○今後の特殊詐欺対策の推進について(通達)

令和5年5月12日

達(組対、生企、交指)第213号

[原議保存期間 1年(令和7年3月31日まで)]

[有効期間 令和7年3月31日まで]

みだしのことについては、次のとおり推進するので、実効が上がるように努められたい。

なお、今後の特殊詐欺対策の推進について(令和4年3月25日付け達(組対、生企、交指)第180号は、廃止する。

1 趣旨

令和4年中における全国の特殊詐欺の被害額は8年ぶりに増加に転じ、認知件数も前年に続き増加するなど、深刻な情勢にある。

本県においても、認知件数、被害額はともに減少しているものの、キャッシュカード詐欺盗等の認知件数が増加するなど、予断を許さない状況が続いている。

このような中、令和5年3月17日、政府の犯罪対策閣僚会議において、「SNSで実行犯を募集する手口による強盗や特殊詐欺事案に関する緊急対策プラン」が決定され、「オレオレ詐欺等対策プラン」(令和元年6月25日閣議決定)とあいまって、必要な対策の推進を促すものとされている。

こうした情勢を踏まえ、特殊詐欺対策を総合的かつ強力に推進するものである。

2 基本的な方針

(1) 組織犯罪であるとの認識の一層の定着及び警察組織の総合力を発揮した対策の実施

特殊詐欺は、事件の背後にいる暴力団、準暴力団、来日外国人犯罪グループ、暴走族、非行集団等(以下「犯罪者グループ」という。)が、その組織力を背景に、資金の供給、実行犯の周旋、犯行ツールの提供等を行い、犯行の分業化と匿名化を図った上で、組織的に敢行している犯罪である。

このため、各所属においては、引き続き、特殊詐欺の被害防止のための対策や受け子、出し子等の被疑者の取締りを着実に実施していくのみならず、各種教養を通じて特殊詐欺が組織犯罪であるとの認識を深化させた上で、犯罪者グループの弱体化・壊滅に向け、警察組織の総合力を発揮して各種対策を講じられたい。

(2) 的確な情勢分析等による弾力的・集中的な対策の実施

特殊詐欺については、従来から、犯罪者グループが、社会情勢の変化に応じて、犯行の手口や地域・時間帯等を随時変化させている状況がみられる。

各所属においては、効果的な被害防止を図るため、地域ごとに各手口の被害の発生状況を的確に把握・分析し、これまでに講じた対策の効果を確認して不断の見直しを行い、変化する犯行手口や被害実態に応じた対策を弾力的・集中的に講じられたい。

(3) 官民一体となった対策の実施

特殊詐欺は、地方公共団体、金融機関、郵便局、宅配事業者、コンビニエンスストア、防犯ボランティア、学校等の関係機関、団体等と警察とが幅広く連携した上で、官民一体となって取り組むべき社会の重要課題の一つである。

各所属においては、平素から関係機関、団体等と緊密に連携するとともに、他機関が主体的に実施すべき対策について積極的な実施を働き掛けるなど、幅広い世代に対して高い発信力を有する著名な方々等による効果的な広報啓発活動を積極的に展開するなどして、官民一体となって各種対策を講じられたい。

(4) 他の警察活動との連動を意識した効率的な対策の実施

特殊詐欺対策を講ずるに当たっては、限られたマンパワーの中で警察の組織力を最大限に発揮する観点から、他の警察活動との連動を意識した上で、効率的に対策を進めることが重要である。

各所属においては、巡回連絡と組み合わせた留守番電話設定の普及等の広報啓発、街頭パトロールと組み合わせたATM設置場所での高齢者への声掛け、非行防止教室等を通じた少年を犯罪に加担させないための広報啓発等、他の警察活動との連動を意識した上で、効率的に各種対策を講じられたい。

