業訓練等の見学会の案内をするほか、総務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省の協力を得て、協力雇用主の活動を支援する施策の周知を図るなど、協力雇用主等に対する情報提供の充実を図る。また、個人情報等の適正な取扱いを確保しつつ、犯罪をした者等の就労に必要な個人情報を適切に提供する。【総務省、法務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省】

ウ 協力雇用主の不安・負担の軽減【施策番号11】

法務省は、身元保証制度、刑務所出所者等就労奨励金制度、更生保護就労支援事業といった各種制度や、協力雇用主に対する助言や研修など、犯罪をした者等を雇用しようとする協力雇用主の不安や負担を軽減するための支援の充実を図る。【法務省】

エ 協力雇用主に関する情報の適切な共有【施策番号12】

法務省は、各府省や地方公共団体における協力雇用主に対する支援の実施に資するよう、各府省や地方公共団体に対する協力雇用主に関する情報提供の在り方について検討し、適切に情報を提供する。【法務省】

オ 国による雇用等の推進【施策番号13】

各府省は、「犯罪をした者等の就労の確保等のための取組に係る参考指針」を踏まえ、各府省における業務の特性や実情も勘案し、犯罪をした者等の雇用等に努める。法務省は、各府省におけるこうした取組を促進するために必要な支援等を行う。【各府省】

④ 就労した者の離職の防止及び離職した者の再就職支援【施策番号14】

法務省及び厚生労働省は、矯正施設、保護観察所、更生保護施設、ハローワーク等において、犯罪をした者等に対し、悩みなどを把握した上で適切な助言を行うなど、離職を防止するための支援や離職後の再就職に向けた支援の充実を図る。また、寄り添い型の支援を行う更生保護就労支援事業などにより、犯罪をした者等及び協力雇用主の双方に対する継続的な支援の充実を図ることで、職場定着を促進するとともに、再就職のための円滑な就労マッチングを推進する。【法務省、厚生労働省】

⑤ 一般就労と福祉的就労の狭間にある者の就労の確保

ア 障害者・生活困窮者等に対する就労支援の活用【施策番号15】

法務省及び厚生労働省は、障害のある犯罪をした者等が、その就労意欲や障害の程度等に応じて、障害者支援施策も活用しながら、一般の企業等への就労や、就労継続支援A型(一般の企業等に雇用されることが困難な障害者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供等を行うもの)又は同B型(一般の企業等に雇用されることが困難な障害者に対して、就労の機会の提供等を行うもの)事業における就労を実現できるよう取り組む。また、生活が困窮している者で、就労に向けて一定の準備を必要とする犯罪をした者等に対しては、生活困窮者自立支援法に基づく生活困窮者就労準備支援事業や生活困窮者就労訓練事業の積極的活用を図る。【法務省、厚生労働省】

イ 農福連携に取り組む企業・団体等やソーシャルビジネスとの連携【施策番号16】

法務省は、矯正施設及び保護観察所において、厚生労働省、農林水産省、経済産業省及び国土交通省の協力を得て、農福連携に取り組む企業・団体等とも連携し、犯罪をした者等のうち、障害等により一般の企業等への就労が困難な者に対する働き掛けを通じて就農意欲を喚起し、農業等への就労促進を図るほか、農福連携関係団体から食材等の調達を推進する取組を通じ、双方にとって効果的で持続可能な関係構築を図る。また、高齢者・障害者の介護・福祉、ホームレス支援、ニート等の若者支援といった社会的・地域的課題の解消に取り組む企業・団体等に、協力雇用主への登録を促し、犯罪をした者等の雇用を働き掛けるなど、ソーシャルビジネスとの連携を推進する。【法務省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省】

2.住居の確保等

(1) 現状認識と課題等

適当な帰住先が確保されていない刑務所出所者の2年以内再入率が、更生保護施設等へ入所した仮釈放者に比べて約2倍高くなっていることから明らかなように、適切な帰住先の確保は、地域社会において安定した生活を送るための欠かせない基盤であり、再犯の防止等を推進する上で最も重要な要素の一つといえる。

政府においては、これまで、受刑者等の釈放後の生活環境の調整の充実強化、更生保護施設の受入れ機能の強化や自立準備ホームの確保など、矯正施設出所後の帰住先の確保に向けた取組を進めてきた。また、更生保護施設や自立準備ホームを退所した後の地域における生活基盤の確保のため、居住支援法人との連携方策についても検討を進めてきた。

その結果、適当な帰住先が確保されていない刑務所出所者数の減少(平成28年に比べて令和3年は4割減少)や満期釈放者の2年以内再入者数の減少(平成28年出所者に比べて令和2年出所者は3割減少)など、住居の確保に向けた政府の取組は、一定の成果を上げてきた。

しかしながら、依然として、満期釈放者のうちの約4割が適当な帰住先が確保されないまま刑務所を出所していることや、出所後、更生保護施設等に入所できても、その後の地域における定住先の確保が円滑に進まない場合があるなどの課題もある。

これらの課題に対応するため、矯正施設在所中の生活環境の調整の充実や更生保護施設等の受入れ・処遇機能の更なる強化、地域社会での定住先の確保を円滑に進めるための支援の充実、更生保護施設退所後の本人への訪問等による専門的・継続的な支援の拡大等の取組を進めていく必要がある。

(2) 具体的施策

① 矯正施設在所中の生活環境の調整の充実

ア 矯正施設在所中の生活環境の調整の充実【施策番号17】

法務省は、保護観察所による受刑者等の釈放後の生活環境の調整に地方更生保護委員会が積極的に関与し、その者が必要とする保健医療・福祉サービスを受けることができる地域への帰住を調整する取組を拡大させるなど、適切な帰住先を迅速に確保するための取組の充実を図る。【法務省】

イ 受刑者等の親族等に対する支援【施策番号18】

法務省は、支援が必要な受刑者等の親族等に対し、受刑者等との適切な関係の構築という点に配慮しつつ、出所に向けた相談支援等を実施する引受人会・保護者会を開催するなど、受刑者等の親族等に対する支援の充実を図る。【法務省】

② 更生保護施設等の機能の充実・一時的な居場所の確保

ア 更生保護施設の整備及び受入れ・処遇機能の充実【施策番号19】

法務省は、更生保護施設の整備を着実に推進するほか、罪名、嗜癖等本人が抱える課題や地域との関係により特に受入れが進みにくい者や処遇困難な者を更生保護施設で受け入れ、それぞれの課題に応じた処遇を行うとともに、地域社会での自立生活を見据えた処遇を行うための体制の整備を推進するなど、更生保護施設における受入れ及び処遇機能の充実を図る。【法務省】

イ 自立支援の中核的担い手としての更生保護施設等の事業の促進及び委託費構造の見直し【施策番号20】

法務省は、宿泊保護はもとより、更生保護施設退所後に向けた高齢者又は障害のある者等に対する福祉的支援への移行、薬物依存症者に対する回復支援の実施、満期釈放者や施設退所者等に対する継続的な通所・訪問支援の実施等、地域における犯罪をした者等の自立支援の中核的担い手として多様かつ高度な役割が更生保護施設に求められるようになり、その活動が難しさを増していることを踏まえ、更生保護施設等の事業の促進を図るとともに、更生保護委託費の構造等の見直しに向けた検討を行う。【法務省】

ウ 自立準備ホームの確保と活用【施策番号21】

法務省は、厚生労働省及び国土交通省の協力を得て、専門性を有する社会福祉法人やNPO法人などに対する委託により犯罪をした者等の一時的な居場所の確保等を推進するほか、空き家等の既存の住宅ストック等を活用するなどして多様な居場所である自立準備ホームの更なる確保を進めるとともに、各施設の特色に応じた活用を図る。【法務省、厚生労働省、国土交通省】

③ 地域社会における定住先の確保

ア 居住支援法人との連携の強化【施策番号22】

法務省は、国土交通省の協力を得て、保護観察対象者等の住居の確保のため、居住支援法人との連携を強化し、住居提供者に対する不安軽減に向けた取組を行うとともに、見守りなど要配慮者への生活支援を行う居住支援法人との更なる連携の方策を検討する。

また、法務省は、国土交通省の協力を得て、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(平成19年法律第112号)に基づき、犯罪をした者等のうち、同法第2条第1項が規定する住宅確保要配慮者に該当する者に対して、賃貸住宅に関する情報の提供及び相談の実施に努めるとともに、保護観察対象者等であることを承知して住居を提供する場合は、保護観察対象者等に対する必要な指導等、法務省による継続的支援が受けられることを周知するなどして、その入居を拒まない賃貸人の開拓・確保に努める。【法務省、国土交通省】

イ 公営住宅への入居における特別な配慮【施策番号23】

国土交通省は、保護観察対象者等であることを承知して住居を提供する場合は、上記(施策番号22)の法務省による継続的支援が受けられることを踏まえ、保護観察対象者等が住居に困窮している状況や地域の実情等に応じて、保護観察対象者等の公営住宅への入居を困難としている要件を緩和すること等について検討を行うよう、引き続き、地方公共団体に要請する。また、矯正施設出所者については、通常、著しく所得の低い者として、公営住宅への優先入居の取扱いの対象に該当する旨、引き続き、地方公共団体に周知・徹底を図る。【国土交通省】

ウ 住居の提供者に対する継続的支援の実施【施策番号24】

法務省は、保護観察対象者等であることを承知して住居を提供する者に対し、住居の提供に伴う不安や負担を細かに把握した上で、身元保証制度の活用を含めた必要な助言等を行うとともに、個人情報等の適正な取扱いを確保しつつ、保護観察対象者等についての必要な個人情報を提供する。併せて、保護観察対象者等に対し、必要な指導等を行うなど、保護観察対象者等であることを承知して住居を提供する者に対する継続的支援を実施する。【法務省】

