○矯正施設及び留置施設に収容中の者が死亡した場合における死体取扱い等について(通達)

平成27年8月14日

達(捜一)第302号

刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律第50号)、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(平成18年法務省令第57号)等により、刑事施設内で死亡した者については、その長が検視を行い、変死又は変死の疑いがあると認めるときは、検察官及び警察官たる司法警察員に対し、その旨を通報することとされているところ、少年院法(平成26年法律第58号)及び少年鑑別所法(平成26年法律第59号)が平成27年6月1日から施行されたことに伴い、少年院法施行規則(平成27年法務省令第30号)、少年鑑別所法施行規則(平成27年法務省令第31号)等により、少年院及び少年鑑別所内で死亡した者についても同様の取扱いがなされることとされた。

これに伴い、法務省刑事局においては、矯正施設(刑務所、少年刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所及び婦人補導院をいう。)、留置施設及び海上保安留置施設に収容中の者が死亡した場合における検察官の検視等に関する取扱い等を整理し、各検事正等に通達しており、これを受け、警察庁において、矯正施設及び留置施設に収容中の者が死亡した場合における警察の死体取扱い等について、下記のとおり定めたことから、遺漏なきようにされたい。

なお、本通達の内容については、警察庁において法務省と協議済みである。

1 関係法令等の概要

(1) 刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則第93条、少年院法施行規則第91条及び少年鑑別所法施行規則第69条の概要

矯正施設(婦人補導院を除く。以下同じ。)内で死亡した者については、当該施設の長が検視を行い、その結果、変死又は変死の疑いがあると認めるときは、検察官及び警察官たる司法警察員に対し、その旨を通報する。

(2) 被収容者等の検視に関する訓令等(別添1及び2参照)及び少年院及び少年鑑別所における検視に関する訓令等の概要(別添3及び4参照)

矯正施設の長は、当該施設を管轄する検察庁の検察官及び警察署に対し、当該施設の長による検視の結果、死亡者の人定事項、罪名等を電話により通報した後、必要事項を簡潔に記載した書面をファックス送信して送付する。

(3) 法務省刑事局長通達「矯正施設等に収容中の者が死亡した場合における検視等に関する取扱い及び検視調書等関係書類の保存について(平成15年11月27日付け法務省刑総第1291号)」の一部改正について(依命通達)(平成27年5月29日付け法務省刑総第710号)の概要(別添5参照)

ア 上記(1)及び(2)の通報を受けた検察官は、明らかに変死の疑いがないと認められる場合を除き、原則として自ら検視を行う。ただし、検察官自ら検視をすることのできないやむを得ない事情がある場合には、司法警察員である警察官に対し、代行検視を命じることができる。

イ 警察の留置施設については、刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則、少年院法施行規則及び少年鑑別所法施行規則の適用はないものの、検察官は、同施設から変死に関する通報がなされたときは、検視の要否を検討した上、検視を実施する際には必ず検察官自ら検視を行う。

2 矯正施設に収容中の者が死亡した場合における死体取扱い等

(1) 通報を受けた場合の措置

上記1のとおり、上記1(1)及び(2)の通報については、検察官及び管轄警察署の双方になされるが、当該通報に係る死体の検視については、検察官自ら検視することのできないやむを得ない事情がある場合を除き、検察官が行うこととされていることから、当該通報を受けた場合には、検視規則(昭和33年国家公安委員会規則第3号)第3条の規定に基づき、変死体に関する検察官への通知を実施するとともに、検察官が自ら検視を行うか否かについて確認すること。

(2) 通報書類等の取扱いについて

矯正施設から送付された上記1(2)の書面については、通報を受けた警察署における措置結果とともに、本県において定める公文書の管理要領に従って福島県警察の文書管理に関する訓令(令和3年県本部訓令第23号)の規定に基づき保存すること。

