○刑事訴訟法等の一部を改正する法律の一部施行に伴う勾留状等の取扱いに関する留置管理業務上の留意事項について(依命通達)

令和6年2月8日

達(留管)第23号

[原議保存期間 3年(令和9年3月31日まで)]

[有効期間 令和9年3月31日まで]

みだしのことについては、次のとおりであるので、事務処理上誤りのないようにされたい。

なお、この通達において、「刑訴法」とは、刑事訴訟法等の一部を改正する法律(令和5年法律第28号。以下「改正法」という。)による改正後の刑事訴訟法(昭和23年法律第131号。)をいい、「刑事訴訟規則」とは、刑事訴訟規則等の一部を改正する規則(令和5年最高裁判所規則第10号)による改正後の刑事訴訟規則(昭和23年最高裁判所規則第32号)をいうものとする。

1 趣旨

改正法が公布され、その一部である被害者等の個人特定事項を被疑者等に秘匿する措置に関する規定(以下「個人特定事項秘匿制度」という。)が令和6年2月15日から施行されることとなったことから、勾留状等の取扱いに関する新たな規定に対して、適正に対応しようとするもの。

2 個人特定事項秘匿制度の概要等

性犯罪等の被害者等の個人特定事項(氏名及び住所その他の個人を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を保護するため、捜査及び公判を通じて、刑訴法等の規定により、被害者等の個人特定事項の記載がない

○ 勾留状の抄本その他の勾留状に代わるもの(以下「勾留状に代わるもの」という。)(刑訴法第207条の2第2項等)

○ 鑑定留置状の抄本その他の鑑定留置状に代わるもの(以下「鑑定留置状に代わるもの」という。)(刑訴法第224条第3項等)

○ 観護状の抄本その他の観護状に代わるもの(以下「観護状に代わるもの」という。)(刑事訴訟規則第278条の2第2項等)

等を被疑者等に示すこととされた。

このため、勾留状に代わるもの、鑑定留置状に代わるもの及び観護状に代わるもの(以下「勾留状に代わるもの等」という。)を示すこととなる留置担当官は、法改正の趣旨を十分認識し、勾留状に代わるもの等を示すべきところ、誤って勾留状、鑑定留置状及び観護状を示すことになれば、違法な勾留状等の執行手続となることから、その対応には細心の注意を払うこと。

3 捜査部門との連携

個人特定事項秘匿制度は、被疑者を通常逮捕する段階から適用されることから、被害者等の個人特定事項の記載がない逮捕状の抄本その他の逮捕状に代わるもの(以下「逮捕状に代わるもの」という。)を示し、逮捕した事件については、勾留状に代わるもの等が交付される可能性が高いほか、被疑者を現行犯逮捕又は緊急逮捕した事件であっても、勾留請求において勾留状に代わるものの交付等請求がなされる可能性がある。

よって、留置部門においては、捜査部門から、被疑者の新規留置時等の機会において、逮捕状に代わるものの交付を受け逮捕した事案である旨や勾留請求時には勾留状に代わるものの交付等請求がなされる見込みである旨の情報提供を受けるなど、捜査部門との連携を図ること。

4 勾留状に代わるもの等の執行要領等

別紙を参照すること。

別紙

勾留状に代わるもの等の執行要領等

1 勾留請求時の執行

刑訴法第207条の2第2項等の規定により、被害者等の個人特定事項の記載がない勾留状の抄本その他の勾留状に代わるもの(以下「勾留状に代わるもの」という。)が交付された場合、被疑者には勾留状に代わるもののみを示すこととし、勾留状については示さないこと。勾留状に代わるものを示した後は、勾留状の「執行した年月日時及び場所」欄及び「記名押印」欄に執行者が記載及び押印をすること。

2 勾留延長の裁判の執行

勾留状に代わるものが交付されている事件の被疑者に対する勾留延長の裁判の執行に当たっては、次の手順で行うこと。

(1) 面会室での執行

勾留状に代わるものが交付されている事件の被疑者に対する勾留延長の裁判の執行に当たっては、被疑者による勾留状の奪取及び個人特定事項の漏えい防止のため、面会室で行うこと。その際、勾留延長の裁判を執行する留置担当官は、留置場外の面会者側から入り、被疑者とポリカーボネート板越しに執行すること。

