○大学生ボランティアと連携した少年警察活動の推進について(依命通達)
令和7年3月12日
達(少対)第108号
[原議保存期間 3年(令和10年3月31日まで)]
[有効期間 令和10年3月31日まで]
みだしのことについては、次のとおりであるので、適切に推進されたい。
なお、大学生ボランティアと連携した少年警察活動における留意事項について(令和4年5月30日付け達(少対)第294号)は廃止する。
記
1 趣旨
少年非行情勢等については、少年人口が減少傾向を維持する中、令和6年中の県内における刑法犯少年の検挙人員が、前年と比べ約1.8倍に増加し、また、全国的にSNS上の犯罪実行者募集情報に応募した少年による組織的ななりすまし詐欺や強盗等への加担が大きな社会問題になるなど、懸念するべき兆候がみられるほか、少年の大麻事犯の検挙人員や、SNSに起因して性犯罪等の被害に遭う児童数が依然として高水準で推移するなど、引き続き憂慮すべき状況にある。
このような情勢の中、少年警察活動を今後も継続的かつ効果的に推進するためには、引き続き、少年と年齢が近く、少年の心情や行動を理解できる大学生ボランティアの協力を得て取組を進めることが有効であることから、下記事項を踏まえ大学生ボランティアと連携した少年警察活動を推進するものである。
2 大学生ボランティアの効果的活動の推進
(1) 大学生ボランティアの特性を生かした活躍の場の提供
大学生ボランティアと連携した取組を行うに当たっては、警察との適切な役割分担の下、個人の能力、得意分野等を十分に考慮の上、当該大学生ボランティアに最も適した活躍の場を提供するように努めること。
特に昨今、少年が、SNS等の利用を通じて、その発達途上の心理的脆弱性を巧みに利用され、犯罪実行者募集情報に応募してしまい犯罪に加担させられてしまうケースや性犯罪等の被害に遭うケースがみられるところ、スマートフォンやインターネットの利用に造詣が深く、少年が好んで使用しているアプリケーションや隠語等、インターネット利用環境のトレンドを把握している大学生ボランティアに対しては、次の活動に協力を求めるよう配意すること。
ア 少年をアルバイト感覚で犯罪に加担させないための広報啓発の強化について(令和5年5月18日付け達(少対、生企)第226号)等に基づき、非行防止教室やSNS等を通じ、少年を犯罪に加担させないための少年等の心に響く効果的な広報啓発を実施する活動
イ SNSに起因する子供の性被害等防止のための注意喚起・警告活動の推進について(令和4年12月28日付け達(少対)第580号)に基づき、SNS上における児童の性被害等につながるおそれのある不適切な書き込みをサイバーパトロール等により発見し、警察へ通報する活動
(2) 効果的な活動を行うための支援の充実
大学生ボランティアとして効果的な活動を行うために必要な知識・技能の習得を図るため、活動開始時はもとより定期的に、少年非行情勢や少年の特性等を踏まえた活動要領等についての研修を実施するよう努めること。また、大学生ボランティアの活動に関する悩みや不安の把握に努め、必要な助言等を行い、憂慮なく活動できるよう配意すること。
(3) ボランティア活動に対する活動意欲の向上等に向けた取組
大学生ボランティアの活動の継続及び活性化のためには、大学生ボランティアの活動意欲の向上と地域住民等の理解が不可欠であるところ、以下の諸点に留意すること。
ア 積極的な賞揚措置
活動に対する表彰は、活動意欲の向上につながることから、活動に関する功労の継続的な把握に努めるとともに、功労を認めた場合は、時期を逸することなく積極的な賞揚措置を検討すること。
イ ボランティア活動の積極的な広報の実施
大学生ボランティアの活動については、自治体等と連携した広報媒体の活用や、報道機関への情報提供等、活動の周知を図る効果的な広報に努めること。
なお、活動の周知に当たっては、一般的な活動紹介だけではなく、ボランティア活動の成果を盛り込むなど、大学生ボランティアの活動意欲の向上と地域住民等の大学生ボランティアへの理解の促進につながるよう配意すること。
