○降積雪期における防災態勢の強化等について(通達)
令和6年12月23日
達(災対、地企、通指、交規)第584号
[原議保存期間 1年(令和8年3月31日まで)]
[有効期間 令和8年3月31日まで]
みだしのことについて、次のとおり定め、令和6年12月23日から施行することとしたので、災害発生に対する警備の万全を期されたい。
なお、降積雪期における防災態勢の強化等について(令和5年12月12日付け達(災対、地企、総指、交規)第438号)は、廃止する。
記
1 趣旨
今般、中央防災会議会長(内閣総理大臣)から今冬の降積雪期における防災態勢の強化等についての協力要請(別添)がなされ、これを受け警察庁から各都道府県警察に対し、降積雪期における防災態勢の強化等について通達されたところである。
例年、降積雪期においては、全国的に大雪に伴い多数の自動車が立ち往生する事案が発生するとともに、除雪作業中の事故等により多くの人的被害が発生している。
本県においても、昨冬期は落雪に埋もれて死亡する事故や近年では大雪等による多数車両の立ち往生事案が発生するなど、県民の生活に影響を及ぼしたことから、本通達により降積雪期における防災態勢の強化を図るものである。
2 気象情報の入手と的確な情勢判断
気象庁が発表する大雪や暴風雪に関する各種気象情報・警報等に注意を払うとともに、収集した関連情報を多角的に分析し、災害の発生の可能性等について、的確な情勢判断を行うこと。
3 警備態勢の早期確立
災害が発生するおそれのある段階で、自治体に災害対策本部が設置される場合があることも踏まえ、各署においては各種気象情報・警報等に基づき警備本部又は警備対策室(以下「警備本部等」という。)を設置し、事態の変化に応じて体制の見直しを図るなど、適切な指揮体制を確立するとともに、災害対策課は警察災害派遣隊即応部隊が迅速に出動できるよう所要の態勢を構築すること。
4 被害状況の把握及び報告
災害による人的又は物的被害が発生した場合は、情報収集により概要の把握に努め、断片的な情報であっても災害対策課長に報告するとともに、大雪等による通行止め、迂回誘導、信号機滅灯対策等を実施した場合は、併せて交通規制課長に報告すること。
なお、
○ 大雪等による地区や集落等の孤立事案
○ 大雪等による多数車両の立ち往生事案
○ 大雪等による要救助事案及び人的被害(死者・行方不明者)の発生事案(原則、雪下ろし中の転落事案等、軽微なものを除くが、報告を求めることがある。)
○ その他社会的反響が大きいと思料する事案
を認知した際は、災害対策課長に即報すること。
5 映像による情報収集等
航空機運用総合調整システム(FOCS)を活用して関係機関の航空機と連携しつつ、警察用航空機のヘリテレによる上空からの被害情報の収集を行うとともに、交通監視カメラ、高度警察情報通信基盤システム(PⅢ)、無人航空機等の活用により映像を早期に収集し、災害対策課へ送信すること。
なお、映像による情報収集等に当たっては、必要に応じて機動警察通信隊の活動等を担当する情報通信部門と緊密な連携を図ること。
6 災害発生時の配意事項等
(1) 災害発生時における初動態勢の早期確立
県内において大雪、暴風雪(海上を除く)警報が発表された場合は、緊急事態等における福島県警察の初動措置に関する訓令(平成28年県本部訓令第21号)に基づき、県本部及び警報発表地域を管轄する署は、警備本部等を設置し、所要の体制を確立すること。
また、被害の態様、規模、状況等により体制を増強するほか、雪害が発生し、又は発生が予想され、部隊の運用が必要な場合には、迅速に県本部の警備本部等に対して派遣を要請するなど救出救助体制を確立して的確な対応に努めること。
(2) 装備資機材の活用等
現場活動に当たっては、投光器、防寒衣、かんじき、スコップ、ゾンデ棒等の雪害対策用資機材を有効に活用すること。