3 留置施設に収容中の者が死亡した場合における死体取扱い等

(1) 変死又はその疑いがあると認められる場合

検視規則第3条の規定に基づく変死体に関する検察官への通知を実施するとともに、検察官による検視が行われることを確認すること。

(2) 変死又はその疑いがあると認められない場合

留置施設に収容中の者が死亡した場合、変死又はその疑いがあると認められないことは想定し難いが、仮にそのような事案に該当する場合があれば、事案の特殊性に鑑み、検察官に連絡の上、警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律(平成24年法律第34号)に基づく死体調査等を行うこと。

別添1

法務省矯成訓第3379号

矯正管区長

行刑施設の長

被収容者の検視に関する訓令を次のように定める。

平成18年5月23日

法務大臣 杉浦正健

被収容者等の検視に関する訓令

(趣旨)

第1条 この訓令は,刑事施設の長が行う検視に関し必要な事項を定めるものとする。

(定義)

第2条 この訓令において使用する用語は,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律(平成17年法律第50号。以下「法」という。)で使用する用語の例による。

(検視の実施者)

第3条 刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(平成18年法務省令第57号。以下「規則」という。)第93条第1項(規則第96条及び第97条第1項において準用する場合を含む。)の規定による検視は,刑事施設の長が自ら行うものとする。

2 前項の規定にかかわらず,刑務所,少年刑務所又は拘置所の支所における検視は,支所長に行わせることができる。

3 前2項の規定にかかわらず,やむを得ない事由があるときは,刑事施設の長及び支所長以外の職員(以下「検視職員」という。)に検視を行わせるものとする。

(検視の調査事項)

第4条 検視は,次に掲げる事項について調査することにより行うものとする。

(1) 死亡場所及びその状況

(2) 死体の現状,姿勢及び各部位の状況

(3) 着衣,携帯品等の状況

(4) 死亡の推定年月日時

(5) 死因

(6) その他必要な事項

(医師の立会い)

第5条 検視を行うに当たっては,医師を立ち会わせ,その意見を聴かなければならない。

(検視の記録)

第6条 検視の結果(第4条第1号から第3号までに掲げる事項については,その状況を撮影した写真を含む。)は,被収容者身分帳簿及び名籍事務関係各帳簿様式(平成13年法務省矯保訓第651号大臣訓令)様式第4号の1及び第4号の2による視察表及び同訓令様式第15号による死亡帳に記録するものとする。

2 検視職員が検視を行った場合には,前項の記録には,その理由を含むものとする。

3 被収容者,労役場留置者又は監置場留置者が死亡した場合において,死因が病死であるときは,刑事施設の医師は,その病名,病歴,死因及び死亡の年月日時を死亡帳に記載し,署名するものとする。

(検察官等に対する通報)

第7条 規則第93条第2項(規則第96条及び第97条第1項において準用する場合を含む。)の規定による通報は,次に掲げる場合に,刑事施設の所在地を管轄する検察庁の検察官及び警察官たる司法警察員(警察署)に対して行うものとする。次に掲げる場合に該当することが検視を行う前に明らかであるときも,同様とする。

(1) 自殺又はその疑いがある場合

(2) 犯罪による死亡又はその疑いがある場合

(3) その他自殺又は犯罪による死亡の疑いがないと断定できない場合

この訓令は,既決法の施行の日(平成18年5月24日)から施行する。

則〔H18.8.22矯成訓第4949〕

この訓令は,平成18年9月1日から施行する。

別添2

法務省矯成第3380号

平成18年5月23日

矯正管区長 殿

行刑施設の長 殿

矯正研修所長 殿(参考送付)

法務省矯正局長 小貫芳信

検視に関する訓令の運用について(依命通達)

本日,被収容者の検視に関する訓令(平成18年法務省矯成訓第3379号大臣訓令。以下「訓令」という。)が制定され,刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律(平成17年法律第50号)の施行の日から施行されることとなりましたので,その運用については,下記事項に留意の上,遺漏のないよう配意願います。

なお,平成15年11月27日付け法務省矯保第4528号当職通達「被収容者が死亡した場合における所長検視及び検察官等通報について」及び平成15年11月27日付け法務省矯保第4529号保安課長,医療分類課長通知「被収容者が死亡した場合における所長検視及び検察官等通報について」は,廃止します。

