○盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律の一部施行等に係る趣旨、要点及び運用上の留意事項について(通達)

令和7年8月28日

達(生企、捜三、組対、外事)第390号

[原議保存期間 10年(令和18年3月31日まで)]

[有効期間 令和18年3月31日まで]

盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(令和7年法律第75号。以下「法」という。)は令和7年6月20日に公布されたところ(別添1参照)、法の規定のうち、犯行用具規制及び盗難防止情報の周知等に関する規定については、盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律の一部の施行期日を定める政令(令和7年政令第300号)により本年9月1日から施行されることとなった。また、同じく盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律第二条第五号に規定する指定金属切断工具を定める政令(令和7年政令第301号。以下「令」という。)(別添2参照)についても、本年9月1日から施行される。

法及び令のうち、今回施行される規定の趣旨、要点及び運用上の留意事項は、下記のとおりであるので、その適切な運用を図られたい。

なお、法の規定のうち、特定金属くず買受業に係る措置については、法の公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとされている。

第1 総論(法第1条及び第2条第1号~第4号関係)

1 法の趣旨及び目的

法は、太陽光発電施設からの金属ケーブル窃盗をはじめとする金属盗が増加しており、国民経済に大きな影響が及んでいること等を踏まえ、特定金属製物品の窃取の防止に資することを目的に制定されたものである。

具体的には、特定金属くず買受業を営む者に係る措置を講ずることにより、窃盗犯による盗品の換金(盗難特定金属製物品の処分)を困難にさせ、また、指定金属切断工具の隠匿携帯を禁止することにより、特定金属製物品が窃取される前の先制的な対処を可能とし、さらに、盗難防止情報の周知により、事業者による効果的な防犯対策を促進させることで、特定金属製物品の窃取を防止することとしている。

2 定義(指定金属切断工具を除く。)

(1) 特定金属製物品とは

法においてその窃取の防止に資することを目的とする金属製物品である。

ア 特定金属

法の規制対象を限定する趣旨から、被害実態等を踏まえ、金属の中でも特に金属盗対策が必要なものを特定金属として規定しているものである。

なお、法第2条第1項で「銅その他・・・政令で定める金属」としているとおり、被害実態の多い銅については法に明記するとともに、その時々の犯罪情勢に応じて法の対象となる金属を追加できるよう、銅以外の金属については政令において定めることとしている。他方、現下の犯罪情勢等を鑑みるに、銅以外の金属を政令で特定金属として追加で定める必要性までは認められず定めていないことから、現時点で特定金属に該当する金属は銅のみとなる。

イ 銅

金属ケーブルをはじめ銅を使用して製造された物品の盗難が多発しているところ、そのような物品は窃取が比較的容易な屋外に置かれていることが多く、また、金属くず買受業者等において容易に換金することができる状況にある。さらに、銅は、他の金属に比べて価値が高く、需要の高い状況が中長期的に続くことも見込まれ、買受けに際して特に盗品が流入しやすいといえることから、法において特定金属として銅を定めている。

なお、銅から成る合金については、下記(2)オを参照のこと。

ウ 犯罪の状況、当該金属の経済的価値その他の事情に鑑み、当該金属を使用して製造された物品の窃取を防止する必要性が高い金属

「犯罪の状況、当該金属の経済的価値その他の事情」とは、特定金属を定めるに当たって判断するための基準である。

具体的には、

○ 当該金属を使用して製造された物品に係る窃盗の認知件数及び被害額

○ 当該金属の取引価格の状況

等から盗難を防止する必要性を総合的に考慮して判断することとなる。

法施行時は銅のみを特定金属とし、令において鉄やアルミ等その他の金属を定めることとはしていないが、これらの金属が今後、上記基準に該当し、法によって盗難防止を図る必要性があると判断された場合には、特定金属として政令で定める可能性がある点に留意されたい。

エ 主として特定金属により構成されているもの

法に基づく措置の対象が過度に広範にならないよう、全ての金属製物品ではなく、主として特定金属により構成されているものに対象を限っているものである。

「主として特定金属により構成されている」とは、物品の重量又は価格が2分の1以上を特定金属が占めていることをいう。

(2) 特定金属くず

ア 主として特定金属により構成されている

上記(1)エのとおり、「主として」とは、重量又は価格の2分の1以上を占めていることをいう。したがって、例えば、エアコンディショナーの室外ユニットに係るくずについては、特定金属たる銅の重量は2分の1以上を占めなかったとしても、価格は2分の1以上を銅が占めることが通常であり、その場合は特定金属くずに該当することとなる。