エ 満期釈放者等に対する支援情報の提供等の充実【施策番号25】

法務省は、帰住先を確保できないまま満期出所となる受刑者等の再犯を防止するため、矯正施設において、必要が認められる受刑者等に対し、更生緊急保護や希望する地域の相談機関に関する情報の提供等、受刑者等の個別のニーズ等を踏まえた相談支援を行う。また、保護観察所において、更生緊急保護の申出のあった満期釈放者等に対し、地域の支援機関等についての必要な情報の提供を行うほか、更生緊急保護として、必要に応じ、更生保護施設や地域の社会資源等を活用した居場所の確保に向けた支援を行うとともに、定住先確保のための支援を行う。加えて、刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)による改正後の更生保護法に基づき、矯正施設在所中に更生緊急保護の申出があった場合は、満期出所後直ちに必要な措置を受けられるよう、必要な調査や調整を行う。【法務省】

第2 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための取組(推進法第17条、第21条関係)

1.高齢者又は障害のある者等への支援等

(1) 現状認識と課題等

高齢者の2年以内再入率は他の世代に比べて高く、また、知的障害のある受刑者については、一般に再犯に至るまでの期間が短いことなどが明らかとなっている。

政府においては、これまで、必要とされる福祉的支援が行き届いていないことを背景として再犯に及ぶ者がいることを踏まえ、矯正施設在所中の段階から、高齢者又は障害のある者等に対して必要な指導を実施するなどして、福祉的支援についての理解の促進や動機付けを図ってきた。さらに、これらの受刑者等が矯正施設出所後に必要な福祉サービス等を受けられるよう、矯正施設、更生保護官署、更生保護施設、地域生活定着支援センター及びその他の保健医療・福祉関係機関が連携して特別調整等を実施してきた。

また、起訴猶予者等に対するいわゆる入口支援についても、法務省と厚生労働省による検討会の結果を踏まえ、令和3年度から、高齢又は障害により福祉的支援を必要とする被疑者・被告人に対し、検察庁、保護観察所、地域生活定着支援センター等が連携して支援を実施する新たな取組を開始した。

その結果、矯正施設から出所する者が年々減少する中にあって、特別調整の対象者数や地域生活定着支援センターによる支援の実施件数が増加するなど、福祉的支援に向けた取組は、着実に実績を積み重ねてきた。

しかしながら、高齢者や知的障害、精神障害のある者等、福祉的ニーズを抱える者をより的確に把握していく必要があること、福祉的支援が必要であるにもかかわらず、本人が希望しないことを理由に支援が実施できない場合があること、支援の充実に向け、刑事司法関係機関、地域生活定着支援センター、地方公共団体、地域の保健医療・福祉関係機関等の更なる連携強化を図る必要があることなどの課題もあり、これらの課題に対応した取組を更に進める必要がある。

(2) 具体的施策

① 関係機関における福祉的支援の実施体制等の充実

ア 刑事司法関係機関におけるアセスメント機能等の強化【施策番号26】

法務省は、犯罪をした高齢者又は障害のある者等が円滑に必要な福祉サービスを利用できるようにするため、少年鑑別所におけるアセスメント機能の充実を図るとともに、矯正施設における社会福祉士等の活用や、保護観察所における福祉サービス利用に向けた調査・調整機能の強化を図ることにより、福祉的支援が必要な者の掘り起こしや福祉サービスのニーズの把握を適切に行う。また、検察庁においては、入口支援の実施に当たって効果的な支援先の選定ができるよう、可能な限り弁護人とも協働しつつ、支援対象者の抱える課題や福祉サービスのニーズを適切に把握する。【法務省】

イ 高齢者又は障害のある者等である受刑者等に対する指導【施策番号27】

法務省は、矯正施設において、社会福祉士等によるアセスメントを適切に実施し、福祉的支援の必要が認められる者に対し、支援に関する方針を明確にした上で、福祉関係機関等の協力を得ながら、健康運動指導や福祉サービスに関する知識及び社会適応能力等を習得させるための指導を行うとともに、福祉施設の事前体験等の機会を適切に設けるなどし、福祉的支援についての動機付けも含む円滑な社会復帰に向けた指導を行う。また、福祉的支援の必要が認められるものの就労が可能な者に対しては、個人の特性に応じて就労に向けた支援を行うなど、個々の特性に応じた必要な支援の充実を図る。【法務省】

ウ 矯正施設、保護観察所、更生保護施設、地域生活定着支援センター、地方公共団体等の多機関連携の強化等【施策番号28】

法務省及び厚生労働省は、特別調整の取組について、矯正施設、保護観察所、地域生活定着支援センター等の多機関連携はもとより、地方公共団体とも協働しつつ、一層着実な実施を図る。また、特別調整の対象とはならないものの、高齢者又は障害のある者等であって自立した生活を営む上での困難を有する者等に対し、必要な保健医療・福祉サービスが提供されるようにするため、矯正施設、保護観察所、更生保護施設、地域生活定着支援センター、地方公共団体、地域の保健医療・福祉関係機関等の連携の充実強化を図る。【法務省、厚生労働省】

② 保健医療・福祉サービスの利用に関する地方公共団体等との連携の強化

ア 保健医療・福祉サービスの利用に向けた手続の円滑化【施策番号29】

法務省及び厚生労働省は、犯罪をした高齢者又は障害のある者等が、速やかに、障害者手帳の交付、保健医療・福祉サービスの利用の必要性の認定等を受け、これを利用することができるよう、地方公共団体との調整を強化するなどして、釈放後の円滑な福祉サービスの受給を促進する。また、法務省は、住民票が消除されるなどした受刑者等が、矯正施設出所後速やかに保健医療・福祉サービスを利用することができるよう、引き続き、矯正施設・更生保護官署の職員に対して住民票に関する手続等の周知・徹底を図る。【法務省、厚生労働省】

イ 社会福祉施設等の協力の促進【施策番号30】

厚生労働省は、犯罪をした高齢者又は障害のある者等が地域社会で生活できるよう、自立に向けた訓練や就労の支援を行うなど、社会福祉施設等による福祉サービスの提供の充実を図る。【厚生労働省】

③ 被疑者等への支援を含む効果的な入口支援の実施【施策番号31】

法務省は、保護観察所において、更生緊急保護の枠組みを活用し、検察庁を含む関係機関との連携により、勾留中の被疑者の段階から、その支援の必要性に応じ、本人の意思やニーズを踏まえつつ、住居、就労先、福祉サービス等に係る生活環境の調整を行うとともに、釈放後に、重点的な生活指導や福祉サービスに係る調整等を行う。法務省及び厚生労働省は、これら被疑者・被告人のうち、高齢又は障害により、自立した生活を営む上で、公共の福祉に関する機関その他の機関による福祉サービスを受けることが必要な者に対し、検察庁、保護観察所、地域生活定着支援センター等の多機関連携により、釈放後速やかに適切な福祉サービスに結び付ける取組について、本人の意思やニーズを踏まえつつ、地方公共団体とも協働し、着実な実施を図る。【法務省、厚生労働省】

④ 保健医療・福祉サービスの利用の促進等のための研修・体制の整備【施策番号32】

(ア) 刑事司法関係機関

法務省は、検察庁における社会復帰支援を担当する検察事務官や社会福祉士、矯正施設における福祉専門官等及び保護観察所における更生緊急保護等の社会復帰支援を担当する保護観察官の配置を充実させるなど、検察庁、矯正施設及び保護観察所における社会復帰支援の実施体制の充実を図る。また、犯罪をした者等の福祉的支援の必要性を的確に把握することができるよう、刑事司法関係機関の職員に対する高齢者及び障害のある者等の特性等に関する研修を実施する。

(イ) 更生保護施設

法務省は、犯罪をした高齢者又は障害のある者等の更生保護施設における受入れやその特性に応じた支援の実施を充実させるための施設・体制の整備を図る。

(ウ) 地域生活定着支援センター、保健医療・福祉関係機関

厚生労働省は、地域生活定着支援センターについて、その実施主体である地方公共団体と協働し、活動基盤の充実を図るとともに、同センターの職員に対する必要な研修を実施する。

また、法務省は、地域の保健医療・福祉関係機関の職員等に対し、刑事司法手続等に関する必要な研修を実施する。

【法務省、厚生労働省】

2.薬物依存の問題を抱える者への支援等

(1) 現状認識と課題等

薬物事犯者は、犯罪をした者であると同時に、薬物依存症の患者である場合があることから、政府においては、これまで、矯正施設や保護観察所における専門的プログラムの実施といった改善更生に向けた指導を充実させるとともに、薬物を使用しないよう指導するだけではなく、薬物依存症からの回復に向けて、地域社会の保健医療機関等につなげるための支援を進めてきた。

また、薬物依存症は、薬物の使用を繰り返すことにより本人の意思とは関係なく誰でもなり得る病気であり、回復可能であることについての普及啓発、薬物依存の問題を抱える者が地域で相談や治療を受けられるようにするための相談拠点・専門医療機関の拡充、医療従事者等の育成等を進めてきた。さらに、これまで支援が届きにくかった保護観察の付かない全部執行猶予判決を受けた者等を含む薬物依存の問題を抱える者に対し、麻薬取締部による専門的プログラムを実施してきた。

その結果、覚醒剤取締法違反により受刑した者の2年以内再入率は、平成27年出所者が19.2パーセントであったところ、令和2年出所者は15.5パーセントまで減少するなど、薬物事犯者に対する再犯の防止等に関する施策は、一定の成果を上げてきた。

しかしながら、薬物依存の問題を抱える者等への相談支援や治療等に携わる人材・機関は、いまだ十分とは言い難い状況にあり、薬物事犯保護観察対象者のうち保健医療機関等で治療・支援を受けた者の割合は低調に推移している。また、大麻事犯の検挙人員が8年連続で増加し、その約7割を30歳未満の者が占めるなど、若年者を中心とした大麻の乱用が拡大しているなど課題もある。