3 重点的に取り組むべき事項

(1) 被害防止に向けた取組

ア 犯人からの電話を直接受けないための対策の推進

特殊詐欺の被害の大半は、犯人から電話を受けることに端を発しているものであり、その被害を防止するためには、高齢者がそもそも犯人からの電話を受けないようにすることが非常に効果的である。

各所属においては、巡回連絡や各種警察活動の機会を活用し、高齢者宅の固定電話へのナンバー・ディスプレイ、ナンバー・リクエストや留守番電話設定の普及、自動通話録音、警告音声、迷惑電話番号からの着信拒否等の機能を有する機器の設置促進を行うなどして、犯人からの電話を直接受けないための対策を強力に推進すること。

イ ATM設置場所での高齢者への声掛け等の戦略的な実施

振込型の特殊詐欺の被害を防止するためには、その発生状況等に応じて、ATM設置場所での高齢者への声掛けやATM周辺での不審者への職務質問を戦略的に実施していくことが重要である。

各所属においては、特殊詐欺の被害や予兆電話の発生状況等を踏まえつつ、まずは金融機関に対して、その職員や警備員によるATM設置場所での高齢者への声掛け、防犯カメラを活用した遠隔でのATM付近の状況把握等の実施を求めるほか、ATMが設置されているコンビニエンスストアの従業員や防犯ボランティアの協力も得るなどして、ATM設置場所での高齢者への声掛けを戦略的に実施すること。また、「ATMでの携帯電話の通話は、しない、させない」取組の周知を図るとともに、ATM周辺での不審者に対する職務質問についても、予兆電話が発生した場合に機動的に必要な体制を確保するなどして、戦略的に実施すること。

(2) 検挙に向けた取組

ア 犯罪者グループの実態解明及び実質的な打撃を与える取締りの推進

2(1)のとおり、特殊詐欺は、犯罪者グループが、その組織力を背景に、資金の供給、実行犯の周旋、犯行ツールの提供等を行い、犯行の分業化と匿名化を図った上で、組織的に敢行している犯罪であることから、犯罪者グループの弱体化・壊滅に向けて、その実態解明をより一層強化し、中枢に確実に打撃を与えていくことが重要である。

各所属においては、部門の垣根を越えた関連情報の収集・分析により、犯罪者グループとその中枢人物を見定め、その実態解明をより一層強化するとともに、あらゆる法令を駆使した首魁等の検挙、資金の遮断・剝奪により、その人的・資金的基盤に実質的な打撃を与える取締りを一層推進すること。

イ 犯行ツール対策の徹底

特殊詐欺事件の背後においては、犯罪者グループや特殊詐欺の実行犯に対して、預貯金口座や携帯電話を不正に譲渡する者や、電話転送サービス、個人情報が掲載された名簿等の提供を行ったり、電子マネー利用番号等の転売、買取等を行ったりしている悪質な事業者の存在が依然として認められる。

各所属においては、犯罪による収益の移転防止に関する法律(平成19年法律第22号)及び携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律(平成17年法律第31号)に基づく措置のほか、050IP電話番号及び固定電話番号の利用停止の要請等を積極的に推進すること。

また、電話転送サービスに係る悪質な電気通信事業者、犯罪者グループに名簿を提供する悪質な名簿屋等、犯行ツールに係る悪質な事業者について、情報収集を強化し、あらゆる法令を駆使してその取締りを推進すること。

(3) 少年を犯行に加担させないための取組

友人や先輩から誘われた少年が特殊詐欺に加担している実態が依然として見受けられるほか、最近では、SNS等に掲載された高額な報酬を示唆する投稿等に安易に応募し、特殊詐欺に加担することとなる少年も確認されている。

各所属においては、少年が事の重大性を認識することなく、アルバイト感覚で犯罪を敢行することのないよう、少年に対する広報啓発を強化すること。

今後の特殊詐欺対策の推進について(通達)

令和5年5月12日 達(組対、生企、交指)第213号

(令和5年5月12日施行)

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刑事部
沿革情報
令和5年5月12日 達(組対、生企、交指)第213号