○「犯罪被害者等の支援に関する指針」に基づく被害者支援の推進について(通達)

令和6年12月23日

達(県サ)第585号

[原議保存期間 30年(令和37年3月31日まで)]

[有効期間 令和37年3月31日まで]

みだしのことについては、次のとおり定め、令和6年12月23日から施行することとしたので、適正な運用に努められたい。

なお、「犯罪被害者等の支援に関する指針」の制定について(平成21年1月14日付け達(県サ)第14号。以下「旧通達」という。)は、廃止する。

1 趣旨

犯罪被害者等の支援については、旧通達別添の犯罪被害者等の支援に関する指針(平成20年国家公安委員会告示第25号。以下「指針」という。)に基づき、被害者等の支援に関する基本的事項の職員への周知、公益社団法人ふくしま被害者支援センターとの連携強化等の各種施策を推進してきたが、旧通達の有効期間満了に伴い、本通達を発出し、今後も指針に基づいた各種施策の推進を図るものである。

2 指針

別添のとおり

3 運用上の留意事項

(1) 指針の対象範囲

指針の内容は、原則として犯罪被害者等の支援全般について当てはまるものであり、犯罪行為による死亡、重傷病又は障害等の犯罪被害者又は遺族に限定されるものではない。

(2) 教養の徹底等

所属長は、所属職員に対し、被害者支援を実施する際の留意事項についての教養を徹底し、指針に従った被害者支援が組織的に実施されるよう配慮すること。

(3) 関係機関・団体との連携

民間犯罪被害者等支援団体のみならず、市町村をはじめとする関係機関・団体及び署における地域支援ネットワークとの連携の確保・充実に努め、実質的な被害者支援の推進を図ること。

(4) 積極的な広報啓発活動の実施

犯罪被害者等の支援やその意義が、地域や世代を問わず広く社会に周知されるよう、あらゆる広報媒体を活用するとともに、中学・高校における授業、大学生を対象とした講義や地域における各種会合における講演等様々な機会を利用して広報啓発活動を行うこと。

別添

○ 国家公安委員会告示第25号

犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(昭和55年法律第36号)22条第4項の規定に基づき、犯罪被害者等の支援に関する指針を次のように定めたので告示する。

平成20年10月31日

国家公安委員会委員長 佐藤勉

犯罪被害者等の支援に関する指針

第1 趣旨

この指針は、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(昭和55年法律第36号。以下「法」という。)第22条第4項の規定に基づき、同条第1項の規定により警察本部長等が行う犯罪被害者等に対する援助及び同条第3項の規定により都道府県公安委員会が行う犯罪被害者等の支援を目的とする民間の団体(以下「民間犯罪被害者等支援団体」という。)の自主的な活動を促進するための措置に関してその適切かつ有効な実施を図るため必要な事項を定めるものである。

なお、法第22条第1項及び第3項の規定に基づく措置は、法第2条第3項に規定する犯罪被害者又はその遺族を対象とするものであるが、これとその他の犯罪被害者等の支援を区別して実施することは困難でありまた適当でもないのであって、この指針の内容は、特段の事情のない限り、犯罪被害者等の支援全般について妥当するものである。

第2 犯罪被害者等の支援に関する基本的事項

犯罪被害者等の支援を実施する際には、次に掲げる事項に留意することとする。

1 犯罪被害者等の個人の尊厳への配慮

犯罪被害者等基本法(平成16年法律第161号。以下「基本法」という。)第3条第1項が「すべて犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する」と規定していること等を踏まえ、犯罪被害者等の支援に当たっては、犯罪被害者等が社会の一員として有する尊厳を尊重し、これにふさわしい支援が行われるよう十分配慮することが必要である。

2 犯罪被害者等の置かれた状況に対する理解

犯罪被害者等の置かれた状況は様々であり、また、時間の経過とともにその直面する問題も種々に変化する。基本法第3条第2項が「犯罪被害者等のための施策は、被害の状況及び原因、犯罪被害者等が置かれている状況その他の事情に応じて適切に講ぜられるものとする」と規定していること等を踏まえ、個々の事情に応じた適切な支援を行うためには、個々の犯罪被害者等の具体的事情を正確に把握し、その変化にも留意することが必要である。