これらの課題に対応するため、薬物依存の問題を抱える者等への相談支援や治療等に携わる人材・機関の更なる充実を図るとともに、刑事司法関係機関、地域社会の保健医療機関等の各関係機関が、“息の長い”支援を実施できるよう、連携体制を更に強化していく必要がある。さらに、増加する大麻事犯者の再犯の防止等に向けた取組を迅速に進めていく必要がある。また、薬物依存の問題を抱える者の回復過程においては、その他の精神疾患に陥る場合があることや、断薬に向けて治療等の継続と就労を並行して行うことが容易ではない場合があることを念頭に置いて、対応していく必要がある。

(2) 具体的施策

① 薬物乱用を未然に防止するための広報・啓発活動の充実【施策番号33】

警察庁、法務省、文部科学省及び厚生労働省は、薬物乱用を許容しない環境づくりが最大の再犯防止策であることを踏まえ、薬物乱用を未然に防止するため、広く国民に対し、薬物乱用の危険性や有害性、薬物乱用への勧誘に対する対応方法等について、効果的な広報・啓発を実施する。【警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】

② 刑事司法関係機関等における効果的な指導の実施等

ア 再犯リスクを踏まえた効果的な指導等の実施【施策番号34】

法務省は、厚生労働省の協力を得て、矯正施設及び保護観察所において、薬物事犯者の再犯リスク等を適切に把握した上で、専門的プログラムなどの指導を一貫して実施するととともに、関係機関と連携した生活環境の調整や社会復帰支援を充実させる。また、薬物依存の問題を抱える者の回復過程においては、アルコールや医薬品への依存に陥る場合があるとの指摘があることや、犯罪をした者等の中には、アルコールや医薬品への依存が認められる者が一定数いることを踏まえ、そうした個々の対象者が抱える問題に応じた指導や支援を併せて実施する。加えて、指導・支援の効果をより一層高めるため、指導内容・方法の改善を図るほか、薬物依存症に関する知見を深める機会を充実させるなどして、指導や支援に当たる職員の育成を進める。【法務省、厚生労働省】

イ 増加する大麻事犯に対応した処遇等の充実【施策番号35】

法務省は、厚生労働省の協力を得て、少年院における大麻に関する新たな指導教材の作成を行うとともに、保護観察所における専門的プログラムに大麻に関する指導項目を新設するなど、大麻事犯に対応した処遇の充実を図る。

厚生労働省は、大麻規制の見直しについての検討を進め、その検討結果に基づき、法改正を含む所要の措置を講じるほか、主として若年者に対して、大麻の危険性等を周知するための広報・啓発活動を推進する。【法務省、厚生労働省】

ウ 更生保護施設等による薬物依存回復処遇の充実【施策番号36】

法務省は、薬物事犯者の中には、再犯につながるおそれのある環境から離脱するため従前の住居に戻ることが適当でない者が多く存在すること等を踏まえ、更生保護施設等における薬物事犯者の受入れを促進するとともに、薬物依存からの回復に資する処遇を行うための施設や体制の整備を推進し、更生保護施設等による薬物依存回復処遇の充実を図る。【法務省】

エ 麻薬取締部が実施する薬物乱用防止対策事業の拡大【施策番号37】

厚生労働省は、法務省と連携し、「薬物乱用者に対する再乱用防止対策事業」として、薬物事犯に係る保護観察の付かない全部執行猶予判決を受けた者等を対象にプログラム等を実施しているところ、同事業の拡充に向けた検討を進める。【法務省、厚生労働省】

③ 治療・支援等を提供する保健医療機関等の充実及び円滑な利用の促進

ア 薬物依存の問題を抱える者等に対応する専門医療機関等の拡充及びその円滑な利用の促進【施策番号38】

厚生労働省は、薬物依存の問題を抱える者等が、地域において、専門的な相談や入院から外来までの継続的な治療を受けることができるようにするため、相談支援や専門医療に従事する者の確保及び育成を進めるとともに、専門医療機関等の拡充や一般医療機関における適切な対応の促進を図る。

警察庁、法務省及び厚生労働省は、薬物依存の問題を抱える者等を、保健医療機関等へ適切につなぐことができるようにするため、各関係機関間において、情報共有、課題の抽出及び解決方策の検討をするなどし、連携体制の強化を図る。また、薬物依存の問題を抱える者だけではなく、その親族を始めとした身近な者が適切な機関に相談できるようにするため、精神保健福祉センターを始めとした相談支援機関等の周知を行うなど、支援に関する情報についての広報・啓発活動を推進する。【警察庁、法務省、厚生労働省】

イ 自助グループ等の民間団体と共同した支援の強化【施策番号39】

法務省は、薬物依存からの回復に向けた支援活動を行う自助グループ等の民間団体が果たす役割の重要性に鑑み、矯正施設及び保護観察所において、同民間団体との連携を強化し、刑事司法手続が終了した後も薬物依存の問題を抱える者等への支援が継続できる体制の整備を図る。

厚生労働省は、同民間団体の活動を促進するための支援の充実を図る。【法務省、厚生労働省】

ウ 薬物依存症に関する知見を有する医療関係者の育成【施策番号40】

厚生労働省は、薬物依存症の回復に向けた一般的な保健医療・福祉サービスの中での実施体制を充実させるために、薬物依存症に関する基本的な知識を有する医療関係者が必要であることを踏まえ、令和2年度からは医師臨床研修制度において、精神科研修を必修化するとともに、経験すべき疾病・病態の一つとして「依存症(ニコチン・アルコール・薬物・病的賭博)」を位置付けたところであり、引き続き臨床研修を推進する。【厚生労働省】

エ 薬物依存症に関する知見を有する福祉専門職や心理専門職等の育成【施策番号41】

厚生労働省は、薬物依存への問題を抱える者等への相談支援体制を充実させるために、薬物依存の問題を抱える者等の支援ニーズを適切に把握し、関係機関につなげるなどの相談援助を実施する福祉専門職・心理専門職が必要であることを踏まえ、精神保健福祉士、社会福祉士及び公認心理師の養成課程においても薬物依存症に関する適切な教育がなされるよう努める。

また、薬物依存等からの回復に向けて、地域における継続した支援が必要であることを踏まえ、薬物依存を抱える者等への生活支援を担う支援者に対する研修の充実を図る。【厚生労働省】

④ 薬物事犯者の再犯防止施策の効果検証及び効果的な方策の検討【施策番号42】

法務省及び厚生労働省は、刑の一部執行猶予判決を受けた者の再犯状況、刑事司法関係機関や保健医療機関等における指導・支援の効果等を検証するとともに、諸外国において薬物依存症からの効果的な回復措置として実施されている各種拘禁刑に代わる措置について調査を行うなどし、新たな取組を試行的に実施することも含め、我が国における薬物事犯者の再犯の防止等において効果的な方策について検討を行う。【法務省、厚生労働省】

第3 学校等と連携した修学支援の実施等のための取組(推進法第11条、第13条関係)

1.学校等と連携した修学支援の実施等

(1) 現状認識と課題等

我が国の高等学校への進学率は、98.8パーセントであり、ほとんどの者が高等学校に進学する状況にあるが、その一方で、入所受刑者の33.8パーセントは高等学校に進学しておらず、23.8パーセントは高等学校を中退している。また、少年院入院者の24.4パーセントは中学校卒業後に高等学校に進学しておらず、中学校卒業後に進学した者のうち56.9パーセントは高等学校を中退している状況にある。

社会において、就職して自立した生活を送る上では、高等学校卒業程度の学力が求められることが多い実情にあることに鑑み、政府においては、これまで、高等学校の中退防止のための取組や、高等学校中退者等に対する学習相談や学習支援を実施してきた。また、矯正施設における高等学校卒業程度認定試験に向けた指導、少年院在院者に対する高等学校教育機会の提供や出院後の進路指導、保護観察所における保護司やBBS会等の民間ボランティアと連携した学習支援等を実施してきた。

その結果、矯正施設における高等学校卒業程度認定試験の全科目合格者率が増加するなど、修学支援のための取組は、一定の成果を上げてきた。

しかしながら、依然として、少年院出院時に復学・進学を希望している者のうち、約7割は復学・進学が決定しないまま少年院を出院しているなどの課題もある。

これらの課題に対応するため、引き続き、矯正施設において、民間のノウハウやICTの活用などにより教科指導の充実を図るとともに、少年院出院後も一貫した修学支援を実施できるよう、矯正施設、保護観察所、学校等の関係機関の連携を強化していく必要がある。また、非行が、修学からの離脱を助長し、又は復学を妨げる要因となっているとの指摘があることも踏まえ、非行防止に向けた取組を強化していく必要がある。

(2) 具体的施策

① 児童生徒の非行の未然防止等

ア 学校における適切な指導等の実施【施策番号43】

文部科学省は、警察庁、法務省及び厚生労働省の協力を得て、弁護士会等の民間団体にも協力を求めるなどし、いじめ防止対策推進法(平成25年法律第71号)等の趣旨を踏まえたいじめ防止のための教育や、人権尊重の精神を育むための教育と併せ、再非行の防止の観点も含め、学校における非行防止のための教育、性犯罪の防止のための教育、薬物乱用未然防止のための教育及び薬物再乱用防止のための相談・指導体制の充実、復学に関する支援体制の充実を図る。また、厚生労働省の協力を得て、学校生活を継続させるための本人及び家族等に対する支援や、やむを得ず中退する場合の就労等の支援の充実を図るとともに、高等学校中退者等に対して高等学校卒業程度の学力を身に付けさせるための学習相談及び学習支援等を実施する地方公共団体の取組を支援する。【警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】