イ 金属くずとは

何らかの加工が施されるなどの理由により、金属製物品自体の状態が変化したり、当該金属製物品から分離されたりするなどして、当該金属製物品の本来の用法に従って使用することが不可能になったものをいう。

なお、特定金属くずの状態のまま流通している限りにおいて法の対象となるものの、特定金属くずが溶解等され、もはや金属くずの状態でなくなったものについては法の対象とならないことに留意されたい。

ウ 物品を製造する過程において生ずるもの

新品の金属製物品等を製造する段階において生ずる金属くず(いわゆる「端材」)は、法でその窃取の防止を目的とする「特定金属製物品」に由来するものではなく、買受けにおいて盗品が流入する可能性が低いことから、「物品を製造する過程において生ずるもの」を法の対象外とした。

エ 古物との関係について

その物の本来の目的に従って使用することができる物品は古物営業法(昭和24年法律第108号)第2条第1項に規定する「古物」に該当する。金属くずたる「特定金属くず」と「古物」が重複することは概念上想定されないが、両者を共に扱う事業者も多いため、特定金属くずから「古物に該当するもの」を除くことを確認的に規定している。

オ 銅を含む合金について

一般的に青銅(銅とすずの合金)や真鍮(銅と亜鉛の合金)は銅の含有率が50%を超え、主として銅から成る合金である。これらの合金の金属くずを買い受ける場合、当該金属くず全体における銅の占める重量又は価格が2分の1以上になるのであれば、主として特定金属(銅)により構成されるといえ、特定金属くずに該当することとなる。

(3) 特定金属くず買受業

特定金属くずの買受けを行う営業をいうが、「買受け」に「買受けの対価として金銭以外の財産上の利益を提供する場合」を含むこととしているのは、例えば、貴金属等の一定の経済的価値を有する物品の提供によって対価を支払う場合であっても換金と同様の効果が得られることから、そうした取引も「買受け」に該当することを明確化し、法の潜脱を防止する趣旨である。

第2 指定金属切断工具の隠匿携帯の禁止(法第2条第5号及び第15条並びに令本則関係)

1 趣旨

一定の大きさ以上のケーブルカッターやボルトクリッパーといった、特定金属製物品の窃取の用に供されるおそれが大きい一定の工具について、正当な理由なく隠して携帯することを禁止することにより、窃盗犯が特定金属製物品の窃取に着手する前の段階における先制的な対処を可能とし、もって特定金属製物品の窃取の防止に資することを目的とするものである。

同様の趣旨の法制度として、既に、軽犯罪法(昭和23年法律第39号)第1条第3号及びその加重類型である特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(平成15年法律第65号。以下「特開法」という。)第4条の規定があるところ、こうした規定を参考に、金属盗に多用されている工具を携帯する行為について適切な可罰範囲及び法定刑を規定することで、窃盗犯が特定金属製物品の窃取に着手する前の段階における先制的かつ実効的な取締りを可能としたものである。

他方、こうした工具は、本来社会的に有用な用途を有しており、業務その他正当な理由により使用又は携帯されている実態があることから、規制範囲を局限して国民生活への影響を最小限とするため、規制の必要性が真に認められるものに限って指定金属切断工具として規定した上で、隠匿携帯という行為の危険性の高さに着目して、業務その他正当な理由のない隠匿携帯のみを禁止することとしている。

2 要点

(1) 指定金属切断工具

ア ケーブルカッターとは

ケーブルの切断に特化した工具であり、電気工事の現場等で使用される工具である。

ケーブルカッターには複数の種類があるところ、2本の長いハンドルを備えた手動のもの(以下「手動両手式」という。)が最も一般的である。これは、両手でハンドルを把持するなどして、てこの原理により力を加えて切断するものである。このため、全長(ハンドル)が長いほど大きな力を加えられることとなり、それに応じて、刃体の大きさや開く幅も大きくなるように設計されていることから、結果として、全長が長いほど、より太いケーブルを切断できることとなる。なお、力を加える際にケーブルが動かないよう、刃体が湾曲してケーブルを抱え込む形状になっていることが一般的である。

