○福島県警察におけるサイバー人材確保・育成方針について(通達)

令和7年8月5日

達(サ対、務、教、公)第370号

[原議保存期間 3年(令和11年3月31日まで)]

[有効期間 令和11年3月31日まで]

みだし方針を別紙のとおり定め、令和7年8月5日から施行することとしたので、誤りのないようにされたい。

別紙

福島県警察におけるサイバー人材確保・育成方針

第1 基本的な考え方

サイバー空間や先端技術の利用の拡大、人口構造の変化等、近年、我が国の社会情勢が大きく変化しているほか、我が国を取り巻く国際的な情勢も目まぐるしく変化しているところ、警察は、これらの変化が国内の治安情勢に与える影響を的確に捉え、対処していく必要がある。

特に、サイバー空間をめぐる脅威は極めて深刻な情勢が続いており、社会全体においてサイバー分野における高度な専門的知見及び技術を有する人材の重要性が高まっている一方で、現在の人口減少社会において、人材確保をめぐる環境が年々厳しさを増していることを踏まえれば、警察におけるサイバー人材(サイバー事案の対処に関する専門的知識及び技術を有する人材をいう。以下同じ。)の確保・育成は一層困難となることが見込まれることから、これを総合的かつ一体的に推進していくことが重要である。

また、サイバー空間はあらゆる犯罪に悪用され得るところ、警察において深刻化するサイバー空間の脅威に的確に対処するためには、組織をあげて全職員の対処能力の向上を図ることが不可欠である。

以上の観点から、サイバー部門であるサイバー犯罪対策課、公安課及び県情報通信部情報技術解析課(以下「サイバー部門」という。)と警務部門の緊密な連携を中核としつつ、全ての部門が一体となって、サイバー人材を確保・育成し、そのキャリアパスを管理するとともに、全職員のサイバー空間の脅威への対処能力の向上を図るため、第2に定める事項に取り組むものとする。

第2 県警察における取組方針

1 サイバー人材の確保

県警察におけるサイバー人材の確保に当たっては、下記の取組方針に即して推進すること。

(1) 試験制度の整備と継続的な運用

ア 一般採用における取組

県本部警務課長(以下「警務課長」という。)は、高等専門学校の卒業見込生及び工業高校等の既卒者の採用を念頭に置いて、一般採用における採用試験時期の前倒し及び採用試験の複数回実施を推進するとともに、採用試験におけるサイバー分野の資格保有者やサイバー防犯ボランティア経験者への加点等の取組を可能とするような仕組みの構築を検討すること。

イ 即戦力を確保するための取組

警務課長は、即戦力を確保する観点から、中途採用(既に他の組織等において情報処理等の専門的知識・能力を取得した者を、その専門的知識・能力に応じた階級に位置付けた上で採用すること。以下同じ。)・特別採用(情報処理等の知識及び能力を有する者を特別枠を設けて新規採用すること。以下同じ。)や任期付採用によりサイバー人材の採用を可能とするような仕組みの構築を検討すること。

(2) 効果的な採用募集活動の推進

ア 採用募集に関する効果的な情報発信

中途採用・特別採用で採用されたサイバー人材は、効果的な募集広告として、IT関連に特化した求人情報サイト・情報誌を挙げていることを踏まえ、警務課長は、サイバー部門と連携し、これらに対する募集広告の掲載を積極的に実施するとともに、サイバー分野に関連のある大学、高等専門学校、専門学校、工業高校等を対象とした説明会の開催及び合同企業説明会への積極な参加等、あらゆる手段を駆使して採用募集活動を実施すること。

イ キャリアパスの見える化

中途採用・特別採用で採用されたサイバー人材の多くは、警察という法執行機関でしか従事することができない業務に魅力を感じて警察を志望しているという実態を踏まえ、警務課長は、サイバー部門と連携し、中途採用・特別採用の採用募集活動において、同採用で採用されたサイバー人材が従事する業務内容や活躍している事例等を紹介するとともに、本通達に基づき構築するサイバー人材のキャリアパスを「見える化」し、警察における勤務をよりイメージしやすくするなど、工夫を凝らして外部の人材に働きかけること。

