○高齢者が関与する交通事故を防止するための諸対策の推進について(依命通達)
令和6年3月4日
達(交企、交規、交指、運免)第119号
[原議保存期間 3年(令和9年3月31日まで)]
[有効期間 令和9年3月31日まで]
みだしのことについては、次のとおりであるので、実効ある施策の推進に努められたい。
記
1 目的
県内では、高齢者が関与する交通事故が増加傾向にあるほか、アクセルとブレーキの踏み間違いによる死亡事故が発生するなど、社会全体の高齢化に伴い高齢運転者の関与する重大交通事故の増加が懸念される状況にある。
このため、高齢歩行者対策や高齢運転者対策に加え、交通環境の整備、交通指導取締りの強化などの諸対策を推進することにより、高齢者が関与する交通事故を先制的に抑止することを目的とする。
2 基本的な考え方
(1) 交通事故分析に基づく効果的な対策の推進
高齢者関与の交通事故について、自署管内における緻密な分析を行い、その特徴や要因を明らかにした上で、合理的かつ効率的に対策を推進すること。
(2) 高齢者の特性に応じたきめ細かな対策の必要性
加齢に伴う身体機能の低下には個人差があることから、高齢者本人や家族のみならず専門的知識を有する者の意見を参考にするなど、高齢者の特性に応じたきめ細かな対策を推進すること。
(3) 関係機関・団体等と連携した対策の推進
対策の推進に当たっては、関係機関・団体等と相互に緊密に連携するとともに関係機関・団体についても主体性と責任を持った自主的な活動を推進させること。
3 重点推進事項
(1) 高齢歩行者対策
ア 参加・体験・実践型の交通安全教育
高齢者が加齢に伴う身体機能の変化が行動に及ぼす影響等を理解し、自ら納得して安全な交通行動を実践できるよう、関係機関・団体と連携し、歩行者シミュレータ等の各種教育機材を積極的に活用した参加・体験・実践型の交通安全教育を推進すること。
イ 個別訪問による交通安全指導
交通安全教育を受ける機会の少ない高齢者に対しては、直接個別訪問しての交通安全指導が効果的であることから、高齢者交通安全指導隊を始め関係機関・団体と連携を図り、高齢者宅への個別訪問による交通安全指導を推進すること。また、高齢者と同居している家族等に対しても必要な交通安全指導を実施すること。
ウ 実態把握の徹底と安全指導高齢者の確実な指定
安全指導高齢者として選定されていない高齢者の事故が多い状況にあることから、管内の高齢者の実態を把握し、生活環境、行動実態、道路交通環境等から交通事故の被害に遭う危険性が高い者については、安全指導高齢者として確実に選定し継続した指導を行うこと。
エ 薄暮時間帯及び夜間の事故防止対策
例年、高齢歩行者被害の重大交通事故は、薄暮時間帯や夜間に多発する傾向にあることから、明るい時間帯に外出するよう指導するとともにやむを得ず薄暮時間帯や夜間に外出する際には明るい色の服装や反射材用品の着用を継続的に指導すること。
なお、高齢者への指導に当たっては、明るい色の服装や反射材用品の効果について理解できるよう、工夫を凝らした指導となるよう配意するとともに、一般のドライバーに対しては、前照灯の早め点灯とこまめな切り替えについて啓発すること。
(2) 高齢運転者対策
ア 安全運転相談への対応
高齢運転者やその家族等からの相談を受理するに当たっては、身体機能の低下を踏まえた安全運転に関する助言・指導のほか、自主返納制度及び自主返納者等に対する各種支援施策を教示するなど、きめ細かな対応に努めること。
イ 運転免許の申請取消(自主返納)制度の周知と返納しやすい環境の整備
全国統一の専用相談ダイヤル「#8080(シャープハレバレ)」を始め、自主返納に係る制度の周知を図るとともに、運転免許証の返納等に伴い運転経歴証明書の交付を受けた者への支援について、関係機関・団体等に積極的に働き掛けを行うこと。また、地域包括支援センターによる運転免許証返納者に対する生活支援連絡制度について周知するなど高齢者等が運転免許証を自主返納等しやすい環境の整備に向けた取組を推進すること。
