○サイバー事案に関する通報・相談の一層の促進について(通達)

令和5年6月26日

達(サ対)第255号

[原議保存期間 3年(令和9年3月31日まで)]

[有効期間 令和9年3月31日まで]

みだしのことについては、次のとおり定めたので、各所属にあっては取組の強化を図られたい。

1 趣旨

サイバー事案に関しては、被害に遭ったことに対する引け目、被害者に対する社会的評価の悪化(レピュテーションリスク)の懸念等から被害申告をためらうほか、被害者が必ずしも刑事処分を望むとは限らないなど、現実の被害が潜在化している状況がうかがわれる。また、サイバー空間においては匿名性が悪用され、サイバー事案の中には国家の関与が疑われるものもあるなど、犯行が組織化され手法が洗練されてきていることから、被害自体の認知及び事件捜査が一層困難なものになってきている。このことから、個々の事案から得られる情報が断片的なものにとどまるとしても、それらを幅広く集め、総合的に分析・検討することで実態を把握し、取締りと被害防止対策(被害の未然防止対策及び拡大防止対策をいう。以下同じ。)を効果的に進める必要がある。

こうした観点から、県警察においては、サイバー事案に関する通報・相談の促進について、福島県警察におけるサイバー戦略の策定について(令和4年5月26日付け達(生環、務、生企、地企、刑総、交企、公)第283号)に基づき、広報啓発等を通じた通報・相談しやすい気運の醸成、環境整備等を推進しているところである。

しかし、今後も深刻化が見込まれるサイバー空間をめぐる脅威の情勢を踏まえると、被害者等からの情報を広範に収集するため、警察の情報収集能力を強化するとともに、被害者の被害拡大防止、被害回復等への貢献、犯罪手口、未然防止対策等に関する情報の社会への速やかな還元等の活動を充実させ、それにより、被害の通報・相談が自ずと行われる社会的な気運を醸成する必要がある。あわせて、警察においても、通報・相談に係る負担軽減に配意し適切な対応を行う必要があることから、サイバー事案に関する警察への通報・相談をより一層促進するため、取組の強化方策について定めることとしたものである。

2 通報・相談の意義等

サイバー事案への対応に当たっては、事件捜査のみならず、攻撃者、犯行手口等の実態解明、被害防止対策等に取り組んでいるところであるが、これらは主に県民・企業等からの通報・相談によって得られた情報を端緒として実施しているものである。通報・相談に対する対応がおろそかになった場合は、通報者、相談者又はこれらの関係者(以下「通報者等」という。)の警察への信頼が損なわれ、被害の潜在化がかえって進行し、事件捜査、被害防止対策、情報収集等を的確に行うことが困難となることが予想される。このため、通報者等に適切に対応することは、サイバー事案対応における要諦であることを認識した上で、通報・相談の対応強化、情報発信の強化等により、通報・相談の一層の促進を図ること。

3 通報・相談の対応強化

通報・相談への対応を強化する観点から、次の(1)から(7)までに掲げる取組を推進すること。

(1) 通報者等の視点に立った対応

通報・相談の対応に当たっては、通報者等の負担軽減に配意するとともに、次のアからエまでに掲げる事項等(これらの組み合わせを含む。)、通報者等が警察に望む対応を的確に把握し、これを踏まえた適切な対応を行うこと。特に、通報者等の状況を理解していないといった誤解、事件捜査を望む通報者等に対して事件捜査に消極的であるといった誤解等を与えることのないように、丁寧に聴取するなど通報者等の視点に立った対応をすること。

なお、被害回復に必要な手続のために警察に通報・相談するなど、捜査協力に消極的な通報者等もいるが、聴取に当たっては、後述のマニュアル等を参照しつつ、こうした通報者等からも事件捜査、被害防止対策等に必要となる情報を得られるよう努めること。この場合において、対応者等が、事件捜査を望まないように被害者等に対して誘導することがないように留意すること。

ア 被疑者の検挙に向けた事件捜査

イ 被害防止対策の教示等

ウ 被害回復方法の教示等

エ サイバー空間の安全・安心の確保のための情報の活用

(2) 主管部門への適切な引継ぎ等

サイバー犯罪対策課又は署の生活安全課員(以下「サイバー担当専務員」という。)は、署の警務課等の通報・相談の担当職員、当直時等における通報・相談に対応する職員といった通報・相談の対応者(以下「通報等対応者」という。)と緊密に連携するとともに、必要に応じて、通報・相談の内容を主管する部門の担当者に適切に引継ぎが行われるようにすること。

(3) 得られた情報の事件捜査等への活用

通報・相談により得られた情報は、サイバー犯罪対策課において集約・分析し、県内の通報・相談の傾向を把握した上で、事件捜査、被害防止対策等に積極的に活用すること。

(4) サイバー犯罪等対処マニュアル等の活用

通報等対応者は、サイバー犯罪等対処マニュアル、サイバー事案対応に関する教養資料等を活用し、通報・相談に的確に対応すること。

(5) 定期的な教養の実施

サイバー犯罪対策課は、通報・相談対応マニュアル等を用いて、サイバー担当専務員のみならず、通報等対応者に対する定期的な教養を実施すること。

教養の内容については、通報等対応者の意識向上・改善に関する事項に加え、(3)により得られた県内の通報・相談の傾向等を盛り込むほか、ITリテラシーを向上することにより通報者等の切迫した状況等を理解し適切に対応できるよう、デジタル資産をはじめとした最新の情報通信技術を利用したサービス等に関する事項を含めること。