1 検視の実施者(訓令第3条関係)

(1) 検視の代行者

訓令第3条第3項の規定により検視を行う職員は,原則として,刑務所,少年刑務所又は拘置所の総務部長(支所においては,支所の次長又は庶務課長)とする。

(2) 留意事項

検視を実施するに当たっては,あらかじめ,次のアからウまでの事項を確認すること。

ア 死亡者の氏名,生年月日,性別及び本籍

イ 事件名(被勾留者に限る。)

ウ 罪名,刑名及び刑期(受刑者に限る。)

(3) 事情聴取

検視を実施するに当たっては,必要に応じ,死亡者を発見した職員及び被収容者等から事情を聴取すること。

2 検視の記録(訓令第6条関係)

訓令第6条第1項の規定により作成する視察表には,検視の実施の日時,場所,実施者等を記載し,かつ,調査結果を具体的に記載した上で,同項の規定により撮影した写真を添付すること。

3 検察官等に対する通報(訓令第7条関係)

(1) 通報の要件

訓令第7条各号の規定により通報を要しない場合とは,例えば,老衰死,業務上過失致死等の犯罪に起因しない病死又は事故死であることが明らかである場合が考えられること。

(2) 訓令第7条の規定により通報するに当たっては,検視の結果のほか,記1の(2)のアからウまでの事項も通報すること。

(3) 調査結果が取りそろうまで時間がかかると思料されるときは,上記(2)にかかわらず,判明した事項を順次通報するなどして,通報時期が遅延しないよう留意すること。

(4) 記録

被収容者,労役場留置者又は監置場留置者が死亡した場合には,次に掲げる事項について,視察表に記録すること。

ア 検察宮等に対する通報の有無

イ 通報した理由又は通報しなかった理由

ウ 通報の相手方,日時,内容その他通報に関する事項(通報した場合に限る。)

4 検察官等に対する求意見

検視の結果,訓令第7条各号に該当しない場合においても,事案によっては,刑事施設の特殊性にかんがみ,死亡事案の透明性を確保するという観点から,検察官等通報の要否を判断する際の参考とするため,司法検視の権限を有する検察官に意見を求めておくことが望ましいと考えられるので,次の場合には,検察官に対して,死亡等の事実を速やかに連絡し,その意見を求めること。

(1) 死亡の原因となった疾病について,収容中に医師の診察が実施されず,又は予期しない急激な症状の悪化により死亡した場合

(2) 死因が不明な場合

(3) 保護室収容中及びその解除後おおむね1週間以内に死亡した場合

(4) 職員による制圧等の行為後おおむね1週間以内に死亡した場合

(5) 作業事故,食中毒等により死亡した場合

5 通報及び求意見の方法

記3及び4の通報又は求意見は,原則として,電話により行うこと。

この場合においては,電話の後,その内容を簡潔に記載した書面を作成し,ファックスで送付するなど,その通報又は求意見の正確性,確実性等を担保する措置を講じること。

別添3

法務省矯少訓第7号

矯正管区長

少年院長

少年鑑別所長

少年院及び少年鑑別所における検視に関する訓令を次のように定める。

平成27年5月27日

法務大臣 上川陽子

(公印省略)

少年院及び少年鑑別所における検視に関する訓令

(趣旨)

第1条 この訓令は,少年院及び少年鑑別所(以下「少年施設」という。)の長が行う検視に関し必要な事項を定めるものとする。

(定義)

第2条 この訓令において使用する用語は,少年院法(平成26年法律第58号)及び少年鑑別所法(平成26年法律第59号)において使用する用語の例による。

(検視の実施者)

第3条 少年院法施行規則(平成27年法務省令第30号)第91条第1項及び少年鑑別所法施行規則(平成27年法務省令第31号)第69条第1項の規定による検視は,少年施設の長が自ら行うものとする。

