こんなときには・・・

  山の中ではいろいろなトラブルが発生します。
  いざというときに備えて、対応方法を確認しておきましょう。

   ※ 以下の方法は一般的に言われていることであり、  必ず身を守れるとは限りません。   何より大切なのは、危険な事態に陥らないことです。

 道に迷った

※ 「たぶんこっちで合ってるはずだ」「もう少し行って、分からなければ引き返そう」は禁物です。
  戻れるうちに分かる場所まで引き返すことが大切です。

※ 地図やコンパス、GPSで自分の位置を確認することが最優先です。
  むやみに動き回ることは、体力を消耗するばかりでなく、危険な場所に迷い込むおそれがあります。

※ やみくもに山を降りることは、さらに自分の位置を見失う可能性が大きいです。
  また、崖や滝に行き当たり、降りることも戻ることもできなくなることもあります。
  山では、尾根やピークのほうが位置の確認が容易です。

※ むやみに動き回ることは、捜索範囲を広げるだけです。
  早め、早めの救助要請を検討して下さい。
  

 道に迷わないためには、自分がどこにいるのか、常に確認することが大切です。
 こまめに自分の場所を確認するクセをつけましょう。
 携帯電話、スマートフォンにGPS機能が付いている場合は、その使い方も確認しておきましょう。
 また、GPS機器等は有用な機械ですが、天候や地形によっては使用できないこともあります。
 地図とコンパスで自分の位置を確認できるようになることが必要です。

 怪我をした・病気になった
 病気、怪我の種類・状態に応じた、適切な応急処置をしてください。

※ 病気
 ・ 低体温症〜症状:寒気、震えから始まり、運動障害、意識障害に進行する。

          処置:風雨を避けられる場所に移動する。着衣が濡れていれば着替えさせる。
              レスキューシートやシュラフ等で保温する。
              湯たんぽ、使い捨てカイロ等で動脈の通っている部分を暖める。
              温かい飲み物を飲ませる。
             
×アルコール、カフェイン、急激な加温(暖房、入浴)は厳禁

 
・ 熱中症 〜 症状:めまい、大量発汗、足がつる等から嘔吐、意識障害、全身痙攣に進行する。

          処置:直射日光が当たらず、風通しの良いところに移動し着衣をゆるめる。
             肌、着衣を濡らしてあおぐなどして体温を下げる。
             電解質を含んだ水(薄い塩水など)を少量ずつ、大量に摂る。
             症状が重い場合には、水風呂などで早急に体温を下げる必要がある。

 ・ 高山病 〜 症状:頭痛、嘔吐、めまい、倦怠感などから脳浮腫に進行する。

          処置:初期症状が現れたら高度を上げず、安静にする。
             症状が悪化するなら、早急に下山をする。

※ 怪我
 ・ 出 血 〜 出血部位を心臓より高い位置にする。
         清潔な布(滅菌ガーゼなど)を傷に当て、手で強く圧迫する(直接圧迫止血法)。
         出血がひどい場合は、すでに当てた布の上から布を追加して圧迫する。
         また、出血がひどい場合には間接圧迫止血法を併せて実施する。

 ・ ねん挫 〜 ねん挫したらすぐに患部を冷却する。
         併せて、患部をテーピング、包帯などで圧迫、固定する。
         可能であれば、患部を心臓より高い位置に上げる。
         ※ 足首のねん挫で靴を脱いでしまうと、腫れて靴が履けなくなることがあります。
            場合によっては、靴を履いたままの冷却、固定が必要です。
         ※ 痛みがひどい場合は、骨折しているものとして応急処置をします。

 ・ 骨 折 〜 出血を伴う場合は、まず止血し、傷の手当てをする。
         患部がひどく変形している場合は無理に戻さない。
         患部を挟む両方の関節(前腕部の骨折であれば、肘と手首)も固定する。
         副木には、ストック、木の枝、新聞紙、マットなどを利用する。

 ・ やけど 〜 速やかな冷却が第一。
         流水や雪で最低5分以上(可能なら30分程度)、痛みがなくなるまで冷やす。
         服の上からやけどした場合は、服の上から流水で冷やす。
         体表の10パーセントを超えるやけどは、下山しての治療が必要。
         ※ 成人の体表面積の推定方法(9の法則)
            頭部、右上肢、左上肢〜それぞれ9パーセント
            体幹部前面、体幹部後面〜それぞれ18パーセント
            右下肢、左下肢〜それぞれ18パーセント
            陰部〜1パーセント                
              

