○暑熱環境下における捜査活動の留意事項について(依命通達)

令和6年5月24日

達(刑総)第333号

[原議保存期間 10年(令和17年3月31日まで)]

[有効期間 令和17年3月31日まで]

みだしのことについては、次のとおりとするので、捜査活動における暑熱対策を推進されたい。

1 基本的事項

(1) 職員等の健康管理と適切な対処の徹底

幹部及び現場責任者は、活動場所の温度の把握、必要な交代要員及び避暑(身体冷却)時間の確保に努めるとともに、屋外等の暑熱環境下で捜査活動に従事する捜査員に対する体調の確認、水分補給及び塩分摂取等の健康管理に努めること。

特に、下記2、3のような暑熱環境下で捜査活動に従事する捜査員や、熱中症のリスクが高い状態(前夜の飲酒、体調不良、基礎疾患、服薬中等)の捜査員に対しては活動内容に十分配意し、現場責任者がリスクに応じた適切な頻度で声かけを行うなどしてその健康状態を確認したり、捜査員間でお互いの健康状態に留意させたりして、熱中症の予兆の把握に努めるとともに、異変を感じた場合にはちゅうちょなく即報させる環境を整えること。

なお、糖尿病、高血圧、心疾患、腎不全等の基礎疾患を治療中の捜査員については、水分補給、塩分摂取及びこれらを補充する際に含まれる糖分摂取に制限がある場合があることから、熱中症予防対策に関する具体的な留意事項等を主治医等に確認させた上で、必要に応じて活動内容を変更するなど、適切な措置を講じること。

(2) 暑熱対策に資する資機材の活用

熱中症の発症及び重症化のリスクを軽減するため、捜査員が暑熱環境下で携帯扇風機、保冷剤、ネックリング、冷感タオル等(以下「冷却グッズ」という。)の活用を希望する場合には、支障がない限りこれを認めること。

(3) 証拠保全上の留意事項

冷却グッズの使用に当たっては、風による飛散、汗や水滴の滴下、証拠物件との接触等により、微物資料等の証拠物件の散逸・汚染が生じることのないよう、活動内容に応じた適切なものを使用させること。

(4) 指導教養の徹底

平素より、捜査員に対し、熱中症の前兆症状、異変を感じた場合の応急処置の要領、暑熱対策に資する資機材の活用、捜査活動における留意事項等について教養を徹底すること。

2 一般的捜査活動における留意事項

(1) 実況見分・検証活動等

実況見分・検証活動等を実施する場合には、直射日光が差す屋外や空調設備が使用できない屋内等、高温多湿下での捜査活動が数多く発生し、熱中症発症のリスクが存在する。

実況見分・検証活動等においては、現場環境に鑑み、暑さが厳しい日中時間帯ではなく早朝、夕方等のより涼しい時間帯での実施を検討すること。

また、長時間に及ぶ現場活動を要する場合であって、近辺に適当な避暑場所等が見当たらないときは、避暑が可能な車両を派遣したり、日よけのための器材を設置するなどの方策を検討すること。

なお、立会人等に対しては、体調を確認するとともに、水分補給及び塩分摂取の用意をさせるなど配意すること。

さらに、現場保存等に支障がないと認められる場合には、幹部の指示のもと、車両等の搬送可能な証拠物件を避暑場所に移動の上、実況見分・検証活動等を実施することを検討すること。

(2) 行動確認

行動確認を捜査用車両内から実施する場合には、秘匿捜査のため車両のエンジンを切ることで車内が高温多湿になり、熱中症発症のリスクが存在する。

行動確認においては、捜査用カメラを適切に活用するなど熱中症発症のリスクが低い手法を検討すること。

3 個別の捜査活動における留意事項

(1) 鑑識活動

鑑識活動を実施する場合には、捜査員自身のだ液や毛髪等の混入防止のため、マスク、手袋、帽子等を着用することで熱が籠もりやすいほか、実施場所に既存する微物資料等の混入防止や証拠物件等に付着している微物資料等の散逸・汚染防止のため、扇風機等の空調設備の使用や換気が制限されることで実施場所が高温多湿になり、捜査員及び立会人の熱中症発症のリスクが存在する。

鑑識活動においては、避暑(身体冷却)、体調の確認並びに水分補給及び塩分摂取等のための時間を定期的に設けた上で、汗で浸潤した手袋等の資器材をこまめに交換し、証拠物件等の汚染防止と健康管理の両立を図ること。

なお、立会人に対しては、2(1)と同様に配意すること。

(2) 死体取扱業務

死体取扱業務を実施する場合には、現場保存等の観点から、空調設備の使用や換気が制限されることで屋内が高温多湿になり、熱中症発症のリスクが存在する。

死体取扱現場においては、現場保存等に支障がないと認められる場合には、幹部の指示のもと、死体取扱現場ではなく警察署に死体を搬送の上、死体の外表観察等を実施することを検討すること。

なお、身体冷却のため、冷却グッズを使用しながら検視時の写真撮影及び微物資料等の採取を実施する場合は、冷却グッズが死体に付着し、コンタミネーションを起こすことのないよう十分留意すること。

(3) 現場設定及び訓練

現場設定が必要となる事件においては、猛暑日を含めたあらゆる天候下で発生する可能性があるところ、暑熱環境下での耐刃防護衣等の資機材を着装しての活動のほか、長時間の現場待機も想定され、熱中症発症のリスクが存在する。

また、誘拐事件等においては、無線機等の資機材を複数台秘匿装着することで服の中に熱が籠もり、熱中症のほか、資機材の熱暴走のリスクが高い。加えて、立てこもり事件においては、通気性の悪い作戦服を着装した上での屋外活動のほか、重量があり身体の広範囲を覆う耐刃・耐弾装備品を着装した上での長時間の現場待機も想定され、熱中症発症のリスクが高い。

これらの場面においては、避暑が可能な車両の派遣のほか、熱中症や資機材の熱暴走を防止するため、冷却剤等の使用を検討すること。また、交代要員の確保にあたっては、適切な装備品の着装にも留意すること。

なお、現場設定に関する訓練は、特に必要のある場合を除き、暑さが厳しい時期を避け、早朝、夕方、夜間等のより涼しい時間帯での実施を検討すること。

暑熱環境下における捜査活動の留意事項について(依命通達)

令和6年5月24日 達(刑総)第333号

(令和6年5月24日施行)

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