このほか、ラチェット機構(回転式の刃体を歯車等とかみ合わせることにより、当該刃体を特定の方向にのみ回転させる機構をいう。以下同じ。)により小さい力を繰り返し加えて太いケーブルを徐々に切断することを可能としたものや、電気装置又は油圧装置により増幅した強い力を加えて太いケーブルを切断することを可能としたものがある。これらはてこの原理によりケーブルを切断するものではなく、その全長にかかわらず高い切断力を有する。

なお、ケーブルカッターという商品名で販売されていなかったとしても、ケーブルを切断するための工具として設計、製造又は販売されているものについては、ケーブルカッターに該当する。

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(左)手動両手式のケーブルカッター

(右)ラチェット機構を備えたケーブルカッター

(画像:株式会社マーベル)

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(左)電気装置を備えたケーブルカッター

(右)油圧装置を備えたケーブルカッター

(画像:マクセルイズミ株式会社)

イ ボルトクリッパーとは

鉄筋、線材等の鋼材の切断に特化した工具であり、主として建設・解体工事、災害救助等の現場で使用される工具である。番線カッターやボルトカッターと呼称されることもある。

ケーブルカッターと同様に手動両手式が最も一般的であり、全長が長いほど太いケーブルを切断できることとなる点も同様である一方、鋼材を切断する都合上、てこの原理を2段に応用するとともに、刃体は直線状になっていることから、同じ全長のケーブルカッターと比較して刃体の開く幅が狭い形状になっていることが一般的である。

また、ケーブルカッターと同様に、電気装置又は油圧装置を備えたものがあるが、ラチェット機構を備えたものは現状ほとんどない。

なお、ボルトクリッパーという商品名で販売されていなかったとしても、鉄筋等の鋼材を切断するための工具として設計、製造又は販売されているものについては、ボルトクリッパーに該当する。

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手動両手式のボルトクリッパー

(画像:株式会社ロブテックス)

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電気装置及び油圧装置を備えたボルトクリッパー

(画像:株式会社アーム産業)

ウ 「一般消費者が通常生活の用に供することが少ない」について

指定金属切断工具の要件の一つとして法第2条第5号が「一般消費者が通常生活の用に供することが少ない」と規定している趣旨は、規制対象を、一般国民が通常の社会生活において使用又は携帯することが少ないと考えられる、高い切断能力を有する工具に限定することを明らかにするものである。

この点、他法令の規定や社会実態等を踏まえると、一般家庭の住居内の配線や家電製品に用いられる電線の導体の断面積は通常100平方ミリメートルを下回るといえ、一般国民が、通常の社会生活において、導体の断面積が100平方ミリメートルを超えるケーブルを切断することは通常想定されないことから、そのようなケーブルを切断することが可能なケーブルカッター及びボルトクリッパー(以下「ケーブルカッター等」という。)については、一般国民が通常の社会生活において使用又は携帯することが通常想定されず、本要件を満たすこととなる。

エ 「特定金属製物品の窃取の用に供されるおそれが大きい」について

指定金属切断工具の要件の一つとして法第2条第5号が「特定金属製物品の窃取の用に供されるおそれが大きいもの」と規定している趣旨は、規制対象を、特定金属製物品の窃取における使用実態が広く認められる工具や、それと同等の切断能力、操作性、可搬性等を有し、特定金属製物品の窃取の用に供されるおそれが大きい工具に限定することを明らかにするものである。

この点、手動両手式のケーブルカッター等については特定金属製物品の窃取において広く使用されている実態があるほか、ラチェット機構又は電気装置若しくは油圧装置を備えたケーブルカッター等は、その全長にかかわらず、高い切断能力、操作性、可搬性等を有し、特定金属製物品の窃取の用に供されるおそれが大きいと認められる。