2 前項の規定にかかわらず,少年院の分院における検視は分院長に,少年鑑別所の分所における検視は分所長に行わせることができる。

3 前2項の規定にかかわらず,やむを得ない事由があるときは,少年施設の長並びに分院長及び分所長以外の職員(第6条第2項において「検視職員」という。)に検視を行わせるものとする。

(検視の調査事項)

第4条 検視は,次に掲げる事項について調査することにより行うものとする。

(1) 死亡場所及びその状況

(2) 死体の現状,姿勢及び各部位の状況

(3) 着衣,携帯品等の状況

(4) 死亡の推定年月日時

(5) 死因

(6) その他必要な事項

(医師の立会い)

第5条 検視を行うに当たっては,医師を立ち会わせ,その意見を聴かなければならない。

(検視の記録)

第6条 検視の結果(第4条第1号から第3号までに掲げる事項については,その状況を撮影した写真を含む。)は,少年簿及び収容事務関係各帳簿に関する訓令(平成27年法務省矯少訓第15号大臣訓令)様式第8号の行動観察票及び同訓令様式第21号の死亡帳に記録するものとする。

2 検視職員が検視を行った場合には,前項の記録には,その理由を含むものとする。

(検察官等に対する通報)

第7条 少年院法施行規則第91条第2項(少年院法施行規則第84条において準用する場合を含む。)及び少年鑑別所法施行規則第69条第2項の規定による通報は,次に掲げる場合に,少年施設の所在地を管轄する検察庁の検察官及び警察官たる司法警察員(警察署)に対して行うものとする。次の各号に掲げる場合に該当することが検視を行う前に明らかであるときも,同様とする。

(1) 自殺又はその疑いがある場合

(2) 犯罪による死亡又はその疑いがある場合

(3) その他自殺又は犯罪による死亡の疑いがないと断定できない場合

この訓令は,少年院法及び少年鑑別所法の施行の日(平成27年6月1日)から施行する。

別添4

法務省矯少第139号

平成27年5月27日

矯正管区長 殿

刑事施設の長 殿(鹿児島,沖縄)

少年院長 殿

少年鑑別所長 殿

矯正研修所長 殿(参考送付)

法務省矯正局長 小川新二

(公印省略)

少年院及び少年鑑別所における検視に関する訓令の運用について(依命通達)

標記について,下記のとおり定め,少年院及び少年鑑別所における検視に関する訓令(平成27年法務省矯少訓第7号大臣訓令。以下「訓令」という。)の施行の日(平成27年6月1日)から実施することとしたので,その運用については,遺漏のないよう配意願います。

1 検視の実施者(訓令第3条関係)

(1) 検視の代行者

訓令第3条第3項の規定により検視を行う職員は,原則として,少年施設の次長(次長が配置されていない少年鑑別所においては,庶務課長)とする。

(2) 留意事項

検視を実施するに当たっては,あらかじめ,次のアからエまでの事項を確認すること。

ア 死亡者の氏名,生年月日,性別及び本籍

イ 非行名,事件名又は罪名

ウ 入院又は入所の年月日

エ 刑名及び刑期(受刑在院者に限る。)

(3) 事情聴取

検視を実施するに当たっては,必要に応じ,死亡者を発見した職員等から事情を聴取すること。

2 検視の記録(訓令第6条関係)

訓令第6条第1項の規定により行動観察票に記録するときは,検視の実施の日時,場所,実施者等を記載し,かつ,調査結果を具体的に記載した上で,同項の規定により撮影した写真を添付すること。

3 検察官等に対する通報(訓令第7条関係)

(1) 通報の要件

訓令第7条各号の規定により通報を要しない場合とは,例えば,業務上過失致死等の犯罪に起因しない病死又は事故死であることが明らかである場合が考えられること。

(2) 訓令第7条の規定により通報するに当たっては,検視の結果のほか,記の1の(2)のアからエまでの事項も通報すること。

(3) 調査結果が取りそろうまで時間がかかると思料されるときは,上記(2)にかかわらず,判明した事項を順次通報するなどして,通報時期が遅延しないよう留意すること。