イ 地域における非行の未然防止等のための支援【施策番号44】

内閣府、警察庁、法務省、文部科学省及び厚生労働省は、非行等を理由とする児童生徒の修学の中断を防ぐため、貧困や虐待等の被害体験などが非行等の一因になることも踏まえ、地域社会における子供の居場所作りや子供、保護者及び学校関係者等に対する相談支援の充実、民間ボランティア等による犯罪予防活動の促進、高等学校卒業程度資格の取得を目指す者への学習相談・学習支援など、児童生徒の非行の未然防止や深刻化の防止に向けた取組を推進する。

また、同取組を効果的に実施するために、子ども・若者育成支援推進法(平成21年法律第71号)に基づき、社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者の支援を行うことを目的として、地方公共団体に「子ども・若者支援地域協議会」の設置及び「子ども・若者総合相談センター」としての機能を担う体制の確保について努力義務が課されていることなどについて、関係機関等に周知し、連携の強化を図る。

さらに、法務省は、一部の少年鑑別所と都道府県警察において協定を締結し、継続補導対象者へのカウンセリング、心理検査を実施するなどしているところ、これらの取組の拡充を検討するなど、連携の強化を図る。【内閣官房、内閣府、警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】

② 非行等による学校教育の中断の防止等

ア 学校等と保護観察所が連携した支援等【施策番号45】

法務省及び文部科学省は、保護司による非行防止教室など保護司と学校等が連携して行う犯罪予防活動を促進し、保護司と学校等の日常的な連携・協力体制の構築を図るとともに、保護観察所、保護司、学校関係者等に対し、連携事例を周知するなどして、学校に在籍している保護観察対象者に対する生活指導・支援等の充実を図る。【法務省、文部科学省】

イ 矯正施設と学校との連携による円滑な学びの継続に向けた取組の充実【施策番号46】

法務省は、矯正施設において、個々の対象者の希望や事情を踏まえつつ、就労や資格取得と関連付けた修学に対する動機付けを図るほか、引き続き、民間の学力試験の活用や適切な教材の整備、ICTの活用を進めるなどして、対象者の能力に応じた教科指導を実施する。また、法務省は、文部科学省と連携しながら、少年院在院者のうち希望する者について、在院中の通信制高校への入学及び出院後の継続した学びに向けた調整等を行うことにより、高等学校教育機会の提供についての取組の更なる充実を図る。【法務省、文部科学省】

ウ 矯正施設における高等学校卒業程度認定試験の指導体制の充実【施策番号47】

法務省及び文部科学省は、矯正施設における高等学校卒業程度認定試験を引き続き実施する。また、法務省は、ICTの活用を進めるなどして、矯正施設における同試験に係る指導を強化するとともに、同試験に合格した少年院在院者等の希望進路の実現に向けた指導の充実を図る。【法務省、文部科学省】

③ 学校や地域社会において再び学ぶための支援

ア 学校や地域社会における修学支援【施策番号48】

法務省は、保護司、更生保護女性会、BBS会、少年友の会等の民間ボランティアや協力雇用主と連携して、学校に在籍していない非行少年等が安心して修学することができる場所の確保を含めた修学支援を促進する。また、保護観察対象者のうち、修学の継続のために支援が必要な者については、矯正施設における修学支援を始めとした施設内処遇の内容等を踏まえ、矯正施設、保護観察所及び民間ボランティア等が協働して、本人が抱える課題や実情等に応じた修学支援を実施するとともに、実施事例を通じて得られた知見を踏まえ、地域社会における効果的な修学支援施策を展開する。

法務省及び文部科学省は、矯正施設在所者・保護観察対象者のうち、修学支援の対象となる者に対し、地方公共団体における学習相談・学習支援の取組の利用を促す。【法務省、文部科学省】

イ 矯正施設・保護観察所職員と学校関係者の相互理解の促進等【施策番号49】

法務省及び文部科学省は、矯正施設や保護観察所の職員と学校関係者との相互理解を深めるため、矯正施設・保護観察所における研修や学校関係者への研修等の実施に当たって相互に職員を講師として派遣するなどの取組を推進する。また、矯正施設・保護観察所の職員や学校関係者に対し、相互の連携事例の周知・共有を図る。【法務省、文部科学省】

第4 犯罪をした者等の特性に応じた効果的な指導の実施等のための取組(推進法第11条、第13条、第21条関係)

1.特性に応じた効果的な指導の実施等

(1) 現状認識と課題等

出所受刑者等の2年以内再入率の推移を罪名別(覚醒剤取締法違反、性犯罪、傷害・暴行、窃盗)、属性別(高齢、女性、少年)に見ると、それぞれに傾向があり、また、各個人に着目しても、犯罪や非行の内容はもちろんのこと、心身の状況、家庭環境、交友関係等、犯罪の背景にある事情は様々である。

再犯の防止等のためには、罪種ごとに認められる特徴や各個人の特性を的確に把握し、それらに応じた効果的な指導等を行うことが重要であることから、政府においては、これまで、刑事施設における受刑者用一般リスクアセスメントツール(Gツール)や保護観察所におけるアセスメントツール(CFP)を開発するなど、アセスメント機能の強化を進めるとともに、各種プログラム等の罪種・類型別の専門的指導の充実を図ってきた。また、特定少年を含む少年に対して、早期の段階から非行の防止に向けた取組を行っていくことが有益であることから、関係府省間で「特定少年等に係る非行対策」を申し合わせ、早期の段階から、学校、刑事司法関係機関、地域の関係機関等が連携して非行の未然防止に取り組んでいく体制を強化し、必要な対策を進めてきた。

しかしながら、矯正施設及び保護観察所におけるアセスメント内容等の関係機関への有機的な引継ぎが必ずしも十分とはいえないこと、刑事司法手続を離れた者が地域社会で特性に応じた支援を受けることができる体制が十分に整っているとはいえないことなどの課題もあり、これらの課題に対応した取組を進める必要がある。また、「刑法等の一部を改正する法律」が成立し、今後、受刑者に対し、改善更生のために必要な作業と指導を柔軟に組み合わせた処遇が可能となることなどを受け、犯罪被害者等の視点も取り入れながら、個々の対象者の特性に応じた指導等を一層充実させていく必要がある。

(2) 具体的施策

① 刑事司法関係機関におけるアセスメント機能の強化と関係機関等が保有する情報の活用【施策番号50】

法務省は、矯正施設及び保護観察所において、社会情勢や犯罪動向の変化も考慮した上で、犯罪をした者等の特性や再犯リスク等を踏まえた適切な処遇方針を策定するため、更生支援計画書等の公的機関や民間団体等が保有する処遇に資する情報を活用した多角的な視点によるアセスメントを行うことも含め、アセスメント機能の強化を図るとともに、アセスメント内容の他機関への適切な引継ぎを行う。

法務省は、刑事施設における受刑者用一般リスクアセスメントツール(Gツール)や少年鑑別所における法務省式ケースアセスメントツール(MJCA)、保護観察所におけるアセスメントツール(CFP)などを適切に活用するとともに、AI技術の活用も含め、アセスメント精度の更なる向上に向けた検討を行う。【法務省】

② 特性に応じた指導等の充実

i 性犯罪者・性非行少年に対する指導等

ア 性犯罪者等に対する効果的な指導等の実施【施策番号51】

法務省は、厚生労働省の協力を得て、海外における取組などを参考にしつつ、刑事施設における性犯罪再犯防止指導や少年院における性非行防止指導、保護観察所における性犯罪再犯防止プログラム等の性犯罪者等に対する指導等について、指導者育成を進めるなどして、一層の充実を図るとともに、地域の医療・福祉関係機関等との連携を強化し、性犯罪者等に対する矯正施設在所中から出所後まで一貫性のある効果的な指導の実施を図る。また、刑事司法手続終了後も継続的な支援が実施できるよう、地方公共団体や民間協力者が利用可能な支援ツールを提供し、その活用を促進する。

加えて、法務省は、海外において導入されているGPS等により位置情報を取得・把握する運用や性犯罪対象者の自発的意思によって支援を受けることのできる社会内サポート体制も参考にしつつ、性犯罪者等の処遇の充実方策について検討する。【法務省、厚生労働省】

イ 子供を対象とする暴力的性犯罪をした者の再犯防止【施策番号52】

警察庁は、法務省の協力を得て、子供を対象とする暴力的性犯罪をした者について、刑事施設出所後の所在確認を実施するとともに、その者の同意を得て面談を実施し、必要に応じて、関係機関・団体等による支援等に結び付けるなど、再犯の防止に向けた措置の充実を図る。【警察庁、法務省】

ii ストーカー・DV加害者に対する指導等

ア 被害者への接触防止のための措置【施策番号53】

警察庁及び法務省は、ストーカー・DV加害者による重大な事案が発生していることを踏まえ、これら加害者の保護観察実施上の特別遵守事項や問題行動等の情報を共有し、被害者への接触の防止のための指導等を徹底するとともに、必要に応じ、仮釈放の取消しの申出又は刑の執行猶予の言渡しの取消しの申出を行うなど、これら加害者に対する適切な措置を実施する。【警察庁、法務省】

イ ストーカー加害者等に対するカウンセリング等【施策番号54】

警察庁は、ストーカー加害者への対応を担当する警察職員について、研修の受講を促進するなどして、精神医学的・心理学的アプローチに関する技能や知識の向上を図るとともに、ストーカー加害者に対し、医療機関等の協力を得て、医療機関等によるカウンセリング等の受診に向けた働き掛けを行うなど、関係機関・団体と連携して、ストーカー加害者に対する精神医学的・心理学的なアプローチを推進する。