オ 令第1号に規定するケーブルカッター

一般的に、ウ及びエの要件を満たすと認められるケーブルカッターは、

○ 全長が45センチメートル以上の(手動両手式の)もの

○ ラチェット機構又は電気装置若しくは油圧装置を備えているもの

であることから、令第1号においてこれらを指定金属切断工具として規定している。

この点、ケーブルカッターの「長さ」とは、ケーブルカッターを閉じた状態で柄の方向に計測した両端部の間の直線距離であり、刃体の湾曲に沿って計測したものではない。

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ケーブルカッターの「長さ」

カ 令第2号に規定するボルトクリッパー

一般的に、ウ及びエの要件を満たすと認められるボルトクリッパーは、

○ 全長が75センチメートル以上の(手動両手式の)もの

○ 電気装置又は油圧装置を備えているもの

であることから、令第2号においてこれらを指定金属切断工具として規定している。

この点、ボルトクリッパーの「長さ」とは、ボルトクリッパーを閉じた状態で柄の方向に計測した両端部の間の直線距離であり、刃体の屈曲に沿って計測したものではない。

なお、ラチェット機構を備えているボルトクリッパーは、現時点、国内でほとんど流通しておらず、また、唯一警察庁で把握している製品も全長が75センチメートルを超えていることから、独立した要件としては設けていない。

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ボルトクリッパーの「長さ」

キ その他の工具

ケーブルカッター等以外で、現時点でエの要件を満たしていると認められるものは存在しないことから、施行時点で指定金属切断工具として規定するのはケーブルカッター等のみとしている。

(2) 隠匿携帯の禁止

法第15条が、業務その他正当な理由のない指定金属切断工具の隠匿携帯に限って禁止している趣旨は、上記1のとおり指定金属切断工具が本来社会的に有用な用途を有する工具であることを踏まえ、規制範囲を局限して国民生活への影響を最小限とする必要があることから、単純携帯ではなく隠匿携帯に限った上で、隠匿携帯が当然に許容されるべき場合を規制の対象から除外するものである。

同条の要点は以下のとおりである。

ア 「隠して」とは

他人が通常の方法で観察した場合にその視野に入ってこないような状態におくこと、つまり、普通では人の目に触れにくいようにすることをいう。

また、このような客観的な状況に加え、携帯する者が、隠す意思、すなわち「他人が通常の方法で観察した場合にその視野に入ってこないような状態におく」意思を有していることが必要である。

「隠して」に当たる具体的な例としては、鞄や箱の中に入れたり、自動車のフロアマットの下に置いたりするなどして、他人の目に触れないような状態におくことが挙げられる。

なお、指定金属切断工具の柄の一部が露出等している場合であっても、一見して工具であることが分からないといった状態であれば、「隠して」に該当し得る。

一般的に、特定金属製物品の窃取を企図している者は、犯行を容易にするため、周囲の人間の注意を引かないよう、指定金属切断工具を隠して携帯するのが通常であると考えられ、特開法第4条においても同様の考えから指定侵入工具の隠匿携帯を禁止していることを踏まえ、他者による発見を困難にし、特定金属製物品の窃取を容易にするという点で、より危険性が高いと認められる隠匿携帯に限って規制することとしたものである。

イ 「携帯」とは

法令上、人が物を現に携え持っている場合にのみ用いられる用語であり、人が物を事実上支配している場合に広く用いられる用語である「所持」よりも狭い意味に用いられる。ただし、必ずしも直接身に付けている必要はなく、例えば、指定金属切断工具を載せた自動車を運転する行為や、仲間に持たせて自己と同道させる行為等も含まれ、要するに、直ちに使用できるような状態で自己の支配下に置いていれば足りる。

また、複数人が共同して「携帯」することも想定される。

なお、特開法における解釈では、日常生活を営む自宅内等に指定侵入工具を置く行為は、「携帯」には当たらないとしているところであり、指定金属切断工具についても同様に解される。

ウ 「業務その他正当な理由による場合」とは

上記のとおり隠匿携帯が当然に許容されるべき場合を指し、それに該当するか否かについては、個別具体の事案に即して、指定金属切断工具を本来的用途に従い使用する目的があるかといった点も勘案しつつ、社会通念に照らして行為の正当性を評価し、判断することとなる。

「業務その他正当な理由」に該当すると評価される場合として典型的に想定されるのは、以下のとおりである。

○ 工事関係者や販売事業者が業務のために携帯する場合

○ 警察職員、消防職員、消防団員等が災害対策のために携帯する場合

○ 上記に該当しない者が日曜大工等のために携帯する場合

他方、護身用具として携帯する場合等については、ケーブルカッター等の本来の用途に従った使用目的ではなく、社会通念に照らして正当性を評価することはできないことから、「業務その他正当な理由」に該当しないこととなる。

