○盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律等の解釈運用基準について(通達)
令和8年5月29日
達(生企)第305号
[原議保存期間 10年(令和19年3月31日まで)]
[有効期間 令和19年3月31日まで]
このたび、本年6月1日から盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(令和7年法律第75号。以下「法」という。)が全面施行されることに伴い、警察庁生活安全局から、別添のとおり、法の解釈及び運用の基準が示されたことから、事務処理上誤りのないようにされたい。
なお、本通達の実施に伴い、盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律の一部施行等に係る趣旨、要点及び運用上の留意事項について(令和7年8月28日付け達(生企、捜三、組対、外事)第390号)は、廃止する。
別添
盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律等の解釈運用基準
盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律(令和7年法律第75号。以下「法」という。)、盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律施行令(令和7年政令第301号。以下「令」という。)及び盗難特定金属製物品の処分の防止等に関する法律施行規則(令和8年国家公安委員会規則第8号。以下「規則」という。)の施行に関し必要な解釈及び運用の基準は次のとおりとする。
本解釈及び運用の基準で使用される用語は、特に説明がされている場合を除き、法、令及び規則で使用されている用語である。(例:「本人確認」とは、法第7条第1項に規定する本人確認をいう。)
目次
第1 目的(法第1条関係)
第2 定義(法第2条第1号~第4号関係)
第3 特定金属くず買受業の届出(法第3条及び附則第2条関係)
第4 届出番号等の通知(法第4条関係)
第5 氏名等の表示(法第5条関係)
第6 名義貸しの禁止(法第6条関係)
第7 本人確認(法第7条関係)
第8 本人確認記録の作成(法第8条関係)
第9 取引記録の作成等(法第9条関係)
第10 警察官への申告(法第10条関係)
第11 指示(法第11条関係)
第12 営業停止命令(法第12条関係)
第13 報告徴収及び立入検査(法第13条関係)
第14 盗難特定金属製物品に関する情報の提供(法第14条関係)
第15 指定金属切断工具の隠匿携帯の禁止(法第2条第5号及び第15条関係)
第16 特定金属製物品の盗難の防止に資する情報の周知(法第16条関係)
第17 条例との関係(法第20条関係)
第18 罰則(法第21条~第25条関係)
第19 入管法等の一部改正(法附則第5条及び第6条関係)
第1 目的(法第1条関係)
法は、太陽光発電施設からの金属ケーブル窃盗をはじめとする金属盗が増加しており、国民経済に大きな影響が及んでいること等を踏まえ、特定金属製物品の窃取の防止に資することを目的に制定されたものである。
具体的には、特定金属くず買受業を営む者に係る措置を講ずることにより、窃盗犯による盗品の換金(盗難特定金属製物品の処分)を困難にさせ、また、指定金属切断工具の隠匿携帯を禁止することにより、特定金属製物品が窃取される前の先制的な対処を可能とし、さらに、盗難防止情報の周知により、事業者による効果的な防犯対策を促進させることで、特定金属製物品の窃取を防止することとしている。
第2 定義(法第2条第1号~第4号関係)
1 特定金属製物品(法第2条第1号関係)
「特定金属製物品」とは、法においてその窃取の防止に資することを目的とする金属製物品である。
(1) 「特定金属」
法の規制対象を限定する趣旨から、被害実態等を踏まえ、金属の中でも特に金属盗対策が必要なものを「特定金属」として規定しているものである。
なお、「銅その他・・・政令で定める金属」としているとおり、被害実態の多い銅については法に明記するとともに、その時々の犯罪情勢に応じて法の対象となる金属を追加できるよう、銅以外の金属については政令において定めることとしている。他方、現下の犯罪情勢等を鑑みるに、銅以外の金属を政令で特定金属として追加で定める必要性までは認められず定めていないことから、現時点で特定金属に該当する金属は銅のみとなる。
(2) 「銅」
金属ケーブルをはじめ銅を使用して製造された物品の盗難が多発しているところ、そのような物品は窃取が比較的容易な屋外に置かれていることが多く、また、金属くず買受業者等において容易に換金することができる状況にある。さらに、銅は、他の金属に比べて価値が高く、需要の高い状況が中長期的に続くことも見込まれ、買受けに際して特に盗品が流入しやすいといえることから、法において特定金属として銅を定めている。
なお、銅から成る合金については、2(5)を参照のこと。
(3) 「犯罪の状況、当該金属の経済的価値その他の事情に鑑み、当該金属を使用して製造された物品の窃取を防止する必要性が高い金属」
「犯罪の状況、当該金属の経済的価値その他の事情」とは、特定金属を定めるに当たって判断するための基準である。
具体的には、
○ 当該金属を使用して製造された物品に係る窃盗の認知件数及び被害額
○ 当該金属の取引価格の状況
等から盗難を防止する必要性を総合的に考慮して判断することとなる。
法施行時は銅のみを特定金属とし、令において鉄やアルミ等その他の金属を定めることとはしていないが、これらの金属が今後、上記基準に該当し、法によって盗難防止を図る必要性があると判断された場合には、特定金属として政令で定める可能性がある点に留意されたい。
(4) 「主として特定金属により構成されているもの」
法に基づく措置の対象が過度に広範にならないよう、全ての金属製物品ではなく、主として特定金属により構成されているものに対象を限っているものである。
「主として特定金属により構成されている」とは、物品の重量又は価格が2分の1以上を特定金属が占めていることをいう。
2 特定金属くず(法第2条第3号関係)
(1) 「主として特定金属により構成されている」
1(4)のとおり、「主として」とは、物品の重量又は価格の2分の1以上を占めていることをいう。したがって、例えば、エアコンディショナーの室外ユニットに係るくずについては、特定金属たる銅の重量は2分の1以上を占めなかったとしても、価格は2分の1以上を銅が占めることが通常であり、その場合は特定金属くずに該当することとなる。銅の占める割合を不当に低く算出するなどして、法の潜脱を図る者も考えられるところ、通常の市場価格によって判断することも考えられる。
(2) 「金属くず」
「金属くず」とは、何らかの加工が施されるなどの理由により、金属製物品自体の状態が変化したり、当該金属製物品から分離されたりするなどして、当該金属製物品の本来の用法に従って使用することが不可能になったものをいう。
なお、「特定金属くず」の状態のまま流通している限りにおいて法の対象となるものの、特定金属くずが溶解等され、もはや「金属くず」の状態でなくなったものについては法の対象とならないことに留意されたい。
(3) 「物品を製造する過程において生ずるもの」
新品の金属製物品等を製造する段階において生ずる金属くず(いわゆる「端材」)は、法でその窃取の防止を目的とする「特定金属製物品」に由来するものではなく、買受けにおいて盗品が流入する可能性が低いことから、「物品を製造する過程において生ずるもの」を法の対象外とした。
(4) 古物との関係について
その物の本来の目的に従って使用することができる物品は古物営業法(昭和24年法律第108号)第2条第1項に規定する「古物」に該当する。金属くずたる「特定金属くず」と「古物」が重複することは概念上想定されないが、両者を共に扱う事業者も多いため、特定金属くずから「古物に該当するもの」を除くことを確認的に規定している。
(5) 銅を含む合金について
一般的に青銅(銅とすずの合金)や真鍮(銅と亜鉛の合金)は銅の含有率が50%を超え、主として銅から成る合金である。これらの合金の金属くずを買い受ける場合、当該金属くず全体における銅の占める重量又は価格が2分の1以上になるのであれば、主として特定金属(銅)により構成されるといえ、特定金属くずに該当することとなる。
