○認知症に係る行方不明者発見活動について(依命通達)
令和7年3月18日
達(少対)第132号
[原議保存期間 5年(令和12年3月31日まで)]
[有効期間 令和12年3月31日まで]
認知症に係る行方不明者は、自力での帰宅が困難であるなど、その生命・身体に危険が生じるおそれがあることから、下記事項に留意の上、早期発見・保護に万全を期されたい。
なお、認知症に係る行方不明者発見活動の推進について(令和6年12月2日付け達(少対)第528号)は、廃止する。
記
1 行方不明者発見活動上の留意事項
(1) 特異行方不明者の判定
ア 行方不明者届の受理時に届出人から必要な事項を聴取する際に(行方不明者発見活動に関する規則(平成21年国家公安委員会規則第13号。以下「規則」という。)第7条第1項)、届出人から、認知症又は認知症の疑いにより行方不明になった旨の申し出があった場合は、自救能力がない者(規則第2条第2項第6号)として特異行方不明者の判定(規則第11条第1項)を行い、行方不明者の生命・身体に危険が生じるおそれがあることを踏まえ、規則等に基づく行方不明者発見活動を迅速に実施すること。
イ 特異行方不明者の判定に係る報告(規則第11条第2項)を受けた県本部少年女性安全対策課においては、署における事案の処理方針を確認して積極的な指導・助言、支援を行うこと。
(2) 認知症の特性等を踏まえた措置
ア 届出人からの聴取(規則第7条第1項)においては、行方不明者が過去に立ち回った地域や一人歩きした場所があるか、自ら名乗ることができるか、通称名等である自称名はないかなど、行方不明者発見活動に必要な事項(同項第6号)を聴取すること。
イ 行方不明となった時期や気象状況等を考慮した上で、初期段階から最大限の捜索態勢を確立し、迅速な発見・保護活動を展開すること。
ウ 一人歩きする場所が遠方にも及び得るなど認知症の特性を踏まえて、関係警察に対して保護等の取扱いを個別に照会するとともに、関係行政機関等への協力を求め(規則第20条第2項)、関係行政機関等との間で構築している発見・保護のためのネットワークを効果的に活用し、その早期発見に努めること。
また、立ち回り見込先等が判明した場合は、確実に特異行方不明者手配(規則第21条)を行い、警察の組織的機能を十分に発揮すること。
エ 行方不明者が氏名等を名乗ることができず、又は遠方への一人歩きが想定される場合には、届出人の意思に基づき、インターネットの利用等による資料の公表を行うこと(規則第14条第1項)を検討すること。
(3) 迷い人照会を受けた場合の措置
2(1)イの迷い人照会を受けた場合は、行方不明者届に係る日時と迷い人照会に係る日時とが相前後し得ることに配意し、事後の行方不明者届とも点検、確認すること。
また、他の都道府県警察からの照会については、県本部少年女性安全対策課が関与して確実な点検、確認に努めること。
(4) 届出人の心情に配意した適切な対応
行方不明者の発見活動を行うに当たっては、届出人である行方不明者の家族等の心情に配意し、その要望に応じた適切な対応を図ること。
2 迷い人として保護時の留意事項
(1) 行方不明者届の有無の確認
認知症又は認知症の疑いのある迷い人(以下「迷い人」という。)を発見・保護した場合は、行方不明者届の有無を確認するよう努めるものとされていること(規則第19条第2項)から、以下に留意すること。
ア 認知症の特性を踏まえ、名乗ることができない場合や自称名が通称名である場合等に配意して、行方不明者照会(規則第13条第1項)をより広範囲に実施するなど、その身元の確認に努めること。
また、県本部少年女性安全対策課においても、署の対応を確認し、積極的な指導、支援を行うこと。
なお、状況に応じ、身元確認照会も活用すること。
イ 発見・保護した署において、迷い人の取扱いを記録化するとともに、他の警察署又は都道府県警察に対する照会(以下「迷い人照会」という。)を行い、早期に身元が判明するよう努めること。
ウ 迷い人の身元が判明せず、保護実施機関である市町村等に引き継いだ場合であっても、行方不明者届と迷い人照会に係る日時が相前後し得ることに留意し、事後においても適宜、行方不明者照会を実施すること。
(2) 引継ぎ先との連携
行方不明者発見活動を推進する観点により、市町村等による身元確認のための調査等に加え、警察としても市町村等に協力して身元の確認に努める必要があることから、以下に留意すること。
ア 迷い人を市町村等に引き継ぐ際、市町村等による調査等によって、氏名等身元の判明につながる情報が得られ、又は身元が確認された場合には、署へ連絡を行うよう依頼すること。
イ 一定期間を経ても迷い人の身元が判明しない場合は、市町村等の要請に基づき、写真を付した資料を署又は県本部に備え付けるとともに他の都道府県警察に提供して行方不明者届の届出人による閲覧に供するなど、市町村等による調査等と連携して、身元の確認に努めること。
3 関係行政機関等との連携に際しての留意事項
(1) 発見・保護のためのネットワークの活用
関係行政機関等との間で認知症に係る行方不明者を発見・保護するためのネットワークが構築されている地域はもとより、同ネットワークがない地域においても、市町村等にその構築を働き掛けつつ、管内の関係行政機関等と役割分担の上、相互に連携して早期発見・保護に努めること。
また、若年性認知症の人は、外見から認知症の行方不明者と認識されにくい場合があることに鑑み、関係行政機関等と連携して適切に対応すること。
(2) 身元確認のための取組
認知症に係る行方不明事案においては、氏名等が明らかとならないと身元の確認が困難となることから、市町村等に対しては、着衣・靴への記名、名札等の装着、QRコードが掲載されたシール等の活用の重要性や、地域住民への周知について働き掛けること。
(3) GPS等の位置情報を取得等する機器の周知
認知症に係る行方不明者の生命・身体の保護を最優先とし、早期に発見・保護に資する手段の一つとして、GPS等の位置情報を取得又は記録する機器(以下「GPS等機器」という。」)の活用が考えられることから、市町村等と連携し、認知症の人やその家族等に周知すること。
なお、「共生社会の実現を推進するための認知症基本法(令和5年法律第65号)」において、認知症の人の意思決定の支援と権利利益の保護が基本的施策に掲げられていることを踏まえ、認知症サポーター養成講座を通じるなどして、認知症の人の意思決定の支援に関する理解を深め、認知症の人の意向に反してGPS等機器を装用させることがないよう配慮すること。