○遺族等に対する死因その他参考となるべき事項の説明について(依命通達)

令和6年3月15日

達(捜一)第147号

[原議保存期間 5年(令和11年3月31日まで)]

[有効期間 令和11年3月31日まで]

警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律(平成24年法律第34号。以下「法」という。)第10条第1項には、取扱死体(法第5条第1項の取扱死体をいう。)の引渡し時に、遺族その他当該取扱死体を引き渡すことが適当と認められる者(以下「遺族等」という。)に対して、当該取扱死体の死因その他参考となるべき事項(以下「死因等」という。)について説明しなければならない旨規定されており、その説明については、「遺族等に対する死因その他参考となるべき事項の説明について」(令和3年1月27日付け達(捜一)第10号。以下「旧通達」という。)に基づき実施してきたところであるが、引き続き、下記の事項に留意の上、遺族等の感情に十分に配慮した適切な死因等の説明に努められたい。

なお、旧通達は、廃止する。

1 遺族等の範囲

「遺族」とは、一般的な解釈と同様、配偶者、二親等以内の血族(子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹)及び同居の親族を意味する。また、どのような者が、「死体を引き渡すことが適当と認められる者」に当たるかは、個別の事案に即して判断することとなるが、遺族がいない場合や遺族がいても死体の引取りを拒否した場合において、死亡者の生前の人間関係を考慮し、死亡者の同居人や知人といった当該死体の埋葬・火葬等の措置を適切に行うことができる者がいるときは、これらの者はこれに含まれる(ただし、死体を死亡者の同居人や知人に引き渡す場合は、遺族の同意を得る必要がある。)

2 説明事項

遺族等に説明すべき死因等としては、以下の各項目に関する事項が挙げられる。

(1) 発見日時等

死体の発見された日時・場所及び発見時の状況

(2) 調査の実施結果

法第4条第2項の規定に基づく調査(外表の調査、死体の発見された場所の調査及び関係者に対する質問等の必要な調査)の実施結果

(3) 検査の実施結果

法第5条第1項の規定に基づく検査を実施した場合における実施した検査及びその結果

(4) 解剖の実施結果

法第6条第1項の規定に基づく解剖を実施した場合におけるその結果

(5) 死因

その死が犯罪に起因するものではないと判断した理由及び死亡者が死に至った経緯を含む死因(直接の死因については死体検案書に記載されたものを説明すること)

(6) その他参考事項

明らかになった死因等が遺族等に何らかの被害を及ぼすおそれがある場合には、その対処方法等遺族等の不安の緩和又は解消に資すると考えられる事項等

3 説明の時期

原則として遺族等への死体の引渡し時である。ただし、遺族等の都合により、引渡し時に説明することが困難な場合には、遺族等の都合がつき次第速やかに実施すること。また、解剖に伴う検査等の結果が判明するまでに時間を要する場合には、結果が判明次第速やかに遺族等に連絡すること。

4 説明方法等

(1) 説明方法

原則として口頭による。

(2) 遺族等の心情に配慮した説明

ア 遺族等の不安や疑問をできる限り解消することができるように、資料を提示の上説明を行うなど遺族等の心情に配慮した適切な説明に努めること。

なお、死亡者が乳幼児又は若年者の場合や自殺によるものである場合には、遺族等の動揺や悲しみが極めて大きいことから、その心情に特に配慮すること。

イ 正確な説明を行うため、必要に応じて、検案、検査又は解剖を実施した医師の協力を得て共に説明を行うこと。

ウ 死体の引渡し時における遺族等の動揺が大きい場合等には、その後時間が経過してから、当該死体の死因等について改めて説明を受けたいと感じる遺族等もおり、このような場合であっても、適切な対応をすることができるように、担当者の連絡先を死体の引渡し時に教示するなど必要な措置を講じておくこと。

エ 遺族等が説明を求める事項が第三者のプライバシーにわたる場合には、遺族等に対して、説明することができない事項がある理由を丁寧に説明し、理解を得るよう努めること。

(3) 遺族等の要望を踏まえた再説明

ア 遺族等から(2)の説明に係る調査、検査等の結果の提供を求められた場合には、捜査第一課長に速報の上、できるだけ速やかに、発見日時等、調査の実施結果(外表の調査及び死体の発見場所の調査の結果)、検査の実施結果(実施した検査項目及びその結果)に関する客観的事実を簡潔に取りまとめた書面を交付の上、再説明を行うこと。

また、解剖の実施結果については、警察が保管する解剖医師から提出を受けた解剖結果を記録した書面の写しを交付すること。

なお、死因については、検案医師が作成する死体検案書に記載されることから、警察において作成する書面には記載しないこととする。

イ アの書面には、遺族等の要望を踏まえ、死亡時画像診断に係る画像が記録された外部記録媒体又はフィルム(以下「外部記録媒体等」という。)、再説明に必要な写真等の参考資料を添付すること。

なお、これらの参考資料を添付することができない場合には、遺族等にその理由を説明すること。

ウ 外部記録媒体等を参考資料として添付する場合には、原本である外部記録媒体等を複写して同一のものを作成すること。

エ アの書面の交付は、遺族等に対する説明の一環として行うものであり、当該書面が警察証明の類との誤解を受けることのないよう配意すること。

オ アの書面の交付は、複数の遺族等から求めがあったとしても、原則として死体を引き渡した遺族等に対して1回行えば足りる。

(4) 客観的事実に基づく説明

憶測や不確かな情報に基づく説明を行うことは厳に慎み、その時点で明らかとなっている客観的事実に基づいた説明を行うこと。

5 調査等に係る記録等資料の提供

遺族等の要望を踏まえた再説明を行うために遺族等に交付した書面(添付の参考資料を含む。)以外の調査等に係る記録等資料の提供については、当該資料の多寡や当該資料に第三者のプライバシーにわたる情報が含まれるかどうかなどに応じ、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)等の関係法令の規定を踏まえつつ、個別具体的にその要否を判断すること。

6 その他

取扱死体以外の死体に係る死因等の説明については、死体取扱規則(平成25年国家公安委員会規則第4号)第5条の規定に基づき行うこととなるため、本通達によるものではないが、できる限り丁寧な説明に努めるべきことに変わりはないことから、以後の犯罪捜査又は公判に支障を及ぼさない範囲内において適切に行うこと。

遺族等に対する死因その他参考となるべき事項の説明について(依命通達)

令和6年3月15日 達(捜一)第147号

(令和6年3月15日施行)

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令和6年3月15日 達(捜一)第147号