3 犯罪被害者等のニーズに即した支援の実施

犯罪被害者等の支援に当たっては、その支援が犯罪被害者等のニーズ(犯罪被害者等が現に求めるもののほか、犯罪被害者等にとって必要と認められるが、犯罪被害等による精神的打撃等により犯罪被害者等自らがまだ自覚的には求めていないものを含む。以下同じ。)に即した適切なものとなるよう、犯罪被害者等が何を望んでいるか、犯罪被害者等に何が必要かを常に念頭に置いて、行うことが必要である。

4 犯罪被害等の早期軽減

犯罪被害等の早期軽減は、犯罪被害者等が将来にわたって深刻な精神的打撃を被ることを防ぐとともに、犯罪被害者等の受ける苦痛を緩和することにより犯罪被害等からの立直りを促進するために極めて重要な意義を有する。このような犯罪被害等の早期軽減の重要性にかんがみ、犯罪被害者等の支援に当たっては、犯罪被害の発生直後から継続的に行われるようにすることが必要である。

5 支援に携わる者からの積極的な働き掛け

犯罪被害者等の中には、相談や支援を要請する方法も分からないまま、困難な状況に陥る者も存在している。犯罪被害者等が必要な支援を必要なときに必要な場所で受けられるようにするためには、犯罪被害者等からの要請を待つのみではなく、犯罪被害後の経過に応じた適宜適切な支援を、支援に携わる者の側から提示するなど積極的な働き掛けを行うことが必要である。

6 犯罪被害者等に対する情報提供及び適切な説明

基本法第11条は、犯罪被害者等が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるようにするため、必要な情報の提供及び助言を行うことを規定している。刑事手続や各種の支援制度に関する必要な情報が提供されることは、犯罪被害者等支援の基礎であり、個々の事情に応じて必要となる様々な情報を、適切な時期に提供することが必要である。また、犯罪被害者等は、被害直後から、様々な刑事又は民事の手続や各種の申請の場面に遭遇し、その都度、判断し、行動することを求められるが、予期しない困難による極度の混乱に陥るなどのため、直面する問題を十分に理解できない場合がある。そこで、犯罪被害者等が直面している各般の問題や犯罪被害者等が陥りがちな心身の状況について、積極的に情報を提供し、適切な説明を行っていくことが必要である。

7 二次的被害の防止

犯罪被害者等が受ける精神的・身体的被害には、当該犯罪等によって直接もたらされるもの以外に、犯罪被害者等が必然的にかかわらざるを得ない刑事手続や医療等の過程で配慮に欠けた対応をされることによって受ける二次的被害がある。基本法第19条が、保護、捜査、公判等の過程における犯罪被害者等への配慮等を規定していること等にかんがみ、犯罪被害者等の支援の実施に当たっては、犯罪被害者等の人権やその心身の状況に十分に配慮すること、犯罪被害者等の支援について専門的知識を有する者が支援に当たること、必要な施設の整備を行うこと等により、二次的被害の防止が図られることが必要である。

8 プライバシーへの配慮

犯罪被害者等は、周囲の人々の言動や報道機関による取材及び報道により二次的被害を受ける場合がある。これを防止し、支援に当たって犯罪被害者等の名誉又は生活の平穏を害することがないようにするため、犯罪被害者等のプライバシーに十分に配慮することが必要である。

9 犯罪被害者等の安全確保

犯罪被害者等の多くが、再び危害を加えられることに対し深刻な不安を抱いている。基本法第15条が、犯罪被害者等が更なる犯罪被害等により被害を受けることを防止し、その安全を確保するために必要な施策を講ずることを規定していること等にかんがみ、犯罪被害者等の支援の実施に当たっては、再被害防止に努めることが必要である。また、再被害に対する不安は、被害申告を躊躇ちゆうちよさせる原因ともなるなど犯罪被害者等の大きな負担となっていることから、不安を解消するよう配慮することが必要である。

10 支援に携わる者への心理的影響に対する配慮

犯罪被害者等の支援に携わる者は、犯罪被害等の状況を間近に見ることや、時には犯罪被害者等の感情の表出に直面することから、極めて強いストレスを受ける場合がある。そこで、犯罪被害者等の支援に携わる者が適切にその活動を行うためには、これらの者に対し、犯罪被害者等の支援により自己が受けるストレスに関する知識を教示してストレスに備えさせることや、助言及び指導を行うアドバイザーを配置するなどの措置をとることにより、これらの者に対する心理的影響に配慮することが必要である。