また、法務省は、個々のストーカー・DV加害者が抱える問題性等を踏まえ、矯正施設における改善指導や保護観察所における類型別処遇ガイドラインに基づく処遇を適切に実施する。【警察庁、法務省】

iii 暴力団からの離脱、社会復帰に向けた指導等【施策番号55】

警察庁及び法務省は、警察・暴力追放運動推進センター等と矯正施設・保護観察所との連携を強化するなどして、暴力団員に対する暴力団離脱に向けた働き掛けの充実を図るとともに、離脱に係る情報を適切に共有する。また、警察庁、法務省等の関係省庁は連携の上、暴力団からの離脱及び暴力団離脱者等の社会への復帰・定着を促進するため、離脱・就労や預貯金口座の開設支援などの社会復帰に必要な社会環境・フォローアップ体制の充実を図る。【警察庁、金融庁、法務省】

iv 少年・若年者に対する可塑性に着目した指導等

ア 刑事司法関係機関における指導体制の充実【施策番号56】

法務省は、少年院において、複数職員で指導を行う体制の充実を図るとともに、少年鑑別所において、在所中の少年に対し、その自主性を尊重しつつ、健全育成に向けた支援等を適切に実施するほか、学校等の関係機関や民間ボランティアの協力も得て、学習や文化活動等に触れる機会を付与するなど、少年の健全育成を考慮した処遇の充実を図る。また、刑事施設においても、おおむね26歳未満の若年受刑者に対し、少年院における矯正教育の手法やノウハウ、その建物・設備等を活用しながら、少年・若年者の特性に応じたきめ細かな指導等の充実を図る。【法務省】

イ 関係機関と連携したきめ細かな支援等【施策番号57】

法務省は、支援が必要な少年・若年者については、児童福祉関係機関に係属歴がある者、虐待等の被害体験や発達障害等の障害を有している者が少なくないなどの実情を踏まえ、少年院・保護観察所におけるケース検討会を適時適切に実施するなど、学校、児童相談所、児童福祉施設、福祉事務所、少年サポートセンター、子ども・若者総合支援センター(地方公共団体が子ども・若者育成支援に関する相談窓口の拠点として設置するもの)、地域若者サポートステーション(働くことに悩みを抱えている者を対象に、就労に向けた支援を行う機関)、弁護士・弁護士会、医療機関等関係機関との連携を強化し、きめ細かな支援等を実施する。【法務省】

ウ 非行少年に対する立ち直り支援活動の充実【施策番号58】

警察庁は、非行少年を生まない社会づくり活動の一環として、少年サポートセンター等が民間ボランティアや関係機関と連携して行う、修学、就労に向けた支援や社会奉仕体験活動等への参加機会の確保等、個々の非行少年の状況に応じた立ち直り支援について、都道府県警察に対する指導や好事例の紹介等を通じ、その充実を図る。【警察庁】

エ 保護者との関係を踏まえた指導等の充実【施策番号59】

法務省は、保護観察対象少年及び少年院在院者に対し、保護者との適切な関係に関する指導・支援の充実を図るとともに、保護者に対し、対象者の処遇に対する理解・協力の促進や保護者の監護能力の向上を図るための指導・助言、保護者会への参加依頼、保護者自身が福祉的支援等を要する場合の助言等を行うなど、保護者に対する働き掛けの充実を図る。また、保護者による適切な監護が得られない場合には、地方公共団体を始めとする関係機関や民間団体等と連携し、本人の状況に応じて、社会での自立した生活や未成年後見制度の利用等に向けた指導・支援を行う。【法務省】

v 女性の抱える困難に応じた指導等【施策番号60】

法務省は、女性受刑者等について、妊娠・出産等の事情を抱えている場合があること、虐待等の被害体験や性被害による心的外傷、依存症・摂食障害等の精神的な問題を抱えている場合が多いことなどを踏まえ、矯正施設において、関係機関との連携を強化し、これらの困難に応じた指導・支援を効果的に実施するとともに、女性のライフスタイルの多様化への対応や自身の被害防止の観点からの教育の充実を図る。また、法務省は、女性受刑者等のうち、女性であることにより様々な困難な問題を抱える者については、矯正施設出所後速やかに地域の保健医療・福祉サービス等を利用することができるよう、厚生労働省の協力を得て、困難な問題を抱える女性への支援のための諸制度や社会資源も活用しつつ、矯正施設在所中から関係機関等と連携した切れ目のない社会復帰支援等を行う。

さらに、法務省は、矯正施設出所後の自立した社会生活を視野に入れ、矯正施設において、女性受刑者等の就労意欲を喚起するとともに、女性の労働状況や特性を踏まえた矯正処遇等を実施するほか、更生保護施設においても、女性の特性に配慮した指導・支援を推進するなど、社会生活への適応のための指導・支援の充実を図る。【法務省、厚生労働省】

vi 発達上の課題を有する犯罪をした者等に対する指導等【施策番号61】

法務省は、犯罪をした者等の中には、発達上の課題を有し、指導等の内容の理解に時間を要する者や、指導等の内容を理解するために特別な配慮を必要とする者のほか、虐待等の被害体験を有する者が存在することを踏まえ、その者の特性に応じた指導等の充実を図るとともに、厚生労働省や民間団体等の協力を得て、発達上の課題を有する者等に対する指導に関する研修の充実や関係機関との連携強化等を図る。また、知的障害等のある受刑者等について、関係機関との連携を強化しつつ、民間の知見も活用するなどし、その特性に応じた指導・支援の充実を図る。【法務省、厚生労働省】

vii 各種指導プログラムの充実【施策番号62】

法務省は、刑事施設において、拘禁刑の創設の趣旨を踏まえ、自身の罪や被害者等に向き合い、作業や改善指導に対する動機付けを高める働き掛けを強化しつつ、アルコール依存を含む依存症の問題や、DVを含む対人暴力の問題を抱える者等に対し、その特性に応じた柔軟な指導が可能となるよう改善指導プログラムの充実を図る。また、少年院において、特定少年に対する成年としての自覚・責任を喚起する指導や社会人として必要な知識の付与に加え、特殊詐欺等近年の犯罪態様に対応した指導等の充実を図る。保護観察所においては、飲酒や暴力などに関する専門的プログラムの実施や社会貢献活動など、個々の対象者の特性に応じた指導の一層の充実を図る。【法務省】

③ 犯罪被害者等の視点を取り入れた指導等【施策番号63】

法務省は、犯罪をした者等が社会復帰する上で、自らが犯した罪等の責任を自覚し、犯罪被害者等の置かれた状況や心情等を理解することが不可欠であることを踏まえ、矯正施設において、被害者の視点を取り入れた教育を効果的に実施するほか、新設される「刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度」に必要となる人的・物的体制を整備するなどして、被害者等の心情等を考慮した矯正処遇・矯正教育の充実を図る。

また、保護観察所においても、犯罪被害者等の心情等伝達制度の一層効果的な運用に努めるほか、必要となる人的体制を整備するなどして、新設される犯罪被害者等の心情等を聴取する制度の適切な運用に努める。加えて、しょく罪指導プログラムの実施や犯罪被害者等の被害の回復・軽減に誠実に努めるよう指導監督することなどにより、犯罪被害者等の思いに応える保護観察処遇の一層の充実を図る。【法務省】

第5 民間協力者の活動の促進等のための取組(推進法第5条、第22条、第23条関係)

1.現状認識と課題等

犯罪をした者等の社会復帰支援は、数多くの民間協力者の活動に支えられている。再犯の防止等に関する民間協力者の活動は、刑事司法手続が進行中の段階から終了した後の段階まで、あらゆる段階をカバーする裾野の広いもので、刑事司法関係機関や地方公共団体といった官の活動とも連携した取組が行われている。こうした民間協力者の活動は、SDGsに掲げられたマルチステークホルダー・パートナーシップを体現し、「持続可能な社会」・「インクルーシブな社会」の実現に欠かせない尊いものでもあり、社会において、高く評価されるべきものである。

民間協力者のうち、保護司は、犯罪をした者等が孤立することなく、社会の一員として安定した生活が送れるよう、保護観察官と協働して保護観察を行うなどの活動を行っており、地域社会の安全・安心にとっても、欠くことのできない存在である。保護司が担う役割は、国際的な評価も高く、第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)のサイドイベントとして開催した「世界保護司会議」では、「世界保護司デー」の創設等を盛り込んだ「京都保護司宣言」が採択されるなど、“HOGOSHI”の輪は、我が国の枠を超えて世界への広がりを見せている。

また、犯罪をした者等の社会復帰を支援するための地域に根ざした幅広い活動を行う更生保護女性会やBBS会等の更生保護ボランティア、矯正施設を訪問して矯正施設在所者の悩みや問題について助言・指導する篤志面接委員、矯正施設在所者の希望に応じて宗教教誨を行う教誨師、非行少年等の居場所づくりを通じた立ち直り支援に取り組む少年警察ボランティア、都道府県からの委託を受けて活動する地域生活定着支援センター、更生支援計画の策定等に関わる社会福祉士・精神保健福祉士、刑事弁護や少年事件の付添人としての活動のみならず社会復帰支援・立ち直り支援にも関わる弁護士、自らの社会復帰経験に基づいて支援を行う自助グループなど、数多くの民間協力者が、それぞれの立場や強みを生かし、相互に連携し、あるいは刑事司法関係機関や地方公共団体とも連携しながら、再犯の防止等に関する施策を推進する上で欠くことのできない活動を行っている。

政府は、こうした民間協力者が果たす役割の重要性に鑑み、民間協力者の活動を一層促進していくことはもとより、より多くの民間協力者に再犯の防止等に向けた取組に参画してもらえるよう、新たな民間協力者の開拓も含め、積極的な働き掛けを行っていく必要がある。また、民間協力者が、“息の長い”支援を行う上で極めて重要な社会資源であることを踏まえ、民間協力者との連携を一層強化していく必要がある。