また、必要に応じて除雪機、除雪車等の資機材を保有する民間企業、道路管理者等の支援を得て、効果的な活動を推進すること。
(3) 車両滞留事案対応時の留意事項
積雪に伴う大規模な車両の立ち往生が発生し、渋滞の解消に長時間を要すると見込まれる場合には、自治体、道路管理者等関係機関と連携し、
○ 滞留している原因、滞留車両の台数、解消の見通しなどの情報収集
○ 車両運転者等に対し、車両排気口付近の積雪に伴う一酸化炭素中毒の危険性に関する適切な注意喚起
○ 車両運転者等に対する除雪の進捗状況に関する情報提供
○ 避難所への一時避難の支援や救助物資の配布
等といった滞留車両の乗員の安全確保等を行うこと。
7 除雪作業中の事故防止対策等
昨冬期における全国の雪による死者の約8割が雪下ろし等の除雪作業中の事故であることや、死者のうち65歳以上の高齢者が約9割を占めることを踏まえ、巡回連絡等の警察活動を通じ、
○ 高齢者世帯等を重点とした除雪事故防止に関する指導連絡
○ 除雪作業現場におけるワンポイント指導
等に努めること。
なお、各種事故防止に関する注意喚起等に当たっては、ミニ広報紙、交番速報、市町村広報紙、回覧板、インターネット(ホームページ、SNS等)、POLICEメールふくしま等の各種媒体を活用するなど地域の実情に応じた方法により効果的に推進すること。
8 雪崩等に対する市町村との協力
雪崩危険箇所等の把握及びその周知は、市町村が主体となって行うこととされていることから、各署においては市町村に対して情報提供等の協力を行うこと。
また、市町村長から避難指示等の発令に関する助言を求められたときは、降雪の状況等を踏まえ、知見の範囲内で助言を行うこと。
9 交通管理対策
(1) 平素の備え
降積雪に起因する立ち往生による大規模な車両滞留事案に備え、平素から道路管理者や隣接県警察との連絡体制を確立しておくとともに、これらの事案が発生した場合の交通規制、情報共有、広報等が迅速になされるよう関係機関・関係部署と調整しておくこと。
(2) 体制の確立
大雪特別警報の発表や大雪に関する緊急発表がなされるなど降積雪により車両の走行が不能又は危険になることが予想される場合は、初動態勢に支障を来すことがないよう、夜間及び閉庁日を含め必要な体制を確立すること。
また、通行止めの実施や交通誘導に必要な人員不足が見込まれる場合は、交通機動隊、機動隊等の積極的な投入を検討し、体制の確保に努めること。
(3) 大規模な車両滞留事案の予防
特に高速道路や主要な国道等において、大規模な立ち往生による車両滞留事案発生のおそれがある場合には、道路管理者に対し、早期に広範囲の計画的・予防的な通行止め及び集中的な除雪作業等を実施するよう要請すること。
また、各種媒体を活用して、冬タイヤやタイヤチェーンの装着、外出自粛等について広報すること。
(4) 交通規制の実施
交通事故や大型車の立ち往生が発生した場合は、発生現場に早期臨場し、当該現場の状況、道路形状及び交通量、周辺道路の交通状況等を把握するとともに、早急に通行止めを実施しなければならない場合は、道路管理者による措置を待つことなく、道路交通法に基づく通行止め等の交通規制を実施すること。
また、高速道路網が及んでいる隣接県警察及び道路管理者との間で通行止めの措置等に関する情報を共有し、広域に及ぶ迂回路の設定や広報がなされるよう調整すること。
なお、道路法に基づく道路管理者の交通規制が実施される場合も、国道等における通行止め開始地点など、交通の混乱が予想される箇所については、信号機の運用変更や警察官による交通誘導などの支援を積極的に行うこと。
10 現場活動時の受傷事故防止
雪害現場では、視界不良や路面凍結等による受傷事故の危険性が高まることから、安全が最優先という意識付けを図り、昼夜間を問わずヘルメット、夜光チョッキ等の受傷事故防止用装備資機材を着装し、二次災害防止を徹底すること。
