○警察活動における暑熱対策の推進について(通達)
令和6年5月23日
達(厚、務、生企、地企、刑総、交企、公)第330号
[原議保存期間 10年(令和17年3月31日まで)]
[有効期間 令和17年3月31日まで]
みだしのことについて、次のとおり定め、令和6年5月23日から実施することとしたので、実効的な取組を推進されたい。
記
1 趣旨
近年、年平均気温が上昇し、夏季において猛暑日や熱帯夜の日数が年々増加しており、警察官が警察活動中に熱中症の症状を訴え、救急搬送される事案や、体調不良となる事案が発生している状況にある。
こうした暑さが厳しい環境において、積極果敢に職務にまい進する警察職員の健康や安全を確保するとともに、その業務能率を向上させるために必要な方策を示し、警察活動における暑熱対策の一層の充実に向けた取組を推進するものである。
2 暑熱対策の推進体制
(1) 推進体制
効果的な暑熱対策を推進する上では、各部門が別々に対策を講じるのではなく、組織が一体的に対策を講じることが肝要であることから、福島県警察職員の健康管理に関する訓令(平成15年県本部訓令第12号)に定める総括健康管理委員会、所属健康管理委員会等を活用し、総合的な取組を推進すること。
(2) 取組の進め方
暑熱対策に係る取組を進めるに当たっては、正しい知識に基づき、また、直ちに実施すべきものと中長期な検討を要するもの、全部門共通のものと各部門特有のものなどを整理して計画的に行うことが必要である。そこで、推進体制においては、現場の実態を的確に把握した上で、医師等の専門家の意見を参考にしながら、実効的な取組を推進すること。
また、具体的な取組を推進する中で新たな課題を把握した場合には、これを柔軟に反映させるなどして、暑熱対策を時宜にかなった実効性のあるものとすること。取組の推進状況については、部門間で情報共有を図り、他部門で得られた知見も参考にしながら取組の改善を図ることにも配意すること。
3 具体的に推進すべき事項
(1) 職員に対する教養及び啓発
これまでに発生した熱中症に係る事例の中には、職員間で熱中症に関する知識が不足していたり、職場内における熱中症に対する認識が希薄であったりしたことが原因と思料されるものがある。
熱中症が命に関わるものであることに留意し、全職員が熱中症に関する正確な知識を得るための教養を徹底するとともに、職場全体で熱中症のリスクを低減させるために、熱中症予防の重要性を啓発すること。その際、熱中症に関する基礎知識(熱中症の症状、熱中症の予防方法、熱中症が疑われる際の措置等)について、視覚に訴える動画や講義、教養資料等を活用するなどして、各職員に広く浸透する教養に配意すること。
また、幹部職員や現場責任者となり得る職員等に対しては、暑熱対策が業務管理の一環として当然に行われるべきものであることを自覚させ、暑熱対策に必要な具体的事項(下記(2)参照)について教養を徹底すること。
(2) 業務管理の徹底
ア 熱中症の絶無を期するための対策
(ア) 職員の健康管理の徹底
熱中症の絶無を期するためには、個々の職員の健康状態に応じて必要な予防策を講じることが必要である。例えば、前夜に飲酒した場合は、自覚症状なく脱水状態になっていることがあるほか、基礎疾患がある職員、服薬中の職員等については、熱中症のリスクが高いことが知られている。
暑熱環境下での勤務が見込まれる職員に対し、平素から健康診断結果に基づく措置及び必要な指導を行うとともに、勤務開始前には職員の脱水の有無、体調不良の有無等を確認すること。また、熱中症を発症するリスクが高い健康状態と認められる職員には、活動場所や時間帯に配意するなど、必要な措置を講ずること。
(イ) 熱中症の予兆の把握と初期段階における対応
熱中症は、初期段階でその症状に気付いた上、適切な処置を講ずることができれば、重症化リスクを最小限にとどめることができる。
暑熱環境下で勤務中の職員については、リスクに応じた適切な頻度で声掛けを行うなどしてその健康状態を確認したり、職員間でお互いの健康状態に留意させたりして、予兆の把握に努めるとともに、異変を感じた場合にはちゅうちょなく速報させる環境を整えること。
(ウ) 適切な応急措置
熱中症が疑われる症状を認めた場合に各職員が適切な応急措置を執れるよう、身体の冷却や水分摂取といった応急措置の要領を整理した上で、職員への教養を徹底しておくこと。