また、犯罪被害者等の支援の実施に伴うストレスは、支援に携わる者自らが容易に認識することができない場合や、問題の自覚があってもそれに対して自ら適切な措置をとることができない場合もあるため、その指導に当たる者が支援に携わる者の活動状況を確実に把握し、ストレスを抱えていないかどうか、その言動に対し常に注意を払うとともに、必要な場合には早期に適切な対応をとることができるように配慮することが必要である。

11 途切れることのない支援

基本法第3条第3項が、「犯罪被害者等が、被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援等を途切れることなく受けることができる」ことを基本理念として規定していることを踏まえ、犯罪被害者等の支援は、犯罪被害者等が直面するその時々の困難を打開することはもちろん、犯罪被害者等が再び平穏な生活を回復することに視点を置いて行うことが必要である。

犯罪被害者等の平穏な生活の回復には長期間を要するが、制度や担当機関等が替わっても連続性をもって支援が行われるよう、また、犯罪被害者等の誰もが、必要なときに必要な場所で適切な支援を受けられるよう、途切れることのない支援が実施されていくことが必要である。

12 民間犯罪被害者等支援団体と警察との有機的な連携

基本法第7条が定めているとおり、犯罪被害者等が平穏な生活を回復するための途切れることのない支援を行うためには、広く犯罪被害者等の支援に携わる機関・団体が相互に連携を図りながら協力していくことが必要である。

特に、犯罪被害者等が、被害直後から中長期にわたり、希望する場所で、犯罪被害者等の多様なニーズに応じた支援を途切れなく受けられるようにするためには、犯罪被害の直後から犯罪被害者等の支援に当たる警察と、警察等の公的機関では十分に対応できない、個々の犯罪被害者等の事情に即したきめ細かな支援を継続的に実施できる民間犯罪被害者等支援団体との間で、相互の役割分担や連絡方法等について認識の共有を図り、継ぎ目のない有機的な連携が行われることが必要である。

第3 警察本部長等による援助に関する事項

警察本部長等による援助を実施する際には、第2の基本的事項に加え、次に掲げる事項に留意することとする。

1 犯罪被害者等に対する援助における警察の役割の認識

犯罪被害者等に対する援助は、警察を始めとする様々な公的機関や民間犯罪被害者等支援団体により行われているが、とりわけ警察は、通常、犯罪被害の直後から犯罪被害者等と接することから、犯罪被害者等にとって最も身近な機関である。特に、警察が中心的な役割を果たす犯罪被害等の早期軽減は、犯罪被害等からの回復において極めて重要な意義を有するものである。警察本部長等は、適切かつ有効な犯罪被害者等に対する援助の実施を図るため、犯罪被害者等に対する援助における警察のこうした役割をすべての部下職員に十分理解させることが必要である。

2 犯罪被害者等に対する援助に係る組織運営の基本

犯罪被害者等に対する援助のため警察が果たす役割の重要性を踏まえ、各部門の犯罪被害者等に対する援助に関連する施策が最大限の効果を発揮するよう、体制の充実に努めるとともに、部門間の連携を図り、各種法令を積極的に活用して、犯罪被害者等の視点に立ったきめ細かな犯罪被害者等に対する援助を実施することが必要である。

また、捜査活動が犯罪被害者等に対し過大な負担をかけることのないよう留意すること、人員、施策及び資機材を効率的に配置すること等、警察運営全般にわたり組織の運営及び管理に関し部門間や各種業務間のバランスを確保することが必要である。

3 各種施策の実施状況の把握

警察においては、犯罪被害者等に対する援助に関し、犯罪被害者等からの照会に応じる窓口の設置や犯罪被害者等に対する援助活動を推進する警察職員の指定等、各種施策の整備及び充実に努めてきたところである。これらの施策は、警察の推進する他の施策と同様、国民の生活に直接影響を及ぼすものであるから、その実施状況について客観的な評価を行い、その結果をその後の施策の実施に適切に反映させることが求められる。そこで、警察本部長等は、各種施策の確実な実施を確保するとともに、必要があれば施策に見直しを加えてより効果的な犯罪被害者等に対する援助を行うため、実施状況を定期的かつ正確に把握し、その効果を適切に判断することが必要である。

4 適切かつ有効な犯罪被害者等に対する援助を実施するための基盤整備

(1) 警察職員に対する指導及び教養

ア 指導及び教養の実施方針

警察が犯罪被害者等に対する援助を適切かつ有効に行うためには、犯罪被害者等に接する個々の警察職員が、警察による犯罪被害者等に対する援助の意義、犯罪被害者等の心理、犯罪被害者等に対する援助に関する様々な施策の実施要領等について十分に理解しておかなければならない。そのためには、各警察職員に対して犯罪被害者等に対する援助に関する指導及び教養を的確に行うことが必要である。