3 特定金属くず買受業(法第2条第4号関係)
特定金属くずの買受けを行う営業をいうが、「買受け」に「買受けの対価として金銭以外の財産上の利益を提供する場合」を含むこととしているのは、例えば、貴金属等の一定の経済的価値を有する物品の提供によって対価を支払う場合であっても換金と同様の効果が得られることから、そうした取引も「買受け」に該当することを明確化し、法の潜脱を防止する趣旨である。
第3 特定金属くず買受業の届出(法第3条及び附則第2条関係)
1 特定金属くず買受業の開始の届出(法第3条第1項関係)
(1) 営業所ごとの届出
「営業所」とは、人の営業の本拠であって、営業全般についての法律的事実的行為の責任の所在場所をいい、法第13条第1項並びに規則第4条及び第8条を除いて、営業所は特定金属くずの買受けを行う営業所に限定している。
したがって、本人確認記録や帳簿を保存しているのみであり特定金属くずの買受けを行わない営業所については届出を行う必要はない。
また、営業所ごとに当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に対して行う必要があることから、一の特定金属くず買受業を営もうとする者が同一の都道府県内で複数の営業所を設ける場合は、それぞれの営業所ごとに届出を行う必要がある。
なお、営業所を設けずに行商のみを行う者については、その住所又は居所を営業所とみなして営業所と同等の責任の所在場所とすることとする。
(2) 開始届出書の提出(規則第1条第1項関係)
開始届出書の提出を受けた警察署においては、記載漏れの有無、添付書類の有無等の形式上の要件について確認すること。
届出については、形式上の要件に適合した届出が提出先とされている警察署に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとなるが(行政手続法(平成5年法律第88号)第37条)、届出が形式上の要件に適合していない場合は、当該届出によって届出義務が履行されたこととはならないため、当該届出をした特定金属くず買受業を営む者に対して必要な加除修正等の内容を教示すること。
(3) 届出事項(法第3条第1項及び規則第1条第4項関係)
ア 住所(法第3条第1項関係)
「住所」とは、届出を行う者が法人の場合には「主たる事務所の所在地」をいい、会社については「本店の所在地」をいう(会社法(平成17年法律第86号)第4条)。
イ 代表者(規則第1条第4項第1号関係)
特定金属くず買受業を営もうとする者が法人である場合の「その代表者」とは、法令等により法人を代表する権限を有する者をいい、例えば、株式会社の代表取締役等が該当する。
ウ 営業所の電話番号、電子メールアドレスその他の連絡先に係る情報(規則第1条第4項第3号関係)
法第14条に規定する盗難特定金属製物品に関する情報を提供するためのものであることから、電子メールアドレスを記載することが望ましい。
エ 特定金属くずの保管場所の所在地(規則第1条第4項第4号関係)
「特定金属くずの保管場所」とは、営業所で買い受けた特定金属くずを保管する場所全てをいう。
特定金属くずの保管場所は法第13条に基づく立入検査の対象となることから届出事項としたものであり、開始届出書には当該場所の住所を記載することとし、営業所の敷地内に特定金属くずを保管している場合はその旨を記載する必要がある。
また、複数の保管場所がある場合は全ての場所について記載することとし、営業所の所在地を管轄する公安委員会以外の公安委員会が管轄する場所において特定金属くずを保管している場合は、当該場所についても記載する必要がある。
(4) 添付書類(規則第1条第5項関係)
添付書類を添付せずに開始届出書を提出した場合は、法第3条第1項の届出義務が履行されたとは認められない(行政手続法第37条)。
「営業所の平面図」は、建築確認申請時に提出する青写真に、出入口の位置、特定金属くずを買い受ける場所等の必要な事項を記載したもので足りる。
営業所の敷地内に特定金属くずを保管する場合は、営業所の平面図にその旨を記載することとし、営業所の敷地外に別途特定金属くずの保管場所を設けている場合は当該場所に係る平面図を提出することとする。
「営業所及び特定金属くずの保管場所の略図」は、営業所と特定金属くずの保管場所との位置関係が明らかとなるような略図をいう。
2 既存の事業者に係る経過措置(法附則第2条関係)
法の施行日である令和8年6月1日において特定金属くず買受業を営む者については、届出を行うための3か月の猶予期間を設け、令和8年8月31日までの間は届出を行わずとも引き続き特定金属くず買受業を営むことができることとし、同日までに営業所の所在地を管轄する公安委員会への届出を行わなければならない。
他方で、本人確認や取引記録の作成等の措置についての猶予期間はなく、令和8年6月1日からこれらの措置を履行する必要がある点に留意すること。
3 特定金属くず買受業の廃止等の届出(法第3条第2項及び規則第2条関係)
(1) 廃止届出書又は変更届出書の提出(規則第2条第1項関係)
特定金属くず買受業を廃止した場合又は届出事項を変更した場合、公安委員会に対して廃止届出書又は変更届出書を提出することとしているところ、金属くず条例が施行されている道府県において廃止や変更に係る様式が制定されている場合であっても、規則別記様式第2号又は第3号を用いること。
(2) 営業所の所在地を変更する場合
営業所の所在地が変更となった場合は業の実質が変わるといえるため、変更に係る届出ではなく、廃止に係る届出を行った上で新たに開始に係る届出をする必要がある。
なお、区画整理等で営業所の「場所」の変更はないものの住居表示が変更となった場合は新たに開始に係る届出をする必要はない。
(3) 法人の代表者に変更が生じた場合
異動等により法人の代表者に変更が生じたときは、当該法人が有する全ての営業所について、その所在地を管轄する公安委員会に、変更の届出をする必要がある。
(4) 他者への営業の承継について
届出を行った者が死亡した場合や法人が合併・分割等により消滅した場合については、業の実質が変わるといえるため、営業の他者への承継は認められない。したがって、このような場合については廃止に係る届出を行った上で新たに開始に係る届出をする必要がある。
なお、そのような場合において、新たに開始の届出を行ったときは、本人確認記録や取引記録については引き続き保存することが望ましい。
(5) 届出期限に係る起算日(規則第2条第2項関係)
規則第2条第2項中「特定金属くず買受業の廃止又は届出事項の変更の日から十四日以内」とは、当該廃止又は変更の日を算入せず、その翌日から起算して十四日以内をいう(民法(明治29年法律第89号)第140条)。
第4 届出番号等の通知(法第4条関係)
通知の方法については、通知したことを明確化する観点も踏まえ、口頭による通知、任意の様式に必要事項を記載して交付、電子メールの文面に必要事項を記載して送信するなどのいずれかの方法により、各都道府県警察の実情に応じて行うこと。
また、開庁日に届出を受理した場合は、やむを得ない場合を除き、即日通知を行うこと。オンライン申請であって閉庁時間に届出が到達した場合は、原則として翌営業日に通知を行うこと。
なお、届出者が書面等の受領を拒否する場合も想定されることから、通知した日時、通知した相手方、通知内容等を確実に記録しておくこと。
第5 氏名等の表示(法第5条関係)
1 表示の場所(法第5条第1項)
「公衆の見やすい場所」とは、営業所の入口等の通常街路等を通行する一般公衆において、社会通念上見やすいと認められる場所をいう。
2 表示の方法(規則第3条第1項関係)
氏名等の表示の様式例は、別記様式第1号を標準とする。法第5条第1項に規定されている事項が網羅されていれば、必ずしもこの様式による必要はなく、例えば金属くず条例を制定している道府県にあっては、法に基づく表示と条例に基づく表示を一つにまとめることも許容される。
また、規則第3条第1項において「表示に用いる文字を明瞭に判読できる大きさ及び書体とする」としていることから、氏名等の表示は、明瞭かつ通常人が読める大きさとすることが望ましい。
3 ウェブサイトへの表示(規則第3条第2項及び第3項関係)
(1) ウェブサイトへの表示が免除される場合(規則第3条第2項関係)
