○暴力団排除等のための部外者への情報提供について(通達)

令和6年3月6日

達(組対)第125号

[原議保存期間 5年(令和11年3月31日まで)]

[有効期間 令和11年3月31日まで]

みだしのことについては、令和6年3月6日から施行することとしたので、運用上誤りのないようにされたい。

1 趣旨

県警察は、福島県暴力団排除条例(平成23年福島県条例第51号。以下「条例」という。)第13条の規定により、暴力団の排除に資するため、部外に対し積極的に暴力団に関する情報の提供(以下「情報提供」という。)を行っているところであるが、情報提供に当たっては、提供する暴力団情報の範囲及び内容について慎重に検討した上でその適否を組織的に判断することにより、暴力団情報の適正な運用及び管理を図るものである。

2 基本的な考え方

(1) 組織としての対応の徹底

情報提供は、個々の警察官が個人的に対応することがあってはならず、必ず組織犯罪対策課長又は署長の責任において組織的な判断を行うこと。

(2) 暴力団情報の正確性の確保

情報提供に当たっては、その内容の正確性が厳に求められることから、必ず組織犯罪対策課に設置された警察庁情報管理システムによる暴力団情報管理業務により暴力団情報の照会を行い、その結果及び必要な補充調査の結果に基づいて回答すること。

(3) 情報提供に係る責任の自覚

提供する暴力団情報の内容の正確性及び情報提供の正当性について、県警察が立証する責任を負わなければならないとの認識を持つこと。

(4) 情報提供の正当性についての十分な検討

暴力団員等(条例第2条第3号に規定する「暴力団員等」をいう。以下同じ。)の個人情報の提供については、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)の規定に従って行うこと。特に、行政機関以外の者に対し法令の規定に基づかない情報提供を行う場合は、当該情報が暴力団排除等の公益目的の達成のために必要であり、かつ、警察からの情報提供によらなければ当該目的を達成することが困難なときにのみ行うこと。

3 積極的な情報提供の推進

(1) 提供することができる暴力団情報の内容及びその手続が法令により定められている場合には、これによるものとする。

(2) 暴力団犯罪の被害者の被害回復訴訟において組長等の使用者責任を追及する場合や暴力団事務所撤去訴訟等暴力団を実質的な相手方とする訴訟を支援する場合は、特に積極的な情報提供を行う。

(3) 本部長又は署長と他の行政機関、地方公共団体、公共的機関等との間で暴力団排除を目的として情報提供に関する申合せ等が締結されている場合には、これによるものとする。

なお、各署において申合せ等を改正し、又は新たに締結しようとするときは、事前に組織犯罪対策課と協議するものとする。

(4) 条例上の義務履行の支援、暴力団に係る被害者対策、資金源対策の視点や社会経済の基本となるシステムに暴力団を介入させないという視点からは、下記4に示した基準に従いつつ、可能な範囲で積極的かつ適切な情報提供を行うものとする。

4 情報提供の基準等

福島県暴力団排除条例施行規則(平成23年福島県公安委員会規則第5号。以下「規則」という。)第3条第1項により情報提供をできる場合が定められているところであるが、県警察は、暴力団情報を厳格に管理する責任を負っていることから、情報提供によって達成される公益の程度によって、情報提供の要件並びに提供できる情報の範囲及び内容が異なってくる。よって、以下の(1)(2)及び(3)の観点から検討を行い、暴力団対策に資すると認められる場合は、暴力団情報を必要とする者に提供すること。

(1) 情報提供の必要性

ア 条例上の義務履行の支援に資する場合

事業者が取引等の相手方が暴力団員等でないことを確認するとともに、相手方が暴力団員等であると判明した際には取引解消等により暴力団員等を排除する意思を有するなど、条例上の義務を履行するために必要と認められる場合にあっては、その義務の履行に必要な範囲で情報提供を行うものとする。

イ 法令の規定等に基づく場合

暴力団排除条項が明文化されている法令や行政庁と警察庁との間の申合せ等に基づき、次の(ア)から(ク)までに掲げるものに係る情報提供が必要と認められる場合には、当該法令等の定める要件に従って情報提供を行うものとする。

(ア) 暴力団員

(イ) 暴力団準構成員(福島県警察組織犯罪対策要綱(令和2年7月7日付け達(組対、務、生企、地企、刑総、交企、公)第277号。以下「要綱」という。)別表第2に規定する暴力団準構成員をいう。以下同じ。)

(ウ) 元暴力団員

(エ) 共生者

(オ) 社会的非難関係者(条例第16条に規定する社会的非難関係者をいう。以下同じ。)