保護司については、担い手の確保が年々困難となり、高齢化も進んでいる。その背景として、地域社会における人間関係の希薄化といった社会環境の変化に加え、保護司活動に伴う不安や負担が大きいことが指摘されて久しい。こうした課題に対応し、幅広い世代から多様な人材を確保することができる持続可能な保護司制度の構築に向けて、保護司組織の運営を含む保護司活動の支障となる要因の軽減等について検討を進め、保護司活動の基盤整備を一層推進していく必要がある。

2.持続可能な保護司制度の確立とそのための保護司に対する支援

(1) 具体的施策

① 持続可能な保護司制度の確立に向けた検討・試行【施策番号64】

法務省は、時代の変化に適応可能な保護司制度の確立に向け、保護司の待遇や活動環境、推薦・委嘱の手順、年齢条件及び職務内容の在り方並びに保護観察官との協働態勢の強化等について検討・試行を行い、2年を目途として結論を出し、その結論に基づき所要の措置を講じる。【法務省】

② 保護司活動のデジタル化及びその基盤整備の推進【施策番号65】

法務省は、保護司活動に関する事務の多くをオンライン上で実施できる体制の構築を目指し、保護司専用ホームページ“H@(はあと)”の機能拡充を図るとともに、保護司が使用するタブレット端末等を整備するなど、保護司活動の一層のデジタル化を図る。【法務省】

③ 保護司適任者に係る情報収集及び保護司活動を体験する機会等の提供【施策番号66】

法務省は、保護司候補者を確保するため、総務省、文部科学省、厚生労働省及び経済産業省の協力を得て、保護観察所において、地方公共団体、自治会、福祉・教育・経済等の各種団体と連携して、保護司候補者検討協議会における協議を効果的に実施し、地域の保護司適任者に関する情報を収集する取組を強化する。また、法務省は、保護観察所において、保護司活動についての理解を広げるための保護司セミナーや保護司活動を体験する保護司活動インターンシップなどを通じて、同協議会で情報提供のあった保護司候補者等に対して、保護司活動についての理解を深めてもらうとともに、実際に保護司として活動してもらえるよう、積極的に働き掛ける。【総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、経済産業省】

④ 地方公共団体からの支援の確保【施策番号67】

法務省は、総務省と連携し、地方公共団体に対し、保護司適任者に関する情報提供や職員の推薦、更生保護サポートセンターの設置場所や自宅以外で面接できる場所の確保、顕彰等による保護司の社会的認知の向上、保護司確保に協力した事業主に対する優遇措置など、保護司活動に対する充実した支援が得られるよう働き掛ける。【総務省、法務省】

⑤ 国内外への広報・啓発【施策番号68】

法務省は、幅広い世代から多様な人材を保護司として迎え入れるため、保護司セミナーによる地域の関係機関等への広報、若年層にも訴求する多様な手法による広報を展開するとともに、地方公共団体による保護司への顕彰を促進することなどを通じ、国内における保護司の社会的認知・評価の向上を図る。

また、京都保護司宣言を踏まえ、国際会議等の場で保護司制度やその活動についての国際発信を推進し、保護司の国際的な認知・評価の向上を図る。【法務省】

3.民間協力者(保護司を除く)の活動の促進

(1) 具体的施策

① 民間ボランティアの活動に対する支援の充実

ア 少年警察ボランティア等の活動に対する支援の充実【施策番号69】

警察庁は、少年警察ボランティアの活動を促進するため、少年警察ボランティアの活動に対して都道府県警察が支給する謝金等の補助や、都道府県警察や民間団体が実施する少年警察ボランティア等に対する研修への協力を推進するなどして、少年警察ボランティア等の活動に対する支援の充実を図る。【警察庁】

イ 更生保護ボランティアの活動に対する支援の充実【施策番号70】

法務省は、更生保護ボランティアの活動を促進するため、更生保護女性会やBBS会といった更生保護ボランティアに対する研修の充実を図るとともに、積極的な広報等により、担い手の確保を図る。また、地域の中で困難を抱える人を支援するため、更生保護ボランティアの活動に対する支援の充実を図る。【法務省】

② 民間協力者との連携強化

ア 地域の民間協力者の開拓及び一層の連携等【施策番号71】

法務省は、再犯の防止等に関する施策を推進する上で、民間協力者が果たす役割の重要性に鑑み、地域で再犯の防止等に資する取組を行うNPO法人、社会福祉法人、企業、弁護士、社会福祉士や、自らの社会復帰経験に基づいて相互理解や支援をし合う自助グループといった民間協力者の把握に努めるとともに、そうした民間協力者を積極的に開拓し、より一層の連携を図る。

また、矯正施設において、民間事業者の協力を得ながら、外部通勤作業・院外委嘱指導等を活用して、社会内での指導機会の拡大を図るとともに、保護観察所において、自助グループや当事者団体を含む民間団体の協力を得ながら、効果的な指導・支援の充実を図るなど、広く地域の民間協力者と連携した指導等を推進する。

加えて、篤志面接委員や教誨師等、かねてから、犯罪をした者等の立ち直りに向けた取組を実施してきた民間協力者の特性や役割を踏まえ、効果的な連携を図る。【法務省】

イ 弁護士・弁護士会との連携強化【施策番号72】

法務省は、犯罪をした者等に対して、切れ目のない効果的な支援を実施していく上で、刑事司法手続が進行中の段階から終了した後まで継続的な関わりができる弁護士・弁護士会との連携が重要であることに鑑み、入口支援を始めとする再犯防止・社会復帰支援分野における弁護士・弁護士会との連携の在り方を検討し、連携の強化を図る。【法務省】

ウ 犯罪をした者等に関する情報提供【施策番号73】

法務省は、警察庁、文部科学省及び厚生労働省の協力を得て、犯罪をした者等に対して国や地方公共団体が実施した指導・支援等に関する情報その他民間協力者が行う支援等に有益と思われる情報について、個人情報等の適正な取扱いを確保しつつ、民間協力者に対して適切に情報提供を行う。【警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】

③ 民間の団体等の創意と工夫による再犯防止活動の促進【施策番号74】

法務省は、再犯防止分野において、ソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)を含む成果連動型民間委託契約方式(PFS)事業を推進するとともに、地方公共団体に対してもPFSを活用した再犯防止事業の導入に向けた支援を行うなどして、民間事業者が持つ資金・ノウハウを活用した再犯防止活動の促進を図る。【法務省】

④ 民間協力者の確保及びその活動に関する広報の充実

ア 民間協力者の活動に関する広報の充実【施策番号75】

警察庁及び法務省は、国民の間に、再犯の防止等に協力する気持ちを醸成するため、少年警察ボランティアや更生保護ボランティア等、民間協力者の活動に関する広報の充実を図る。【警察庁、法務省】

イ 民間協力者に対する表彰【施策番号76】

内閣官房及び法務省は、民間協力者による再犯の防止等に関する活動を更に普及・促進するとともに、新たな活動の道を開く民間協力者の開拓にも資するよう、再犯を防止する社会づくりに功績・功労があった民間協力者を表彰する「安全安心なまちづくり関係功労者表彰」を引き続き実施し、効果的な広報に努める。【内閣官房、法務省】

第6 地域による包摂を推進するための取組(推進法第5条、第8条、第24条関係)

1.現状認識と課題等

犯罪をした者等が地域社会の中で孤立することなく、自立した社会の構成員として安定した生活を送るためには、刑事司法手続段階における社会復帰支援のみならず、刑事司法手続終了後も、国、地方公共団体、地域の保健医療・福祉関係機関、民間協力者等がそれぞれの役割を果たしつつ、相互に連携して支援することで、犯罪をした者等が、地域社会の一員として、地域のセーフティネットの中に包摂され、地域社会に立ち戻っていくことができる環境を整備することが重要となる。

刑事司法手続を離れた者に対する支援は、主に地方公共団体が主体となって一般住民を対象として提供している各種行政サービス等を通じて行われることが想定されるため、「地域による包摂」を進めていく上では、地域住民に身近な地方公共団体の取組が求められる。そのため、政府においては、国と地方公共団体の協働による地域における効果的な再犯防止施策の在り方について調査することを目的として、一部の地方公共団体と連携し、「地域再犯防止推進モデル事業」を実施するとともに、その成果等をその他の地方公共団体に共有するための協議会等を開催するなどしてきた。こうした国の取組に呼応し、地方公共団体においても、地方再犯防止推進計画の策定が進められており、「地域による包摂」に向けた取組には、一定の進展が見られる。

しかしながら、再犯防止分野において国と地方公共団体が担うべき具体的役割が必ずしも明確とは言い難い面もあり、再犯の防止等に関する地方公共団体の理解や施策の実施状況には依然として地域差が認められること、地方公共団体は再犯の防止等に関する知見・ノウハウ・情報に乏しく、国において、これらを提供するなどの支援をしていく必要があること、支援へのアクセシビリティを確保するという観点から、地域社会における関係機関や民間協力者等との連携を更に強化していく必要があることなどの課題も見えてきている。

これらの課題に対応するため、国と地方公共団体が担う役割を具体的に明示することで、地方公共団体の取組を促進するとともに、地域社会における国・地方公共団体・民間協力者等による支援連携体制を更に強化していくことなどが必要である。

2.地方公共団体との連携強化等

(1) 国と地方公共団体の役割

国と地方公共団体は、それぞれ以下の役割を踏まえ、相互に連携しながら再犯の防止等に向けた取組を推進する。

① 国の役割

各機関の所管及び権限に応じ、刑事司法手続の枠組みにおいて、犯罪をした者等に対し、それぞれが抱える課題を踏まえた必要な指導・支援を実施する。また、再犯の防止等に関する専門的知識を活用し、刑執行終了者等からの相談に応じるほか、地域住民や、地方公共団体を始めとする関係機関等からの相談に応じて必要な情報の提供、助言等を行うなどして、地域における関係機関等による支援ネットワークの構築を推進する。