ウェブサイトへの表示については、①常時使用する従業者の数が5人以下の場合又は②当該届出をした特定金属くず買受業を営む者が管理するウェブサイトを有していない場合は、ウェブサイトへの表示義務が免除されることに留意すること。したがって、常時使用する従業者の数が5人以下の特定金属くず買受業を営む者については、ウェブサイトへの表示義務が一律に除外されるため、自社のウェブサイトを設けていたとしても、当該特定金属くず買受業を営む者の表示義務は除外される。
(2) 「常時使用する従業者」
「常時使用する従業者」とは、労働基準法(昭和22年法律第49号)第20条に定められている「あらかじめ解雇の予告を必要とする者」である。したがって、会社役員及び個人事業主は、あらかじめ解雇の予告をする者に該当しないため、常時使用する従業者には該当しないと解される。
(3) 「ウェブサイト」
ウェブサイトは、例えば当該事業者が他の事業者に委託して運用しているウェブサイトも含み、トップページ等消費者の目につきやすい箇所に氏名等を明瞭に表示することとする。
第6 名義貸しの禁止(法第6条関係)
法第3条第1項に規定する届出をしていない者に名義を貸すことのみならず、届出をしている者に名義を貸すことも禁じているものである。
また、届出をした者が自ら特定金属くず買受業を営まずに他人に名義を貸した場合に限らず、届出をした者が自己の名義で特定金属くず買受業を営みつつ、他人に名義を貸した場合にも、本条違反が成立する。
第7 本人確認(法第7条関係)
1 趣旨
法の制定以前、いわゆる金属くずについては、特段の本人確認等を受けることもなく、現金決済という匿名性の高い決済手段を用いて、即時かつ容易に換金することが可能となっていた。法においては、特定金属くず買受業を営む者に対して厳格な本人確認義務を課すことで、犯行グループが窃取した特定金属くずを国内において換金すること自体を困難とし、現金化という最終目的を阻害することにより、犯行自体を断念させる効果を発揮することを期待するものである。また、盗品の流通防止の観点から、事後捜査においても取引の追跡を可能とするものである。
2 本人確認義務の主体
本人確認は、原則として特定金属くず買受業を営む者が行うこととなるが、本人確認自体の委託を妨げるものではない。他方で、委託された者が行った本人確認に不備があれば、委託元である特定金属くず買受業を営む者に帰責する。
また、本人確認義務の主体は「特定金属くず買受業を営む者」であり、法第3条第1項に基づく届出をしている事業者に限定していないことから、同届出をしていない事業者も特定金属くずの買受けを行う場合には本人確認を行い、本人確認記録も作成する必要がある。
3 写真付き本人確認書類の有効期間
有効期間の切れた写真付き本人確認書類については、その記載事項の公的証明力が担保されないため、有効な本人確認書類とは認められない。
4 本人確認の時期
原則として、本人確認は、その取引の際に行う必要がある。この点、特定金属くず買受業を営む者については、例えば同一の取引先から一か月に複数回金属くずの持込みがあり、月末締めの代金翌月払いといった取引も想定されるところである。こうした場合には、全体で一つの取引と解して、買取代金の支払の時点までに本人確認を行えばよい。一方、買受けの場で毎回現金で支払いを行う場合には、都度本人確認が必要である。
5 「特定金属くず買受業を営む者が提供するソフトウェア」(規則第4条第1項第1号ロ関係)
「特定金属くず買受業を営む者が提供するソフトウェア」には、特定金属くず買受業を営む者の委託先が開発したソフトウェアや、第三者が開発したソフトウェアも含まれる。特定金属くず買受業を営む者には、取引の相手方によるなりすまし等の防止が求められることから、画像が加工されないことを確実に担保するため、ソフトウェアは画像の加工機能が無いものである必要がある。
なお、相手方の写真付き本人確認書類の撮影及び送信の方法を特定金属くず買受業を営む者が提供するソフトウェアに限定する趣旨は、撮影後、画像が加工されることを防止することであるため、特定金属くず買受業を営む者が提供するソフトウェア以外を使用してあらかじめ撮影された画像の送信を受けることは認められない。
特定金属くず買受業を営む者は、相手方から本人確認書類や容貌の画像情報の送信を受ける際、事前に撮影した写真を撮影させたものではないことを確認するための措置を採る必要があり、例えば、確認時にランダムな数字等を相手方に示し、一定時間内に相手方に当該数字等を記した紙と共に容貌や本人確認書類を撮影させ直ちに送信させることなどが想定される。
6 「写真付き本人確認書類の厚みその他の特徴」
写真付き本人確認書類の外形、構造、機能等の特徴からその真正性の確認を行うことを目的としたものであり、住所等や写真を確認することができる面の全面を単に撮影させるだけでは分からないような特徴を撮影させる必要がある。例えば、本人確認書類の「厚み」を確認できるものとして、斜めに傾けて撮影した画像を送信することなどが想定される。
7 本人確認用画像情報(規則第4条第1項第1号ロ及びハ関係)
動画も含まれる。例えば、規則第4条第1項第1号ロの「本人確認用画像情報」について、リアルタイムビデオ通話により相手方の写真付き本人確認書類や容貌を確認することが想定される。
8 取引の任に当たっている自然人(法第7条第2項関係)
法第7条第2項に規定する取引の任に当たっている自然人は、以下の場合に該当することにより、当該相手方のために特定金属くずの買受けの任に当たっていると認められる。
(1) 買受けの相手方が自然人である場合は、取引の任に当たっている自然人が、以下のいずれかに該当する場合
ア 当該相手方の同居の親族又は法定代理人である場合
イ 当該相手方が作成した委任状その他の当該自然人が当該相手方のために当該特定金属くずの買受けの任に当たっていることを証する書面を有している場合
ウ 当該相手方に電話をかけることその他これに類する方法により当該取引の任に当たっていることが確認できる場合
エ アからウまでに掲げる場合のほか、特定金属くず買受業を営む者が当該相手方と当該取引の任に当たっている自然人との関係を認識していることその他の理由により当該自然人が当該相手方のために当該取引の任に当たっていることが明らかである場合
(2) (1)以外の場合(買受けの相手方が人格のない社団又は財団である場合を除く。)
ア (1)イに掲げる場合
イ 当該自然人が、当該相手方を代表する権限を有する役員として登記されている場合
ウ 当該相手方の本店等若しくは営業所又は当該自然人が所属すると認められる官公署に電話をかけることその他これに類する方法により当該自然人が当該相手方のために当該取引の任に当たっていることが確認できる場合
エ 当該自然人が当該相手方の法人の職員であることを証する書類を有している場合
オ アからエまでに掲げる場合のほか、特定金属くず買受業を営む者が当該相手方と当該自然人との関係を認識していることその他の理由により当該相手方のために当該取引の任に当たっていることが明らかである場合
第8 本人確認記録の作成(法第8条関係)
1 本人確認記録の様式
規則において様式を定めていないことから、規則第8条第1項各号に掲げる記録事項を網羅しているものであれば様式を問わず使用することができる。
なお、本人確認記録は、立入検査等の際に確認することが想定される。
2 「直ちに」(法第8条第1項関係)
本人確認を行った場合には、記録の正確性を担保する観点からは、担当者の記憶が鮮明なうちに可及的速やかに記録を作成すべきであるため、遅延は原則として許容しない趣旨で、「遅滞なく」ではなく「直ちに」と規定したものである。
3 「電磁的記録」(規則第7条第1項第1号関係)
「電磁的記録」とは、フラッシュメモリ等の電磁的記録媒体やハードディスク等への入力による記録をいう。
4 本人確認記録の保存(法第8条第2項関係)
本人確認記録は「当該本人確認に係る買受けの行われた日」から3年間保存しなければならないことから、取引記録に記載されている「買受けの日付」を基準として保存期間を算出する必要がある。3年を超えて保存することも許容される。
なお、本人確認記録については、本社や本部において保存することも可能であり、必ずしも買受けを行った営業所において保存しなければならないというものではない。しかしながら、報告徴収や立入検査の際には本人確認記録を確認する場合があることから、営業所において印刷や表示ができる状態にあることが望ましい。
