○証拠物件の合理的かつ適正な管理等について(通達)
令和8年3月25日
達(刑総、生企、交企、公)第177号
[原議保存期間 5年(令和13年3月31日まで)]
[有効期間 令和13年3月31日まで]
証拠物件の管理等については、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)、刑事訴訟規則(昭和23年最高裁判所規則第32号)及び犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)に定めるもののほか、証拠物件の合理的かつ適正な取扱いについて(平成22年10月8日付け達(刑総、生企、交企、公)第456号)、証拠物件である電磁的記録媒体の適正な取扱い及び保管について(平成23年5月16日付け達(刑総、生企、交企、公)第181号)、証拠物件の適正な取扱い及び保管の徹底について(平成24年3月29日付け達(刑総、鑑)第119号)、証拠物件及び証拠資料の適正な収集、保管及び管理の徹底について(平成26年2月28日付け達(刑総、鑑)第75号)及び冷凍庫によるDNA型鑑定資料の適正な管理について(平成22年10月28日付け達(鑑、生企、刑総、交企、公)第479号)(以下これらを「旧通達」という。)等に基づき行っているところ、この度、旧通達を整理し、証拠物件の管理の基本等について取りまとめたので、引き続き、証拠物件の合理的かつ適正な管理等に努められたい。
なお、旧通達は廃止する。
記
1 証拠物件の管理の基本
証拠物件の管理を行う者は、以下の点に留意するものとする。
(1) 証拠価値の保全
証拠物件は、犯罪の立証のための重要な資料であるだけでなく、所有者等の私法上の権利に関わるものであるため、滅失、毀損、変質、変形、混合又は散逸(以下「滅失等」という。)することがないように注意し、必要により写真撮影するなど証拠価値の保全に努めること。
(2) 個人保管の禁止
証拠物件の滅失等の事故が発生することがないよう、必ず定められた保管設備において証拠物件を保管すること。
(3) 速やかな送致・還付等
ア 送致(送付を含む。以下同じ。)すべき証拠物件は、検察庁と協議して、早期の送致に努めること。
また、検察庁に送致した証拠物件で警察において保管しているものについても、検察庁と協議するなどして、早期の保管転換に努めること。
イ 捜査上留置の必要がない証拠物件は、可能な限り速やかに、還付(仮還付を含む。以下同じ。)、還付等公告又は廃棄の手続を執ること。
2 定義
この通達における用語の定義は、次のとおりとする。
(1) 証拠物件
犯罪捜査に関して押収した物件及びその換価代金をいう。
(2) 仮出し
取調べ、鑑定嘱託等のため、証拠物件を保管設備から一時的に出すことをいう。
(3) 返納
仮出しを受けた証拠物件を保管設備に戻すことをいう。
(4) 払出し
送致、移送、還付、還付等公告に基づく国庫帰属、廃棄、換価処分等のため、証拠物件の保管を解除することをいう。
(5) 一括保管
県本部事件主管課又は署(以下「署等」という。)において保管中の証拠物件の適正な管理に支障が生じることから、当該証拠物件を福島県警察証拠物件保管センター(以下「保管センター」という。)において保管することをいう。
(6) 封印措置
同一事件に係る複数の証拠物件を、一つの箱、袋等(以下「箱等」という。)に収納し、封印を施すことをいう。
(7) 開披
仮出し等のため、封印措置が執られた箱等を開封することをいう。
3 証拠物件の管理
証拠物件の管理は、原則として次のとおりとする。
(1) 管理体制
ア 管理責任者
証拠物件の管理等について総括的に責に任ずる者として、次の者をもって充てる。
(ア) 県本部
県本部事件主管課の課長
(イ) 署
署長
イ 保管責任者
保管設備の管理及び証拠物件の保管について責に任ずる者として、管理責任者が指定する次の者をもって充てる。
なお、保管責任者は取扱責任者を兼務することができる。
(ア) 県本部
管理責任者が指定した当該事件を担当する警部以上の者
(イ) 署
事件担当課長又は課長代理(課長制でない係にあっては係長の職にある者)の職にある者
ウ 取扱責任者
証拠物件の取扱いについて責に任ずる者として、管理責任者が指定する者をもって充てる。
エ 職務代行者
宿日直時間帯等、保管責任者又は取扱責任者の不在時にその任務を代行する者として、管理責任者が指定する者をもって充てる。
