○サイバー空間の脅威への対処に係る人材育成方針の策定について(通達)

令和3年11月2日

達(生環、務、生企、地企、刑総、交企、公)第343号

[原議保存期間 5年(令和9年3月31日まで)]

[有効期間 令和9年3月31日まで]

本県警察では、サイバー空間の脅威への対処に関する人的基盤を強化するため、サイバー犯罪・サイバー攻撃の捜査及び情報通信技術に関する知識等を有する人材の育成を推進してきたところであるが、別紙のとおり「サイバー空間の脅威への対処に係る人材育成方針」を策定し、令和3年11月2日から施行することとしたので、各位にあっては、その趣旨を踏まえ、効果的な人材の育成を強力に推進されたい。

別紙

サイバー空間の脅威への対処に係る人材育成方針

1 基本的な考え方

今やサイバー空間の安全なくして治安は成り立たない状況となっており、今後もサイバー空間の脅威は一層深刻化していくことが見込まれる。こうした情勢に鑑みると、サイバー犯罪対策担当部門、サイバー攻撃対策担当部門及び情報技術解析部門におけるサイバー犯罪・サイバー攻撃の捜査(以下「サイバー捜査」という。)及び情報技術の解析に係る能力の更なる向上はもとより、全捜査部門における的確なサイバー捜査能力の確保、情報通信技術を悪用した犯罪の相談への適切な対応、警察活動を支える情報通信システムのより堅ろうな情報セキュリティの実現等、いずれの部門においてもサイバー空間への脅威に対する対処能力(以下「対処能力」という。)の強化を図る必要がある。

第一線の警察活動は職員の確かな判断能力や実務能力に支えられており、対処能力の強化を図るためには、物的基盤のみならず、人的基盤の強化が不可欠である。このため、本県警察においては、福島県警察サイバーセキュリティ戦略推進委員会運営要綱の制定について(平成27年12月25日付け達(生環、務、生企、地企、刑総、交企、公)第466号)に定めるサイバーセキュリティ総括責任者(生活安全部長)が、同委員会の副委員長(警務部長及び警備部長)とともに、各捜査部門や人事部門、情報通信部門等との連携・調整を図りつつ、採用・登用、教養・研修、キャリアパス管理等を相互に連携させて部門横断的かつ体系的に実施することで、サイバー空間の脅威への対処に係る人材の裾野の拡大及び能力の向上を計画的に推進する必要がある。

2 採用・登用

サイバー空間の脅威への対処に関して素養のある優秀な人材を確保するため、次の取組を推進すること。

(1) 計画的な採用

県本部警務課長(以下「警務課長」という。)及びサイバー犯罪対策課長は、サイバー空間の脅威への対処に関して素養のある人材を確保するため、コンピュータ、ネットワーク等の情報通信技術の知識及び技術を有する人材の採用に向けた取組を推進すること。

(2) 採用募集活動

警務課長及びサイバー犯罪対策課長は、本県警察のウェブサイトや民間の就職サイト等の多様な媒体を活用した情報発信の強化や広報資料の充実を図るとともに、コンピュータやネットワーク等の情報通信技術の知識及び技能を有する人材を確保するため、大学、専門学校等の説明会や合同企業説明会への積極的参加を促すこと。

(3) 民間事業者等からの採用・登用

サイバー空間の脅威への対処に関して高度な知識、技能及び経験を有する者の採用に関する情報発信の強化や広報資料の充実に取り組み、民間事業者等からコンピュータやネットワーク等の情報通信技術に係る高度な知識及び技能及び経験を有している人材の採用に努めること。

3 教養・研修

(1) 全職員の知識の底上げ

サイバー空間があらゆる犯罪に悪用され得るようになっており、全職員がその脅威について理解を深め、国民からの要望、相談等への適切な対応や情報の適正な取扱いを図る必要があることから、次の取組を推進すること。

ア 学校教養

初任科や初任補修科等において、サイバー空間をめぐる最新の情勢に応じた教養を実施するなどし、新たに採用された職員に対し、サイバー空間の脅威への対処に係る職務の重要性並びにその対処に係る知識及び技能の修得の必要性を自覚させるとともに、基礎的な知識を修得させること。