ウ サイバー防犯ボランティアの拡大・活性化

サイバー犯罪対策課長は、優秀な人材を発掘する観点から、学生・生徒が参加することができるサイバーコンテストを積極的に実施すること。

また、サイバー防犯ボランティアとして活動する学生・生徒は、将来のサイバー人材となり得ることからも、サイバー防犯ボランティアの拡大・活性化を図ること。

(3) 警察部内におけるサイバー人材の発掘

警務部門を中心に全ての部門が一体となって、3(1)アを通じて把握した職員のサイバー分野の経歴・資格について確実に確認するほか、サイバー犯罪対策課長は、サイバー空間の脅威への対処に必要とされる能力(以下「サイバー対処能力」という。)を競う部内競技会の開催その他の取組を通じて、サイバー人材となり得る職員の発掘に努めること。

2 サイバー人材の育成及び全職員の能力向上

(1) 求めるサイバー対処能力とその確認

ア 各職員に求めるサイバー対処能力とその確認

県警察の各職員に求めるサイバー対処能力とその確認は、おおむね次のとおりとすること。

(ア) 初級能力

サイバー空間における犯罪に関する通報・相談を受けた際に、その内容を理解し、適切に事件主管課に報告できる能力をいい、初任科教養その他の学校教養及び職場教養を通じ、全ての警察官に習得させること。

(イ) 中級能力

ネットワーク利用犯罪に的確に対処できる能力をいい、警察学校の専科教養その他の学校教養及び職場教養を通じ、各部門において捜査に従事する警察官に習得させること。

(ウ) 上級能力

高度な専門的知識及び技術を要するサイバー事案に的確に対処できる能力をいい、警察大学校の専科教養その他の学校教養及び職場教養を通じ、サイバー部門の中核となるサイバー人材に習得させること。

(エ) 検定による能力の確認

上記能力の確認は検定を通じて行うこととし、当該検定の実施に関し必要な事項は、別途通達する。

イ 幹部登用に必要な能力の確認

サイバー空間があらゆる犯罪に悪用され得るものであり、特に幹部にあっては、部門を問わずサイバー対処能力が不可欠であることに鑑み、警務課長は、昇任試験において、サイバー対処能力を確認するために必要な内容を出題するように努めること。

また、上級能力の習得その他高度な民間資格の取得については、他の資格との均衡に配意しつつ、昇任試験における加点等に向けた取組を可能とするような仕組みの構築を検討すること。

(2) 教養・研修の推進

サイバー空間があらゆる犯罪に悪用され得ることを踏まえ、全職員がその脅威について理解を深め、国民からの要望、相談等への対応、事件捜査等、それぞれの担当業務を適切に遂行するためのサイバー対処能力を習得するため、次の取組により体系的な教養・研修を推進すること。

ア 学校教養

(ア) 初任科教養

新たに採用された職員に対し、サイバー空間の脅威への対処に関する業務の重要性及びサイバー対処能力の習得の必要性を自覚させるとともに、初任科教養を通じて初級能力の習得に必要な教養を実施すること。

(イ) 部門別任用科及び専科

全ての専務任用課程において、サイバー空間の脅威への対処に関する教養を実施するとともに、警務課長は、本部サイバー部門への登用に際して、警察学校におけるサイバー捜査専科を受講した者を優先すること。

(ウ) 警察大学校

サイバー事案の捜査に必要な能力を向上させるためには、最新の情勢や手口について体系的に学習することが効果的であることから、サイバー犯罪対策課長は、新たに設置される警察大学校サイバー警察教養部における専科教養を積極的に受講させ、サイバー人材の能力を底上げすること。

イ 職場教養

(ア) 指導・教養班による職場教養の推進

各所属長は、サイバー部門と連携して、2(3)に定める指導・教養班が作成する教養資料を用いるなどの職場教養を通じて、サイバー対処能力のかん養に努めるとともに、検定等を通じて職員のサイバー対処能力の習得状況を把握し、習得状況に応じて必要な教養内容の見直しを行うこと。