したがって、警察職員として採用された段階から、それぞれの階級又は職に応じた計画的かつ段階的な教養を実施することとする。その際、必要に応じて、精神科医、臨床心理士、社会福祉士、法曹関係者、民間犯罪被害者等支援団体関係者等の専門家による授業や犯罪被害者等による講演会を組み込むことも重要である。また、平素から、職場においても、犯罪被害者等に対する援助に関する最新の施策等に関する定期的な教養や、犯罪被害者等に対する援助の意義や具体的な方法等についての教養を行うこととする。

イ 基本的な指示事項

警察職員を対象とする教養においては、犯罪被害者等に対する援助に関する基本的な事項として次に掲げる内容を盛り込むこととする。

(ア) 警察による犯罪被害者等に対する援助の意義、施策の推進及び関係法令の運用に関する方策

(イ) 犯罪被害者等の心情及び犯罪被害者等が直面する問題

(ウ) 犯罪被害者等と接するに当たって配慮すべき事項

(エ) 二次的被害を防止するために配慮すべき事項

(オ) 犯罪被害給付制度の概要

(カ) 犯罪被害者等に対する援助を行う公的機関、民間犯罪被害者等支援団体等との連携の方策

(キ) 関係者の名誉その他の権利利益への配慮

(2) 体制、施設及び資機材の整備

ア 犯罪被害者等に対する援助に従事する警察職員等の配置及び運用

犯罪被害者等に対する援助をそのニーズに即して十分に実施するため、事情聴取を行うこと等を通じて犯罪被害者等に接触することとなった警察職員のみに任せるのではなく、その確実な実施のために警察職員を十分に確保しておくこととする。また、性犯罪、ストーカー事案、配偶者からの暴力事案等の女性被害者からの求めに応じ、又は児童虐待事案等の被害少年に関し必要がある場合に、これらの者の事情聴取を行うことのできる女性警察官や、心理学等に関する知識を有し、危機介入(被害直後の混乱時期において、犯罪被害者等の要望に応じて犯罪被害者等の直面している問題を直接取り扱う役務の提供をいう。)やカウンセリング等を行うことのできる職員等の確保にも努めることとする。

さらに、専門的な知識を有する職員に関しては、必要に応じ、配属先にかかわらず犯罪被害者等に対する援助に当たることができるよう弾力的な人材の運用を行うなど、効率的かつ効果的に犯罪被害者等に対する援助の措置がとれるようにしておくこととする。

イ 犯罪被害者等に対する援助に従事する警察職員の適切な評価

犯罪被害者等に対する援助は、その成果及び効果を客観的に測ることが難しいことから、表彰や積極的な勤務評定の対象となりにくい側面がある。犯罪被害者等に対する援助の重要性についてすべての警察職員に認識させ、その効果的な実施を徹底するため、個々の警察職員による犯罪被害者等に対する援助に関する諸施策の推進状況を常に正確かつ確実に把握しておき、公正かつ適切な評価を行うこととする。そのため、犯罪被害者等に対する援助に従事する警察職員の活動の状況及び結果を犯罪被害者支援担当部署に集約するなど報告の系統を確立することとする。また、効果的な事案については、積極的な評価及び表彰並びに職員への事例紹介を行い、犯罪被害者等に対する援助に係る意識の高揚と個々の職員の事務処理能力の向上を図るとともに、不適切な事案については、社会的に厳しい非難を受ける場合が多いことを自覚し、その原因と責任の所在を明確にし、適切に対処するなど、犯罪被害者等に対する援助に関する取組みについて適切な評価を行うこととする。

ウ 犯罪被害者等に対する援助に使用する施設及び資機材の整備及び活用

犯罪被害者等は、事情聴取を受けるなどにより捜査に協力する際、不適切な取扱いを受けることにより、二次的被害を受けるおそれがある。そこで、明るい内装を施した事情聴取室、性犯罪被害者がしゆう恥心を害することなく証拠採取に応じられるようにするための資機材、犯罪被害者等のプライバシーを保護しながら事情聴取を行うための特別の装備を施した車両等犯罪被害者等の負担を軽減するように工夫された施設及び資機材を充実させ、積極的に活用することとする。