(4) 記録

次に掲げる事項について,行動観察票に記録すること。

ア 検察官等に対する通報の有無

イ 通報した理由又は通報しなかった理由

ウ 通報の相手方,日時,内容その他通報に関する事項(通報した場合に限る。)

4 検察官等に対する求意見

検視の結果,訓令第7条各号に該当しない場合においても,事案によっては,透明性確保の観点から,検察官等通報の要否を判断する際の参考とするため,司法検視の権限を有する検察官に意見を求めておくことが望ましいと考えられるので,次の場合には,検察官に対して,死亡等の事実を速やかに連絡し,その意見を求めること。

(1) 死亡の原因となった疾病について,収容中に医師の診断が実施されず,又は予期しない急激な症状の悪化により死亡した場合

(2) 死因が不明な場合

(3) 保護室収容中又はその解除後おおむね1週間以内に死亡した場合

(4) 職員による制圧等の行為後おおむね1週間以内に死亡した場合

(5) 矯正教育中の事故,食中毒等により死亡した場合

5 通報及び求意見の方法

記の3及び記の4の通報又は求意見は,原則として,電話により行うこと。

この場合においては,電話の後,その内容を簡潔に記載した書面を作成し,ファックスで送付するなど,その通報又は求意見の正確性,確実性等を担保する措置を講じること。

別添5

法務省刑総第710号(例規)

平成27年5月29日

検事総長 殿

検事長 殿

検事正 殿

法務省刑事局長 林眞琴

(公印省略)

平成15年11月27日付け法務省刑総第1291号通達「矯正施設等に収容中の者が死亡した場合における検視等に関する取扱い及び検視調書等関係書類の保存について」の一部改正について(依命通達)

少年院法(平成26年法律第58号)及び少年鑑別所法(平成26年法律第59号)が一部を除いて平成27年6月1日から施行されることに伴い,標記通達の一部を下記のとおり改正し,同日から実施することとしたので,その適正な運用に遺漏のないように願います。

なお,本件については,矯正局,警察庁及び海上保安庁と協議済みです。

1 記第1中「代用監獄」を「留置施設及び海上保安留置施設」に改める。

2 記第1の1を次のように改める。

1 通報事実の把握及び検視の要否の判断について

(1) 矯正施設(婦人補導院を除く。以下1において同じ。)に収容中の者が死亡した場合

ア 矯正施設に収容中の者について,「変死又は変死の疑いがあると認める」場合は,矯正施設の長から,検察官に対しその旨の通報がなされるので(刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(平成18年法務省令第57号)第93条第2項(同規則第96条及び第97条第1項において準用する場合を含む。),少年院法施行規則(平成27年法務省令第30号)第91条第2項及び少年鑑別所法施行規則(平成27年法務省令第31号)第69条第2項。以下「3規則」という。),通報を受けた検察官は,死亡原因を判断するために必要な事項について聴取した上,検視の要否を判断することとなるところ,検視は「変死者又は変死の疑のある死体があるとき」に行わなければならないとされていることから(刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第229条第1項),明らかに変死の疑いがないと認められる場合を除き,検視を実施する。

3規則に基づく施設の長からの通報を受けた場合,原則として通報を受けた検察官において検視を行うのが相当である。ただし,同通報は警察署に対してもなされるところ,検察官自らが検視をすることのできないやむを得ない事情がある場合には,司法警察員である警察官に代行検視を命じることができる。なお,矯正施設のうち刑事施設(刑務所,少年刑務所及び拘置所)に収容中の者に対する検視について,司法警察員である刑務官に代行検視を命じることのないよう留意すべきである。

イ 矯正施設の長から検察官に対して,3規則に基づく通報を行う必要があるか否かについて意見を求められた場合には,同規則による通報の要否を判断するために必要な事項を聴取して適切に対応する。

(2) 婦人補導院に収容中の者が死亡した場合

婦人補導院に収容中の者について,3規則の適用はないが,「変死又は変死の疑いがあると認める」場合において,検察官に対し変死等の通報がなされたときは,(1)に準じて,検視の要否等について検討する。

