○学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律の公布について(通達)
令和6年8月19日
達(少対、県サ、生企、刑総、捜一)第411号
[原議保存期間 5年(令和12年3月31日まで)]
[有効期間 令和12年3月31日まで]
学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律(令和6年法律第69号。以下「法」という。)が別紙1のとおり公布され、法の趣旨及び要点は次のとおりであるから、適切に対応されたい。
記
1 制定の趣旨
児童対象性暴力等が児童等の権利を著しく侵害し、児童等の心身に生涯にわたって回復し難い重大な影響を与えるものであることに鑑み、児童等に対して教育、保育等の役務を提供する事業を行う立場にある学校設置者等及び民間教育保育等事業者が教員等及び教育保育等従事者による児童対象性暴力等の防止等をする責務を有することを明らかにし、学校設置者等が講ずべき措置並びにこれと同等の措置を実施する体制が確保されている民間教育保育等事業者を認定する仕組み及び当該認定を受けた民間教育保育等事業者が講ずべき措置について定めるとともに、教員等及び教育保育等従事者が特定性犯罪事実該当者に該当するか否かに関する情報を国が学校設置者等及び当該認定を受けた民間教育保育等事業者に対して提供する仕組みを設けることとするものである。
2 法律の要点
(1) 定義
ア 特定性犯罪
次に掲げる罪をいう(第2条第7項関係)。
(ア) 刑法第176条、第177条、第179条から第182条まで、第241条第1項若しくは第3項又は第243条(同項の罪に係る部分に限る。)の罪
(イ) 盗犯等の防止及び処分に関する法律第4条の罪(刑法第241条第1項の罪を犯す行為に係るものに限る。)
(ウ) 児童福祉法第60条第1項の罪
(エ) 児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律第4条から第8条までの罪
(オ) 性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律第2条から第6条までの罪
(カ) 都道府県の条例で定める罪であって、次のaからdまでに掲げる行為のいずれかを罰するものとして政令で定めるもの
a みだりに人の身体の一部に接触する行為
b 正当な理由がなくて、人の通常衣服で隠されている下着若しくは身体をのぞき見し、若しくは写真機等を用いて撮影し、又は当該下着若しくは身体を撮影する目的で写真機等を差し向け、若しくは設置する行為
c みだりに卑わいな言動をする行為(a又はbに掲げるものを除く。)
d 児童と性交し、又は児童に対しわいせつな行為をする行為
イ 特定性犯罪事実該当者
次のいずれかに該当する者をいう(第2条第8項関係)。
(ア) 特定性犯罪について拘禁刑を言い渡す裁判が確定した者(その刑の全部の執行猶予の言渡しを受けた者(当該執行猶予の言渡しが取り消された者を除く。)を除く。)であって、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して20年を経過しないもの
(イ) 特定性犯罪について拘禁刑を言い渡す裁判が確定した者のうち執行猶予者であって、当該裁判が確定した日から起算して10年を経過しないもの
(ウ) 特定性犯罪について罰金を言い渡す裁判が確定した者であって、その刑の執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して10年を経過しないもの
(2) 学校設置者等が講ずべき措置等
ア 犯罪事実確認義務等
(ア) 学校設置者等は、教員等としてその本来の業務に従事させようとする者について、当該業務を行わせるまでに、犯罪事実確認書による特定性犯罪事実該当者であるか否かの確認(以下「犯罪事実確認」という。)を行わなければならないこととした(第4条第1項関係)。
(イ) 学校設置者等は、やむを得ない事情により、教員等としてその本来の業務に従事させようとする者について当該業務を行わせるまでに犯罪事実確認を行ういとまがない場合であって、直ちにその者に当該業務を行わせなければ学校等又は児童福祉事業の運営に著しい支障が生ずるときは、その者の犯罪事実確認は、その者を当該業務に従事させた日から一定の期間内に行うことができることとした。ただし、学校設置者等は、犯罪事実確認を行うまでの間は、その者を特定性犯罪事実該当者とみなして必要な措置を講じなければならないこととした(第4条第2項関係)。