さらに、被疑者が逮捕されていない場合等犯罪被害者等が安全の確保について不安を感じている場合に、不安感を軽減するため、警報装置を貸与できるようにするなど、資機材の整備及び活用を進めることとする。

5 関係都道府県警察、関係する機関及び団体との連携等

(1) 関係都道府県警察、部門及び警察署相互間の協力

犯罪行為地や犯罪被害者等の住所地が二以上の都道府県警察又は警察署の管轄区域にわたる事件においては、関係する都道府県警察又は警察署が相互に連携して犯罪被害者等に対する援助を行う必要がある。また、凶悪な事件や大量の犯罪被害者等を伴う事件が発生し、その発生地を管轄する都道府県警察又は警察署の体制では十分な犯罪被害者等に対する援助ができない場合は、その実施に必要な人員及び資機材を確保するため、隣接し、又は近接する都道府県警察又は警察署との連携が必要である。そこで、犯罪被害等の発生時に迅速な連携をとることができるよう、平素から、他の都道府県警察又は警察署との間における連携窓口を定め、相互の連絡体制を構築しておくこととする。さらに、必要に応じ、警察庁とも積極的に連携をとることとする。

また、途切れることのない犯罪被害者等の支援を実施するため、犯罪被害者支援部門のみならず、事情聴取等を通じて犯罪被害者等に接し、被疑者に関する情報を有する捜査部門、訪問・連絡活動等を通じて犯罪被害者等に接し、情報の提供、相談の受理等を行う地域部門等も相互に協力することとする。

(2) 関係機関・団体との連携・協力

都道府県警察又は警察署ごとに、地方検察庁、弁護士会、医師会、地方公共団体の社会福祉担当部局等犯罪被害者等に対する援助に関する機関及び団体が相互に連携し、犯罪被害者等のニーズにこたえる体制を整備するための協議会(以下「連絡協議会」という。)が設置されているところである。

連絡協議会の運営に当たっては、犯罪被害者等に対する援助に関係する機関及び団体の幅広い参加を働き掛け、犯罪被害者等のニーズに応じたきめ細かな援助が行われる体制を整備するとともに、犯罪被害等の発生後速やかに連携して効果的な犯罪被害者等に対する援助を行うことができるよう、各機関等との信頼関係の構築、連携体制の確立に努めることとする。

とりわけ、大規模な事件が発生した場合には、時々刻々変化し、複雑かつ錯そうした状況の下で、各機関が迅速かつ円滑に意思疎通を行い、情報を共有し、事態の推移に応じそれぞれがその総力を挙げ、かつ、一体的に対処するなど有機的に連携する必要がある。そこで、平素から他の地域での取扱事案を紹介するなどして積極的に情報交換を行うとともに、事件発生時には、迅速かつ的確に犯罪被害者等に対する援助に関する協力要請を行うこととする。

(3) 民間犯罪被害者等支援団体との連携・協力

民間犯罪被害者等支援団体による支援は、公的機関のみでは十分に対応できない部分についてきめ細かな対応を行うことができ、公的機関に比べ個々の犯罪被害者等が抱える事情に即した、より柔軟で迅速かつ継続的な支援が行えるといった意義を有する。したがって、犯罪被害者等の多様なニーズに対応した途切れることのない支援を実施するため、犯罪被害者等早期援助団体を始めとする民間犯罪被害者等支援団体との連携・協力を図っていくこととする。

6 犯罪被害者等に対する情報提供及び相談体制の充実

犯罪被害者等の支援に当たっては、当該犯罪被害者等の要望を踏まえ、警察の行う犯罪被害者等に対する援助の措置に関する説明を丁寧に行うとともに、刑事手続の概要の説明、捜査の経過等の通知を行うことにより、犯罪被害者等の不安感を軽減することが必要である。また、犯罪被害者等が自らが必要とする支援の内容について正しく認識することができない場合があることに配慮し、警察及び関係機関・団体が提供している援助の内容等について情報提供や相談に応じることが必要である。

そこで、犯罪被害者等の誰もが必要なときにいつでも、情報の入手や相談ができるよう、犯罪被害相談に携わる職員への各種制度に関する知識の習得の促進を図るとともに、相談窓口における各種制度の案内書の配布及び関係機関・団体との迅速かつ確実な引継ぎを進めることとする。また、犯罪被害者等が安心して相談できるよう、性犯罪相談窓口への女性警察官の配置、カウンセリング専門職員の電話によるカウンセリングの実施、精神科医や臨床心理士等による専門的ケアが行える機関の紹介等を進めるよう努めることとする。