イ 職場教養

各種教養資料等を活用し、全職員に対するサイバーセキュリティに係る知識、サイバー空間の脅威の情勢等に関する効果的な教養を行うことで、サイバー空間の脅威への対処に係る基礎的な知識及び技能や情報の取扱いに係る規範意識を向上させること。

(2) 全捜査部門の対処能力の底上げ

サイバー捜査においては、専門性の高い情報通信技術に関する知識及び技能が求められることから、全捜査部門の捜査に従事する職員を対象に次の取組を推進すること。

ア 専科教養等

情報通信技術は急速な発展を続けており、サイバー空間の脅威への対処に係る知識及び技能は不断の研さんが必要であるところ、捜査に必要な能力を修得し、向上させるためには、捜査を通じた経験の蓄積のみならず、最新の情勢や手口について体系的に学習することが効果的であることから、サイバーセキュリティ対策研究・研修センターにおける専科教養、警察庁、管区警察局及び本県警察が行う研修等の活用により、捜査に従事する職員の対処能力を底上げすること。

イ 実践型教養等

捜索現場における対応や手続上執るべき措置等の職務執行能力を修得・向上させるため、過去の優れた捜査事例や教訓を参考とした想定に基づき捜査の流れを体験させる実践型の教養を実施するとともに、技能指導官等の経験豊富な職員による知識及び技能の伝承や捜査技能に関する競技大会を活用することで、捜査に従事する職員の効果的な育成を行うこと。

ウ 情報技術の解析の活用に配意した教養

サイバー捜査には、各段階において情報技術の解析が必須であり、捜査部門と情報技術解析部門が緊密に連携することが重要であることから、情報技術の解析が捜査に適切に活用されるよう、全捜査部門と情報技術解析部門との連携を図りつつ、電子機器等に保存されている情報を証拠化するための適正な手続、情報技術解析部門における技術支援に係る取組事項やその効果的な要請方法等について、捜査主任官を始めとする捜査に従事する職員に対する教養を行うこと。

(3) 対処能力の更なる向上

複雑・巧妙化するサイバー空間の脅威に的確に対処するためには、同脅威への対処に係る高度かつ幅広い知見を有する人材が求められることから、次の取組を推進すること。

ア 事件指揮能力又は事件処理能力の向上

職員は、サイバー関連事犯に関する端緒情報の入手に努めるとともに、高度な技術を要し、又は複雑、困難な事案等について積極的に事件化し、事件指揮能力又は事件処理能力の向上に努めること。

イ 情報通信技術に関する専門的な教養

コンピュータやネットワーク等の情報通信技術に係る高度で専門的な知識や犯罪ツール等の技術・手法、電子機器等に保存された電磁的記録の抽出方法等に係る知識及び技能、最新のサイバー犯罪・サイバー攻撃手法への対処方法の修得等を図るため、警察庁又は管区警察局が行う研修等を受講させることより、捜査や情報技術解析に必要な高度で専門的な知識及び技能を有する専門的捜査員の育成を行うこと。

また、サイバーセキュリティに係る民間資格の取得に努めるとともに、情報通信技術に係る高度で専門的な知識やノウハウを有している民間事業者、大学等の学術機関、サイバー犯罪対策テクニカルアドバイザー等による教養を実施するほか、民間事業者等へ一定期間職員を派遣するなどして、民間の保有する高度で専門的な知識及び技能の習得を図ること。

なお、対象者の選定に当たっては、脅威への対処に係る知見や経験を十分に考慮すること。

ウ 情報収集活動能力に関する教養

サイバー空間の脅威は国境を容易に越え、その対策や研究開発も国際的に行われており、同脅威に対処するための高度な専門的知識及び技能を有する職員にはこうした取組をいち早く把握し新たな捜査手法、解析手法等の研究・確立、被害防止の対策の企画・立案等を行うことが期待されることから、国際警察センターにおける専科教養、警察庁、管区警察局又は本県警察が行う研修等の活用により、語学能力等の情報収集活動に必要な能力の向上を図ること。