第9 取引記録の作成等(法第9条関係)
1 取引記録作成義務の主体
「特定金属くず買受業を営む者」としており、法第3条第1項に基づく届出をしている事業者に限定していないことから、同届出をしていない事業者も特定金属くずの買受けを行う場合には取引記録を作成し、保存する必要がある。
2 取引記録の様式
規則において様式を定めていないことから、規則第10条各号に掲げる記録事項が網羅されているものであれば様式を問わず使用することができる。
なお、取引記録の作成義務は、買受業者による確認義務履行の担保などの目的で課しており、立入検査等の際に確認することが想定される。
3 「直ちに」(法第9条関係)
第8の2に記載のとおり。
なお、取引記録の作成については、特定金属くずを買い受けるごとに記載することとし、1週間分や1か月分をまとめて記載してはならない。
4 「電磁的記録」(規則第9条関係)
第8の3に記載のとおり。
5 「買受けの日付及び時刻」(規則第10条第2号関係)
盗品である金属くずが持ち込まれた場合、事後的に取引状況をトレースできるよう買受けの時間を記載することとしたものであることから、特定金属くずが持ち込まれた日付及び時刻を記載する必要がある。
6 「買い受けた特定金属くずの量」(規則第10条第3号関係)
特定金属くずの重量を記載する必要がある。
7 「買い受けた特定金属くずの特徴」(規則第10条第4号関係)
「銅線」「銅板」「金属管」等の形状に特徴がある場合はその旨を記載する必要がある。
特定金属は現時点で銅のみであることから、素材に係る記載は要しない。
なお、写真を撮影するなどの方法も許容される。
8 「買受けに係る代金の支払方法」(規則第10条第6号関係)
法第7条第1項ただし書及び規則第6条第1項第1号において、既に本人確認を行っている買受けの相手方であることを確かめる措置をとった買受けであって、当該買受けに係る代金の支払いをその者の口座への振込みにより行う場合は2回目以降の本人確認を不要とすることとしているところ、当該買受けが適法になされていたかを事後的に確認するためには、買受けに係る代金の支払い方法を記録することが重要である。
現金で代金を支払った場合は「現金」、口座への振込みにより支払った場合は「口座振込」等と記載する必要がある。
9 「口座番号」(規則第10条第7号関係)
8に記載のとおり、既に本人確認を行っている買受けの相手方の口座への振込みにより代金を支払う場合は本人確認が不要となるところ、当該買受けが適法になされていたかを事後的に確認するためには、当該口座の情報が重要である。
したがって、当該振込みの行われた口座番号に係る金融機関名、口座番号、口座名義等を記載する必要がある。
10 取引記録の保存(法第9条第2項)
取引記録は「当該取引に係る買受けの行われた日」から3年間保存しなければならないことから、取引記録に記録されている「買受けの期日」を基準として保存期間を算定する必要がある。
なお、取引記録については、本社や本部において保存することも可能であり、必ずしも買受けを行った営業所において保存しなければならないというものではない。しかしながら、報告徴収や立入検査の際には取引記録を確認する必要があることから、営業所において印刷や表示ができる状態にあることが望ましい。
第10 警察官への申告(法第10条関係)
1 「取引の態様その他の事実」
「取引の態様その他の事実」とは、取引の態様、買受けの相手方の属性、法第14条に基づき公安委員会から提供される盗難特定金属製物品に関する情報を基に総合的に判断することとなる。
盗品の疑いが認められる場合として、具体的には、
○ 公安委員会から提供された被害情報と、物品や量が一致する場合
○ これまで取引をしたことのない個人が一度に大量の特定金属くずを持参した場合
○ 在留期間が満了した在留カードを提示するなど本人確認書類に不自然な点がある場合
等が想定される。
2 「疑いがあると認めたとき」
「疑いがあると認めたとき」とは、特定金属くず買受業を営む者が疑いを主観的に抱く場合をいい、買い受けた特定金属くずの中に盗品の疑いのある特定金属くずが含まれるか否か調査する義務までを負うものではない。
3 申告の方法
申告の方法は限定しておらず、営業所の所在地を管轄する警察署への申告だけでなく、110番通報により申告することも可能である。
第11 指示(法第11条関係)
1 指示の主体
指示は、特定金属くず買受業を営む者が法令違反をしたと認める場合において、当該特定金属くず買受業を利用した盗難特定金属製物品の処分を防止するために必要があると認めるときに行うことができるものである。
特定金属くず買受業に関する指導監督は、実態を把握している届出に係る営業所の所在地を管轄する公安委員会が一元的に行うのが効果的かつ効率的であるため、指示は、違反行為を行った特定金属くず買受業を営む者に係る営業所の所在地を管轄する公安委員会が行うこととする。
2 「その代理人、使用人その他の従業者」
法令等により特定金属くず買受業を営む者を代理する権限を有する「代理人」、特定金属くず買受業を営む者との雇用関係に基づいてその業務に従事する「使用人」に加え、直接間接に特定金属くず買受業を営む者の指揮監督を受けてその業務に従事している者を幅広く含み、特定金属くず買受業を営む者との間に雇用関係が結ばれている必要はない。
3 「他の法令」
他の法令には金属くず条例も含まれる。
4 「盗難特定金属製物品の処分を防止するため必要があると認めるとき」
法の義務違反の状態が現存している場合のほか、その違反の状態は現存していないものの、その違反の原因となった事由が存続しており、その違反が偶発的なものではなく、繰り返されるおそれがあるような場合をいい、例えば、
○ 特定金属くずの買受けを行う場合における本人確認の方法について従業員に周知されていないため本人確認が不十分である場合など、本人確認義務を履行するための体制が十分に整備されていないと認められる場合
○ 取引記録の保存期間中に適切に管理していなかったため、保存すべき期間内にもかかわらず取引記録が廃棄されているなど、相手方の事後的な追跡が困難となっていると認められる場合
等がある。
5 「本人確認の確実な実施を図るための措置その他の必要な措置」
個別の態様に応じたものとなるが、例えば、
○ 従業員による本人確認が不十分な場合があると認められる場合については、本人確認書類の種類、本人確認義務が免除される場合等についての従業員教育を徹底すること
○ 保存すべき期間内にもかかわらず取引記録が廃棄されているなど、相手方の事後的な追跡が困難と認められる場合については、システムや簿冊等を用いて個々の取引記録に係る保存期間満了日を把握できるようにするなどして取引記録の保存を徹底すること
等を内容とする指示処分を行うこととなる。
なお、特定金属くず買受業を営む者が複数の営業所を営んでいる場合は、状況に応じ、その全て又は一部に指示処分を出すことができる。
6 他の公安委員会への通報
違反行為を行った特定金属くず買受業を営む者に係る営業所の所在地を管轄する公安委員会以外の公安委員会が違反行為を把握した場合には、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に対し、別記様式第2号の通報書により違反事実を通報すること。
7 指示の手続
法第11条の規定による指示は、別記様式第3号の様式を基準として各都道府県警察において定める様式の書面により行うこと。
なお、指示は不利益処分に該当するため、これを行う場合には、行政手続法第13条第1項第2号の規定に基づき、弁明の機会を付与しなければならないが、その手続については、聴聞及び弁明の機会の付与に関する規則(平成6年国家公安委員会規則第26号)において定めるところによること。
第12 営業停止命令(法第12条関係)
1 命令の主体
指示処分と同様、各営業所の実態を把握している各営業所の所在地を管轄する公安委員会から行うこととする。
2 「その代理人等」
第11の2に記載のとおり。
3 「他の法令」
第11の3に記載のとおり。
4 「盗難特定金属製物品の処分を防止するため特に必要があると認めるとき」
法の義務違反により重大な法益侵害が生じるおそれがある場合をいい、例えば、
○ 特定金属くず買受業を営む者の営業所において、常習的に本人確認が行われていなかったり、取引記録を一切作成していなかったりするなど自主的に法令を遵守する見込みがないと認められる場合