7 捜査過程における二次的被害の防止

犯罪被害者等が警察の捜査により二次的被害を受けた場合には、犯罪被害等からの立直りが遅れ、ひいては、警察の捜査に対する協力を得ることが難しくなることも懸念されるところである。二次的被害の防止のため、捜査における精神的負担の軽減及び犯罪被害者等のプライバシーの保護に留意するとともに、犯罪被害者等の要望を踏まえ、かつ、犯罪被害者等の年齢、性別、家庭環境、事件の態様、社会的反響等に応じたきめ細かな対応を行うこととする。

また、犯罪被害者等が近隣住民等周囲の人々の言動や報道機関による取材及び報道により二次的被害を受ける場合があることにかんがみ、犯罪被害者等の要望があり、かつ、必要があると認められるときは、犯罪被害者等からの相談に応じるなど犯罪被害者等に対する援助に関係する機関及び団体との連携にも配慮することとする。

8 警察による犯罪被害者の支援に関する広報啓発活動

(1) 広報啓発活動の重要性

犯罪被害に遭遇した被害者等が安心して援助を求めることができるようにするためには、日頃から犯罪被害者等に対する援助を行う機関及び団体やそれらが提供する援助の内容が社会に十分周知されていることが必要である。性犯罪及び配偶者からの暴力事案の被害者を始めとする犯罪被害者等は、捜査や報道による二次的被害を恐れて被害の届出や告訴をためらい、犯罪被害の潜在化が起きていることも指摘されており、こうした不安を取り除くため、積極的な広報啓発の実施により犯罪被害者等の支援の存在及び効能を社会に広く知らせることとする。また、犯罪被害者等の支援に関する広報啓発を通じて、その意義が社会に浸透することにより犯罪被害者等の置かれた状況に関する国民の理解が深まるとともに、社会全体の犯罪被害者等の支援に関する気運と連帯共助の精神が醸成され、民間犯罪被害者等支援団体の自主的な活動について、寄附、助成等の民間資金の活用が図られることも期待される。

(2) 広報啓発活動における留意点

犯罪被害者等の支援に関する広報啓発を行う場合においては、犯罪被害者等のプライバシーに十分配慮することとする。特に、個別事件について報道発表を行う場合には、犯罪被害者等に対し、事前に必要な情報の提供を行うよう努めることとする。

(3) 広報啓発活動の実施方法

犯罪被害者等の支援に関する広報啓発の重要性を踏まえ、関係機関や民間犯罪被害者等支援団体とも連携の上、ポスター及びパンフレットの配布やインターネットの活用、講演会の開催、各種会合での講話、その他の様々な機会を利用して、広報啓発活動を一層促進することとする。

9 犯罪被害者等の安全の確保

犯罪被害の発生直後には、まず犯罪被害者等の安全を確保することが必要である。再び危害を加えられるおそれのある犯罪被害者等については、防犯指導、警戒等を実施するなど、再被害防止の措置を推進することとする。また、再被害に対する不安を解消するため、被害者連絡制度や犯罪被害者等に関する個人情報の取扱い等の適切な運用を図るよう努めることとする。

第4 民間犯罪被害者等支援団体の自主的な活動の促進に関する事項

都道府県公安委員会は、民間犯罪被害者等支援団体の自主的な活動を促進するため、第2の基本的事項及び次の1に掲げる事項に留意しつつ、次の2に掲げる措置を実施するよう努めなければならない。

1 民間犯罪被害者等支援団体の自主的な活動を促進するための措置を実施する際の留意事項

(1) 民間犯罪被害者等支援団体の自主性の尊重

民間犯罪被害者等支援団体による犯罪被害者等の支援は、公的機関のみでは十分に対応できない、個々の犯罪被害者等の事情に即したきめ細かな対応が行えるといった点に大きな意義を有する。

このような民間犯罪被害者等支援団体による支援活動の特性にかんがみれば、民間犯罪被害者等支援団体の活動は、関係機関と連携協力を図りつつも、各地域に根ざした自主的なものであるべきであり、民間犯罪被害者等支援団体については、独立した組織として、その自主性が尊重される必要がある。