(カ) 総会屋等(要綱別表第2に規定する総会屋等をいう。以下同じ。)

(キ) 社会運動等標ぼうゴロ(要綱別表第2に規定する社会運動等標ぼうゴロをいう。以下同じ。)

(ク) 暴力団関係企業

ウ 暴力団による犯罪、暴力的要求行為等による被害の防止又は回復に資する場合

情報提供を必要とする事案の具体的内容を検討し、被害が発生し、又は発生するおそれがある場合には、被害の防止又は回復のために必要な情報提供を行うものとする。

エ 暴力団の組織の維持又は拡大への打撃に資する場合

暴力団の組織としての会合等の開催、暴力団事務所の設置、加入の勧誘、名誉職への就任や栄典を受けること等による権威の獲得、政治、公務その他一定の公的領域への進出、資金獲得等暴力団の組織の維持又は拡大に係る活動に打撃を与えるために必要な場合その他暴力団排除活動を促進する必要性が高く暴力団の組織の維持又は拡大への打撃に資する場合には、必要な情報提供を行うものとする。

(2) 適正な情報管理

情報提供は、その相手方が、当該情報の悪用や目的外利用を防止するための仕組みを確立している場合、当該情報を他の目的に利用しない旨の誓約書(様式第1号)を提出している場合その他情報を適正に管理することができると認められる場合に行うものとする。

(3) 提供できる暴力団情報の範囲

ア (1)アの場合

条例上の義務を履行するために必要な範囲で情報提供を行うものとする。この場合において、まずは、契約の相手方等が条例に規定された規制対象者等の属性のいずれかに該当する旨の情報を提供すれば足りるかを検討すること。

イ (1)イの場合

法令に規定された範囲で情報提供を行うものとする。この場合において、まずは、規制対象者等の属性のいずれかに該当する旨の情報を提供すれば足りるかを検討すること。

ウ (1)のウ又はエの場合

次の(ア)(イ)(ウ)の順に慎重な検討を行うこと。

(ア) 暴力団の活動の実態についての情報(個人情報以外の情報)の提供

暴力団の義理掛けが行われるおそれがあるという情報、暴力団が特定の場所を事務所としているという情報、傘下組織に係る団体の名称その他の個人情報以外の情報によって足りる場合には、これらの情報を提供すること。

(イ) 暴力団員等該当性情報の提供

上記(ア)によって公益を実現することができないかを検討した上で、次に、相談等に係る者の暴力団員、暴力団準構成員、元暴力団員、共生者、社会的非難関係者、総会屋等及び社会運動等標ぼうゴロの該当性に関する情報(以下「暴力団員等該当性情報」という。)を提供することを検討する。

(ウ) 上記(イ)以外の個人情報の提供

上記(イ)によって公益を実現することができないかを慎重に検討した上で、それでも公益実現のために必要であると認められる場合には、住所、生年月日、連絡先その他の暴力団員等該当性情報以外の個人情報を提供する。

なお、前科・前歴情報は、そのまま提供することなく、被害者等の安全確保のために特に必要があると認められる場合に限り、過去に犯した犯罪の態様等の情報を提供すること。また、顔写真の交付は行わないこと。

5 提供する暴力団情報の内容に係る注意点

(1) 指定暴力団以外の暴力団について

指定暴力団以外の暴力団のうち、特に組織の繁栄や衰退等の情勢変化が著しい小さな暴力団については、これが暴力団、すなわち「その団体の構成員が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」(暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)第2条第2号)に該当することを明確に認定できる資料の存否につき確認すること。

(2) 暴力団準構成員、元暴力団員等の場合の取扱い

ア 暴力団準構成員

暴力団準構成員については、当該暴力団準構成員と暴力団との関係の態様及び程度について十分な検討を行い、現に暴力団又は暴力団員の一定の統制の下にあることなどを確認した上で、情報提供の可否を判断すること。

イ 元暴力団員

現に自らの意思で反社会的団体である暴力団に所属している構成員の場合と異なり、元暴力団員については、規則第2条で定める暴力団員等から除かれる者など、暴力団との関係を断ち切って更生しようとしている者もいることから、過去に暴力団員であったことが法律上の欠格要件となっている場合や、現状が暴力団準構成員、共生者、社会的非難関係者、総会屋等及び社会運動等標ぼうゴロとみなすことができる場合は個別に情報提供の可否を判断することとなるが、単に過去に暴力団に所属していたという事実だけをもって情報提供をしないこと。