(イ) 業務を通じた能力向上

サイバー犯罪対策課長は、幅広い部門からサイバー部門の中核となるサイバー人材を確保するとともに、各部門の業務において必要となるサイバー対処能力を有する職員を育成する観点から、各部門の将来を担う優秀な若手警察官をサイバー部門で勤務させ、サイバー空間における犯罪の捜査要領を習得させる制度を整備すること。

また、警務課長は、当該制度により捜査要領を習得した警察官を、継続してサイバー部門の捜査支援業務に従事させた上で各部門に再配置するなど、サイバー部門の知見が組織全体に還元されるよう配意した部門横断的な人材の配置に努めること。

(ウ) 他の都道府県警察への派遣

警務課長は、将来のサイバー部門の中核となるサイバー人材を育成するとともに、サイバー部門の知見を組織全体に還元する観点から、警視庁サイバー犯罪対策課協働捜査班をはじめとした先進的な取組を進める他の都道府県警察へのサイバー部門を含む各部門の優秀な若手職員の継続的かつ計画的な派遣に努めること。

(エ) 情報通信部との人事交流

捜査の知見を有する管区警察局情報通信部及び都道府県情報通信部(以下「情報通信部」という。)の技術系職員の育成及び同職員の受入れを通じた県警察職員の解析技術の習得を推進する観点から、警務課長は、情報通信部からの出向の受入れ体制を構築すること。

また、サイバー犯罪対策課長は、情報通信部の職員の受入れに際して、県警察における実情を踏まえつつ、県警察学校における専科教養の聴講等により、捜査に必要な教養を受けることができるよう、県警察と情報通信部との間で調整を図ること。

ウ 民間研修

サイバー犯罪対策課長は、一般財団法人日本サイバー犯罪対策センター(JC3)における長期又は短期の研修その他警察庁が斡旋する民間研修へのサイバー人材の参加を推進するとともに、県警察の実情に応じ、管内の教育機関及び企業に対する派遣研修を実施すること。

また、最新の専門的知識及び技術の習得に向けて、民間における訓練の受講やこれに伴う民間資格の取得を支援すること。

加えて、県警察が委嘱するサイバー犯罪対策アドバイザーその他の専門家による講演その他の研修を実施すること。

(3) 教養体制の整備

警務課長は、学校教養及び職場教養を通じて職員のサイバー対処能力を育成するための中核的な組織として、サイバー部門に指導・教養班を整備できるよう努めること。

サイバー犯罪対策課長は、教養課及び警察学校と連携して、サイバー人材の育成に係る教養に加えて、全職員のサイバー対処能力の習得に資する教養を企画・立案し、推進すること。

また、学校教養を通じてサイバー人材を育成する観点から、警務課長は、警察学校に、サイバーに関する教養を実施できる教官を配置することができるよう努めること。

3 サイバー人材のキャリアパス管理

(1) サイバー部門と警務部門の緊密な連携によるキャリアパス管理の推進

ア 部門横断的なキャリアパス管理の推進

確保・育成したサイバー人材の能力向上を促しつつ、組織として同人材を活躍させていくためには、各人のスキル・経歴の特性、意欲等への十分な配慮と、警察の責務の達成上必要となる配置とのバランスをとる必要がある。

これを踏まえ、サイバー部門と警務部門の緊密な連携を中核としつつ、全ての部門が一体となって、職員のサイバー分野の経歴・資格を把握するとともに、警務課長は、サイバー人材が配置されるポスト、従事する業務、昇任後を見据えた管理職に必要となる能力の育成等を含む、サイバー人材の全般的なキャリアパス管理を推進すること。

イ 高度サイバー人材のキャリアパス管理

警務課長は、県警察がサイバー事案に対処するに当たって、中途採用・特別採用で採用されたサイバー人材その他高度な専門的知識及び技術を有するサイバー人材(以下「高度サイバー人材」という。)を、サイバー部門を中心に勤務させるなど、各人のスキル・経歴の特性、意欲等に十分配慮しつつ、その能力を継続していかせるポストに配置できるよう配意すること。

