○争訟事務処理に関する訓令

昭和44年8月8日

県警察本部訓令第18号

(目的)

第1条 この訓令は、警察に対する国民の信頼を高めるとともに警察職員の士気を高揚し、警察業務の適正かつ合理的な運営を確保するため、警察に関する争訟事件の処理について、必要な事項を定めることを目的とする。

(争訟事件の種類及び意義)

第2条 この訓令に定める争訟事件の種類及び意義は、次のとおりとする。

(1) 審査請求事件

福島県公安委員会(以下「公安委員会」という。)、本部長又は署長がした処分又はなすべき処分をしなかつたことを原因として、公安委員会、人事委員会、本部長又は署長に対して行政不服審査法(平成26年法律第68号)に基づき審査請求が行われる事件

(2) 行政訴訟事件

公安委員会、本部長又は署長がした処分又はなすべき処分をしなかつたことを原因として、公安委員会を被告として行政事件訴訟法(昭和37年法律第139号)に基づき取消訴訟又は確認訴訟が行われる事件

(3) 人権侵犯事件

警察官が公権力の行使に当たり国民の権利又は自由を侵犯した疑いにより、地方法務局人権擁護課又は弁護士会人権擁護部会の調査が行われる事件

(4) 告訴告発事件

警察官が公権力の行使に当たり罪を犯した疑いにより、被害者等が当該警察官を被告訴人又は被告発人として検察官に訴追を求める事件

(5) 国家賠償請求事件

公安委員会がした違法若しくは不当な処分若しくはなすべき処分をしなかつたこと又は警察官がした違法な公権力の行使により損害を被つたとする者が、その損害の回復を求めて国又は県を被告として訴訟を提起する事件

(6) 民事事件(国家賠償事件を除く。)

職務執行中の警察官が公権力の行使による行為以外の行為により違法に他人の権利を侵害した疑いその他職務執行中の警察官又は警察機関がした民事上の有責行為又は管理により、他人に対し民事上の責任が生じた疑いにより、その者が当該警察官又は警察機関を被告として責任を追及する事件

(監察課長の責務)

第3条 監察課長は、争訟事件処理の主管者として争訟事件についての調査、指導および資料の整備にあたるとともに、争訟事件の合理的解決につとめなければならない。

(所属長および主管課長の責務)

第4条 所属長および主管課長は、監察課長と連絡を密にし、争訟事件についての調査および証拠資料を収集整備するとともに必要な措置をとらなければならない。

(訟務担当者の責務)

第5条 県本部においては次席を、署においては副署長等を訟務担当者とする。

2 訟務担当者は、所属長を補佐し、争訟事件について報告、連絡にあたるとともに、関係記録および証拠の保管にあたらなければならない。

(争訟事件処理の基本的心構え)

第6条 争訟事件は、次の基本的心構えをもつて処理しなければならない。

(1) 争訟事件に係る事実を正確には握し、事件に関し見通しをたてること。

(2) 和解の見通しがある争訟事件については、和解につとめること。

(3) 検察官、地方法務局、知事部局等関係機関に対しては、必要な範囲と限度において密接な連絡を保持すること。

(4) 争訟事件に関し、当該警察職員に懲戒処分に関する事実がある場合には、争訟事件の処理と分離して必要な措置をとること。

(争訟事務処理要領)

第7条 争訟事件の事務処理については、別記「争訟事務処理要領」によるものとする。

(報告)

第8条 所属長は、争訟事件が発生しまたは発生するおそれがあるときは、その要点を電話または口頭により本部長(監察課長経由)に速報するとともに、すみやかに、事件発生報告書(別紙様式1)により報告しなければならない。

(記録等の整備保管)

第9条 監察課長は、争訟事件の関係記録の原本を整備保管しなければならない。ただし、争訟事件処理上必要ある場合は、その期間中所属に保管させることができる。

2 監察課長は、争訟事件台帳(別紙様式2)を備え争訟事件ごとに記録を編てつし索引を付して保管しなければならない。

この訓令は、昭和44年8月8日から施行する。

(昭和46年3月9日県警察本部訓令第4号)

この訓令は、昭和46年3月9日から施行する。

(昭和48年4月19日県警察本部訓令第5号)

この訓令は、制定の日から施行し、昭和48年3月26日から適用する。

(昭和50年3月17日県警察本部訓令第7号)

この訓令は、昭和50年3月17日から施行する。

(昭和51年3月30日県警察本部訓令第6号)

この訓令は、昭和51年4月1日から施行する。

(昭和54年3月14日県警察本部訓令第7号)

この訓令は、昭和54年3月14日から施行する。

(平成4年2月28日県警察本部訓令第2号)

この訓令は、平成4年3月1日から施行する。

(平成7年3月16日県警察本部訓令第3号)

