○道路交通法の一部を改正する法律の施行に伴う交通警察の運営について(依命通達)
令和7年7月17日
達(交企、交指、運免)第346号
[原議保存期間 10年(令和18年3月31日まで)]
[有効期間 令和18年3月31日まで]
みだしのことについては、次のとおりであるので適正な取扱いに努められたい。
記
1 趣旨
令和6年5月24日に公布された道路交通法の一部を改正する法律(令和6年法律第34号。以下「改正法」という。)については、道路交通法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和7年政令第221号)により、令和8年4月1日から施行されることとなった。
また、改正法の施行に伴い、道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和7年政令第222号)及び道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令(令和7年内閣府令第57号)が令和7年6月20日に公布され、改正法と同様、令和8年4月1日から施行されることとなった。
今回施行される改正規定は、交通反則通告制度を軽車両に適用するための規定の整備、自動車等が自転車等の側方を通過する際における規定の整備及び仮運転免許若しくは運転免許試験の受験資格に係る年齢要件の引下げに関する規定の整備に関するものであり、その趣旨、内容及び留意事項は別紙のとおりであるので、改正規定が円滑かつ適切に施行され、所期の目的が達成されるよう、関係事務の運営に万全を期されたい。
2 施行の趣旨、内容及び留意事項
別紙のとおり
別紙
(凡例)
「改正法」:道路交通法の一部を改正する法律(令和6年法律第34号)
「旧法」:改正法による改正前の道路交通法(昭和35年法律第105号)
「法」:改正法による改正後の道路交通法
「改正令」:道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和7年政令第222号)
「令」:改正令による改正後の道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)
「改正府令」:道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令(令和7年内閣府令第57号)
「府令」:改正府令による改正後の道路交通法施行規則(昭和35年総理府令第60号)
第1 趣旨
1 交通反則通告制度を軽車両に適用するための規定の整備
旧法においては、交通反則通告制度の対象から重被牽引車以外の軽車両は除かれており、自転車をはじめとする軽車両の運転に関し、法の規定に違反する行為を行った者は、全て刑事手続の対象とされていた。
しかし、最近の自転車をめぐる事故情勢等を踏まえ、自転車利用者による交通違反に対する指導取締りの強化をしてきたところ、かかる違反を検挙した場合には、自動車及び原動機付自転車に交通反則通告制度が適用されていることと比較して、国民にとっても捜査機関側にとっても大きな負担が生じつつあった上に、違反者の多くは送致後に不起訴とされ、実態として違反者に対する責任追及が不十分であるという指摘がなされていた。
そこで、刑事手続に伴う手続的な負担の軽減を図るとともに、実効的な責任追及を可能とするため、自転車をはじめとする軽車両に対し、交通反則通告制度が導入されることとなった。
2 自動車等が自転車等の側方を通過する際における規定の整備
自転車対歩行者事故の件数が増加傾向にある中、車両の一類型である自転車と歩行者との交錯を避けるためには、自転車の車道通行の原則の徹底を図ることにより、歩道における自転車と歩行者の交通事故の防止を図るべきである。
この点、車道上の自転車の事故情勢等を踏まえると、自転車の右側方を通過する自動車と自転車の側方接触事故を防止することが特に重要であったため、自動車等(特定小型原動機付自転車及び軽車両以外の車両をいう。以下同じ。)が自転車等(特定小型原動機付自転車及び軽車両をいう。以下同じ。)の側方を通過する際における規定が整備されることとなった。
3 仮運転免許(以下「仮免許」という。)及び運転免許試験の受験資格に係る年齢要件の引下げに関する規定の整備
旧法においては、準中型免許及び普通免許については、運転免許の欠格事由として18歳に満たない者には与えないこととされており、準中型仮免許及び普通仮免許についても、同様に18歳に満たない者に対しては与えないこととされている。
また、運転免許試験の受験資格については、18歳に満たない者は、運転免許試験を受けることができないこととされている。
この点、いわゆる「早生まれ」の高校生のうち高校卒業後に就職を予定している者は、就職までに準中型免許又は普通免許を取得することが困難な場合があるとして、自動車教習所業界等から、準中型仮免許及び普通仮免許の年齢要件を引き下げることを求める要望が寄せられていた。
そこで、仮免許及び運転免許試験の受験資格に係る年齢要件を17歳6月に引き下げることで、高校を卒業後に就職を予定しているいわゆる「早生まれ」の高校生であっても、在学中に準中型仮免許及び普通仮免許を取得可能とし、運転免許試験の受験ができるようにすることにより、不均衡が解消されることとなった。
第2 内容
1 交通反則通告制度を軽車両に適用するための規定の整備
(1) 改正法
ア 重被牽引車以外の自転車をはじめとする軽車両の運転者がした罪に当たる行為のうち、一定の行為が新たに反則行為とされることとなった(法第125条第1項、別表第2)。
イ 新たに交通反則通告制度の対象となる軽車両の運転者については、16歳以上の者と規定された(法第125条第2項第4号)。
ウ 軽車両の反則金の限度額については、原動機付自転車と同一と規定された(法別表第2)。
(2) 改正令