3 運用上の留意事項

(1) 指定金属切断工具に係る構成要件該当性の確認

ア 工具の分類

ケーブルカッターとボルトクリッパーについては、外見が類似していること等から、混同して取り扱われることも考えられるが、規制対象となる要件は両者で異なることを踏まえ、仮に指定金属切断工具である疑いがある工具を取り扱ったり、書類に記載したりする際には、法令に規定する用語である「ケーブルカッター」又は「ボルトクリッパー」を用いて、確実に区別すること。

なお、令第1号及び第2号において列挙している各要件については、重複することも想定されるところであり、実際、「長さが45センチメートル以上であって、刃体を駆動させるための油圧装置を備えているケーブルカッター」等が販売されている。こうした工具について書類に記載する場合等には、該当する要件全てを記載することが望ましい。

イ 各工具の該当性

被疑者が、自己が携帯していた工具について、指定金属切断工具であることの認識を否認する場合もあると考えられる。このような場合には、当該工具が指定金属切断工具に該当することの立証が特に重要であるので、必要に応じ、工具販売事業者等のカタログを参照するなどして、当該工具がケーブルカッター又はボルトクリッパーとして設計、製造又は販売されている証拠を収集すること。

なお、ある工具を用いてケーブルを切断することが結果的に可能であるとしても、当該工具が直ちにケーブルカッターに該当するとは限らない。当該工具がケーブルカッターに該当すると認定するためには、当該工具がケーブルを切断する機能を有することに加えて、当該工具がケーブルの切断を目的として設計・製造されたものであると認められるような大きさ、形状、構造等を有することが必要であり、これはボルトクリッパーについても同様である。また、このような実態が認められれば、通常想定はされないものの、自作の工具がケーブルカッター又はボルトクリッパーに該当すると評価し得る場合もある。

このような認定は、結局、個別具体の工具ごとに行わざるを得ないので、疑義がある場合には、生活安全企画課犯罪抑止対策係に照会すること。

ウ 工具の状態

上記1のとおり、規制範囲を局限するため、業務その他正当な理由のない隠匿携帯のみを禁止していることを踏まえると、指定金属切断工具に重大な故障が発生していたり、不可逆的に分解されていたり、バッテリー等の必要不可欠な部品がなかったりするなどして、およそ使用が不可能な状態であると認められれば、法第15条違反は成立しないと考えられることから、工具が携帯されている状況のみならず、工具本体の状態についても確認すること。

なお、一時的にバッテリーが切れているなど、容易に使用可能な状態に戻せる状況である場合には、引き続き本規制の対象となる。

(2) 適正な取締り

指定金属切断工具については、一般国民が「業務その他正当な理由」により、これを外部から見えない状態で携帯していることも容易に想定されることから、法第15条違反が疑われる状況を認めた際には、指定金属切断工具の携帯の理由について特に十分な説明を徴した上、個別具体の事例に基づいて、携帯している者の職業、携帯している状況、携帯に係る動機・目的、時間的・場所的合理性といった要素を勘案し、正当な理由の有無、隠していると認められるかどうかを総合的に判断する必要がある。

その際には、次の各点に十分配意し、金属盗犯の見逃し等が発生しないようにしつつも、いやしくも取締り権限の濫用とのそしりを受けることのないよう、適正な取締りに万全を期すこと。

ア 適正な職務質問の実施

法第15条違反の取締りは、職務質問を端緒として行う場合が多くなるものと想定されるが、当然のことながら、今回の法の規定は、職務質問の要件を緩和し、又はその許容される範囲を拡大するものではない。職務質問の実施に当たっては、警察官職務執行法(昭和23年法律第136号)第2条の規定に則し、飽くまで相手方の任意の協力を得た上で、不審点の追及、所持品の検査、各種照会等を徹底するなど、適正な実施に努めること。

イ 携帯している者の職業

業務に関連して指定金属切断工具を携帯することに合理性があるような者として、典型的には、電気工事、建設・解体工事等に従事する者や、特定金属製物品の製造・販売に従事する者等が挙げられるが、仮にこうした職業であったとしても、業務とはおよそ無関係な、社会通念に照らして正当性を評価することができない理由で携帯していれば、法第15条違反が成立し得る。