この訓令は、福島県警察の組織に関する規則の一部を改正する規則(平成7年県公安委員会規則第1号)及び福島県警察の組織に関する訓令の一部を改正する訓令(平成7年県本部訓令第2号)の各施行の日から施行する。

(平成17年3月24日県警察本部訓令第11号)

この訓令は、平成17年4月1日から施行する。

(平成28年3月23日県警察本部訓令第8号)

この訓令は、平成28年4月1日から施行する。

別記

争訟事務処理要領

第1 争訟事件処理上の留意事項

1 事実のは握にあたつては、警察側に有利な事実のみならず、不利な事実に関しても徹底的に調査し証拠を収集すること。

2 事件に関係した警察職員から報告を求める場合は、その者を懲戒その他不利益な処分に付する等の誤解のないよう十分説明し、詳細かつ正確な事実を報告させるとともに、その者が法廷における反対尋問に耐えうるよう指導すること。

3 訟務対策は、証拠により争訟の各段階ごとにたてること。

4 収集した証拠は、事件との関連性、証明力等を適確に評価し、証明力の高い証拠から順に整理し証拠体系を整備すること。

5 相手方の証拠についても可能な限りは握し、法廷において十分に争うことができる体制を整備しておくこと。

6 証人の選定にあたつては、その者の証言能力、反対尋問に有効に答弁しうる能力、話術、機転、性格その他の長所等を考慮すること。

7 示談による和解をする場合は、相手方に事件を公正に処理していることを納得させるとともに、事件について自信がないために和解するものであるとの誤解を与えないよう留意すること。

8 証人に対しては、精神的、経済的な不利益をこうむることのないよう留意し、他の証人とともに事件に係る事実を再現し検討を進めながら、記憶している事実を確認させ、忘れている事実を思い出させる等事件全体におけるその者の証言に係る事実の地位を認識させること。

9 弁護士に事件を担当させる場合は、当該事件の性質等について説明し、訴訟の各段階における活動等について密接に協議すること。

10 鑑定を求める場合は、当該事件における鑑定に係る事実の地位を説明して行なわせること。

11 準起訴手続きにより審判に付された場合は、当該検察官と密接な連絡をとり必要な措置をとること。

12 争訟事件に関し、当該警察職員を懲戒処分に付する必要があるときは、当該争訟事件の経過を勘案し、慎重に措置すること。

13 事件処理にあたつては、判例の研究および証拠の提出、和解の時期方法等法廷技術について研究すること。

第2 審査請求事件の処理要領

審査請求事件の処理は、福島県公安委員会行政不服審査請求手続規程(平成28年福島県公安委員会規程第※号)によるほか次によるものとする。

1 道路交通法(昭和35年法律第105号)、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)、銃砲刀剣類所持等取締法(昭和33年法律第6号)、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)等に関する審査請求事件は、行政訴訟事件に発展するおそれがあるので、公安委員会の処分の根拠となつた事実について証拠化しておくとともに、当該審査請求事件の審理記録及び決定書の写し等必要な書類を整備しておくこと。

2 示威行進及び多衆の参加する公然の示威運動に関する条例(昭和24年県条例15号。以下「公安条例」という。)に基づき公安委員会がした処分に関する審査請求事件については、不許可処分又は条件を付するに当たつての根拠となつた理由及び証拠資料を整備しておくこと。

3 懲戒処分に関する審査請求事件については、人事委員会と密接な連絡をとるとともに、当該事件の審理過程においてその者に対し、処分について納得させるようにつとめること。

第3 行政訴訟事件の処理要領

1 公安条例に関する行政訴訟事件は、当該訴訟の提起と同時に当該処分の執行停止を求める申立てをするのが通例であるから、行政事件訴訟法第25条第6項「意見」のための資料を収集整備しておくこと。この場合の資料とは、当該道路における交通量、交通上の支障となる事情、当該団体の過去における違法行為の概要および処分の適法性を証明する資料(写真、図面、録音等)である。

当該処分の執行停止を求める申立てが容認され執行停止の決定がなされた場合においては、ただちに「即時抗告」の必要性について検討すること。

2 道路交通法、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律、銃砲刀剣類所持等取締法及び暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律等に関する行政訴訟事件は、当該訴訟を提起する以前に行政不服審査法に基づき公安委員会に対し処分に関する不服申立てを行なうのが通例であるから、当該処分の根拠となつた資料を証拠化しておくとともに、不服申立て事件の審理記録及び決定書の写し等事件に関する書類を整備しておくこと。この場合の資料とは、公安委員会が当該処分を行なうにあたつて根拠となつた警察官の報告書、被疑者、参考人の供述調書及び写真その他である。