(2) 保管設備
ア 管理責任者は、所属内の適当と認められる場所に、十分な広さ、構造等を有し、かつ、施錠機能を具備した次の証拠物件専用の設備の設置に努めること。
(ア) 特殊物件保管庫
現金、有価証券、貴金属その他の貴重品、銃砲刀剣類、火薬類及びこれらに類する物、覚醒剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法、あへん法及び大麻草栽培の規制に関する法律の各違反に係る薬物等を保管するための設備
(イ) DNA型鑑定資料保管庫
DNA型鑑定資料を保管するための冷凍庫(マイナス20℃以下で冷凍保存が可能なもの)
(ウ) 証拠物件保管庫
(ア)及び(イ)以外の物件を保管するための設備
イ 保管設備内は、年別及び事件別に区分するなどして、他の事件の証拠物件と混同しないような措置を執ること。
ウ 証拠物件が大量、長大物件であるなどの理由により、定められた保管設備に保管できないときは、一括保管、当該証拠物件が保管可能な設備を一時的に設置する方法等により保管すること。
(3) 管理要領
ア 保管開始時
(ア) 警察官は、証拠物件について、押収後直ちに還付することが確実な場合や鑑定嘱託のため尿、血液等を押収した場合で、当該押収物を直ちに鑑定し、かつ、鑑定後は残量を廃棄することが確実なときを除き、証拠物件管理簿(証拠物件管理要綱様式第2号)を作成し、当該証拠物件を適宜の箱等により確実に整理をするなどした上で、速やかに保管責任者に引き継ぐこと。
(イ) 保管責任者は、上記(ア)により引継ぎを受けた場合には、証拠物件と関係書類を照合し、証拠物件の滅失等異状の有無を確認するなどした上で、速やかに取扱責任者に証拠物件の保管を依頼すること。
(ウ) 取扱責任者は、上記(イ)により保管の依頼を受けた場合には、証拠物件と関係書類を照合し、証拠物件の滅失等異状の有無を確認するなどした上で、直ちに証拠物件を適切な方法で保管設備に保管すること。
イ 仮出し時
(ア) 警察官は、保管設備に保管中の証拠物件の仮出しを行う場合には、保管責任者にその理由を明らかにして承認を受けた上で、取扱責任者に証拠物件の仮出しを依頼すること。
(イ) 取扱責任者は、上記(ア)により仮出しの依頼を受けた場合は、証拠物件と関係書類を照合し、証拠物件の滅失等異状の有無を確認するなどした上で、警察官に証拠物件を引き継ぐこと。
(ウ) 警察官は、上記(イ)により仮出しを受けた場合には、証拠物件を適切な方法で取り扱い、仮出しの必要がなくなったときは、速やかに返納の手続を行うこと。
ウ 返納時
(ア) 警察官は、仮出し中の証拠物件を返納する場合には、保管責任者に承認を受けた上で、取扱責任者に証拠物件を返納すること。
(イ) 取扱責任者は、上記(ア)により返納を受けた場合には、証拠物件と関係書類を照合し、証拠物件の滅失等異状の有無を確認するなどした上で、直ちに証拠物件を適切な方法で保管設備に保管すること。
エ 払出し時
(ア) 警察官は、保管設備に保管中の証拠物件の払出しを行う場合には、保管責任者にその理由を明らかにして承認を受けた上で、取扱責任者に証拠物件の払出しを依頼すること。
(イ) 取扱責任者は、上記(ア)により払出しの依頼を受けた場合には、証拠物件と関係書類を照合し、証拠物件の滅失等異状の有無を確認するなどした上で、警察官に証拠物件を引き継ぐこと。
(4) 点検要領
ア 保管設備
管理責任者は6か月ごとに1回以上、保管責任者は随時、施錠機能の異状の有無、証拠物件の整理状況の適否等を確認するなど、保管設備を点検すること。
イ 保管設備に保管中の証拠物件
(ア) 管理責任者は6か月ごとに1回以上、保管責任者は随時、証拠物件と関係書類の照合、証拠物件の滅失等異状の有無を確認するなど、保管中の証拠物件を点検すること。
(イ) 保管責任者は、随時、証拠物件に係る事件の公訴時効を確認するとともに、証拠物件の捜査上の留置の必要性を検討すること。
(5) 引継要領
管理責任者、保管責任者又は取扱責任者が交替するときは、証拠物件に関する事務等について必要な引継ぎを行うなど、責任の所在を明確にしておくこと。
4 一括保管
一括保管の運用要領は、福島県警察証拠物件保管センターの運用要領の制定について(平成31年2月25日付け達(刑総、生企、交企、公)第40号)による。
5 封印措置