また、道路状況等に応じて車両を盾に規制線を設定するとともに、停止合図灯、セーフティーコーン等を効果的に活用するほか、警杖等により積雪や冠水で隠れた用水路の位置を確認するなど、活動場所の安全を確保した上で活動時の受傷事故防止を徹底すること。
令和6年12月6日
警察庁甲備収第192号
令和6年11月29日
中防災第32号
各指定行政機関の長 殿
中央防災会議会長
(内閣総理大臣)
石破茂
降積雪期における防災態勢の強化等について
貴殿におかれては、日頃から各般の施策を通じて災害対策の推進に御尽力をいただいているところであるが、例年、降積雪期においては、依然として災害による犠牲者が発生している状況にある。
昨冬期も、除雪作業中の事故等により、死者22名、重傷者107名等、多くの人的被害が発生した。
また、豪雪地帯では、高齢化及び過疎化の進展、除雪の担い手となる建設業者等の減少が課題となっていることに注意が必要である。加えて、特に普段、雪害が少ない地域においては、平成26年2月の大雪で教訓となった初動体制や除雪体制の整備、住民、ドライバー等への的確な情報提供、要配慮者への対応、孤立のおそれがある地域に対する対策等に十分留意する必要がある。なお、令和6年能登半島地震により揺れが強かった地域では、損傷している建物の倒壊等が積雪により発生する可能性もあるため、その点御留意いただきたい。
ついては、これらを踏まえ、これから本格的な降積雪期を迎えるに当たり、人命の保護を第一とした防災態勢の一層の強化を図るべく、下記の点に留意した取組を行うようお願いする。
また、以上について、「市町村のための降雪対応の手引き」(内閣府、令和6年11月改訂)の内容を含め、貴管下関係機関へ周知徹底をお願いする。
記
1.大雪、暴風雪等の発生に備えた災害初動体制の確立等
(1) 総合的な防災体制の確立
国、都道府県、市町村、関係団体及び住民が一体となった総合的な防災体制の確立を図ること。具体的には、大雪、暴風雪等により、大きな被害が予測される場合においては、指定行政機関、指定地方行政機関及び指定公共機関は、地方公共団体に事前に情報連絡要員を派遣するなど連携を強化すること。また、救援及び要救助者の位置情報提供等の要請があった場合には、迅速かつ的確に対応できるようあらかじめ体制を整備すること。
大雪、暴風雪等が予想される場合には、気象情報(早期注意情報(警報級の可能性)や、現象の経過、予想、防災上の留意点の解説等)、注意報及び警報(平成29年度から警報級の時間帯等を色分けした時系列で表示)を活用して、夜間休日も含めた宿日直体制や職員の参集、災害対策本部の適切な設置等による災害即応体制を確保した上、特別警報の発表を待つことなく早めの対応をとること。
また、積雪による停電等、庁舎が被災した状況にあっても災害対策機能が維持されるよう、非常用発電機の設置及び燃料の備蓄による電源の確保を行うとともに、庁内の設備等について定期的な保守・点検等の実施や停電時に確実に作動するよう確認、訓練等の対策を講じること。
(2) 気象等に関する情報の収集・伝達の徹底
気象庁が発表する大雪や暴風雪に関する気象情報、特別警報、警報、注意報、なだれ注意報、降雪短時間予報、大雪に関する早期天候情報、1か月予報等による長期的な降雪量予報等(以下「防災気象情報等」という。)やアメダス等の観測値、降積雪の分布を示した解析積雪深、解析降雪量等に注意を払うとともに、必要な場合には、これらの情報を住民その他必要な連絡先に伝達し、大雪、暴風雪等が予想される場合等に外出を避けること等について注意喚起すること。