(6) 署、交番等に対するサポート体制の拡充

通報・相談に関する体制を整備した場合であっても、通報等対応者が不在になるなど体制に間隙が生じることも想定されることから、サイバー犯罪対策課は、県警察のウェブサイト内のサイバー犯罪に関する相談コーナーの充実を図り、同コーナーを利用した通報・相談の受理を促進することにより、署、交番等に対するサポート体制の拡充に努めること。

(7) 業務の負担軽減

警察職員の対応改善に加え、4に掲げる情報発信の強化における「よくある相談内容及びその対応等」等のコンテンツの改善による事前の情報の提供、消費生活センター(消費者安全法(平成21年法律第50号)第10条の1第1項又は第2項の施設又は機関をいう。以下同じ。)、独立行政法人情報処理推進機構(以下「IPA」という。)等の窓口の紹介、サイバー犯罪対策課が配布する資料の活用等により、職員の業務負担の軽減に取り組むこと。

なお、消費生活センター、IPA等の窓口を紹介する際は、いわゆるたらい回しとの誹りを受けないよう、通報者等に代わって窓口に連絡する、あらかじめ用意した窓口の連絡先を記載した関係資料を通報者等に手交するなど、通報者等が望む対応を踏まえ丁寧に対応すること。

4 情報発信の強化

通報・相談を行うに当たって必要な情報の提供が不十分であることが、通報・相談を躊躇させる要因となっている状況がうかがえることから、警察からの情報発信を強化するため、次の(1)から(4)までに掲げる取組を推進すること。

(1) ウェブサイトのコンテンツの改善

サイバー犯罪対策課は、同課が管理するウェブサイトのコンテンツについて、次のアからクまでに掲げる項目を掲載するなど、通報者等の視点に立ったものに改善すること。この際、通報者等が検索しやすいように、サイトマップ(ウェブサイトの構成)についても配意すること。また、高齢者及び障害者にも利用しやすいウェブサイトとするため、音声読み上げへの対応、カラーユニバーサルデザイン等、ウェブコンテンツ(掲載情報)に関する日本産業規格を踏まえたものとするよう努めること。

ア 通報・相談の事例(よくある相談内容及びその対応等)

イ 被害の未然防止策及び被害に遭った際の被害の拡大防止策等

ウ 被害回復の手続

エ サイバー事案に関する事件捜査の流れ

オ 通報・相談する際にあらかじめ用意する資料等

カ 関係法令の条文及びその解説又はこれらを記載したウェブサイトのリンク先

キ ウェブサイト経由の通報・相談窓口及び署の電話番号、住所等

ク 関係機関の業務内容、相談窓口等

(2) SNS等の活用

サイバー犯罪対策課及び署は、SNS、メール、新聞、テレビ等の各種媒体の特性を生かした効果的な情報発信を行うこと。例えば、特に注目を集める必要がある事項についてはSNS、メール、新聞等を活用しつつ、詳細な内容を理解してもらう必要がある場合にはウェブサイトに誘導するなど、情報発信の内容、対象等に応じた適切な媒体の活用を行うこと。

(3) 工夫を凝らした注意喚起の実施

サイバー犯罪対策課は、サイバー空間の脅威に関する情勢、事件捜査等により把握した犯罪の手口及び被害防止対策、公表されたぜい弱性情報等に加え、被害に遭った場合の警察への通報・相談を促進する内容を記載した資料を作成し、ウェブサイト、SNS等に掲載するほか、共同対処協定の協定先企業等、サイバーテロ対策協議会、商工会議所等に提供するなど、積極的な注意喚起を行うこと。この際、注意喚起の内容に応じて注意喚起の対象、時期、注意喚起媒体(ウェブサイト、SNS、リーフレット等)、文面、言語等を変更するなど、効果的な注意喚起となるよう工夫を凝らすこと。

また、高齢者、青少年、日本語が堪能ではない外国人等に対する注意喚起に際しては、対象者が集まりやすい運転免許センター、病院、老人クラブ連合会、学校等において実施するなど、効果的な注意喚起に努めること。

(4) 関係機関等と連携した広報啓発の推進

サイバー犯罪対策課は、警察が本来対応すべき事項に注力できるよう、消費生活センター、IPA等と連携した講演会等の実施等、関係機関等との適切な役割分担による効果的な広報啓発を実施すること。

5 県本部への報告等

通報・相談の促進に当たって実施した取組については、サイバー犯罪対策課に適宜の方法により報告すること。サイバー犯罪対策課においては、取組の好事例を取りまとめ、県警察内で共有するものとする。

サイバー事案に関する通報・相談の一層の促進について(通達)

令和5年6月26日 達(サ対)第255号

(令和5年6月26日施行)

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