○大規模災害に伴う交通規制の実施について(通達)

令和5年8月22日

達(交規)第324号

[原議保存期間 10年(令和16年3月31日まで)]

[有効期間 令和16年3月31日まで]

みだしのことについては、大規模災害に伴う交通規制の実施及び緊急通行車両等事務取扱要領の制定について(平成24年12月18日付け達(交規)第472号。以下「旧通達」という。)により示してきたところであるが、今般、大規模災害発生時に実施する交通対策の基本的事項を次のとおり定め、令和5年9月1日から施行することとしたので、対応に万全を期されたい。

なお、旧通達については同日付けで廃止し、緊急通行車両の確認等に係る事務手続要領については別途指示する。

1 目的

この通達は、今後の大規模災害発生時の交通対策に万全を期するため、阪神・淡路大震災及び東日本大震災における対応を踏まえ、災害対策基本法(昭和36年法律第223号。以下「災対法」という。)の規定に基づく交通規制の実施、強制排除措置等の交通対策に関する基本的事項について定めることを目的とする。

2 大規模災害発生時に実施する交通対策の基本的な流れ

(1) 総論

ア 基本的な考え方

(ア) 大規模災害発生直後は、人命救助、災害の拡大防止、政府・自治体・インフラ関係、負傷者搬送等に要する人員・物資輸送を優先する。

(イ) 災対法第76条第1項の規定に基づき指定する道路の区間(以下「緊急交通路」という。)として交通規制を実施する範囲は、道路の交通容量(復旧状況)、交通量等に応じて順次縮小する。

(ウ) 通行を認める車両の範囲も、交通状況、被災地のニーズ等を踏まえ、優先度を考慮しつつ順次拡大する。

イ 緊急交通路の通行を認める車両の分類

(ア) 緊急通行車両

緊急自動車その他災害応急対策(災対法第50条第1項参照)に使用される車両

(イ) 規制除外車両

社会経済活動のうち大規模災害発生時に優先すべきものに使用される車両であって、福島県公安委員会(以下「公安委員会」という。)の意思決定により通行を認めることとなるもの(緊急通行車両を除く。)

なお、災害対策に従事する自衛隊、米軍又は外交官関係の車両(以下「自衛隊車両等」という。)であって特別の自動車番号標(ナンバープレート)を有しているものについては、規制除外車両として整理するとともに、緊急交通路の通行に際し、規制除外車両であることの標章の掲示を不要とする。

(2) 大規模災害発生時における交通規制の具体的な流れ

ア 基本方針

大規模災害発生時には、被災地域への車両の流入抑制を行うため、被害状況の把握と必要な交通規制を迅速かつ的確に実施するとともに、危険箇所の表示、う回路の指示、交通情報の提供、車両の使用自粛の広報等により、危険防止及び混雑緩和のための措置を講ずること。

なお、大規模災害発生時における交通規制については、刻々と変化する状況への臨機応変な対応が求められること、必要以上に長期・過剰とならないことに留意しなければならない。

イ 初動対応

(ア) 交通情報の収集

災害の規模、被害状況等に加え、道路の損壊状況、交通状況等の交通情報についても迅速かつ正確な情報収集に努めること。特に、緊急交通路に指定が予定されている道路の状況について、橋梁部を中心に、通行に支障がないか優先的に確認すること。

道路の損壊が見込まれる場所においては、署長又は高速道路交通警察隊長による交通規制若しくは現場の警察官の指示により、歩行者や車両の安全を確保しつつ、道路管理者との緊密な連携の下、迅速に道路状況を確認するなど道路情報の収集を行うこと。

(イ) 緊急交通路の指定等に係る連絡・調整

交通規制課長は、交通情報の収集と併せて、災対法第76条第1項の規定に基づく交通規制の実施に向け、緊急交通路の指定や検問体制に係る関係都道府県警察及び道路管理者との連絡・調整を行うこと。

ウ 第一局面(大規模災害発生直後)

(ア) 交通規制の内容

原則として、上記(1)(ア)の緊急通行車両及び上記(1)(イ)の規制除外車両(災害対策に従事する自衛隊車両等であって特別の自動車番号標を有しているもの又は公安委員会が大規模災害発生後速やかに緊急交通路の通行を認めることが適切であると判断するもの)以外の車両について、緊急交通路の通行を禁止する。