また、情報の伝達に当たっては、地域の実情に応じ、防災行政無線、緊急速報メールを始め、マスメディアとの連携や広報車、ホームページ、SNS、コミュニティFM、Lアラート(災害情報共有システム)等の多様な情報伝達手段の活用を促進するとともに、情報が伝わりにくい要配慮者に対しても字幕・解説・手話放送、多言語(やさしい日本語を含む。)での情報発信等により避難指示等の情報が確実に伝達されるような措置を促すなど適切な取組を推進すること。
(3) 適切な道路管理及び交通対策
ア 集中的な降雪、暴風雪等により走行不能となる車両が発生した又は発生するおそれがある場合等においては、人命を最優先に幹線道路上における大規模な車両滞留を徹底的に回避することを基本的な考え方として、車両の滞留が発生する前に関係機関と調整の上、高速道路と並行する国道等の同時通行止めも含め、計画的・予防的な通行規制を行い、集中的な除雪作業に努めること。
イ あわせて、道路管理者及び関係機関は、通行止め予測等の情報提供や、広域迂回及び需要抑制の呼び掛けを、内容を具体化して繰り返し実施すること。
ウ 雪崩防止施設等の巡視・点検の徹底により、道路交通の安全確保を図ること。
エ 降積雪によって立ち往生車両や放置車両が発生した場合の対応については、道路管理者、港湾管理者及び漁港管理者が、その管理する道路において、緊急通行車両の通行を確保する緊急の必要性がある場合には、必要に応じて災害対策基本法第76条の6の規定等を活用して、迅速に立ち往生車両の移動等の措置を講じること。
オ 車両の滞留状況や開放の見通し等に関する道路管理者が有する情報等から、積雪に伴う大規模な立ち往生が発生し、滞留車両の開放に長時間を要すると見込まれる場合には、道路管理者と地方整備局や地方運輸局等を中心とする関係機関が連携の上、支援体制を構築し、滞留車両への救援物資の提供や必要に応じた避難所への一時避難の支援等、滞留車両の乗員の安全確保に努めること。
(4) 関係業界から除排雪に係る協力を確保する取組の推進
大雪に対する除排雪の担い手確保のため、所管省庁は、発注工事等の一時的な中断等関係事業者が除排雪作業を迅速に行えるよう、地方支分部局に関係事務の弾力的な運用を促すなどの取組を推進すること。また、関係業界と連携し、広域的な除排雪の体制の整備を推進すること。
(5) ライフライン事業者及び鉄道事業者等の警戒体制の強化
ライフライン事業者及び鉄道事業者等は、大雪、暴風雪等による障害発生の未然防止に努めるとともに、大雪、暴風雪等による障害が発生した際に迅速な対応ができるよう警戒体制を構築すること。
ライフライン事業者等の所管省庁は、ライフライン事業者等に警戒体制の強化を促すこと。
(6) 災害救助法の適用
平年に比して積雪量が多く、又は短期間の集中的降雪があった場合において、住家の倒壊等により、多数の者の生命又は身体に危害が及ぶおそれがあるときは、災害救助法の適用が可能であることを踏まえて対応を図ること。
例えば、避難所の設置、炊き出しその他による食品の給与、障害物の除去(屋根雪の除雪)等が実施可能であるが、各地域の積雪の状況や立地条件等に応じ、柔軟に救助を行うこと。
2.大雪、暴風雪等における住民等に対する普及啓発・注意喚起等
(1) 在宅時の安全な過ごし方等について
大雪、暴風雪等が予想される場合に不要不急の外出を避けること、懐中電灯、携帯ラジオ、食料、飲料水等を準備すること、FF式暖房機の給排気口付近の除雪状況を確認すること等について普及啓発を促進すること。
また、要配慮者の安全確保について、特に配慮すること。
(2) 車両の運転等について
大雪、暴風雪等が予想される場合には、できる限り車両の運転は避けること、やむを得ず車両を運転する場合は、以下の点に注意することについて、車両運転者、関係団体等への普及啓発活動を実施すること。
ア 事前の気象情報、道路情報等を確認すること。
イ 車両の点検整備を確実に行い、スタッドレスタイヤを装着すること。大雪時には、スタッドレスタイヤを装着してもなお、立ち往生するおそれがあるので、チェーンを装着又は携帯すること。