加えて、再犯の防止等に関する施策を総合的に立案・実施する立場として、地方公共団体や民間協力者等に対する財政面を含めた必要な支援を行う。

② 都道府県の役割

広域自治体として、域内の市区町村の実情を踏まえ、各市区町村で再犯の防止等に関する取組が円滑に行われるよう、市区町村に対する必要な支援や域内のネットワークの構築に努めるとともに、犯罪をした者等に対する支援のうち、市区町村が単独で実施することが困難と考えられる就労に向けた支援や配慮を要する者への住居の確保支援、罪種・特性に応じた専門的な支援などについて、地域の実情に応じた実施に努める。

③ 市区町村の役割

保健医療・福祉等の各種行政サービスを必要とする犯罪をした者等、とりわけこれらのサービスへのアクセスが困難である者や複合的な課題を抱える者が、地域住民の一員として地域で安定して生活できるよう、地域住民に最も身近な基礎自治体として、適切にサービスを提供するよう努める。

また、立ち直りを決意した人を受け入れていくことができる地域社会づくりを担うことが期待されている。

(2) 具体的施策

① 地方公共団体による再犯の防止等の推進に向けた取組の支援

ア 市区町村による再犯の防止等の推進に向けた取組の促進【施策番号77】

法務省は、市区町村が、犯罪をした者等の個々のニーズに応じた伴走型支援を実施するなどして、上記の役割を十全に果たすことができるよう、都道府県とも連携しつつ、市区町村と刑事司法関係機関との連携体制を構築し、犯罪をした者等が必要な行政サービスを受けられるための市区町村に対するつなぎや情報の提供、行政サービスにつながった後の助言等の必要な支援を行う。また、市区町村に対し、行政サービスの提供に当たっては、重層的支援体制整備事業における相談支援や支援会議、基幹相談支援センターによる相談等の活用が考えられることを周知する。

さらに、矯正施設が所在する市区町村等と連携協力し、再犯防止にも地方創生にも資する取組を一層推進する。【法務省】

イ 都道府県による再犯の防止等の推進に向けた取組の促進【施策番号78】

法務省は、都道府県が、各地域の実情も踏まえ、域内の市区町村と連携し、再犯の防止等に関する取組を切れ目なく実施するために必要な調整や体制構築を行うなどして、上記の役割を十全に果たすことができるよう、都道府県に対して適切な情報提供や体制の整備に関する支援等を行う。【法務省】

② 地方再犯防止推進計画の策定等の支援【施策番号79】

法務省は、地方再犯防止推進計画が未策定である地方公共団体に対し、矯正官署や保護観察所等の刑事司法関係機関や都道府県を通じるなどして、地域の実情に応じて地方再犯防止推進計画を策定できるよう支援する。支援に当たっては、地域福祉計画の活用を含む地方再犯防止推進計画策定の手引を必要に応じて改訂するなどして、策定のために必要な情報を提供する。

また、既に地方再犯防止推進計画を策定済みの地方公共団体に対しては、その改訂や取組状況の評価等のために必要な支援を実施する。【法務省】

③ 地方公共団体との連携の強化

ア 犯罪をした者等の支援等に必要な情報の提供【施策番号80】

法務省は、地方公共団体における再犯の防止等に関する施策の企画・立案及び評価等に資するよう、各府省の協力を得て、国における再犯の防止等に関する施策についての情報や関連する統計情報を適切に提供するとともに、市区町村単位の統計情報の把握・提供方法について早期に検討し、その提供を実現する。

また、法務省は、地方公共団体が犯罪をした者等に対する支援等を行うために必要な犯罪をした者等の個人に関する情報等について、それらの情報を提供するための方策を検討した上で、個人情報等の適正な取扱いを確保しつつ、適切に提供する。【各府省】

イ 再犯の防止等の推進に関する知見等の提供及び地方公共団体間の情報共有等の推進【施策番号81】

法務省は、地方公共団体に対して、犯罪をした者等に対する専門的な指導・支援等に関する調査研究等の成果を提供するほか、矯正官署、保護観察所等の刑事司法関係機関の職員を地方公共団体の職員研修等へ講師として派遣するなど、再犯の防止等に関する知見を提供する。また、協議会の開催等を通じ、先進的な取組や好事例、課題等について各地方公共団体間での共有を図る。【法務省】

ウ 地域のネットワークにおける取組の支援【施策番号82】

法務省は、刑事司法手続を離れた者を含むあらゆる犯罪をした者等が、地域において必要な支援を受けられるようにするため、警察庁、総務省、文部科学省、厚生労働省及び国土交通省の協力を得て、地域における国・地方公共団体・民間協力者等の多様な機関・団体による支援ネットワークの構築を推進するとともに、ネットワークにおける地方公共団体の取組を支援する。【警察庁、総務省、法務省、文部科学省、厚生労働省、国土交通省】

3.支援の連携強化

(1) 具体的施策

① 更生保護に関する地域援助の推進【施策番号83】

法務省は、刑法等の一部を改正する法律による改正後の更生保護法の規定に基づき、保護観察所において、更生保護に関する専門的知識を活用し、地域住民、地方公共団体、民間団体等からの相談に応じて必要な情報の提供、助言等を行うことを通じ、関係機関等による犯罪をした者等に対する支援の充実を図る。【法務省】

② 更生保護地域連携拠点事業の充実等【施策番号84】

法務省は、「更生保護地域連携拠点事業」における、犯罪をした者等が困ったときに身近に相談できる場所や日常の居場所を地域に確保したり支援団体による地域支援ネットワークを構築するなどの支援体制の整備業務や、犯罪をした者等に対する支援を行う民間協力者からの相談に応じるなどの支援者支援業務を充実させることにより、地域における“息の長い”支援を推進する。【法務省】

③ 法務少年支援センターにおける地域援助の充実【施策番号85】

法務省は、法務少年支援センター(少年鑑別所)において、非行・犯罪をした者や、その支援を行う関係機関等の依頼に適切に対応できるよう、地域における多機関連携を一層強化する。また、支援を必要とする当事者等の利便性向上の観点から、WEB面談システムの活用や、関係機関に赴くなどのアウトリーチ型の支援等について検討を進めるとともに、地域援助に関する制度の周知広報のための取組を積極的に推進するなどして、地域援助の充実を図る。【法務省】

4.相談できる場所の充実

(1) 具体的施策

① 刑執行終了者等に対する援助の充実【施策番号86】

法務省は、保護観察所において、刑法等の一部を改正する法律による改正後の更生保護法の規定に基づき、仮釈放や仮退院の期間を満了した者等から、電話やメールによるものを含め相談を受けるなどした場合、その改善更生を図るために必要があると認めるときは、保護観察所において、その意思に反しないことを確認した上で、更生保護に関する専門的知識を活用し、その特性や支援ニーズに応じた情報の提供、助言等を行うほか、地域の関係機関による支援につながるよう、必要な調整その他の援助を行う。【法務省】

② 更生保護施設による訪問支援事業の拡充【施策番号87】

法務省は、更生保護施設が、更生保護施設等を退所した者にとって、地域社会に定着できるまでの間の最も身近かつ有効な支援者であることを踏まえ、訪問支援事業を早期に全国展開するなど、更生保護施設が地域で生活する犯罪をした者等に対して継続的なアウトリーチ型支援を実施するための体制の整備を図る。【法務省】

第7 再犯防止に向けた基盤の整備等のための取組(推進法第18条、第19条、第20条、第22条関係)

1.再犯防止に向けた基盤の整備等

(1) 現状認識と課題等

第6までに掲げられた再犯の防止等に関する施策を効果的かつ迅速に実施するためには、その基盤となる人的・物的体制の整備、施策の実施状況や効果の検証による施策の不断の見直し、効果的な広報・啓発活動の実施等が必要である。

政府においては、これまで、新たな官職の設置や専門スタッフの増配置、矯正施設を始めとする関係施設の整備、刑事情報連携データベースの開発運用等の体制整備を行うとともに、「再犯防止啓発月間」や「“社会を明るくする運動”強調月間」等を中心とした広報・啓発活動などに取り組んできた。

しかしながら、いまだ課題は多く、再犯の防止等の関係機関における業務のデジタル化を含めた体制の整備、施策の効果検証やその結果に基づく施策の見直し、再犯の防止等に関わる人材の育成や官民の関係者・関係機関の相互理解などの取組を更に進める必要がある。

(2) 具体的施策

① 関係機関における人的・物的体制の整備

ア 関係機関における人的体制の整備【施策番号88】

警察庁、法務省及び厚生労働省は、関係機関において、本計画に掲げる具体的施策を適切かつ効果的に実施するために必要な人的体制の整備を着実に推進する。【警察庁、法務省、厚生労働省】

イ 関係機関の職員等に対する研修の充実等【施策番号89】

警察庁、法務省、文部科学省及び厚生労働省は、再犯の防止等に関する施策が、犯罪をした者等の円滑な社会復帰を促進するだけでなく、犯罪予防対策としても重要であり、安全で安心して暮らせる社会の実現に寄与するものであることを踏まえ、刑事司法関係機関の職員のみならず、警察、ハローワーク、福祉事務所等関係機関の職員、学校関係者等に対する教育・研修等の充実を図る。【警察庁、法務省、文部科学省、厚生労働省】

ウ 矯正施設の環境整備【施策番号90】

法務省は、矯正施設について、引き続き、耐震対策を行いつつ、医療体制の充実強化及びバリアフリー化に取り組む。また、被収容者の特性に応じた処遇の充実強化及び新設される「刑の執行段階等における被害者等の心情等の聴取・伝達制度」の適切な運用等のための環境整備を着実に推進する。【法務省】