行政訴訟事件と同時に当該処分の執行停止の申立てがなされた場合は、行政事件訴訟法第25条第6項の「意見」のための資料を収集整備しておくこと。この場合の資料とは、行政処分をした理由、処分の適法性、妥当性及び申立人に回復困難な損害を避けるための緊急の必要性がない等の資料である。

3 懲戒処分に関する行政訴訟事件は、当該訴訟を提起する以前に人事委員会に対して審査請求を行なつているものであるから、人事委員会における審理記録の写し・裁定書の写し等事件に関する書類を整備しておくとともに、原告の勤務成績、行状、性格等に関する人事記録および処分の原因となつた事実を証明する資料を証拠化しておくこと。

4 行政訴訟事件とともに国家賠償請求事件が提起された場合は、相互に矛盾のない証拠の提出、証言等につとめること。

第4 人権侵犯事件の処理要領

人権侵犯事件には、地方法務局または弁護士会(以下「人権擁護機関」という)がその権限に基づきまたは事業として調査にかかわる事件があるが、処理は次によるものとする。

1 人権侵犯事件は、警察官の公権力の行使による行為を違法または不当であるとして警察に抗議し、次いで人権擁護機関に調査を依頼し事案の内容が特定した段階で告訴、告発または国家賠償請求事件に発展するのが通例であるから、抗議等により事案の発生を知つたときは、すみやかに当該警察官その他関係者から事案の真相を聴取し具体的事実のは握と証拠の収集につとめること。

2 人権擁護機関の警察に対する事実調査については、事前の連絡なしに当該警察職員に面接することのないようにするとともに、面接させる場合は、あらかじめ当該警察職員および関係者から事情を聴取し事案の真相をは握したうえで、面接の日時、場所、立会人等調査に関する便宜を図るよう配意すること。

3 申告内容が誤解、誇張または偏見等により事実に反する場合は、その内容を地方法務局人権擁護課に説明し事案の解決につとめること。

4 調査の結果、人権侵犯の事実が明らかになつたときは、懲戒処分に関する必要な措置をとり、その結果を地方法務局が告発、勧告等の処置をとる以前に連絡すること。

第5 告訴告発事件の処理要領

告訴告発事件には、警察官が司法上の権限に基づく行為に関する事件と行政上の権限に基づく行為に関する事件とがあるが、いずれも当該警察官が職務を行なうにあたり職権を濫用した疑いがあるとするもので、処理は次によるものとする。

1 事件の発生を知つたときは、職権行使の必要性、適法性、妥当性、告訴人等の状態および周囲の事情等について調査すること。

2 事件の処理にあたつては、職権行使の対象者は、警察違反の状態があり、かつ警察責任を有する者であることを証明する証拠を収集整備しておくこと。

3 告訴告発事件が国家賠償請求事件の原因となつた場合は、両事件の訴訟について相互に矛盾のない証拠の提出等に留意すること。

第6 国家賠償請求事件の処理要領

国家賠償請求事件は、審査請求事件、行政訴訟事件、人権侵犯事件、告訴告発事件等とともに提起されるもの及びそれのみを提起するものがあるが、処理は次によるものとする。

1 他の事件とともに提起される国家賠償請求事件は、当該事件の防御の手段として提起されるもの、または勝訴の手段として提起されるものとがあるから、主たる目的がいずれであるかを判断し訟務対策をたてること。

2 国家賠償請求事件は、指定代理人たる法務省もしくは県の職員または訴訟代理人たる弁護士が当該訴訟に当るので、これらの者と密接な連絡を保持し処理にあたること。

第7 民事事件の処理要領

1 民事事件の処理については、早期に見通しをたてるとともに、原告との和解につとめ合理的解決を図ること。

2 和解の見通しがたたない事件については、すみやかに有利な証拠を収集整備すること。

3 警察職員の職務中における交通事故を原因とする事案については、自動車損害賠償法第3条により、不法行為における故意または過失の要件の主張責任および挙証責任が転換されているので、示談による和解につとめること。

様式(1)

 略

様式(2)

 略

争訟事務処理に関する訓令

昭和44年8月8日 県警察本部訓令第18号

(平成28年4月1日施行)

体系情報
警務部
沿革情報
昭和44年8月8日 県警察本部訓令第18号
昭和46年3月9日 県警察本部訓令第4号
昭和48年4月19日 県警察本部訓令第5号
昭和50年3月17日 県警察本部訓令第7号
昭和51年3月30日 県警察本部訓令第6号
昭和54年3月14日 県警察本部訓令第7号
平成4年2月28日 県警察本部訓令第2号
平成7年3月16日 県警察本部訓令第3号
平成17年3月24日 県警察本部訓令第11号
平成28年3月23日 県警察本部訓令第8号