ウ 防寒着、長靴、手袋、カイロ、スコップ、けん引ロープ、飲料水、非常食等を準備し、道路状況に応じた無理のない運転に努めること。
エ 暴風雪の際の早期避難、車両の走行不能時の早期の救助依頼、車両内で待機時のマフラーの定期的除雪及び適切な換気による一酸化炭素中毒の防止、立ち往生してやむを得ず車を離れる場合にはドアをロックせず、キーを車内の目立つ場所に残すこと等が重要であること。
なお、本格的な降積雪期を迎えるに当たって広く周知するのみならず、大雪が予想される場合にも改めて周知すること。
(3) 防災気象情報等の活用について
大雪、暴風雪等が予想される場合には、住民一人ひとりが的確に安全確保の行動をとられるよう、気象情報、注意報、警報(平成29年度から警報級の時間帯等を色分けした時系列で表示)及び降雪短時間予報を活用して、特別警報の発表を待つことなく早めの行動をとることの重要性について普及啓発活動を促進すること。
(4) 孤立のおそれがある地域における対策について
地方公共団体において、豪雪により孤立のおそれがある地域をあらかじめ把握し、当該地域の住民に対して、食料、水、燃料等の十分な備蓄を図るよう普及啓発を促進すること。
特に、別荘地等の住民登録をしていない者が多い地域については、地方公共団体において、日頃から、当該地域が孤立のおそれがあることと併せて、孤立した場合の対応や市町村の連絡窓口の周知を図るなどの対応が行われるよう普及啓発を促進すること。
3.除雪作業中の事故防止に向けた住民に対する普及啓発・注意喚起
(1) 雪下ろし等除雪作業中の事故防止
昨冬期の雪による犠牲者の約8割が、雪下ろし等の除雪作業に従事している間に亡くなったことを踏まえ、作業時の家族・近所への声かけ、複数人での作業の実施、携帯電話の携行、命綱・ヘルメットの正しい着用、はしごの固定、除雪道具の点検・手入れ、ガス設備の損傷事故の防止等の実践的な留意点について普及啓発・注意喚起を行うことにより、除雪作業中の安全対策の徹底を図ること。
(2) 歩行型ロータリ除雪機による事故防止
昨冬期、歩行型ロータリ除雪機により、被害者が重傷を負った事故が、少なくとも1件発生していることを踏まえ、歩行型ロータリ除雪機にひかれる、除雪機と壁等に挟まれる、オーガ(雪をかき崩し、収集するための装置)等に巻き込まれる、投雪口に手を突っ込み負傷する、閉め切った屋内でエンジンを稼働させることで一酸化炭素中毒になるなどの事故の防止等の留意点について注意喚起を行うことにより、安全対策の徹底を図ること。
(3) 高齢者の事故防止
昨冬期の雪による犠牲者の約9割が、65歳以上の高齢者であったことを踏まえ、支援の必要な高齢者宅の状況を市町村、消防機関、福祉関係機関等との連携による巡回等により把握し、必要に応じ消防機関、自主防災組織、近隣居住者等との連携協力の下、高齢者による除雪作業時の事故の防止を促進すること。
4.除雪体制等の整備
(1) 地域コミュニティの共助による雪処理活動(地域一斉雪下ろし等の推進)
自治会等が中心となり、地域住民等が日時を決めて一斉に生活道路や公共施設の除排雪を実施すること、雪下ろしの困難な高齢者、障害者世帯等の雪下ろしや敷地内の排雪を組織的に行うこと等が安全で円滑な雪処理を図る上で有効と考えられることから、地域の実情に応じて、こうした地域コミュニティの共助による取組の普及啓発を促進するとともに、近隣同士の除雪作業時の見守りや声かけを行うことを奨励すること。
(2) 除雪ボランティアの受入れと安全確保対策
雪下ろし作業の困難な高齢者、障害者等を支援し、除雪作業に必要な人材を確保するため、地方公共団体、社会福祉協議会、ボランティア団体等との連携を促進し、受援体制の整備に努めること。