他方、これら以外の職業の者が、業務その他正当な理由で指定金属切断工具を携帯することも十分に考えられることから、いずれにせよ、携帯している者の職業のみをもって、安易に判断することのないようにすること。

ウ 携帯している状況

指定金属切断工具を携帯している状況を確認する際には、相手方が説明した指定金属切断工具の携帯に係る動機・目的と整合するかという観点から、通常、共に携帯していることが想定される(又は想定されない)物品が携帯されているかといった点にも配意し、全体として不審点がないか確認すること。

この点、例えば、工事現場に向かう途中の事業者と称する者が、その業務に使用する自動車に、指定金属切断工具以外の工具や資機材を積載していないであるとか、客先に向かう途中の販売業者と称する者が、指定金属切断工具と共に軍手、懐中電灯、目出し帽等を携帯しているといった、通常想定されない状況が認められた場合には、携帯に係る動機・目的その他背景事情について特に確認すること。

エ 携帯に係る動機・目的

指定金属切断工具は、「一般消費者が通常生活の用に供することが少ないと認められ」るものであり、大型のものや高価なものが多いことから、特開法に規定する指定侵入工具と比較して、通常、特定の明確な用途を念頭に置いて携帯することが想定される。

このため、相手方から携帯に係る動機・目的を聴取する際には、その用途は何かという点に着眼し、不審点がないか確認すること。

オ 時間的・場所的合理性

相手方がその時・その場所において指定金属切断工具を携帯することに合理性があるか判断する際は、現場周辺における、金属盗の被害に遭うおそれが大きい施設の立地状況、金属盗の発生状況等の周辺的な事情も考慮する必要がある。

仮に相手方の説明が同じだったとしても、昼間か夜間か、周辺に太陽光発電施設等が立地しているかといった点が異なれば、確認すべき事項や、その度合いについても異なることを念頭に置いて、真に必要な事項を確認すること。

カ その他

相手方の言動、携行品、周辺的な事情等に不自然・不合理な点はないか、幅広く、かつ、臨機応変に確認し、定型的な対応に終始することのないようにすること。

なお、職務質問の実施や、「業務その他正当な理由」を判断する際には、相手方の容姿や服装等の外見のみを根拠とすることのないようにするとともに、人種や国籍等に対する偏見や差別との誤解を受けないようにするなど、不適切・不用意な言動を厳に慎むこと。

(3) 余罪捜査及び突き上げ捜査の徹底

法第15条違反について、窃盗等の犯罪の用に供する目的を有していたか否かは犯罪成立の要件とはされていないが、このような目的の有無は被疑者の処分に大きく影響すると考えられるので、法第15条違反により被疑者を検挙した場合には、被疑者の関係場所の捜索・差押え等によって関係する証拠を収集するほか、窃盗等の余罪の追及を徹底するなどして、その悪性を立証し、被疑者が厳正に処罰されるよう努めることに加え、突き上げ捜査を徹底し、共犯被疑者の割り出しに努めること。

なお、法第15条違反の罪は、窃盗等とは別個の罪であって、窃盗等の予備罪ではないので、仮に窃盗等の罪が成立してもこれに吸収されることはない。したがって、例えば指定金属切断工具を用いて特定金属製物品を窃取した者については、法第15条違反の罪と窃盗罪の双方が成立し、両者は併合罪の関係に立つ。金属盗を敢行した被疑者の厳正な処罰を確保し、更なる金属盗の発生を防止する観点から、金属盗の被疑者を検挙した場合には、その余罪として法第15条違反の罪の立件も視野に入れて捜査すること。

第3 特定金属製物品の盗難の防止に資する情報の周知(法第16条関係)

1 趣旨

金属盗の防止には、事業者等による自主防犯の取組を強化することが効果的であり、そのためには警察が関係事業者に対して防犯対策に資する情報を提供することが重要であることを踏まえて規定したものである。

2 要点

(1) 「警視総監又は道府県警察本部長、方面本部長及び警察署長」

各地域の犯罪発生状況や犯行の特徴に応じた防犯対策に係る情報を周知することから、都道府県単位だけではなく地域単位で情報提供を行うことも想定されるため、「警視総監又は道府県警察本部長」と並んで「方面本部長及び警察署長」も情報提供の主体としている。