○ 特定金属くず買受業を営む者が、盗難特定金属製物品に由来する特定金属くずであることを知りながら、当該特定金属くずの買受けを行った場合
等がある。
5 「一部の停止」
事業の全部の停止を命じること以外全てを指し、
○ 特定金属くず買受業を営む者が営業する営業所のうち、一部の営業所のみを対象として営業の停止
○ 新規の顧客からの買受けの停止のみを命じるなど、特定金属くず買受業を営む者が行う特定金属くず買受業のうち、一部の営業のみの停止
等を命じることとなる。
6 他の公安委員会への通報
第11の6に記載のとおり。
7 営業停止命令の手続
法第12条の規定による営業停止命令は、別記様式第4号の様式を基準として各都道府県警察において定める様式の書面により行うこと。
なお、営業停止命令は不利益処分に該当するため、これを行う場合には、行政手続法第13条第1項第2号の規定に基づき、弁明の機会を付与しなければならないが、その手続は聴聞及び弁明の機会の付与に関する規則において定めるところによること。
第13 報告徴収及び立入検査(法第13条関係)
1 報告徴収及び立入検査の対象事業者等
「特定金属くず買受業を営む者」に対して報告徴収や立入検査を実施できることとしており、法第3条第1項に基づく届出をした事業者に限定していないことから、特定金属くず買受業に係る営業所及び特定金属くずの保管場所(以下「営業所等」という。)に対して、報告徴収又は立入検査を実施することができる。
また、法の施行に必要な限度においては、営業所の所在地を管轄する公安委員会以外の公安委員会であっても、報告徴収を求めることができる。同様に、立入検査についても、営業所等の所在地を管轄する都道府県警察以外の都道府県警察の職員であっても実施することができる。ただし、これらの場合においては、関係都道府県警察間において緊密な連絡を行うこととし、当該報告徴収又は立入検査を行う営業所等の所在地を管轄する都道府県警察に対しては確実に連絡すること。
2 報告徴収の手続
報告徴収は不利益処分に該当するが、行政手続法第3条第1項第14号の「報告又は物件の提出を命ずる処分その他その職務の遂行上必要な情報の収集を直接の目的としてされる処分及び行政指導」に該当するため、同法第13条第1項各号に規定する意見陳述のための手続を執る必要はない。
報告徴収の求めを書面により行う場合にあっては、行政不服審査法(平成26年法律第68号)第82条第1項に規定する教示すべき事項及び行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)第46条第1項各号に掲げる事項を書面で教示する必要があることに留意すること。この場合には、別記様式第3号の別紙の教示事項を参考にすること。
3 報告徴収に関する留意事項(法第13条第1項関係)
報告徴収に当たっては、
○ 報告徴収は、刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第197条第2項に基づく照会とは別個のものであるので、捜査について必要な事項の報告を求める場合には、同項に基づく照会によること。
○ 報告を求められた特定金属くず買受業を営む者は、その時点で保有している情報を報告すれば足り、報告を求められたことにより法的な調査義務を負うものではない。したがって、求められた情報を保有していない場合には、その旨を報告すれば、法第24条第3号違反には問われないこと。
○ 特定金属くず買受業を営む者から迅速に報告が得られるように、報告を求める内容は十分に特定すること。
に留意すること。
4 立入検査に関する留意事項(法第13条第1項関係)
立入検査に当たっては、
○ 立入検査は、証票の交付を受けた職員が行うこと。
○ 立入検査に当たっては、証票を携帯し、関係者にこれを提示すること。
○ 営業時間中に行うこと。
○ 立入検査は、犯罪捜査のために認められたものではないため、関係者への言動には十分注意するとともに、犯罪事実を発見した場合であっても、立入りに係る報告書等をそのまま捜査報告書等とすることのないようにすること。
○ 立入検査は、営業所等の責任者又はこれに代わるべき者の立会いを得て行うこと。
○ 「特定金属くずの保管場所」については、当該特定金属くず買受業を営む者が買い受けた特定金属くずが現に置いてある全ての場所をいうこと。
に留意すること。
5 証票に関する留意事項(法第13条第2項及び規則第11条関係)
規則別記様式第4号に規定する証票の運用に当たっては、
○ 証票は、法の届出に係る事務を担当する警察職員に限らず、管内に所在する特定金属くず買受業を営む者の監督に必要な範囲の警察職員に貸与すること。
○ 立入検査が適正かつ効果的に行われるように、立入検査の実施要領を定めるなどするとともに、立入検査に従事する警察職員に対しては、立入検査の手続、立入検査に当たっての着眼点、法令違反を発見した場合の措置等について所要の教養を実施すること。
○ 証票は、明文上材質の指定はないが、汚損等を防止するため、可能な限りラミネート加工等を施すことが望ましいこと。
に留意すること。
第14 盗難特定金属製物品に関する情報の提供(法第14条関係)
1 情報の提供の対象
連絡先を把握している届出をした事業者以外への情報提供を禁止するものではないことから、届出をした事業者以外の者に対する情報提供も可能である。
2 「盗難特定金属製物品に関する情報」
盗難特定金属製物品については古物のように記号や番号が付されていることはあまり想定されず被害品の特定は困難であることから、古物営業法第19条の品触れとは異なり、盗難特定金属製物品を特定するために必要な情報を意味するものではない。
提供する情報の具体例としては、
○ 特定金属製物品が窃取された場所や日時
○ 窃取された特定金属製物品の種類や量(被害金額)
等が想定される。
3 隣接都道府県警察への情報提供
金属盗は広範囲で遂行されることを踏まえ、隣接する都道府県警察に対しても2の情報を提供すること。
当該提供を受けた都道府県警察は、届出をした事業者等に対して当該情報を提供するよう努めること。
第15 指定金属切断工具の隠匿携帯の禁止(法第2条第5号及び第15条関係)
1 趣旨
一定の大きさ以上のケーブルカッターやボルトクリッパーといった、特定金属製物品の窃取の用に供されるおそれが大きい一定の工具について、正当な理由なく隠して携帯することを禁止することにより、窃盗犯が特定金属製物品の窃取に着手する前の段階における先制的な対処を可能とし、もって特定金属製物品の窃取の防止に資することを目的とするものである。
同様の趣旨の法制度として、既に、軽犯罪法(昭和23年法律第39号)第1条第3号及びその加重類型である特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(平成15年法律第65号。以下「特開法」という。)第4条の規定があるところ、こうした規定を参考に、金属盗に多用されている工具を携帯する行為について適切な可罰範囲及び法定刑を規定することで、窃盗犯が特定金属製物品の窃取に着手する前の段階における先制的かつ実効的な取締りを可能としたものである。
他方、こうした工具は、本来社会的に有用な用途を有しており、業務その他正当な理由により使用又は携帯されている実態があることから、規制範囲を局限して国民生活への影響を最小限とするため、規制の必要性が真に認められるものに限って指定金属切断工具として規定した上で、隠匿携帯という行為の危険性の高さに着目して、業務その他正当な理由のない隠匿携帯のみを禁止することとしている。
2 要点
(1) 指定金属切断工具(法第2条第5号及び令第1条関係)
ア 「ケーブルカッター」
ケーブルカッターはケーブルの切断に特化した工具であり、電気工事の現場等で使用される工具である。
ケーブルカッターには複数の種類があるところ、2本の長いハンドルを備えた手動のもの(以下「手動両手式」という。)が最も一般的である。これは、両手でハンドルを把持するなどして、てこの原理により力を加えて切断するものである。このため、全長(ハンドル)が長いほど大きな力を加えられることとなり、それに応じて、刃体の大きさや開く幅も大きくなるように設計されていることから、結果として、全長が長いほど、より太いケーブルを切断できることとなる。なお、力を加える際にケーブルが動かないよう、刃体が湾曲してケーブルを抱え込む形状になっていることが一般的である。