封印措置は、それが執られた箱等について、その異状の有無を確認することをもって、在中している証拠物件の点検に代えることができるようにしたものであり、原則として次のとおりとする。
(1) 取扱要領
ア 事前検討
封印措置が執られた箱等については、長期間開封されないことから、時間経過に伴う変質、変形、劣化等の危険性が認められる証拠物件については、封印措置の対象としてはならず、県本部事件主管課及び署等にあっては保管責任者が封印措置を行うに当たり、封印措置の適否等について検討を行うこと。
イ 封印措置
(ア) 封印及び開披状況の明確化
封印は、封印措置を執った箱等が容易に開披できず、かつ、開披した際には箱等に必ずその痕跡が残り、封印及び開披の状況が明確に確認できるように施すこと。
(イ) 複数人による封印
封印は、保管責任者等を含む複数人((ウ)において「封印者」という。)により、1点ずつ、証拠物件と関係書類の照合、証拠物件の滅失等異状の有無を確認した上で施すこと。
(ウ) 封印状況及び在中物件の明示
封印措置を執られた箱等には、封印年月日、封印者等の封印状況及び品名、個数等の在中物件を明示すること。
ウ 開披
(ア) 複数人による開披
開披は、保管責任者等を含む複数人((イ)において「開披者」という。)により、証拠物件と関係書類の照合、証拠物件の滅失等異状の有無を確認した上で行うこと。
(イ) 再封印の場合
開披して一部の証拠物件を取り出した後、同一の箱等を用いて、残りの証拠物件について封印を施すなどの場合には、箱等に、開披年月日、開披者等を明示した上で、上記イにより、改めて封印措置を執ること。
(2) 点検及び引継要領
封印措置が執られた箱等に在中する証拠物件については、箱等の封印状況及び異状の有無を確認することをもって、上記3(4)の各証拠物件の点検に代えることができる。
6 証拠物件の管理等に関する留意事項
(1) 記録化
上記3の証拠物件の管理又は上記5の封印措置を行うに当たっては、その経過や結果等について、事件ごとに確実に記録すること。
(2) 証拠物件の保管・点検の合理化
一括保管や封印措置を積極的に活用し、証拠物件の保管負担の軽減、点検等の合理化に努めること。
7 捜査上留置の必要がない証拠物件の処分の検討等
(1) 捜査上留置の必要がない証拠物件の処分の検討
検察官に送致前の証拠物件のうち、事件と関連性がない、又はその証拠としての性質や証拠価値に鑑み、捜査若しくは公判において証拠として利用できる見込みがないなどの理由により、捜査上留置の必要がないことが明らかであると認められるものについては、必要に応じ、検察官に対し、捜査上留置の必要がないことの判断に齟齬がないことを確認の上、以下の処分を検討すること。
ア 早期還付
押収物の還付を受けるべき者が判明している場合には、刑事訴訟法第222条第1項において準用する同法第123条第1項及び第124条第1項の規定により、還付を受けるべき者を十分に確認の上、早期に還付すること。
イ 還付等公告
押収物の還付を受けるべき者の所在が判明していないため、又はその他の事由によって、その物を還付することができない場合には、刑事訴訟法第499条の規定による還付等公告及びその後の処分(公売、廃棄等)を実施すること。
ウ 無主物かつ無価値物の廃棄
正当な権原を有する者が所有権を放棄したこと等により無主物かつ無価値物であることが明らかな場合又は事件現場等の状況から明らかに無主物かつ無価値物と認められる場合には、警察において押収物を廃棄することが可能であるため、本部長又は署長から必要な指揮を受け、証拠物件保存簿等にその経過を確実に記録した上で廃棄すること。
(2) その他の証拠物件の保管負担の軽減に向けた措置
上記(1)のほか、検察官から証拠物件の保管委託を受け、警察において証拠物件を保管している場合には、検察官との連絡を密にし、必要に応じ、捜査上及び公判対策上留置の必要がある証拠物件であるか否か等に関する検討を促し、証拠物件の早期処分を働きかけること。
(3) 証拠物件の処分経過の記録化
上記(1)により処分を行う証拠物件については、物の存在、形状等について疑義が生じないよう、当該処分に当たり、写真撮影等により記録するよう努めること。
8 特異な証拠物件に関する留意事項
(1) 遺留資料
ア 手続の適正確保
事件現場やその周辺に遺留された資料(以下「遺留資料」という。)を発見した場合には、原則としてこれを直ちに差押え、任意提出又は遺留領置の手続により押収し、証拠化すること。