(ウ) 学校設置者等は、この法律の施行の際、学校等又は児童福祉事業について教員等としてその本来の業務に従事させている者等については、一定の期間内に、その全ての者について、犯罪事実確認を行わなければならないこととした(第4条第3項関係)。
(エ) 学校設置者等は、犯罪事実確認を行った教員等をその者の直近の犯罪事実確認書に記載された確認日の翌日から起算して5年を経過する日の属する年度の末日を超えて引き続き教員等としてその本来の業務に従事させるときは、一定の期間内に、改めて、その者について、犯罪事実確認を行わなければならないこととした(第4条第4項関係)。
イ 児童対象性暴力等を把握するための措置
(ア) 学校設置者等は、教員等による児童対象性暴力等が行われるおそれがないかどうかを早期に把握するための措置を実施しなければならないこととした(第5条第1項関係)。
(イ) 学校設置者等は、教員等による児童対象性暴力等に関して児童等が容易に相談を行うことができるようにするために必要な措置を実施しなければならないこととした(第5条第2項関係)。
ウ 犯罪事実確認の結果等を踏まえて講ずべき措置
学校設置者等は、アによる犯罪事実確認に係る者について、その犯罪事実確認の結果、イ(ア)の措置により把握した状況、イ(イ)の児童等からの相談の内容その他の事情を踏まえ、その者による児童対象性暴力等が行われるおそれがあると認めるときは、児童対象性暴力等を防止するために必要な措置を講じなければならないこととした(第6条関係)。
エ 児童対象性暴力等が疑われる場合等に講ずべき措置
学校設置者等は、教員等による児童対象性暴力等が行われた疑いがあると認めるときは、その事実の有無及び内容について調査を行わなければならないものとし、児童等が教員等による児童対象性暴力等を受けたと認めるときは、当該児童等の保護及び支援のための措置を講じなければならないこととした(第7条関係)。
(3) 民間教育保育等事業者の認定等及び認定事業者等が講ずべき措置等
ア 認定の申請等
民間教育保育等事業者は、その行う民間教育保育等事業について、(2)により学校設置者等が講ずべき措置と同等のものを実施する体制が確保されている旨の内閣総理大臣の認定(以下「認定」という。)を受けることができることとした(第19条関係)。
イ 犯罪事実確認義務等
認定事業者等は、認定に係る教育保育等従事者について、(2)アと同様の犯罪事実確認を行わなければならないこととした(第26条第1項、第2項、第3項及び第6項関係)。
3 その他
(1) 施行期日(法附則第1条関係)
一部の規定を除き、公布の日から起算して2年6か月を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされた。
(2) 検討(法附則第6条関係)
政府は、この法律の施行後3年を目途として、児童対象性暴力等の防止に関する制度の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとされた。
4 附帯決議
法案の国会審議に際し、衆議院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会において別紙2の、参議院内閣委員会において別紙3の附帯決議がそれぞれなされていることから、その趣旨を十分に踏まえた対応を行うこと。
(1) 被害の相談等への適切な対応について(別紙3の九)
性犯罪の相談や被害の届出があった場合は、被害者のプライバシー等の保護に配意するとともに、二次的被害の防止や被害者の精神的負担の緩和に努めるほか、迅速・確実な被害の届出の受理について(令和4年10月11日付け達(刑総)第457号)に基づき、届出の時点における申告の内容が、明らかに犯罪の構成要件に該当しないと判断できる場合又は明白な虚偽若しくは著しく合理性を欠くものである場合を除き、即時受理すること。
また、この受理の原則に反した取扱いがなされることのないよう、署の捜査員等に至るまで、組織的かつ適切な対応を徹底すること。
(2) 性犯罪の捜査及び立証について(別紙2の十二及び別紙3の十二)
性犯罪に関する関係法令の規定の適切な運用を図るとともに、被害者の置かれた立場や体調等に配意し、証拠保全等の必要な事項について丁寧に説明するなどして証拠資料を採取するほか、適正かつ緻密な性犯罪捜査を推進するため、被疑者その他の関係者の供述内容の吟味、収集した客観証拠の分析等の必要な捜査を尽くすこと。
また、性犯罪については、署で受理した相談等の内容に関し、署の刑事部門と生活安全部門で共有するほか、県本部でも確実に把握するなどにより、組織的に対処がなされるよう徹底すること。
別紙1
別紙2
別紙3