○福島県警察の苦情の処理に関する訓令の制定について(通達)

平成21年3月19日

達(県サ)第105号

みだしの訓令を制定し、平成21年4月1日から施行することとしたので、適正な運用に努められたい。

1 制定の趣旨

これまで、県警察に係る苦情の処理に関しては、福島県警察の苦情の処理に関する訓令(平成13年県本部訓令第26号。以下「旧訓令」という。)により処理してきたところであるが、旧訓令においては、苦情に係る事実調査に対する本部主管課の関与が不明確であったり、苦情処理過程について一部実情にそぐわないところが認められた。

このため、新たに県本部主管課長等の責務を定め、組織的対応について規定し、苦情処理の手続を整理するなど、より迅速かつ適切な苦情の処理を図るため、旧訓令を全面的に見直し、別添のとおり、みだしの訓令を制定したものである。

2 解釈及び運用方針

(1) 苦情の定義(第3条関係)

苦情とは、県警察の「職員の違法・不当な行為又は不作為」に対する不服、又は「職員の不適切な職務執行の態様」に対する不平不満であり、捜査、交通取締り、告訴・告発の取扱い、職務質問その他職員の職務執行について、日時、場所、内容、被った不利益の内容又は職員の職務執行の態様に対する不平不満を個別具体的に摘示するものは、すべて苦情に該当することとなる。しかし、明らかに警察の任務とはいえない事項についての職員の不作為を内容とするものはもちろんのこと、申出者本人と直接関係のない一般論として申し出られた苦情、提言、憤りの表明等は、ここにいう苦情に該当しない。

(2) 職員の基本的心構え(第5条関係)

職員は、申し出された内容が、苦情又は相談、要望等について明確に判断することが困難な場合において、一般的な意味で苦情といえるもの又は苦情に発展するおそれがあると認められるものについては、広く苦情として受理すること。

(3) 警務部長の責務(第6、11、13条関係)

当該苦情について、警務部長が苦情処理に当たる主管部長及び主管課長を指定するものとする。

(4) 所属担当者の指定等(第9、10条関係)

所属責任者は、所属職員に係る苦情の申出があった場合に備えて、平素から原則として警視又は警部の階級にある者を複数、所属担当者として指定しておき、実際に苦情の受理の報告を受けたときは、その苦情の内容等に応じた担当者を改めて選定し、処理に当たらせること。

(5) 公安委員会等に対する苦情の処理(第11条第13条関係)

ア 文書の範囲

警察法(昭和29年法律第162号。以下「法」という。)では、公安委員会に対する苦情の申し出は、文書により行うこととされているので、Eメール又はファクシミリにより送付された文書は含まないこととする。これは、現行法令上、各種手続においてEメール又はファクシミリによることができるとするときは、その旨を明確にすることが通例とされているためである。

イ 「速やかに」の定義

公安委員会又は県警察に対する苦情の申出を受けた場合、苦情受理報告書(様式第1号)を作成し、総務課長又は総括副責任者に速やかに送付することとなるが、「速やかに」とは、当該苦情について定型的な処理である場合を除き、可及的速やかに苦情受理報告書を作成し送付することである。

また、県本部総合宿日直の責任者は、県本部宿日直中に、公安委員会に対する苦情を受理した場合は総務課長及び総括責任者に、県警察に対する苦情を受理した場合は総括責任者及び総括副責任者に速やかに報告の上、その後の措置について指示を受けること。

(6) 苦情の処理結果の通知(第14条関係)

ア 公安委員会による通知

公安委員会に対する苦情の申出者に対する通知については、当該苦情に係る事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置について、本部長からの報告を基に公安委員会が通知内容を決定することとなるが、これを受けての文書による通知事務は、総務課において行うこととする。この場合、福島県公安委員会等に対する苦情の処理に関する規則(平成13年福島県公安委員会規則第6号。以下「苦情規則」という。)第5条第2項の規定により、郵送により通知することとする。ただし、特に必要があると認めるときは、直接、申出者に交付することができるものとする。

なお、苦情の申出の場合と同様に、Eメール又はファクシミリによって通知することは認められていない。

イ 県警察による通知

県警察に対する苦情の申出者に対する通知については、当該苦情に係る事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置について、文書又は面接等適当と認められる方法で行うものとするが、文書により通知を行う場合は、本部長名又は所属長名をもって行うものとする。