(エ) 暑熱順化の推進
熱中症の発生リスクを抑えるためには、暑熱順化(熱に徐々に身体を慣らし、高温多湿環境下の業務に適応することをいう。以下同じ。)が有用である。
梅雨から夏季にかけての時期に暑熱順化推奨期間を設けるなどして、暑熱環境下における勤務が見込まれる職員に対し、暑熱順化の実施を推進すること。
イ 暑さが厳しい環境において業務能率を向上させるための対策
(ア) 熱中症発生リスクの把握とそれを踏まえた業務管理
日々の熱中症発生リスクに応じた有効な業務管理の在り方を、次の(イ)から(カ)までを参考にしながら各部門ごとに整理しておくこと。
その上で、各所属において、環境省及び気象庁が提供する「熱中症警戒アラート」を活用するなど、日々の熱中症発生リスクを把握し、それに応じた業務の付与や業務内容の変更等を実施すること。
(イ) 避暑(身体冷却)時間の確保
高温多湿環境下において、長時間にわたって街頭活動や実況見分、鑑識活動等に従事したことにより熱中症を発症した事案が報告されている。
暑熱環境下で業務に従事させる際は、必要な避暑(身体冷却)時間を確保することに留意すること。これを確実に行うため、例えば、一定時間継続した現場活動を要する場合には、必要な交代要員を確保して現場派遣したり、作業を一時中断して避暑(身体冷却)時間を設けたりするなどの方策を検討すること。
(ウ) 避暑(身体冷却)場所の確保
高温多湿環境下において、日陰のない場所で警戒警備を継続したことにより熱中症を発症した事案が報告されている。
暑熱環境下で業務に従事させる際は、必要な避暑(身体冷却)場所を可能な限り確保することに留意すること。例えば、長時間に及ぶ現場活動を要する場合であって、業務に従事する場所の近辺に、適当な避暑(身体冷却)場所等が見当たらないときには、避暑(身体冷却)が可能な車両を派遣したり、日よけのための器材を設置したりするなどの方策を検討すること。
(エ) 活動時間帯の見直し
暑さが厳しい日中時間帯ではなく、早朝、夕方、夜間等のより涼しい時間帯に活動することとしても業務上支障がない場合には、活動する時間帯の見直しを検討すること。
(オ) 活動内容の見直し
熱中症発生リスクが高い日時においては、業務上支障がない場合には、例えば、そのリスクに応じた訓練時間や訓練装備品の着装基準の見直しを行ったり、二輪ではなく四輪による交通取締りに変更したりするなど、活動内容の見直しを検討すること。
(カ) 水分補給等の徹底
自覚症状なく脱水症状が進行し、警察職員が熱中症を発症する事案が報告されている。
自覚症状の有無にかかわらず、勤務前後及び勤務中の定期的な水分補給及び塩分摂取を行わせること。また、幹部職員は勤務時間中の熱中症発生リスクに応じ、朝礼時の指示のほか、無線機やPⅢの一斉指令機能、庁内放送等勤務実態に応じた適切な手段により定期的に水分補給等を指示するなどして、水分補給等のタイミングの意識付けを図ることにも配意すること。
(3) 暑熱対策に資する資機材の活用並びに被服及び装備品の運用面の改善
ア 暑熱対策に資する資機材の活用
長時間の街頭活動によりこまめな水分補給ができずに熱中症になった事案や高温多湿環境下で街頭活動を継続したことにより熱中症になった事案が報告されているが、これらの中には暑熱対策に資する資機材(ドリンクホルダー、各種冷却グッズ等)を活用すればリスクが軽減されたのではないかと考えられるものもある。これらの資機材については、職員がちゅうちょなくより積極的に利用できるよう、部門ごとに使用場面や使用基準を整理し、活用の推進を図ること。
イ 被服及び装備品の運用面の改善
服装については、熱を吸収し、又は保熱しやすいものは避け、透湿性及び通気性の良いものとすることが望ましいとされているので、関係所属においては、夏服の着用期間の延長や通気性等に優れた生地への変更等について工夫の余地がないか検討した上で改善を図ること。
4 その他
勤務中の避暑(身体冷却)や水分補給については、地域住民から職務怠慢であると誤解されることをおそれ、必要な避暑(身体冷却)や水分補給がちゅうちょされているといった声がある。
各所属においては、制服警察官の勤務中の避暑(身体冷却)時間の確保や水分補給、飲料水の購入を含め、警察活動における暑熱対策の推進について、広報等を通じ、住民の理解を得るよう努めること。