このほか、ラチェット機構(回転式の刃体を歯車等とかみ合わせることにより、当該刃体を特定の方向にのみ回転させる機構をいう。以下同じ。)により小さい力を繰り返し加えて太いケーブルを徐々に切断することを可能としたものや、電気装置又は油圧装置により増幅した強い力を加えて太いケーブルを切断することを可能としたものがある。これらはてこの原理によりケーブルを切断するものではなく、その全長にかかわらず高い切断力を有する。
なお、ケーブルカッターという商品名で販売されていなかったとしても、ケーブルを切断するための工具として設計、製造又は販売されているものについては、ケーブルカッターに該当する。

イ 「ボルトクリッパー」
ボルトクリッパーは鉄筋、線材等の鋼材の切断に特化した工具であり、主として建設・解体工事、災害救助等の現場で使用される工具である。番線カッターやボルトカッターと呼称されることもある。
ケーブルカッターと同様に手動両手式が最も一般的であり、全長が長いほど太いケーブルを切断できることとなる点も同様である一方、鋼材を切断する都合上、てこの原理を2段に応用するとともに、刃体は直線状になっていることから、同じ全長のケーブルカッターと比較して刃体の開く幅が狭い形状になっていることが一般的である。
また、ケーブルカッターと同様に、電気装置又は油圧装置を備えたものがあるが、ラチェット機構を備えたものは現状ほとんどない。
なお、ボルトクリッパーという商品名で販売されていなかったとしても、鉄筋等の鋼材を切断するための工具として設計、製造又は販売されているものについては、ボルトクリッパーに該当する。

ウ 「一般消費者が通常生活の用に供することが少ない」
指定金属切断工具の要件の一つとして法第2条第5号が「一般消費者が通常生活の用に供することが少ない」と規定している趣旨は、規制対象を、一般国民が通常の社会生活において使用又は携帯することが少ないと考えられる、高い切断能力を有する工具に限定することを明らかにするものである。
この点、他法令の規定や社会実態等を踏まえると、一般家庭の住居内の配線や家電製品に用いられる電線の導体の断面積は通常100平方ミリメートルを下回るといえ、一般国民が、通常の社会生活において、導体の断面積が100平方ミリメートルを超えるケーブルを切断することは通常想定されないことから、そのようなケーブルを切断することが可能なケーブルカッター及びボルトクリッパー(以下「ケーブルカッター等」という。)については、一般国民が通常の社会生活において使用又は携帯することが通常想定されず、本要件を満たすこととなる。
エ 「特定金属製物品の窃取の用に供されるおそれが大きい」
指定金属切断工具の要件の一つとして法第2条第5号が「特定金属製物品の窃取の用に供されるおそれが大きいもの」と規定している趣旨は、規制対象を、特定金属製物品の窃取における使用実態が広く認められる工具や、それと同等の切断能力、操作性、可搬性等を有し、特定金属製物品の窃取の用に供されるおそれが大きい工具に限定することを明らかにするものである。
この点、手動両手式のケーブルカッター等については特定金属製物品の窃取において広く使用されている実態があるほか、ラチェット機構又は電気装置若しくは油圧装置を備えたケーブルカッター等は、その全長にかかわらず、高い切断能力、操作性、可搬性等を有し、特定金属製物品の窃取の用に供されるおそれが大きいと認められる。
オ 令第1条第1号に規定するケーブルカッター
一般的に、ウ及びエの要件を満たすと認められるケーブルカッターは、
○ 全長が45センチメートル以上の(手動両手式の)もの
○ ラチェット機構又は電気装置若しくは油圧装置を備えているもの
であることから、令第1条第1号においてこれらを指定金属切断工具として規定している。
この点、ケーブルカッターの「長さ」とは、ケーブルカッターを閉じた状態で柄の方向に計測した両端部の間の直線距離であり、刃体の湾曲に沿って計測したものではない。

カ 令第1条第2号に規定するボルトクリッパー
一般的に、ウ及びエの要件を満たすと認められるボルトクリッパーは、
○ 全長が75センチメートル以上の(手動両手式の)もの
○ 電気装置又は油圧装置を備えているもの
であることから、令第1条第2号においてこれらを指定金属切断工具として規定している。
この点、ボルトクリッパーの「長さ」とは、ボルトクリッパーを閉じた状態で柄の方向に計測した両端部の間の直線距離であり、刃体の屈曲に沿って計測したものではない。
なお、ラチェット機構を備えているボルトクリッパーは、現時点、国内でほとんど流通しておらず、また、唯一警察庁で把握している製品も全長が75センチメートルを超えていることから、独立した要件としては設けていない。

キ その他の工具
ケーブルカッター等以外で、現時点でエの要件を満たしていると認められるものは存在しないことから、施行時点で指定金属切断工具として規定するのはケーブルカッター等のみとしている。
(2) 隠匿携帯の禁止
法第15条が、業務その他正当な理由のない指定金属切断工具の隠匿携帯に限って禁止している趣旨は、1のとおり指定金属切断工具が本来社会的に有用な用途を有する工具であることを踏まえ、規制範囲を局限して国民生活への影響を最小限とする必要があることから、単純携帯ではなく隠匿携帯に限った上で、隠匿携帯が当然に許容されるべき場合を規制の対象から除外するものである。
同条の要点は以下のとおりである。
ア 「隠して」
「隠して」とは、他人が通常の方法で観察した場合にその視野に入ってこないような状態におくこと、つまり、普通では人の目に触れにくいようにすることをいう。
また、このような客観的な状況に加え、携帯する者が、隠す意思、すなわち「他人が通常の方法で観察した場合にその視野に入ってこないような状態におく」意思を有していることが必要である。
「隠して」に当たる具体的な例としては、鞄や箱の中に入れたり、自動車のフロアマットの下に置いたりするなどして、他人の目に触れないような状態におくことが挙げられる。
なお、指定金属切断工具の柄の一部が露出等している場合であっても、一見して工具であることが分からないといった状態であれば、「隠して」に該当し得る。
一般的に、特定金属製物品の窃取を企図している者は、犯行を容易にするため、周囲の人間の注意を引かないよう、指定金属切断工具を隠して携帯するのが通常であると考えられ、特開法第4条においても同様の考えから指定侵入工具の隠匿携帯を禁止していることを踏まえ、他者による発見を困難にし、特定金属製物品の窃取を容易にするという点で、より危険性が高いと認められる隠匿携帯に限って規制することとしたものである。
イ 「携帯」
「携帯」とは、法令上、人が物を現に携え持っている場合にのみ用いられる用語であり、人が物を事実上支配している場合に広く用いられる用語である「所持」よりも狭い意味に用いられる。ただし、必ずしも直接身に付けている必要はなく、例えば、指定金属切断工具を載せた自動車を運転する行為や、仲間に持たせて自己と同道させる行為等も含まれ、要するに、直ちに使用できるような状態で自己の支配下に置いていれば足りる。
また、複数人が共同して「携帯」することも想定される。
なお、特開法における解釈では、日常生活を営む自宅内等に指定侵入工具を置く行為は、「携帯」には当たらないとしているところであり、指定金属切断工具についても同様に解される。
ウ 「業務その他正当な理由による場合」
「業務その他正当な理由による場合」とは、前記のとおり隠匿携帯が当然に許容されるべき場合を指し、それに該当するか否かについては、個別具体の事案に即して、指定金属切断工具を本来的用途に従い使用する目的があるかといった点も勘案しつつ、社会通念に照らして行為の正当性を評価し、判断することとなる。
「業務その他正当な理由」に該当すると評価される場合として典型的に想定されるのは、以下のとおりである。
○ 工事関係者や販売事業者が業務のために携帯する場合
○ 警察職員、消防職員、消防団員等が災害対策のために携帯する場合
○ 前記に該当しない者が日曜大工等のために携帯する場合
他方、護身用具として携帯する場合等については、ケーブルカッター等の本来の用途に従った使用目的ではなく、社会通念に照らして正当性を評価することはできないことから、「業務その他正当な理由」に該当しないこととなる。
3 運用上の留意事項