※ いずれの場合も、重傷の場合は一刻も早い専門的な治療が必要です。
  応急処置と併せて、119番、110番での救助要請をお願いします。


 山の中では、迅速に医療機関に搬送することが困難です。
 自分たちでできる応急処置をして、それ以上症状を悪化させないことが大切です。
 病気、怪我の種類がわかるだけの知識と、心肺蘇生法等の救急法を身につけてください。
 そして、山にはファーストエイドキットなどを持っていくようにしてください。
 

 クマに遭った

※ 遠くにクマがいることに気がついたときには、静かに立ち去る。
   もし、クマが人に気がついていないようなら、
      物音を立てて、人の存在に気付かせる。(急な大声や急な動きは×)
      クマの様子を見ながら立ち去る。

※ 近くにクマがいることに気がついたときは、クマから目を離さずゆっくり後ずさりする。
  
× クマに背中を見せる、走って逃げる、物を投げつける〜クマの攻撃を誘発するおそれがある
     木に登る〜クマは木登りが得意

※ 至近距離で突発的に出会った場合、クマが攻撃してくる可能性が高いです。
  攻撃を受けた場合、致命傷を避けることが必要です。
  首筋を両腕で覆い、地面に伏せる(防御姿勢)など、致命傷を避ける行動をして下さい。

 クマが人に気付いた場合、クマの方が人間との接触をいやがって立ち去る場合が多いと言われています。
 クマに人の存在を気付かせるため、鈴などの音の出るもの、不意の遭遇に備えて、クマ撃退スプレーも持つようにして下さい。
 また、クマの足跡、糞、爪跡、クマ棚などを見分けられるようにして、クマの出没場所かどうか判断できるようにして下さい。
 

 救助を要請するときは
1 110番、119番通報、無線での救助要請をする。
 ※ 110番通報では、電話に出た警察官の質問に答えて下さい。

  ・ 何があったのか(例:道に迷った、登山道で滑って怪我をした など)
  ・ 場所(例:緯度・経度、○○山頂から○○方面に約○キロの登山道上 など)
     ※ 現在地が全く分からない場合は、
           その日の行動予定と最終現在地確認場所
           周囲の地形、確認できる地物
  ・ 遭難者の容態(例:意識の有無、怪我の有無・状態)
  ・ 遭難者、通報者の住所・氏名・生年月日
  ・ 現場で連絡の取れる電話番号等の連絡先
  ・ 現場の天候

 
※ 救助を要請した後は、他の通話を控えて、
       
バッテリーの節約、折り返しの電話に出られる状態
  
を確保しておいて下さい。

2 ヘリコプターでの救助に備え、上空が広く見渡せる場所に移動する。
   (大きく移動した場合は、再度、場所を通報して下さい)
  飛ばされそうなものはあらかじめ片付けておく。
  (天候等により、ヘリコプターが救助に行くとは限りません)
  

3 ヘリコプターの音が聞こえたら
     ヘリコプターに合図する
       レスキューシート、目立つ色のウェア、ツェルト等を頭上で大きく振る。
       ヘリコプターに向けてカメラのフラッシュを焚く、鏡で日光を反射させる。
     ヘリコプターが近づいてきたら、姿勢を低くして待機する。
 
※ 不用意にヘリコプターに近づくことはとても危険です。
    必ず、救助者の指示に従って下さい。


  地上部隊が探している声や、笛の音を聞いたら
     笛などで応答する。
     カメラのフラッシュを声のする方に向けて焚く。
     暗いとき、霧が出ているときは、ヘッドランプなどのライトも有効。
 いざというときに備えて、GPS機能が付いている携帯電話を持っている方は、緯度・経度の確認方法を覚えておくようにして下さい。
 また、通報ができない状態(携帯電話が圏外で、その場から移動もできない場合等)に備えて、遭難信号も覚えておくようにして下さい。
 ※ 遭難信号 10秒に1回の信号を6回発信したあと、1分間休む、を繰り返すもの。
      昼間は音、夜間は光を使う。
  遭難信号(以下の発信を繰り返す)