ウ 大学生ボランティアの主体的な活動を喚起する工夫
ボランティア活動は、少年の非行防止・健全育成に資するのみならず、活動を通じ、対象少年や地域社会・住民と触れ合うことで、大学生ボランティア自身の視野の拡大・成長へとつながるものである。大学生ボランティアが活動を通じて自身の成長を実感することは、大学生ボランティアの活動意欲の向上に直結することから、各種活動の企画・立案に当たっては、大学生ボランティアから積極的に意見を聴取するなど、大学生ボランティアの主体性な活動を喚起する工夫に努めること。
3 大学生ボランティアの裾野拡大のための募集活動の推進
(1) 各種行事の活用や大学教職員等の協力を得た募集活動の実施
大学等(短期大学を含む。以下同じ。)の理解と協力を得て、入学時に行われるオリエンテーションやサークルへの勧誘等の機会を活用して新入学生に対する大学生ボランティアの募集活動を実施し、大学生ボランティアの獲得に努めること。
また、新入学生以外の大学生に対しても、学園祭や警察職員の採用説明会等、多くの大学生が集まる機会を捉えて年間を通じた募集活動に努めること。
この他、少年警察活動を効率的に推進する上で必要な心理、福祉、教育、情報システム等を専攻する大学生ボランティアを獲得するためには、大学生を指導する大学教職員等の協力を得ることが有効であることから、少年警察活動に理解のある大学教職員等の協力を得るよう努めること。
これら大学生ボランティアの募集活動の実施に当たっては、ボランティア活動の魅力の発信等を通じて、対象者に訴求するような内容となるよう配意すること。
(2) 大学生ボランティアによる募集活動の実施
大学生ボランティアの募集を行う上では、現に活動する大学生ボランティアが友人等に活動内容ややりがい等を直接伝えてボランティア活動への参加を働き掛けることも効果的であることから、大学生ボランティアに対し、募集活動への協力依頼に努めること。
(3) 大学等に対するボランティア活動への理解等の促進
大学等に対し、大学生ボランティアの活動内容や社会的な意義等を説明し、活動に対する理解を得るとともに、大学等がボランティア活動を評価の対象としたり、大学生に対しボランティア活動への参加を推奨したりするよう働き掛けに努めること。
4 留意事項
(1) 大学生ボランティアの確実な委嘱等の実施
大学生ボランティアとして協力を求めるに当たっては、大学生ボランティアとしての意識付けと継続的な活動参加を図るため、確実な委嘱等に努めること。
(2) 活動を終了する大学生ボランティアに対する協力依頼等
卒業等により大学生ボランティアとしての活動を終了する者に対しては、感謝状を授与するなどして謝意を示すとともに、少年の非行防止・健全育成に引き続き協力が得られるよう依頼すること。
(3) 秘密の保持と個人情報の取扱い
研修等を実施する際は、大学生ボランティアが活動中に知り得た秘密を漏らすことのないよう教養を徹底すること。
なお、社会奉仕体験活動等を協働して実施するに当たっては、少年及び保護者に係る個人情報について、保護者の同意を得てから大学生ボランティアに伝えること。ただし、個人情報が特定少年(少年警察活動規則(平成14年国家公安委員会規則第20号)第2条第2号に規定する特定少年をいう。)に係るものの場合は、本人の同意を得てから伝えるものとする。また、伝える情報も活動に必要な範囲にとどめるなど、その取扱いには慎重を期すこと。
(4) 継続補導等に協力を求める場合の措置
継続補導及び被害少年に対する継続的支援については、個々の少年の特性に応じた方法により継続的に行うことが必要な活動であり、少年の特性についての深い知識と少年の取扱いについての技術を必要とする活動であることから、これらの活動に協力を依頼する際は、当該大学生ボランティアの性別、能力等を考慮の上、慎重に人選を行うとともに、その活動についても社会奉仕体験活動等補助的な活動に限定し、警察との連携による適切な役割分担の下に行うこと。