(1) 指定金属切断工具に係る構成要件該当性の確認
ア 工具の分類
ケーブルカッターとボルトクリッパーについては、外見が類似していること等から、混同して取り扱われることも考えられるが、規制対象となる要件は両者で異なることを踏まえ、仮に指定金属切断工具である疑いがある工具を取り扱ったり、書類に記載したりする際には、法令に規定する用語である「ケーブルカッター」又は「ボルトクリッパー」を用いて、確実に区別すること。
なお、令第1条第1号及び第2号において列挙している各要件については、重複することも想定されるところであり、実際、「長さが45センチメートル以上であって、刃体を駆動させるための油圧装置を備えているケーブルカッター」等が販売されている。こうした工具について書類に記載する場合等には、該当する要件全てを記載することが望ましい。
イ 各工具の該当性
被疑者が、自己が携帯していた工具について、指定金属切断工具であることの認識を否認する場合もあると考えられる。このような場合には、当該工具が指定金属切断工具に該当することの立証が特に重要であるので、必要に応じ、工具販売事業者等のカタログを参照するなどして、当該工具がケーブルカッター又はボルトクリッパーとして設計、製造又は販売されている証拠を収集すること。
なお、ある工具を用いてケーブルを切断することが結果的に可能であるとしても、当該工具が直ちにケーブルカッターに該当するとは限らない。当該工具がケーブルカッターに該当すると認定するためには、当該工具がケーブルを切断する機能を有することに加えて、当該工具がケーブルの切断を目的として設計・製造されたものであると認められるような大きさ、形状、構造等を有することが必要であり、これはボルトクリッパーについても同様である。また、このような実態が認められれば、通常想定はされないものの、自作の工具がケーブルカッター又はボルトクリッパーに該当すると評価し得る場合もある。
このような認定は、結局、個別具体の工具ごとに行わざるを得ないので、疑義がある場合には、警察庁生活安全局生活安全企画課に照会すること。
ウ 工具の状態
1のとおり、規制範囲を局限するため、業務その他正当な理由のない隠匿携帯のみを禁止していることを踏まえると、指定金属切断工具に重大な故障が発生していたり、不可逆的に分解されていたり、バッテリー等の必要不可欠な部品がなかったりするなどして、およそ使用が不可能な状態であると認められれば、法第15条違反は成立しないと考えられることから、工具が携帯されている状況のみならず、工具本体の状態についても確認すること。なお、一時的にバッテリーが切れているなど、容易に使用可能な状態に戻せる状況である場合には、引き続き本規制の対象となる。
(2) 適正な取締り
指定金属切断工具については、一般国民が「業務その他正当な理由」により、これを外部から見えない状態で携帯していることも容易に想定されることから、法第15条違反が疑われる状況を認めた際には、指定金属切断工具の携帯の理由について特に十分な説明を徴した上、個別具体の事例に基づいて、携帯している者の職業、携帯している状況、携帯に係る動機・目的、時間的・場所的合理性といった要素を勘案し、正当な理由の有無、隠していると認められるかどうかを総合的に判断する必要がある。
その際には、次の各点に十分配意し、金属盗犯の見逃し等が発生しないようにしつつも、いやしくも取締り権限の濫用とのそしりを受けることのないよう、適正な取締りに万全を期すこと。
ア 適正な職務質問の実施
法第15条違反の取締りは、職務質問を端緒として行う場合が多くなるものと想定されるが、当然のことながら、今回の法の規定は、職務質問の要件を緩和し、又はその許容される範囲を拡大するものではない。職務質問の実施に当たっては、警察官職務執行法(昭和23年法律第136号)第2条の規定に則し、飽くまで相手方の任意の協力を得た上で、不審点の追及、所持品の検査、各種照会等を徹底するなど、適正な実施に努めること。
イ 携帯している者の職業
業務に関連して指定金属切断工具を携帯することに合理性があるような者として、典型的には、電気工事、建設・解体工事等に従事する者や、特定金属製物品の製造・販売に従事する者等が挙げられるが、仮にこうした職業であったとしても、業務とはおよそ無関係な、社会通念に照らして正当性を評価することができない理由で携帯していれば、法第15条違反が成立し得る。
他方、これら以外の職業の者が、業務その他正当な理由で指定金属切断工具を携帯することも十分に考えられることから、いずれにせよ、携帯している者の職業のみをもって、安易に判断することのないようにすること。
ウ 携帯している状況
指定金属切断工具を携帯している状況を確認する際には、相手方が説明した指定金属切断工具の携帯に係る動機・目的と整合するかという観点から、通常、共に携帯していることが想定される(又は想定されない)物品が携帯されているかといった点にも配意し、全体として不審点がないか確認すること。
この点、例えば、工事現場に向かう途中の事業者と称する者が、その業務に使用する自動車に、指定金属切断工具以外の工具や資機材を積載していないであるとか、客先に向かう途中の販売業者と称する者が、指定金属切断工具と共に軍手、懐中電灯、目出し帽等を携帯しているといった、通常想定されない状況が認められた場合には、携帯に係る動機・目的その他背景事情について特に確認すること。
エ 携帯に係る動機・目的
指定金属切断工具は、「一般消費者が通常生活の用に供することが少ないと認められ」るものであり、大型のものや高価なものが多いことから、特開法に規定する指定侵入工具と比較して、通常、特定の明確な用途を念頭に置いて携帯することが想定される。
このため、相手方から携帯に係る動機・目的を聴取する際には、その用途は何かという点に着眼し、不審点がないか確認すること。
オ 時間的・場所的合理性
相手方がその時・その場所において指定金属切断工具を携帯することに合理性があるか判断する際は、現場周辺における、金属盗の被害に遭うおそれが大きい施設の立地状況、金属盗の発生状況等の周辺的な事情も考慮する必要がある。
仮に相手方の説明が同じだったとしても、昼間か夜間か、周辺に太陽光発電施設等が立地しているかといった点が異なれば、確認すべき事項や、その度合いについても異なることを念頭に置いて、真に必要な事項を確認すること。
カ その他
相手方の言動、携行品、周辺的な事情等に不自然・不合理な点はないか、幅広く、かつ、臨機応変に確認し、定型的な対応に終始することのないようにすること。
なお、職務質問の実施や、「業務その他正当な理由」を判断する際には、相手方の容姿や服装等の外見のみを根拠とすることのないようにするとともに、人種や国籍等に対する偏見や差別との誤解を受けないようにするなど、不適切・不用意な言動を厳に慎むこと。
(3) 余罪捜査及び突き上げ捜査の徹底
法第15条違反について、窃盗等の犯罪の用に供する目的を有していたか否かは犯罪成立の要件とはされていないが、このような目的の有無は被疑者の処分に大きく影響すると考えられるので、法第15条違反により被疑者を検挙した場合には、被疑者の関係場所の捜索・差押え等によって関係する証拠を収集するほか、窃盗等の余罪の追及を徹底するなどして、その悪性を立証し、被疑者が厳正に処罰されるよう努めることに加え、突き上げ捜査を徹底し、共犯被疑者の割り出しに努めること。
なお、法第15条違反の罪は、窃盗等とは別個の罪であって、窃盗等の予備罪ではないので、仮に窃盗等の罪が成立してもこれに吸収されることはない。したがって、例えば指定金属切断工具を用いて特定金属製物品を窃取した者については、法第15条違反の罪と窃盗罪の双方が成立し、両者は併合罪の関係に立つ。金属盗を敢行した被疑者の厳正な処罰を確保し、更なる金属盗の発生を防止する観点から、金属盗の被疑者を検挙した場合には、その余罪として法第15条違反の罪の立件も視野に入れて捜査すること。
第16 特定金属製物品の盗難の防止に資する情報の周知(法第16条関係)
1 趣旨
金属盗の防止には、事業者等による自主防犯の取組を強化することが効果的であり、そのためには警察が関係事業者に対して防犯対策に資する情報を提供することが重要であることを踏まえて規定したものである。
2 要点
(1) 「警視総監又は道府県警察本部長、方面本部長及び警察署長」