また、採用試験受験者の確保及び高度サイバー人材の業務に対する意欲の向上の観点から、魅力あるキャリアパスモデルの提示は不可欠であることから、警務課長は、県警察の実情に照らして、可能な限り複数のモデルを提示するよう努めること。

(2) キャリアパス管理に基づく職員の配置等

ア 警察署

各署長は、サイバー人材が警察署で勤務するに当たって可能な限り、その能力と適性をいかすことができる業務に従事させるように配意すること。

特に、中途採用・特別採用で採用されたサイバー人材の卒業後の配置に当たっては、警察本部への早期配置を念頭におきつつ、警察署に配置する場合には、捜査手続を習得させる観点から、捜査専務員として配置するように配意すること。

また、警務課長は、昇任に当たり、高度サイバー人材が、その能力を継続していかせるポストでの勤務を希望する場合は、異動に際し、警察本部内における配置、関東管区警察局サイバー特別捜査部(以下「サイバー特別捜査部」という。)への出向等を検討すること。

他方で、警察署長や所属長といった管理職への登用を希望する者の昇任配置に当たっては、サイバー人材としての適性及び能力をいかしつつ、管理職としての幅広い視点を養うことができるポストへ配置するように配意すること。

イ 警察本部

警務課長は、警戒の空白を生じさせないために当面取り組むべき組織運営上の重点について(令和5年7月3日付け警察庁丙企画発第29号ほか別添)1(1)イに基づくサイバー部門の体制の拡充に当たって、県警察の捜査幹部たり得る高度サイバー人材が、その能力を発揮できる体制を整備すること。

特に、高度サイバー人材であって、その能力を継続していかせるポストでの勤務を希望する者の業務に対する意欲の向上の観点から、サイバー部門に高度サイバー人材のキャリアパスにおける目標となる幹部ポスト等を整備するなどの措置を講じるように配意すること。

また、本人の希望、スキル・経歴の特性、意欲等に十分な配慮をしつつ、県警察の全体最適の観点から、情報管理部門その他のデジタル化を担当する部門へのサイバー人材の配置も検討すること。

ウ 警察庁への出向・派遣

(ア) 情報通信部への出向・派遣

情報通信部における情報技術の解析は、サイバー部門が行う捜査支援業務と一体的に実施すべきものであり、その知識及び技術はサイバー空間の脅威への対処に必要であることに鑑み、警務課長は、捜査支援業務において中核となり得るサイバー人材を選定し、情報通信部と協議の上、同部情報技術解析課に出向させるなど、継続的かつ計画的に人事交流を行うこと。

(イ) サイバー特別捜査部への出向・派遣

サイバー特別捜査部は、高度な専門的知識及び技術に基づき、全国の情報を横断的かつ俯瞰ふかん的に分析して、重大サイバー事案の捜査その他の対処を推進する全国警察のハブとなる組織である。

警視、警部及び警部補という捜査幹部としてのサイバー特別捜査部への出向・派遣は、帰任後の県警察のサイバー対処能力の強化に益するものであることを踏まえ、警務課長は、県警察の将来を担う優秀な職員を部門を越えて選出し、警察庁に推薦すること。

また、出向・派遣に向けて、学校教養、職場教養、民間研修等を通じて職員を継続的かつ計画的に育成すること。

(ウ) 警察庁サイバー警察局への出向・派遣

警察庁サイバー警察局は、サイバー事案に関する警察に関すること等を所掌し、その企画・立案や捜査指導・技術指導を通じて、将来の県警察の幹部として必要となる知識及び経験を積むことができることを踏まえ、警務課長は、幹部候補となる優秀な警察官を部門を越えて選定し、警察庁に推薦すること。

(3) 賞揚及び人事評価

顕著な実績を挙げたサイバー人材に対する賞揚は、サイバー人材の自己研さんによる能力向上や業務に対する意欲の向上にも繋がることから、積極的な賞揚を行うとともに、各所属長は、その結果を人事評価に適切に反映すること。

福島県警察におけるサイバー人材確保・育成方針について(通達)

令和7年8月5日 達(サ対、務、教、公)第370号

(令和7年8月5日施行)

体系情報
生活安全部
沿革情報
令和7年8月5日 達(サ対、務、教、公)第370号