(2) 関係機関・団体との連携

犯罪被害者等が被害に遭ってから再び平穏な生活を回復するためには、被害直後から中長期にわたり、地域の実情に応じて犯罪被害者等が望む場所で適切な時期にニーズに応じた支援を途切れなく受けられるようにすることが必要であるが、犯罪被害者等のニーズは多種多様であり、時間の経過とともに必要とされる支援内容も変化することから、あらゆるニーズを単独の組織で満たすことは困難である。そのため、犯罪被害者等の支援に携わる様々な関係機関・団体が相互補完的な役割を果たすことが必要であり、制度や担当機関が替わっても連続性をもって支援が行われるよう、関係機関・団体の連携を一層充実・強化し、その連携密度の底上げを図る必要がある。

(3) 保秘の徹底

犯罪被害者等早期援助団体の職員等については、犯罪被害者等の支援に従事するに当たって知り得た秘密についての保秘の義務が課されているが、犯罪被害者等の二次的被害を防止するためには、指定を受けていない民間犯罪被害者等支援団体についても、支援を通じて知った犯罪被害者等のプライバシーに十分配慮し、保秘の徹底を図る必要がある。

2 民間犯罪被害者等支援団体の自主的な活動を促進するための措置の具体的内容

(1) 犯罪被害者等の支援に携わる者の知識向上に係る措置

民間犯罪被害者等支援団体による犯罪被害者等の支援は、犯罪被害者等が再び平穏な生活を回復するための途切れることのない支援を実現する上で、必要不可欠なものであるが、各団体において実際に支援に携わる者の知識・技能が十分でなければ、犯罪被害者等に対して二次的被害を与えることにもなりかねない。また、全国的に一定水準以上の支援が行われる必要がある。そこで、犯罪被害者等の心身の健康を回復させるための知識・技能を持った人材を育成するため、都道府県公安委員会は、民間犯罪被害者等支援団体に対し、次に掲げる措置を実施することとする。

ア 犯罪被害等の実態に関する情報の提供

各地域における犯罪被害者等のニーズに応じた犯罪被害者等の支援を実施する上で必要となる知識の向上を図るため、犯罪被害相談、捜査等を通じて警察が有する、犯罪被害者等が直面する社会的・経済的困難や、その身体的・精神的負担等の犯罪被害等についての実態に関する情報提供を行うこととする。

イ 犯罪被害者等の支援に役立つ事例等に関する情報の提供

犯罪被害者等の心身の健康を回復させるための技能の向上を図るため、警察において蓄積している犯罪被害者等の支援事例等に関する情報提供を行うこととする。

ウ 犯罪被害者等の支援における二次的被害を防止するための留意事項に関する情報の提供

犯罪被害者等の支援に携わる者の言動により犯罪被害者等が二次的被害を受けることがないよう、犯罪被害者等の支援を実施するに当たって留意すべき事項に関する情報提供を行うこととする。

エ 犯罪被害者等の支援に携わる者の研修カリキュラムに関する助言

民間犯罪被害者等支援団体の組織規模やその活動地域によって提供される支援の内容や質が大きく異なることのないよう、民間犯罪被害者等支援団体における研修の一定程度の均質化を図るため、研修カリキュラムに関し必要な助言を行うこととする。その際、内閣府が全国被害者支援ネットワーク等と協力して作成する研修カリキュラムのモデル案等を参考とすることとする。

オ 犯罪被害者等の支援に携わる者の研修に対する講師の派遣

民間犯罪被害者等支援団体が行う犯罪被害者等の支援に携わる者の研修の講師として、警察において犯罪被害者等の支援に携わる職員を派遣するなどして協力に努めることとする。

(2) 関係機関・団体の連携の充実・強化に係る措置

犯罪被害者等が再び平穏な生活を回復するための途切れることのない支援を実現するためには、関係機関・団体間における連携体制を構築するとともに、適切な連携が図られるよう、実際に犯罪被害者等の支援に携わる者の育成を図ることが必要である。そこで、関係機関・団体の連携の充実・強化が図られるよう、都道府県公安委員会は、民間犯罪被害者等支援団体に対し、次に掲げる措置を実施することとする。

ア 他の行政機関等における支援内容に関する情報の提供

関係機関・団体間における適切な連携を実現し、途切れることのない犯罪被害者等の支援を行うためには、犯罪被害者等の支援に携わる者が、支援に資する様々な制度に関し十分な知識を有することが必要である。民間犯罪被害者等支援団体におけるこのような知識を持った人材の育成に資するため、他の行政機関等における犯罪被害者等の支援内容に関する情報提供を行うこととする。