また、除雪ボランティアの受入れの際には、安全な除雪作業に関する事前学習、ボランティア保険への加入奨励、危険作業の回避、ヘルメット等の装備の徹底、ガス設備の損傷事故防止への注意徹底を図る等、安全確保対策を十分に講じるよう普及啓発を促進すること。
(3) 広域連携による担い手確保及び情報交換等
雪処理の担い手が不足している地域や普段雪害が少ない地域において、当該地域の除雪機材、人員のみでは対応が困難な場合に備え、当該地域外の除雪機材、人員を有する地方公共団体等と災害時に相互協力をするための協定を締結・活用するなど、地域の実情に応じて、広域連携による雪処理等の取組及び情報交換を促進し、降雪量に応じた速やかな応援・受援が行われるよう、体制の整備を促すこと。
(4) 道路の除雪体制の整備
道路管理者は、大雪に備え、他の道路管理者等と連携してタイムラインを策定するとともに、管理する道路について、大雪時に予防的な通行止めを実施する区間をあらかじめ設定し、除雪機械の配備を行うなど、除雪の初動体制について十分な対策を講じること。
地方公共団体が管理する道路においても同様の検討が行われるよう普及啓発を促進すること。
(5) 資機材等の確保支援
異常な降雪等、地域の除排雪能力を超過するような大雪が発生した場合、当該地域外からの資機材や除雪機械等の派遣による支援等により、除雪を行うために必要となる人員及び機材を継続的に維持することができるよう配慮し、建設機械等の除雪への活用を迅速に行える体制を整えること。
(6) 空家等の対策
ア 空家等については、平常時より所有者を特定し、当該所有者の責任において除雪を実施させる取組を促進すること。また、空家等に係る除排雪に関する先進的な取組の普及を図ること。
イ 所有者が不明である等の理由で空家等の除雪を行う必要がある場合には、以下の対応が可能であることを地方公共団体に対し周知すること。
(ア) 災害対策基本法による対応
災害が発生し、又はまさに発生しようとしている場合には、災害対策基本法第62条第1項に基づく災害の発生を防御し、又は災害の拡大を防止するために必要な応急措置として、空家等に係る雪害対策を行うことができること。
この際、応急措置を実施するため必要であると認めるときであって、危険を防ぐための緊急避難措置として必要な場合に限り、同法第64条第1項に基づき、市町村長の判断で除雪のために当該空家等に立ち入ることができること。
(イ) 災害救助法による対応
災害救助法が適用されている場合で、当該空家等の倒壊等により隣接する住家に被害が発生し、住民の生命又は身体に危害が生じるおそれがある場合には、同法第4条第1項第10号に基づく障害物の除去(屋根雪の除雪)を行うことができること。
(ウ) 空家等対策の推進に関する特別措置法による対応
空家等対策の推進に関する特別措置法第22条第10項に基づき、大雪により特定空家等の倒壊のおそれがある場合等であって、所有者等が確知できないときは、市町村長が代執行を行うことができること。
また、同条第11項の規定に基づき、一定の場合に緊急代執行を行うことができること。
(7) 雪捨場の確保
事前に雪捨場の確保と整備を図り、周知するとともに、大雪に備え、雪捨場面積の拡大等柔軟かつ迅速に対応できる体制をあらかじめ整えておくこと。
5.雪崩等に対する警戒避難体制の確立
(1) 雪崩危険箇所等の把握及び周知の促進
市町村が、あらかじめ、関係機関と協議し、地形の特性、降積雪の状況、雪質の変化、過去の雪害事例等を勘案して、雪崩危険箇所等の把握に努め、関係機関を始め周辺住民、観光施設(例えばスキー場)等の利用者等(以下「周辺住民等」という。)に対して、要配慮者等への配慮に留意しつつ、周知するよう促すこと。
また、防災気象情報等に留意するとともに、降積雪の状況等を的確に把握し、状況に応じて、雪崩危険箇所等を中心に警戒巡視を行うよう促すこと。