自転車をはじめとする軽車両に係る反則行為の種別及び反則金の額につき、既に自動車及び原動機付自転車に係る反則行為とされている違反行為については、反則行為の種別について所要の修正を行うとともに、原動機付自転車に係る反則金の額と同一とされたほか、軽車両に固有の違反行為については、反則行為の種別が新たに定められたほか、罰則が同程度である原動機付自転車の違反に係る額を参考に、反則金の額が新たに定められた(令別表第6)。
(3) 改正府令
交通反則告知書及び交通反則通告書の様式中、「車両等の種類」欄の「原付車」が「原付等」に改められた(府令別記様式第25及び第26)。
2 自動車等が自転車等の側方を通過する際における規定の整備
(1) 改正法
ア 自動車等は、当該車両と同一の方向に車道等を進行している自転車等の右側を追抜きの形態で通過する場合において、当該車両と当該自転車等との間に十分な間隔がないときは、当該自転車等との間隔に応じた安全な速度で進行しなければならないことが規定された(法第18条第3項)。
イ 前記アの場合においては、当該自転車等は、できる限り道路の左側端に寄って通行しなければならないことが規定された(法第18条第4項)。
ウ 法第18条第3項に違反する行為をした者は、原則として3月以下の拘禁刑又は5万円以下の罰金に、同条第4項に違反する行為をした者は、5万円以下の罰金に処すことが規定された(法第119条第1項第6号、第120条第1項第2号)。
(2) 改正令
ア 法第18条第3項に違反する行為について、点数については2点、反則金の額については7,000円(普通車)等とすることが規定された(令別表第2及び別表第6)。
イ 法第18条第4項に違反する行為について、反則金の額については5,000円とすることが規定された(令別表第6)。
3 仮免許及び運転免許試験の受験資格に係る年齢要件の引下げに関する規定の整備
(1) 改正法
ア 準中型仮免許及び普通仮免許の欠格事由を17歳6か月に満たない者に引き下げられた(法第88条)。
イ 準中型免許及び普通免許の運転免許試験を受けることができる年齢を上記アと同様に引き下げ、17歳6か月と規定された(法第96条)。
ウ 準中型免許及び普通免許の取得に係る年齢要件は引き続き18歳となることから、18歳に満たない者が運転免許試験に合格したとしても、運転免許を与えるのはその者が18歳になってからとなるところ、準中型免許又は普通免許の運転免許試験を受け、これに合格した18歳未満の者については、18歳に達した場合に限って運転免許を与えることが明確化された(法第90条)。
エ 18歳に満たずに準中型免許及び普通免許の運転免許試験に合格した者に対して、その者が18歳になってから与えられる運転免許証等の有効期間と、18歳以上であって継続して運転免許を受けている期間が5年未満である者が新たに準中型免許又は普通免許を受けた場合の運転免許証等の有効期間に不均衡が生じないよう、運転免許証等の有効期間の算出について、「満了日等」の特例が設けられた(法第95条の6)。
(2) 改正府令
ア 運転免許試験に合格した者で、当該運転免許試験に係る運転免許を受けていない者は、取得時講習受講の有無にかかわらず、運転免許試験成績証明書の交付を受けることが可能となった(府令第28条)。
イ 仮免許証裏面の注意事項について、仮免許による運転は、法令の定める資格を有する者を運転者席の横の座席に同乗させ、その指導の下に行わなければならないことが明確化された(府令別記様式第15)。
第3 留意事項
1 自転車の安全利用の促進
自転車の安全な利用を促進するため、関係機関・団体等と連携し、交通安全教育・広報啓発活動を通じ、今回の改正の趣旨及び自転車の基本的な交通ルールの周知徹底を図るとともに、自転車利用者による交通違反に対する指導取締りについては、引き続き、自転車指導啓発重点地区・路線を中心に、指導警告を原則とし、悪質・危険な違反行為については積極的な検挙措置を講ずること。
2 仮免許及び運転免許試験の受験資格の年齢要件の引下げに係る周知と教養の徹底
今回、仮免許及び運転免許試験の受験資格に係る年齢要件を引き下げることで、高校を卒業後に就職を予定しているいわゆる「早生まれ」の高校生であっても高校在学中の早期に仮免許を取得することができるようになり、就職までに準中型免許又は普通免許を取得しやすくなるところ、教育委員会や自動車教習所等の関係機関と連携し、今回の改正の趣旨の周知徹底を図ること。
なお、改正法により、準中型免許及び普通免許の運転免許試験に係る年齢要件は仮免許と同様に引き下げられることとなるが、当該免許の取得に係る年齢要件については引き続き18歳となることから、18歳に満たない者が運転免許試験に合格したとしても、当該運転免許を与えるのはその者が18歳になってからとなる点について、警察職員に対する教養を徹底し、運転者管理システムの機能等を活用するなどして、欠格事由に該当する者への誤交付が行われないようにすること。
また、必要に応じて、運転免許試験に合格した者が運転免許証の交付を受ける前に本県以外の都道府県に転出したときは、運転免許証の交付を受けるためには、転出先の公安委員会に対して運転免許試験成績証明書を提出する必要があることを適切に教示すること。
3 その他施行に向けた準備
改正府令により、仮免許証、交通反則告知書及び交通反則通告書の様式が変更となるところ、令和8年4月1日より前に交付する仮免許証等については、旧様式を使用することが可能であるが、同日以降に交付するものについては、新様式を使用せず、旧様式を使用する場合には、同様式に所要の修正を加えて使用する必要があるため、その確認を徹底すること。
(参考資料)
○ 道路交通法の一部を改正する法律(令和6年法律第34号)の官報の写し及び新旧対照条文
○ 道路交通法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令(令和7年政令第221号)の官報の写し
○ 道路交通法施行令の一部を改正する政令(令和7年政令第222号)の官報の写し及び新旧対照条文
○ 道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令(令和7年内閣府令第57号)の官報の写し



