(2) 「特定金属製物品の盗難の防止に資する情報」とは

具体的には、

○ 地域ごとの盗難発生状況

○ 最近発生した盗難被害の情報や犯行の特徴

○ 盗難被害に遭っている物品の情報

○ 具体的な防犯対策の事例

等をいい、詳細な手口や被疑者の具体的な供述内容等の捜査の詳細に関する情報は含まない。

(3) 「電気通信回線に接続して行う自動公衆送信の利用、印刷物の配布その他適切な方法」とは

情報周知の方法については、メール送信やチラシ配布のほか、ウェブサイト、アプリやSNS等の利用も含まれる。

(4) 「太陽光発電設備を設置する者その他の特定金属製物品につき盗難に遭うおそれが大きい者」とは

「太陽光発電設備を設置する者」は飽くまでも情報の提供先の例示であるところ、「その他の特定金属製物品につき盗難に遭うおそれが大きい者」とは、各都道府県における金属盗の発生状況を踏まえ、盗難防止情報の周知が有益と考えられる事業者のことをいう。

3 運用上の留意事項

(1) 管内の被害実態の的確な把握

被害実態の把握は、効果的な情報の周知の前提となるものであることから、刑事部門と生活安全部門とで連携し、管内の被害実態について的確に把握すること。

(2) 的確な情報の周知

上記(1)で把握した被害実態を踏まえ、太陽光発電設備を設置する者をはじめとした特定金属製物品につき盗難に遭うおそれが大きい者を適切に見極め、地域ごとの盗難発生状況等の盗難の防止に資する情報を時機を失することなく周知すること。

特に盗難発生状況に関する情報について、被害の状況等から他署に被害が及ぶおそれがあると認めた場合には、当該被害情報を隣接署にも機を逃さず共有するとともに、共有を受けた署にあっては、必要に応じて当該情報を管内の事業者に対して周知すること。

また、生活安全企画課又は捜査第三課から提供される盗難の防止に資する情報についても積極的に活用すること。

第4 罰則(法第22条関係)

第2の1のとおり、犯行用具規制は、指定金属切断工具を正当な理由なく隠匿携帯する行為について適切な可罰範囲及び法定刑を規定することで、金属盗に係る犯行用具の携帯に関する規制を実効的たらしめることにより、犯行の着手に至る前の先制的な取締りを可能とすることを目的としている。

この点を踏まえ、同様の趣旨の規定である特開法第16条と同様に、指定金属切断工具の隠匿携帯規制に違反した者は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処することとしている。

第5 入管法等の一部改正(法附則第5条及び第6条関係)

出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)は、窃盗罪をはじめとする外国人犯罪組織又は犯罪集団が関与して実行されるおそれのある一定の類型の犯罪等により拘禁刑に処せられるなどした外国人(その刑の全部又は一部の執行猶予の言渡しを受けた者を含む。)について、以下の規定を設けている。

○ 5年間の上陸拒否(入管法第5条第1項第9号の2)

○ 永住者の在留資格の取消し(出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)による改正後の入管法第22条の4第1項第9号)

○ 退去強制(入管法第24条第4号の2)

○ 出国命令制度の対象外(入管法第24条の3第3号)

○ 難民等認定申請に係る許可の対象外(入管法第61条の2の2第1項第2号及び第61条の2の4第1項第8号)

この点、指定金属切断工具の隠匿携帯に係る罰則を定めた法第22条の罪は、太陽光発電施設からの金属ケーブル窃盗をはじめとする金属盗を行うために外国人犯罪組織又は犯罪集団が関与して実行されるおそれのある犯罪であることから、同罪により拘禁刑に処せられるなどした外国人(その刑の全部又は一部の執行猶予の言渡しを受けた者を含む。)についても同様の規定を適用すべく、入管法を改正することとしたものである。

[別添1]

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[別添2]

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盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律の一部施行等に係る趣旨、要点及び運用上の留意…

令和7年8月28日 達(生企、捜三、組対、外事)第390号

(令和7年8月28日施行)

体系情報
生活安全部
沿革情報
令和7年8月28日 達(生企、捜三、組対、外事)第390号