② 業務のデジタル化、効果検証の充実等

ア 矯正行政・更生保護行政のデジタル化とデータ活用による処遇等の充実のための基盤整備【施策番号91】

法務省は、受刑者等の情報を管理する業務システムの刷新により、情報をデジタル化し、一元的管理を推進することで、矯正行政の効率化を図るとともに、より精度の高いデータに基づく処遇の実態把握や再犯防止効果の可視化を通じて矯正処遇の一層の充実を図る。また、保護司活動の負担低減、データ活用による保護観察の高度化、刑事手続と保護司活動とのデータ連係等に向けて、更生保護業務全般のデジタル化に取り組み、保護観察処遇等を一層充実させるための基盤を整備する。【法務省】

イ 再犯状況の把握と効果的な処遇の実施に向けた一層の情報連携と高度利活用【施策番号92】

法務省は、再犯の状況をより迅速かつ詳細に把握し、効果的な処遇を実施するため、刑事司法における情報通信技術の活用状況等を踏まえて、検察庁・矯正施設・保護観察所等の保有する情報の一層の連携を促進するとともに、刑事情報連携データベースの機能等を見直してその効率化・高度化を図る。また、連携した情報のより効果的な利活用方策を検討し、犯罪や非行の実態等に関する調査研究を推進する。【法務省】

ウ 再犯防止施策の効果検証の充実と検証結果等を踏まえた施策の推進【施策番号93】

法務省は、就労支援を受けた者のその後の就労継続の状況や薬物依存のある者を地域における治療・支援につなげることによる効果を把握する方法を検討するなど、再犯の防止等に関する施策についての効果検証の一層の充実を図る。また、効果検証の結果や、社会復帰を果たした者等が犯罪や非行から離脱することができた要因を踏まえ、施策の見直しを含め、再犯の防止等に関する施策の一層の推進を図る。【法務省】

③ 再犯防止関係者の人材育成等【施策番号94】

法務省は、研修等を通じ、地方公共団体や民間協力者等との知見の共有や相互の情報交換等を行うことで、再犯の防止等に関わる専門人材や理解者の育成を図る。また、相互理解の促進や連携強化のため、地方公共団体等との人事交流の積極化を図る。【法務省】

④ 広報・啓発活動の推進

ア 啓発事業等の実施【施策番号95】

法務省は、各府省、地方公共団体、民間協力者と連携して、再犯防止啓発月間や“社会を明るくする運動”強調月間を中心として、広く国民が犯罪をした者等の再犯の防止等についての関心と理解を深めるための事業を推進するとともに、検察庁、矯正施設、保護観察所等の関係機関における再犯の防止等に関する施策や、その効果についての積極的な情報発信に努める。また、広く国民各層に訴える広報媒体や広報手法を用いるよう努める。【各府省】

イ 法教育の充実【施策番号96】

法務省は、文部科学省の協力を得て、再犯の防止等に資する基礎的な教育として、法や司法制度及びこれらの基礎となっている価値を理解し、法的なものの考え方を身に付けるための教育を推進する。加えて、法務省は、再犯の防止等を含めた刑事司法制度に関する教育を推進し国民の理解を深める。【法務省、文部科学省】

Ⅳ 再犯の防止等に関する施策の指標

第1 再犯の防止等に関する施策の成果指標

○ 検挙者中の再犯者数及び再犯者率【指標番号1】

(出典:警察庁・犯罪統計)

基準値 109,626人・47.0%(令和3年)

うち刑法犯検挙者中の再犯者数及び再犯者率

基準値 85,032人・48.6%(令和3年)

うち特別法犯検挙者中の再犯者数及び再犯者率

基準値 24,594人・42.3%(令和3年)

○ 新受刑者中の再入者又は刑の執行猶予歴のある者の数及び割合【指標番号2】

(出典:法務省・矯正統計年報)

基準値 13,475人・83.4%(令和3年)

うち再入者数及び再入者率

基準値 9,203人・57.0%(令和3年)

○ 出所受刑者の2年以内再入者数及び2年以内再入率【指標番号3】

(出典:法務省調査)

基準値 2,863人・15.1%(令和2年出所受刑者)

○ 主な罪名(覚醒剤取締法違反、性犯罪(強制性交等・強制わいせつ)、傷害・暴行、窃盗)・特性(高齢(65歳以上)、女性、少年)別2年以内再入率【指標番号4】

(出典:法務省調査)

基準値(覚醒剤取締法違反、性犯罪、傷害・暴行、窃盗)

15.5%・5.0%・12.3%・20.0%(令和2年出所受刑者)

基準値(高齢、女性)

20.7%・11.0%(令和2年出所受刑者)

基準値(少年)

9.0%(令和2年少年院出院者の2年以内再入院率)

9.7%(令和2年少年院出院者の2年以内再入院及び刑事施設入所率)

○ 出所受刑者の3年以内再入者数及び3年以内再入率【指標番号5】

(出典:法務省調査)

基準値 4,983人・25.0%(令和元年出所受刑者)

○ 主な罪名(覚醒剤取締法違反、性犯罪(強制性交等・強制わいせつ)、傷害・暴行、窃盗)・特性(高齢(65歳以上)、女性、少年)別3年以内再入率【指標番号6】

(出典:法務省調査)

基準値(覚醒剤取締法違反、性犯罪、傷害・暴行、窃盗)

27.3%・11.6%・24.2%・33.0%(令和元年出所受刑者)

基準値(高齢、女性)

29.2%・20.2%(令和元年出所受刑者)

基準値(少年)

13.2%(令和元年少年院出院者の3年以内再入院率)

15.6%(令和元年少年院出院者の3年以内再入院及び刑事施設入所率)

○ 保護観察付(全部)執行猶予者及び保護観察処分少年の再処分者数及び再処分率【指標番号7】

(出典:法務省・保護統計年報)

基準値 (保護観察付(全部)執行猶予者)

618人・25.5%(令和3年)

基準値 (保護観察処分少年)

1,219人・16.1%(令和3年)

第2 再犯の防止等に関する施策の動向を把握するための参考指標

1.就労・住居の確保等関係

○ 刑務所出所者等総合的就労支援対策の対象者のうち、就職した者の数及びその割合【指標番号8】

(出典:厚生労働省調査)

基準値 3,130人・50.3%(令和3年度)

○ 協力雇用主数、実際に雇用している協力雇用主数及び協力雇用主に雇用されている刑務所出所者等数【指標番号9】

(出典:法務省調査)

基準値 24,665社・1,208社・1,667人(令和3年10月1日現在)

○ 国及び地方公共団体において雇用した犯罪をした者等の数【指標10】

(出典:法務省調査)

基準値 ―

○ 保護観察終了時に無職である者の数及びその割合【指標番号11】

(出典:法務省・保護統計年報)

基準値 5,653人・24.0%(令和3年)

○ 刑務所出所時に帰住先がない者の数及びその割合【指標番号12】

(出典:法務省・矯正統計年報)

基準値 2,844人・16.0%(令和3年)

○ 更生保護施設及び自立準備ホームにおいて一時的に居場所を確保した者の数【指標番号13】

(出典:法務省調査)

基準値 10,291人(令和3年度)

2.保健医療・福祉サービスの利用の促進等関係

○ 特別調整により福祉サービス等の利用に向けた調整を行った者の数【指標番号14】

(出典:法務省調査)

基準値 826人(令和3年度)

○ 検察庁等と保護観察所との連携による入口支援を実施した者の数【指標番号15】

(出典:法務省調査)

基準値 ―

○ 薬物事犯保護観察対象者のうち、保健医療機関・民間支援団体等による治療・支援を受けた者の数及びその割合【指標番号16】

(出典:法務省調査)

基準値 ―

3.学校等と連携した修学支援の実施等関係

○ 少年院において修学支援を実施し、出院時点で復学・進学を希望する者のうち、出院時に復学・進学決定した者の数及び復学・進学決定率【指標番号17】

(出典:法務省調査)

基準値 54人・30.5%(令和3年)

○ 保護観察所において修学支援を実施し、保護観察期間中に高等学校等を卒業若しくは高等学校卒業程度認定試験に合格した者又は保護観察終了時に高等学校等に在学している者の数及びその割合【指標番号18】

(出典:法務省調査)

基準値 ―

○ 矯正施設における高等学校卒業程度認定試験の受験者数、合格者数及び合格率【指標番号19】

(出典:文部科学省調査)

基準値(受験者数・合格者数・合格率)

797人・316人・39.6%(令和3年度)

基準値(受験者数・1以上の科目に合格した者の数・合格率)

797人・776人・97.4%(令和3年度)

4.民間協力者の活動の促進等関係

○ 保護司数及び保護司充足率【指標番号20】

(出典:法務省調査)

基準値 46,705人・89.0%(令和4年1月1日)

○ “社会を明るくする運動”行事参加人数【指標番号21】

(出典:法務省調査)

基準値 867,395人(令和3年)

5.地域による包摂の推進関係

○ 地方再犯防止推進計画を策定している地方公共団体の数及びその割合【指標番号22】

(出典:法務省調査)

基準値(都道府県、指定都市、その他の市町村(特別区を含む。))

47団体・100%、18団体・90.0%、306団体・17.7%(令和4年4月1日)

6.その他の参考指標

○ 出所受刑者の5年以内再入者数及び5年以内再入率【指標番号23】

(出典:法務省調査)

基準値 8,175人・37.2%(平成29年出所受刑者)

1 「基準値」は、確定している最新の数値である。

2 「基準値 ―」は、新規の指標又は指標の内容を変更したことにより、今後、新たに統計を収集するものである。

第二次再犯防止推進計画について(依命通達)

令和5年5月12日 達(少対、組対)第214号

(令和5年5月12日施行)

体系情報
生活安全部
沿革情報
令和5年5月12日 達(少対、組対)第214号