(2) 雪崩に関する普及啓発の促進
市町村が、表層雪崩は厳冬期に、全層雪崩は春先に発生しやすいこと、雪崩は滑落速度が速く、発生に気付いてから逃げることが難しいこと等の雪崩の特徴等について、周辺住民等に対して、広く普及啓発活動を行うよう促すこと。
(3) 遅滞のない避難指示等の発令への助言等
ア 災害対策基本法第61条の2に基づき、市町村長は、必要であると認めるときは、指定行政機関の長若しくは指定地方行政機関の長又は都道府県知事に対して、避難指示等について助言を求めることができること及び助言を求められた都道府県知事は、その所掌事務に関し、必要な助言をすることを、地方公共団体に対し周知すること。また、助言を求められた指定行政機関の長又は指定地方行政機関の長は、その所掌事務に関し、必要な助言をすること。さらに、市町村が、避難指示等の発令に当たり、必要に応じて気象防災アドバイザー等の専門家の技術的な助言等を活用できることを周知すること。
イ 市町村が、降積雪の状況、防災気象情報等の発表等の情報、過去の雪害事例等を勘案し、雪崩、家屋の倒壊等により、周辺住民等の生命、身体に被害が及ぶおそれがあると判断したときは、関係機関と連携して情報収集し、遅滞なく避難指示等を発令し、避難行動を促すことができるよう協力すること。また、市町村が避難指示等発令の判断に活用できるよう情報提供に努めること。
(4) 効果的かつ確実な情報伝達の促進
避難指示等の伝達について、市町村が、地域の実情に応じ、防災行政無線、緊急速報メール、マスメディアとの連携や広報車、ホームページ、SNS、コミュニティFM、Lアラート(災害情報共有システム)等の多様な情報伝達手段を活用するとともに、情報が伝わりにくい要配慮者に対しても字幕・解説・手話放送、多言語(やさしい日本語を含む。)での情報発信等により避難指示等の情報が確実に伝達されるような措置を促すなど適切な取組を行うよう促すこと。
(5) 避難所の開設・運営に当たっての留意点
避難所の開設・運営に当たっては、感染症対策のほか、「避難所運営ガイドライン」(内閣府、令和4年4月改定)等を踏まえた対応を促すこと。
また、「災害対応力を強化する女性の視点~男女共同参画の視点からの防災・復興ガイドライン~」(内閣府男女共同参画局、令和2年5月)の内容を踏まえ、女性と男性のニーズの違いを十分に配慮した避難所の環境整備を促すこと。
6.要配慮者及びその関連施設に対する平常時及び緊急時の適切な情報収集・警戒避難体制の整備
ア 平常時より、高齢者等の要配慮者宅やその関連施設の状況を把握するため、市町村、消防機関、福祉関係機関等が連携して行う巡回等の取組を支援すること。
イ 難病患者、透析患者等の医療的ケアを必要とする者等については、平時から把握し、豪雪により孤立した場合の対応を検討しておくこと。
ウ 特に大雪、暴風雪等に備え、適切に情報の収集や提供を行い、除雪が困難又は危険な場合においては、必要に応じ消防機関、自主防災組織、近隣居住者等との連携協力により、除雪支援や避難誘導を行う体制の整備・再点検及び避難の際の輸送手段等の確保を促すなど、警戒避難体制等の防災体制の整備を促進すること。
エ 避難行動要支援者に対して、市町村が作成する避難行動要支援者名簿及び個別避難計画に基づき避難支援等を実施することとされており、大雪、暴風雪等により停電が発生した場合に、電源を必要とする医療機器(人工呼吸器等)を使用する避難行動要支援者の電源確保等について、市町村の求めがあったときは、必要な協力をすること。
また、避難支援等関係者が避難支援等を実施できない場合において、避難支援等関係者その他の者が、市町村が行う名簿情報や個別避難計画情報の提供を受けたときは、所要の調整を行った上で、必要な対応に努めること。
これらの場合、積雪や凍結等による積雪寒冷地特有の課題に留意すること。