(2) 勾留延長の裁判の執行

刑事訴訟規則第153条第4項ただし書の規定により、留置担当官は、勾留状に代わるものを被疑者に示し、勾留状に記載されている「延長する期間及び理由並びに延長の裁判をした裁判官の氏名」を被疑者に読み聞かせること。その際、勾留状については、バインダー等に挟むなどして、勾留状の被疑事実の要旨が被疑者に見られないための措置を講じること。執行した後は、勾留状の「勾留状又は勾留状に代わるものを被疑者に示した年月日時」欄に執行者が記載及び押印をすること。

3 個人特定事項の全部又は一部の通知が認容された場合

刑訴法第207条の3の規定により、被疑者又は弁護人の請求により、個人特定事項の全部又は一部を被疑者に通知する旨の裁判がなされた場合については、次のとおり、対応すること。

(1) 個人特定事項の全部の通知が認容された場合

裁判の結果、個人特定事項の全部の通知が認容された場合には、被疑者に対して、勾留状を示すこととなる。よって、裁判の結果を受けた留置担当官等は、検察庁から検察官の指揮印が押印された全部通知の裁判書謄本及び勾留状を受領し、留置施設において、勾留状を被疑者に示すこと。勾留状を示した後は、全部通知の裁判所謄本及び被留置者名簿(留置施設に備えるべき簿冊の様式を定める訓令(平成19年警察庁訓令第6号。以下「訓令」という。)別記様式第1号(Ⅴ 動静、処遇等に関する申出))に、「示した時間」等の執行状況について記載すること。

(2) 個人特定事項の一部の通知が認容された場合

裁判の結果、個人特定事項の一部の通知が認容された場合には、刑訴法第207条の3第3項の規定により、検察官に対し、被疑者に示すものとして、被害者等の個人特定事項(当該裁判により通知することとされたものを除く。)の記載がない勾留状に代わるものが新たに交付されることとなる。よって、裁判の結果を受けた留置担当官等は、検察庁から検察官の指揮印が押印された一部通知の裁判書謄本及び新たに交付された勾留状に代わるものを受領し、留置施設において、勾留状に代わるものを被疑者に示すこと。勾留状に代わるものを示した後は、一部通知の裁判書謄本及び被留置者名簿(訓令別記様式第1号(Ⅴ 動静、処遇等に関する申出))に、「示した時間」等の執行状況について記載すること。

4 その他の留意事項

(1) 令状の受領時における確実な確認

勾留状を検察庁等から受領する担当者は、勾留状の右上の枠外に記載されている「□ 勾留状に代わるものの交付あり」を必ず確認し、勾留状に代わるものの交付の有無について確認すること。

(2) 留置担当官等における確実な対応

勾留状に代わるものが交付された事件においては、勾留状に代わるものが交付されたことを確実に認識し、執行に際しては、間違いなく勾留状に代わるものを示す必要がある。各留置施設においては、被留置者実態表を作成するなどし、勾留期限や接見等禁止決定の有無、公判期日等を把握しているところであるが、同表の備考欄に勾留状に代わるものが交付されている旨が分かるよう記載を工夫するなどして、誤って勾留状を示すことのないよう対策を講じること。

(3) 被留置者名簿に添付される犯罪事実の要旨の取扱い

新規留置時、捜査部門から受領する被留置者名簿(訓令別記様式第1号(Ⅰ 人定等))に添付された犯罪事実の要旨については、被害者等の個人特定事項の記載がないものであるとは限らないことから、全ての新規留置時の手続において、犯罪事実の要旨を一時的に留置場外で保管するなどして、被疑者に犯罪事実の要旨を見られないための措置を講じること。

(4) 写しの作成

従来、勾留状の執行時等において勾留状の写しを作成し、被留置者名簿に編てつしているところ、勾留状に代わるものについても交付される都度同様にすること。

(5) 鑑定留置状に代わるもの及び観護状に代わるものの執行要領等

留置担当官が取り扱う令状は、勾留状に加えて、鑑定留置状及び観護状がある。刑訴法第224条第3項において読み替えて準用する刑訴法第207条の2第2項等の規定により被害者等の個人特定事項の記載がない鑑定留置状の抄本その他の鑑定留置状に代わるものが交付された場合及び刑事訴訟規則第278条の2第2項等の規定により被害者等の個人特定事項の記載がない観護状の抄本その他の観護状に代わるものが交付された場合には、上記1から4(4の(2)及び(3)を除く。)までに準じた措置を執ること。

刑事訴訟法等の一部を改正する法律の一部施行に伴う勾留状等の取扱いに関する留置管理業務上の…

令和6年2月8日 達(留管)第23号

(令和6年2月8日施行)

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令和6年2月8日 達(留管)第23号