イ コーディネーターの育成

犯罪被害者等のニーズは多種多様な分野に及んでいるため、必要な支援についての情報提供・相談、適切な機関・団体への橋渡し等、支援全般を統括するコーディネーターの役割が重要である。そこで、民間犯罪被害者等支援団体がコーディネーターの配置に向けた基盤を整備するため、犯罪被害者等の支援に関する高度かつ広範な知識を有し、犯罪被害者等や関係機関・団体との対応に精通するなど、実践に裏打ちされた高い能力を身に付けたコーディネーターの育成を研修等を通じて支援することとする。

ウ 犯罪被害者等早期援助団体等への情報の提供

犯罪被害者等早期援助団体から犯罪被害者等に対する積極的な働き掛けを行うことを可能とするため、当該犯罪被害者等の同意に基づき、犯罪被害の概要及び犯罪被害者等についての情報の提供を行うものとする。また、同様に、犯罪被害者等が民間犯罪被害者等支援団体の援助を求めることができるよう、犯罪被害者等に対し、そのニーズに応じて、民間犯罪被害者等支援団体の行う援助の概要や連絡先等の必要な情報提供を行うこととする。

(3) 人的・物的基盤の充実に係る措置

犯罪被害者等が再び平穏な生活を回復するための途切れることのない支援を実現するためには、民間犯罪被害者等支援団体は必要不可欠な存在であるが、現在、これらの団体のほとんどが、財政面のぜい弱さ、人材確保や人材育成の不十分さ、活動の地域的な格差等の問題を抱えている。そこで、民間犯罪被害者等支援団体の人的・物的基盤の充実を図るため、都道府県公安委員会は、民間犯罪被害者等支援団体に対し、次に掲げる措置を実施することとする。

ア 財政的援助

民間犯罪被害者等支援団体が犯罪被害者等の支援において果たす役割の重要性にかんがみ、民間犯罪被害者等支援団体が犯罪被害者等のニーズに対応するきめ細かな援助を行うための十分な財政的基盤を有していない場合においては、地方公共団体と協同し、適切な財政的援助を可能な限り行うよう努めることとする。

イ 施設及び物品の貸与

民間犯罪被害者等支援団体の活動が充実するためには、活動拠点としての事務所等の提供や支援を実施する際に必要となる物品の貸与が積極的に行われることが必要である。そのため、施設や庁舎の借上げへの協力等が促進されるよう、地方公共団体等に対して働き掛けを行うこととする。

ウ 設立支援

民間犯罪被害者等支援団体の設立状況や犯罪被害者等早期援助団体の指定の状況は、地域ごとに格差がみられることから、都道府県公安委員会は、次に掲げる段階に応じて、それぞれ必要な措置を実施することとする。

(ア) 民間犯罪被害者等支援団体を設立しようとする者に対しては、設立者が満たすべき条件や法人化のための手続等に関する情報提供を行うこととする。

(イ) 設立後間もない民間犯罪被害者等支援団体においては、犯罪被害者等のニーズに応じた適切な支援を実施する上で必要となる人的・物的基盤が脆弱であるおそれがあることから、人材の育成や施設の借上げへの協力が促進されるよう、地方公共団体等に対して働き掛けを行うこととする。

(ウ) 犯罪被害者等早期援助団体の指定を受けることを目指す民間犯罪被害者等支援団体に対しては、指定を受けるための手続・要件を始め、犯罪被害者等に対して適正かつ確実な支援を行うために必要となる支援体制及び情報管理体制、職員に課される守秘義務等についての情報提供及び必要な助言を行っていくこととする。

(4) 民間犯罪被害者等支援団体による広報啓発活動の促進に関する措置

犯罪被害者等が平穏な生活を回復するための途切れることのない支援を実施するためには、関係機関・団体において行われる犯罪被害者等の支援全般の内容について周知を図り、広く犯罪被害者等の支援への理解や協力を求めることが必要である。そこで、民間犯罪被害者等支援団体による広報啓発活動を促進するため、広報啓発を行う様々な機会の提供を行うなどの協力を行うこととする。

1 この告示は、公布の日から施行する。

2 平成14年国家公安委員会告示第5号(警察本部長等による犯罪の被害者等に対する援助の実施に関する指針)は、廃止する。

「犯罪被害者等の支援に関する指針」に基づく被害者支援の推進について(通達)

令和6年12月23日 達(県サ)第585号

(令和6年12月23日施行)

体系情報
警務部
沿革情報
令和6年12月23日 達(県サ)第585号