(3) 留置施設又は海上保安留置施設に収容中の者が死亡した場合

留置施設又は海上保安留置施設に留置中又は勾留中の被疑者等について,3規則の適用はないが,「変死又は変死の疑いがあると認める」場合において,検察官に対し通知がなされたときは,(1)に準じて,検視の要否を検討した上,検視を実施する際には必ず検察官自ら検視を実施する。

3 記第1の3中「が自殺その他変死した」を「について,「変死又は変死の疑いがあると認める」」に,「監獄の長等」を「矯正施設等の長」に,「様式第11号」を「様式第7号」に改める。

4 記第1の4(1)中「事件事務規程第2条第5号」を「事件事務規程第3条第5号」に改める。

法務省刑総第1291号(例規)

平成15年11月27日

改正 平成27年5月29日

検事総長 殿

検事長 殿

検事正 殿

法務省刑事局長 樋渡利秋

矯正施設等に収容中の者が死亡した場合における検視等に関する取扱い及び検視調書等関係書類の保存について(依命通達)

矯正施設(刑務所,少年刑務所,拘置所,少年院,少年鑑別所及び婦人補導院をいう。)等に収容中の者が死亡した場合における検視,司法解剖に関する取扱い及び検視調書等関係書類の保存等については,下記事項に留意の上,その適正な運用に遺憾のないように願います。

なお,本件については,矯正局及び警察庁と協議済みです。

第1 矯正施設等(留置施設及び海上保安留置施設を含む。以下同じ。)に収容中の者が死亡した場合における検視等に関する取扱いについて

1 通報事実の把握及び検視の要否の判断について

(1) 矯正施設(婦人補導院を除く。以下1において同じ。)に収容中の者が死亡した場合

ア 矯正施設に収容中の者について,「変死又は変死の疑いがあると認める」場合は,矯正施設の長から,検察官に対しその旨の通報がなされるので(刑事施設及び被収容者の処遇に関する規則(平成18年法務省令第57号)第93条第2項(同規則第96条及び第97条第1項において準用する場合を含む。),少年院法施行規則(平成27年法務省令第30号)第91条第2項及び少年鑑別所法施行規則(平成27年法務省令第31号)第69条第2項。以下「3規則」という。),通報を受けた検察官は,死亡原因を判断するために必要な事項について聴取した上,検視の要否を判断することとなるところ,検視は「変死者又は変死の疑のある死体があるとき」に行わなければならないとされていることから(刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第229条第1項),明らかに変死の疑いがないと認められる場合を除き,検視を実施する。

3規則に基づく施設の長からの通報を受けた場合,原則として通報を受けた検察官において検視を行うのが相当である。ただし,同通報は警察署に対してもなされるところ,検察官自らが検視をすることのできないやむを得ない事情がある場合には,司法警察員である警察官に代行検視を命じることができる。なお,矯正施設のうち刑事施設(刑務所,少年刑務所及び拘置所)に収容中の者に対する検視について,司法警察員である刑務官に代行検視を命じることのないよう留意すべきである。

イ 矯正施設の長から検察官に対して,3規則に基づく通報を行う必要があるか否かについて意見を求められた場合には,同規則による通報の要否を判断するために必要な事項を聴取して適切に対応する。

(2) 婦人補導院に収容中の者が死亡した場合

婦人補導院に収容中の者について,3規則の適用はないが,「変死又は変死の疑いがあると認める」場合において,検察官に対し変死等の通報がなされたときは,(1)に準じて,検視の要否等について検討する。

(3) 留置施設又は海上保安留置施設に収容中の者が死亡した場合

留置施設又は海上保安留置施設に留置中又は勾留中の被疑者等について,3規則の適用はないが,「変死又は変死の疑いがあると認める」場合において,検察官に対し通知がなされたときは,(1)に準じて,検視の要否を検討した上,検視を実施する際には必ず検察官自ら検視を実施する。