各地域の犯罪発生状況や犯行の特徴に応じた防犯対策に係る情報を周知することから、都道府県単位だけではなく地域単位で情報提供を行うことも想定されるため、「警視総監又は道府県警察本部長」と並んで「方面本部長及び警察署長」も情報提供の主体としている。
(2) 「特定金属製物品の盗難の防止に資する情報」
「特定金属製物品の盗難の防止に資する情報」とは、具体的には、
○ 地域ごとの盗難発生状況
○ 最近発生した盗難被害の情報や犯行の特徴
○ 盗難被害に遭っている物品の情報
○ 具体的な防犯対策の事例
等をいい、詳細な手口や被疑者の具体的な供述内容等の捜査の詳細に関する情報は含まない。
(3) 「電気通信回線に接続して行う自動公衆送信の利用、印刷物の配布その他適切な方法」
情報周知の方法については、メール送信やチラシ配布のほか、ウェブサイト、アプリやSNS等の利用も含まれる。
(4) 「太陽光発電設備を設置する者その他の特定金属製物品につき盗難に遭うおそれが大きい者」
「太陽光発電設備を設置する者」は飽くまでも情報の提供先の例示であるところ、「その他の特定金属製物品につき盗難に遭うおそれが大きい者」とは、各都道府県における金属盗の発生状況を踏まえ、盗難防止情報の周知が有益と考えられる事業者のことをいう。
3 運用上の留意事項
(1) 管内の被害実態の的確な把握
被害実態の把握は、効果的な情報の周知の前提となるものであることから、刑事部門と生活安全部門とで連携し、都道府県単位、方面単位、警察署単位での管内の被害実態について的確に把握すること。
(2) 的確な情報の周知
(1)で把握した被害実態を踏まえ、太陽光発電設備を設置する者をはじめとした特定金属製物品につき盗難に遭うおそれが大きい者を適切に見極め、地域ごとの盗難発生状況等の盗難の防止に資する情報を時機を失することなく周知すること。
特に盗難発生状況に関する情報について、被害の状況等から他の都道府県に被害が及ぶおそれがあると認めた場合には、当該被害情報を隣接都道府県警察にも機を逃さず共有するとともに、共有を受けた都道府県警察にあっては、必要に応じて当該情報を管内の事業者に対して周知すること。
また、警察庁から提供される盗難の防止に資する情報についても積極的に活用すること。
第17 条例との関係(法第20条関係)
1 趣旨
一部の道府県において、金属くず条例が施行されているところ、法に設けられていない内容の金属くず条例の規定について、法の施行と同時に効力が失われるとの誤解を避け、また、引き続き地方自治体が各地域の実状に応じて必要な規制を新設することが許容されていることを明確にすべく、確認的に金属くず条例との関係を規定したものである。
2 既存の金属くず条例の効力
各金属くず条例の具体的な目的や規制内容は条例により異なるものの、窃盗の防止を図ること等を目的としているものや、金属くずの取引時の相手方の確認等の義務を設けている例が多く、目的や規制内容が法と一部重複しているものが多いといえる。
法は、現下の犯罪情勢等に鑑み、対象となる営業を限定し、必要な限度で規制を課すこととしたものであることから、条例が法律を上回る内容を定めることを認めないものではない。よって、法と同一の目的であっても、地域の実情に応じ、より厳しい規制を設ける必要性が認められる場合には、当該規制も容認されるものであることから、これらの規定については法が施行された後も効力を有するものと考えられる。
なお、金属くず条例によっては、法に規定するよりも緩やかな本人確認義務等を定めているものもあることから、法に規定された義務を履行すれば、金属くず条例に規定された義務も果たされていると考えられる。
第18 罰則(法第21条~第25条関係)
1 法第21条関係
営業停止命令を確実に履行させるためには、罰則による担保が必要であることから、当該命令に違反する行為を罰則の対象とし、1年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又はその併科に処することとしている。
2 法第22条関係
第15の1のとおり、犯行用具規制は、指定金属切断工具を正当な理由なく隠匿携帯する行為について適切な可罰範囲及び法定刑を規定することで、金属盗に係る犯行用具の携帯に関する規制を実効的たらしめることにより、犯行の着手に至る前の先制的な取締りを可能とすることを目的としている。
この点を踏まえ、同様の趣旨の規定である特開法第16条と同様に、指定金属切断工具の隠匿携帯規制に違反した者は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処することとしている。
3 法第23条関係
(1) 無届営業
法に規定された各種義務の遵守を担保するためには、特定金属くず買受業の実態を営業所ごとに把握し、必要な指導監督を行う必要があることから、法においては特定金属くず買受業を営もうとする者に届出義務を課している(法第3条第1項)。
届出制を採用している趣旨に鑑みれば、無届営業は法の目的を没却しかねないものであることから、罰則の感銘力をもって当該趣旨を担保する必要があるため、無届営業について、6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又はその併科に処することとしている。
(2) 名義貸し
届出をした特定金属くず買受業を営む者が名義貸しをできることとすると、営業主体が不明確になり責任ある管理がなされないおそれ等があり、届出制の趣旨を没却しかねないことから、罰則の感銘力をもって当該趣旨を担保する必要があるため、無届営業と同様、6月以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金又はその併科に処することとしている。
4 法第24条関係
虚偽届出、変更届出義務違反、虚偽報告等については、届出制や監督規定の趣旨を没却しかねないなどの観点から罰則の対象とするものであり、これらについて、30万円以下の罰金に処することとしている。
5 法第25条関係
(1) 趣旨
法第21条(営業停止命令違反)、第23条(無届営業等)及び第24条(虚偽届出等)の罪は法人又は人の業務に関して行われることが想定され、業務に関して違反行為が行われた場合に、当該法人等を処罰することが違反行為の発生を抑止し、法の取締目的を達成することに効果があると考えられる。
(2) 「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人等」
「法人の代表者」については、第3の1(3)イに記載のとおり。
「法人若しくは人の代理人等」については、第11の2に記載のとおり。
(3) 法定刑
法に規定する犯罪行為について、法人と人とで科する罰金刑を異ならせる特段の事情がないことから、法人が法に違反する犯罪行為を行った場合であっても、各本条に規定する罰則を科すこととしている。
第19 入管法等の一部改正(法附則第5条及び第6条関係)
出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)は、窃盗罪をはじめとする外国人犯罪組織又は犯罪集団が関与して実行されるおそれのある一定の類型の犯罪等により拘禁刑に処せられるなどした外国人(その刑の全部又は一部の執行猶予の言渡しを受けた者を含む。)について、以下の規定を設けている。
○ 5年間の上陸拒否(入管法第5条第1項第9号の2)
○ 永住者の在留資格の取消し(出入国管理及び難民認定法及び外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の一部を改正する法律(令和6年法律第60号)による改正後の入管法第22条の4第1項第9号)
○ 退去強制(入管法第24条第4号の2)
○ 出国命令制度の対象外(入管法第24条の3第3号)
○ 難民等認定申請に係る許可の対象外(入管法第61条の2の2第1項第2号及び第61条の2の4第1項第8号)
この点、指定金属切断工具の隠匿携帯に係る罰則を定めた法第22条の罪は、太陽光発電施設からの金属ケーブル窃盗をはじめとする金属盗を行うために外国人犯罪組織又は犯罪集団が関与して実行されるおそれのある犯罪であることから、同罪により拘禁刑に処せられるなどした外国人(その刑の全部又は一部の執行猶予の言渡しを受けた者を含む。)についても同様の規定を適用すべく、入管法を改正することとしたものである。
別記様式第1号
略
別記様式第2号
略
別記様式第3号
略
別記様式第4号
略