(イ) 広報

交通規制課長は、全国で一斉に効果的な広報を行うことができるよう事前に広報案文や発表時間について警察庁との連絡・調整を行った上で、交通規制開始日時、緊急交通路の範囲、緊急通行車両や規制除外車両であることの標章の掲示のない一般車両の通行は禁止されること等について広報すること。

なお、道路の損壊状況、緊急交通路の指定の必要性、う回路の情報も積極的に提供し、交通規制に対する国民の理解を得るよう努めること。

(ウ) 交通規制の方法

交通規制は、災害対策基本法施行令(昭和37年政令第288号)第32条第1項の規定により、災害対策基本法施行規則(昭和37年総理府令第52号)別記様式第2の標示(以下「標示」という。)を設置して行うこととされている。緊急を要するため標示を設置するいとまがないとき等は、現場の警察官の指示により行うことができることとされているものの、早期に標示による交通規制を行うことができるよう、標示等資機材の計画的整備・配備に努めること。

(エ) 交通検問所の設置

公安委員会による緊急交通路の指定に併せて、緊急通行車両及び規制除外車両を選別するための交通検問所を設置すること。

また、設置した交通検問所の位置については、指定行政機関等(災対法第50条第2項に規定される災害応急対策を実施しなければならない者)への周知に努めること。

なお、交通検問所を設置するインターチェンジ等や体制については、あらかじめ想定しておくことにより、緊急交通路が指定された際には、迅速かつ適切に設置できるように各所属間の連絡・調整を行うこと。

(オ) う回路対策

う回路の設定・誘導については、道路管理者と共同点検を実施するなどして、危険箇所がないことを確認した上で行うとともに、必要に応じて交通要所に警察官等を配置すること。

なお、信号機の倒壊や停電による滅灯等がある場合は、速やかにその状況を把握し、警察官等の配置、信号機電源付加装置による電源の回復、一時停止の交通規制の実施等で対応すること。

エ 第二局面(交通容量は十分ではないが、第一局面で通行可能な車両以外の車両の通行も可能となった局面)

緊急交通路の交通量や道路状況、他の道路の交通容量、被災や復旧の状況、被災地のニーズ等を踏まえ、緊急度、重要度を考慮しつつ、上記(1)(イ)の規制除外車両のうち災害対策に従事する自衛隊車両等であって特別の自動車番号標を有しているもの又は公安委員会が大規模災害発生後速やかに緊急交通路の通行を認めることが適切であると判断するもの以外のものについても交通規制の対象から除外する。

なお、交通容量に余裕が見られる場合は、公安委員会の意思決定により大型貨物自動車、事業用自動車等について一律に交通規制の対象から除外するなど、順次、遅滞なく交通規制の対象を縮小することとなるので、情勢に留意すること。

(3) 強制排除措置

緊急交通路において、車両その他の物件が緊急通行車両の妨害となることにより災害応急対策の実施に著しい支障が生じるおそれがあると認めるときは、災対法第76条の3の規定により、警察官は「当該車両その他の物件の占有者、所有者又は管理者に対し、当該車両その他の物件を付近の道路外へ移動することその他当該通行禁止区域等における緊急通行車両の円滑な通行を確保するため必要な措置をとることを命ずることができる」こととされているほか、措置命令を受けた者が命令に従わなかった場合や相手方が現場にいないため措置命令をすることができない場合には、警察官自らその措置をとることができ、また、やむを得ない限度において、当該措置に係る車両その他の物件を破損することができることとされている。

これらの権限については、積極的な行使に努めるとともに、警察官が自ら措置をとったときはその措置の状況を記録しておくとともに、その内容について交通規制課長に報告すること。

3 その他の法令に基づく緊急交通路等の取扱い

本通達の内容は、大規模地震対策特別措置法(昭和53年法律第73号)、原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)又は武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(平成16年法律第112号)の規定に基づく緊急交通路の指定等に係る公安委員会の事務においても同様とする。

大規模災害に伴う交通規制の実施について(通達)

令和5年8月22日 達(交規)第324号

(令和5年9月1日施行)

体系情報
交通部
沿革情報
令和5年8月22日 達(交規)第324号