ウ 共生者

共生者については、暴力団への利益供与の実態、暴力団の利用実態等共生関係を示す具体的な内容を十分に確認した上で、具体的事案ごとに情報提供の可否を判断すること。

エ 社会的非難関係者

社会的非難関係者は、その態様が様々であることから、当該対象者と暴力団員とが関係を有するに至った原因、当該対象者が相手方を暴力団員であると知った時期やその後の対応、暴力団員との交際の内容の軽重等の事情に照らし、具体的事案ごとに情報提供の可否を判断する必要があり、単に暴力団員と交際しているといった事実だけをもって漫然と「社会的非難関係者である。」といった情報提供をしないこと。

オ 総会屋等及び社会運動等標ぼうゴロ

総会屋等及び社会運動等標ぼうゴロについては、その活動の態様が様々であることから、漫然と「総会屋である。」などと情報提供をするのではなく、情報提供が求められている個別の事案に応じて、その活動の態様について十分な検討を行い、現に活動が行われているか確認した上で情報提供をすること。

カ 暴力団関係企業

暴力団関係企業については、その役員に暴力団員等がいることをもって漫然と「暴力団関係企業である。」といった情報提供をするのではなく、役員等に占める暴力団員等の比率、当該法人の活動実態等についての十分な検討を行い、現に暴力団員が当該企業の経営に関与し、支配している等の状況が認められる場合にのみ情報提供をすること。

6 情報提供の方式

(1) 4の(1)ア又はイによる情報提供を行うに当たっては、その相手方に対し、情報提供に係る対象者の住所、氏名、生年月日等が分かる身分確認資料、取引関係を裏付ける資料等の提出を求めるとともに、提供に係る情報を適正に管理し、他の目的に利用しない旨の誓約書の提出を求めること。

(2) 情報提供の方法は、口頭によるものとする。ただし、情報提供の相手方に守秘義務がある場合等情報の適正な管理のために必要な仕組みが整備されていると認められる場合は、情報提供を文書により行うことができるものとする。

(3) 情報提供は、原則として、当該情報を必要とする当事者に対して、当該相談等の性質に応じた範囲内で行うものとする。ただし、情報提供を受けるべき者の委任を受けた弁護士に提供する場合その他情報提供を受けるべき者本人に提供する場合と同視できる場合は、この限りでない。

7 情報提供の留意事項

(1) 情報提供に当たっては、原則として、所属長又はこれに相当する上級幹部が実際に最終判断を下すものとする。ただし、署長が行う情報提供については、他の行政機関、地方公共団体その他の公共的機関による、法令等又は暴力団排除を目的とした暴力団情報の提供に関する申合せ等に基づく照会に対して、警察庁情報管理システムによる暴力団情報管理業務の暴力団情報に該当がないことから規制対象者等の属性に該当しない旨を回答する場合に限り、警部以上の階級にある、刑事課長等(刑事課長、刑事第二課長及び刑事生活安全課長並びに分庁舎における刑事課長代理、刑事第二課長代理及び刑事生活安全課長代理をいう。)により専決処理できるものとする。

また、情報提供を行うことについて緊急かつ明確な必要が認められる場合は、事後報告としても差し支えない。

(2) 暴力団準構成員、元暴力団員、共生者、社会的非難関係者、総会屋、社会運動等

標ぼうゴロ又は暴力団関係企業に係る情報提供については、要件を厳格に解釈する必要があることから組織犯罪対策課に必ず照会するとともに、認定資料、実態調査等により、十分に確認した上で対応すること。

8 情報提供に係る記録の整理

(1) 情報提供処理票の作成

部外への情報提供を求められた場合は、情報提供処理票(様式第2号)に情報提供を必要とする理由、情報提供の是非についての判断の理由、結果等について確実に記録し、所属長の決裁を受けること。

なお、誓約書を徴収した場合は、情報提供処理票とともに所属長の決裁を受けること。

(2) 情報提供処理票及び誓約書の保管・管理

情報提供処理票及び誓約書については、情報提供処理票つづりに一緒に保管し、管理を徹底すること。

なお、同つづりは、5年間保存すること。

9 報告

情報提供の相談件数及び実施件数については、暴力団関係相談の集計及び報告要領について(平成20年12月25日付け達(組対、県サ)第563号)に基づき、暴力相談月報に計上して組織犯罪対策課長に報告すること。

様式第1号

 略

様式第2号

 略

暴力団排除等のための部外者への情報提供について(通達)

令和6年3月6日 達(組対)第125号

(令和6年3月6日施行)

体系情報
刑事部
沿革情報
令和6年3月6日 達(組対)第125号