なお、通知を行う場合は、主管部長を経て総括責任者及び本部長の決裁を受けてから行うこととする。

ウ 通知書の形式、内容

前記ア、イの通知を文書で行う場合の通知書の形式については、苦情の内容に応じて適宜定めること。

なお、公安委員会から回答する通知書の内容については、苦情規則第5条第1項に規定するところにより、

・ 苦情に係る事実関係の有無

・ 苦情の対象とされた職務執行の妥当性の判断

・ 苦情に関して行った措置

等について記載することとなるが、事案に応じて適切なものであればよい。

また、県警察から回答する通知書についても、公安委員会から回答する通知書の内容に準じて作成するものとする。

エ 処理結果の通知義務の解除

通知義務の解除については次のとおりとする。

(ア) 「当該苦情の申出が県警察の事務の適正な遂行を妨げる目的で行われたと認められるとき」とは、いわゆる権利の濫用に相当する場合が想定されており、

・ 同一人により同一内容に係る苦情申出が反復してなされた場合であって客観的な事情から合理的に判断して苦情としての実質的要件を欠いているとき

・ 極左暴力集団等が警察権力の弱体化手段であることを標榜しつつ苦情の申出を行う場合

等「警察の事務の適正な遂行を妨害する意図が外形的に表象されている場合」に限られるものである。したがって、関係者が捜査の中止を求めるもの等「適法・妥当な職務執行に対する抗議・けん制」と思われる苦情であっても、申出者の意図が客観的に上記の意図であることが明らかでない限り、これを受け付け、所要の処理を行い、その結果を申出者に通知するものとする。

なお、上記項目に該当する場合には、処理結果の通知は行わない旨を電話、面接等により申出者に対して連絡するものとする。

(イ) 「申出者の氏名又は所在が不明であるとき」とは、匿名などで申出者が不明な場合及び苦情申出者が申出後に転居等により新たな所在を知り得ないために申出者に通知できない場合が想定される。

(ウ) 「申出者が他の者と共同で申出を行ったと認められる場合において、当該他の者に当該苦情に係る処理結果を通知したとき」とは、複数人が同一内容の苦情について共同して申し出る場合が想定されている。この場合、文書による苦情の場合は、当該文書に記載された処理結果の通知先である代表者に処理結果を通知することで足り、文書による苦情以外の場合であっても同様に代表者に通知すれば足りる。

(エ) 「申出者が明らかに通知を求めていないとき」とは、苦情申出時において、申出人が処理結果の通知を求めない旨の意思表示がなされた場合をいう。

オ 苦情処理の標準的な期間

職員の職務執行は、個人の生命、身体及び財産の保護並びに公共の安全と秩序の維持全般にわたるものである。したがって、これに対する苦情及び処理に要する時間は様々であることから、行政手続法に定められているような標準処理期間を定める旨の規定は置かれていない。しかし、社会通念上相当と認められる期間内に苦情の処理及び処理結果の通知を行うことは当然であり、苦情の処理に長い時間を要している場合であって、申出者からその処理状況について問い合わせがあったときなどには、処理の経過を連絡するものとする。

(7) 公安委員会への報告(第15条関係)

本部長は、県警察に対する苦情が適正に処理されていることを、公安委員会開催時に定期的に報告することとなるが、この場合における報告者については、本部長が指名した者が報告することを妨げないこととする。

(8) 監察課への引継ぎ(第17条関係)

苦情の調査を監察課に引き継ぐのは、列記された事項に該当する疑いを生じた場合、法第56条第3項(職員の人事管理)に定めるところにより、非違事案としての調査等を行う必要があるためであり、苦情の処理そのものを引き継ぐものではない。したがって、苦情の申出者への対応等苦情の処理に必要な事務については、あくまでも総括副責任者、主管部長及び主管課長並びに所属責任者が行うこととなる。

(9) 苦情に係る反省と教訓(第18条関係)

所属責任者は、当該苦情の処理が終了したときは、速やかに当該苦情の原因となった職務執行上の問題点、その理由及び再発防止策の検討結果について、総括副責任者を経て総括責任者あて文書で報告することとする。

3 関係通達の廃止

福島県警察における苦情処理制度の運用方針について(平成13年6月21日付け達(総相)第196号)は、廃止する。

福島県警察の苦情の処理に関する訓令の制定について(通達)

平成21年3月19日 達(県サ)第105号

(平成21年4月1日施行)

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平成21年3月19日 達(県サ)第105号