また、遺留資料の中には、たばこの吸い殻、ちり紙、毛髪等(以下「たばこの吸い殻等」という。)の無主物かつ無価値物であって、事件現場等では事件との関連性や証拠価値の有無が明らかでないものもあるが、このような資料についても、可能な限り速やかに証拠化の要否を判断すること。
イ 適正な収集及び保存
客観証拠の証明力を公判において的確に立証するためには、資料の収集及び保存を一層適正に行うとともに、その状況を記録することが必要であるところ、遺留資料を収集する際には、遺留状況や採取状況を写真撮影等により記録するとともに、滅失等の防止措置を講じた上で保管し、管理状況を書面に記録するなど、適正な収集及び保存を徹底すること。
ウ 遺留領置を差し控えるべき場合
たばこの吸い殻等、その物件が客観的に無価値と認められる物件であっても、被疑者その他の者の居宅敷地内に存在するなどして、被疑者等が所有権の侵害等を主張することが想定される場合には、遺留領置は控え、可能な限り、令状による差押えを行い、又は任意提出を受けること。
エ 検察官との早期かつ的確な情報共有
証拠化した遺留資料については、検察官と早期かつ的確に情報共有を行うよう努めること。特に、裁判員裁判対象事件及び社会的反響の大きい事件に関しては、検察官とより一層緊密に連携し、遺留資料及びこれに関する捜査資料について、適時適切に検察官に通知した上で、必要に応じ、それらの送致、廃棄、還付等の措置について協議すること。
(2) DNA型鑑定資料
ア DNA型鑑定資料の保管に当たっては、鑑定の有無にかかわらず、冷凍し、又は乾燥させるなど適切な方法により、その変質を防止するなど、証拠価値を保全するとともに汚染防止及び同一性の確保に配意すること。
イ DNA型鑑定資料は、次のとおり解凍を確実に防止すること。
(ア) 停電等の異常が発生した場合には、復旧見込み時間に応じて、非常用電源や可搬式発電機等を使用すること。
(イ) 鑑定嘱託等のためDNA型鑑定資料の仮出し等を行う場合には、長時間常温下に置かれないよう保冷バッグ等を用いて保管、搬送等すること。
(3) 電磁的記録媒体及び端末装置
ア 押収時
(ア) 電磁的記録媒体及び端末装置(以下「電磁的記録媒体等」という。)に係る押収については、必要な電磁的記録が記録されている電磁的記録媒体等を押収する場合と、必要な電磁的記録を別の電磁的記録媒体に複写してこれを押収する場合とが考えられるが、単に現存するファイルの確認ができれば良いのか、削除ファイルの復元も必要になり得るのかなど、捜査上の必要に応じた適切な押収方法を選択すること。
(イ) ファイルの更新日時等が証拠となることもあることから、押収現場において、端末装置の操作等をした場合は、その状況を捜査報告書等で明らかにすること。また、その際には、情報技術解析部門と連携するなど、電磁的記録の慎重な取扱いに努めること。
(ウ) 周辺機器と接続された端末装置等を押収する際には、解析時に押収時の状況を再現できるよう、接続状況等を明らかにする図面の作成や写真撮影等を行うこと。
イ 解析時
(ア) 押収した電磁的記録媒体に記録されている電磁的記録が改変、消去等されることを防ぐため、複写した電磁的記録を対象として解析を行うこと。ただし、電磁的記録の複写が困難であり、押収した電磁的記録媒体に記録されている電磁的記録を直接解析する場合は、書き込み防止装置を使用するなど解析対象物への書き込みを防止する措置を講じた後、解析を行うこと。
なお、押収した電磁的記録媒体に当該措置を講ずることができない場合は、端末装置の操作等に係る状況を捜査報告書等で明らかにすること。
(イ) 削除ファイルの復元等、解析に高度な技術が伴う場合には、情報技術解析部門に依頼するなど、証拠価値を損なうことのないよう配慮して解析を行うこと。
ウ 保管時
電磁的記録媒体及び端末装置は、外的要因による故障、電磁的記録の消失等のおそれがあることから、保管する電磁的記録媒体等の特性に応じ、日光や磁気、高温等を避けるなどの措置を講じて適切に保管すること。
(4) 運搬又は保管に不便な証拠物件
運搬又は保管に不便な証拠物件について、保管設備や一括保管により保管せず、刑事訴訟法第121条等に基づき、看守者を置き、又は所有者その他の者に承諾を得て保管させるときは、盗難、滅失等を防止させるため、相当な保管方法を執るよう依頼し、できる限り保管請書(司法警察職員捜査書類基本書式例様式第39号)を徴すること。