ウ 高齢運転者の実態把握
高齢運転者による重大交通事故が相次いで発生していることから、管内の高齢運転者について、生活環境や行動実態等から交通事故を惹起するおそれが高い者についての情報を的確に把握し、必要な安全対策を行うこと。
エ 参加・体験・実践型の交通安全教育
加齢に伴う身体機能の低下が交通行動に及ぼす影響や交通ルールの遵守及び正しい交通マナーの実践についての理解を促進するため、危険予測トレーニング装置を活用した講習会や車両を活用した実技講習会を開催するなど、参加・体験・実践型の交通安全教育を推進すること。
オ 個々の能力や特性に応じた個人指導
自らの運転能力や特性をより効果的に自覚させるため、交通安全教育用ドライブレコーダーを活用した交通安全教育など実車を利用した講習により、個々の能力や特性に応じたきめ細かな個人指導を実施すること。
カ 先進安全技術等の活用
高齢者のペダル踏み間違いによる交通事故が増加していることから関係機関・団体等と連携を図り、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い時加速抑制装置等の先進安全技術が搭載された自動車(安全運転サポート車)の安全性の周知と普及啓発に努めること。
キ 農耕車の交通事故防止
例年、高齢者が運転する農耕車による死亡事故が発生していることから、自治体、農業協同組合、農耕車販売業者等と連携し、農耕車を運転する高齢者への交通安全指導や広報啓発活動等を推進すること。
ク 自転車の安全利用の促進
高齢者の自転車利用者に対しては、自転車シミュレーター等を活用した参加・体験・実践型の交通安全教育を行うとともに、自転車の安全利用を促進し、特に着用率の低い自転車利用時のヘルメットの確実な着用についての広報啓発を推進すること。
(3) 交通環境の整備
ア 逆走防止対策
逆走事案の多くは高齢運転者によるものであることから、道路管理者と連携して、逆走を防止するための取組を強化するとともに、逆走事案の運転者を確保した場合は、運転免許課と連携して臨時適性検査の実施を検討するなど適正な対策を講じること。
イ 生活道路における交通安全対策
交通事故の発生状況を踏まえた上で、高齢者を始めとする歩行者が日常で利用する生活道路の安全確保に向けた意見交換や交通危険地点の合同点検等を行い、「ゾーン30プラス」の整備等の生活道路における交通安全対策を推進すること。
(4) 交通指導取締りの強化
速度違反、交差点関連違反、横断歩行者等妨害等違反及び座席ベルト装着義務違反等、重大交通事故に直結する交通違反を中心とした交通指導取締りを強化すること。
4 その他
(1) 「高齢者交通事故多発警戒警報」制度の積極的運用
「高齢者交通事故多発警戒警報」制度の実施について(平成20年9月29日付け達(交企、交指)第385号)に基づき発令基準に該当する場合には、速やかに「高齢者交通事故多発署警戒警報」を発令し、署の総合力を挙げて取り組むほか、市町村、関係機関・団体と連携を図るなど地域ぐるみの活動を展開し、高齢者の交通事故を先制的に抑止すること。
(2) 広報の徹底
各種施策・活動の実施に当たっては、報道機関等に対して積極的に情報を提供し、タイムリーな広報を推進するとともに、インターネット(SNSを含む)、ラジオ、広報紙、各種講習会等あらゆる広報媒体を活用し、適時適切な広報をすること。
特に、「POLICEアプリふくしま」、「POLICEメールふくしま」の利用促進を図り、効果的な広報を行うこと。
(3) 報告
本通達による各種対策の実施状況等については、随時交通情報報告により関係各課に報告すること。