2 検視の実施に当たり留意すべき事項について

(1) 検視の実施に当たっては,矯正施設等に収容中の者の死亡という特殊性にかんがみ,適切な医療上の処置がなされていたか否かなど業務上過失致死罪を含む犯罪による死亡の疑いの有無についても留意して実施する。

(2) 検察官自ら検視を行う場合は,検視における死因の判断の正確性を担保するため,必要に応じて,専門的知識を有する医師等に協力を求めて検視の補助を要請する。

3 検視を実施しなかった場合の措置について

矯正施設等に収容中の者について,「変死又は変死の疑いがあると認める」旨の通報を受けたものの,検察官において,変死の疑いがなく検視の必要がないと判断して検視を実施しないこととした場合には,通報を受けた事実,矯正施設等の長が通報を必要と判断した理由及び検察官が検視を不要と判断した理由その他関連する事項を適宜の書類に記載して保存する。

この場合,変死体発見受理報告書(事件事務規程第7条,様式第7号)を適宜修正して使用することは差し支えない。

4 司法解剖した場合の立件受理手続等について

(1) 検察官において,死亡した被収容者の検視を行ったが,犯罪による死亡の疑いがあり,更に死因を解明するため司法解剖を実施することとした場合で,検察官において司法解剖のための鑑定処分許可状の発付を請求したときは,速やかに立件受理手続を行う(事件事務規程第3条第5号)。

(2) 司法警察員において司法解剖のための鑑定処分許可状の発付を請求する場合でも,矯正施設等に収容中の者の死亡という特殊事情にかんがみ,検察官においても立件受理手続を行う。この場合,司法警察員においても捜査を行うこととなるので,司法警察員が捜査を遂げたときに,書類及び証拠物とともに事件の送致を受けることとなるが,事件送致がなされていない段階であっても,送致までに相当の期間を要する見込みであるときには,検察官において適宜警察に捜査の進ちょく状況を確認する。

第2 検視調書等関係書類の保存について

1 矯正施設等の長から被収容者の死亡について通報を受けた場合

(1) 立件受理手続がとられていない場合

ア 刑事事件として立件受理手続をとらなかった場合は,変死体発見受理報告書等の通報内容等を記載した書類(第1,3の検視を実施しないと判断した理由を記載した書類を含む。)及び検視調書等は,検察庁において,変死体発見受理報告書つづり等に編てつして一括保存する。司法警察員に代行検視を命じたが,立件に至らなかった場合には,警察から検視調書の原本等の送付を受けて,通報内容等を記載した書類とともに保存する。

イ 通報内容等を記載した書類や検視調書等の関係書類の保存期間は,通報(第1,1,(1),イの意見を求められた場合を含む。)を受けた日から起算して15年とする。なお,既に通報内容等を記載した書類や検視調書等の関係書類が保存されている場合も,通報を受けた日から起算して15年保存することとなる。

ウ 検察官は,保存期間が満了した書類について,引き続き保存の必要があると認めるときは,一定期間を定めて当該保存期間を延長するものとする。この場合,当該延長に係る保存期間が満了した後にこれを更に延長しようとするときも同様である。

(2) 立件受理手続がとられた場合

刑事事件として立件受理手続をとった場合は,変死体発見受理報告書等の通報内容等を記載した書類,検視調書及び司法解剖関係書類は,当該刑事事件の記録に編てつする。

2 矯正施設等以外の変死の場合

矯正施設等以外における変死等については,通常,変死体の発見報告を受けた司法警察員から検察官にその旨の報告がなされ,その際,変死体発見受理報告書を作成することとなるが,検視や司法解剖を不要とした場合には,かかる判断をした理由について同報告書に記載するなどして把握する。これらの書類については,第2,1に従い保存する。

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 略

矯正施設及び留置施設に収容中の者が死亡した場合における死体取扱い等について(通達)

平成27年8月14日 達(捜一)第302号

(令和3年12月20日施行)

体系情報
刑事部
沿革情報
平成27年8月14日 達(捜一)第302号
令和3年12月17日 達(務)第431号