(4) サイバー犯罪等対処能力検定

対処能力を有する人材を育成するため、サイバー犯罪等対処能力検定(以下「能力検定」という。)を積極的に受検し合格するよう広く職員に対して奨励するとともに、サイバー捜査及び情報通信技術に関する知識及び技能のレベルに応じた能力検定の合格に向けて教養資料等を活用した効果的な教養を行うこと。さらに、能力検定合格者の知識及び技能の維持向上を図ること。

(5) 幹部職員の意識改革

サイバー空間の脅威に対して組織の総合力を発揮して的確に対処するため、次の取組を推進すること。

ア 組織運営

所属長を始めとする組織の運営管理に携わる者に対し、教養や研修会の受講、民間事業者との意見交換会等への参加等を通じ、着任前及び定期的に組織の運営管理に必要なサイバーセキュリティに係る知識、サイバー空間の脅威の情勢等に関する教養を行い、全職員に対する教養の徹底、資機材や人材の適材適所の配置、演習環境の整備等の対処能力の強化に向けた各種取組を牽引させること。

イ 捜査指揮

各部門が対処するべきサイバー捜査の指揮・運営に当たる捜査幹部に対し、その指揮・運営に必要な知識及び技能を修得させるため、サイバーセキュリティ対策研究・研修センターの研修等を積極的に活用すること。

4 キャリアパス管理

サイバー空間の脅威への対処に関して素養のある人材を把握し、各種教養や人事配置等を効果的に行うことで、警察全体の対処能力の向上を図るため、次の取組を推進すること。

(1) 人材管理の徹底

警務課長及びサイバー犯罪対策課長は、関係所属長及び東北管区警察局福島県情報通信部情報技術解析課長と緊密に連携し、広く職員のサイバー空間の脅威への対処に関する知識、能力、実績、配置状況、勤務希望等について部門横断的かつ組織的に把握し、体系的かつ段階的な教養訓練を実施するとともに、職員の知識習得状況及び技能習熟度の管理を徹底し、サイバーセキュリティに係る資格の保有に対して、他の資格との均衡に配意しつつ、昇任試験における加点等に向けた取組を実施すること。

(2) 部門や組織の垣根を越えた人材の配置

警務課長及びサイバー犯罪対策課長は、サイバー犯罪対策課及び公安課(以下「サイバー関係所属」という。)の職員のみならず、サイバー関係所属以外の職員に対しても、人事交流、研修等により、サイバー関係所属における勤務を経験させるなど、人材の育成に配意した部門横断的な人材の登用を行うこと。

特に、サイバー捜査の適性及び能力を有する人材については、サイバー捜査に関する知識及び技能を必要とする業務に継続的に従事させるなど、その特性を踏まえた適材適所の人事配置に努めること。

また、全捜査部門における情報技術の解析の適切な活用に資する効果的かつ効率的な情報技術の解析を実現するため、コンピュータやネットワーク等の情報通信技術に関する知識及び技能の向上が見込まれる各捜査部門の職員を選定の上、本県警察と情報通信部門との間で相互に積極的な人事交流を行うこと。

(3) キャリア形成支援

警務課長及びサイバー犯罪対策課長は、サイバー捜査の適性及び能力のある人材に対するキャリアパスモデルの提示等により、若手職員の勤務意欲の醸成を図るとともに、警察庁や本県警察の専科教養の実施に関する情報の周知徹底やeラーニングシステムの導入を行うほか、サイバーセキュリティに係る民間資格の取得や自己研さんのための休暇を取得しやすい雰囲気を醸成し、キャリア形成に向けた各種取組への参加を促すなど、職員のキャリア形成の支援を行うこと。

5 士気高揚

人材育成に向けた各種取組を真に実効あるものとし、サイバー空間の脅威に対する各種取組を強力に推進するためには、所属長を始めとする組織の運営管理に携わる者はもとより、個々の職員が同脅威への対処に係る職務の重要性及びその対処に係る知識、技能の修得の必要性を十分に自覚し、意欲的かつ主体的に能力の向上に取り組むことが不可欠であることから、次の取組を推進すること。

(1) 意識改革

サイバー犯罪対策課長は、あらゆる機会を活用し、サイバー空間の脅威に関する各種報道や世論調査結果、犯罪統計等を周知し、同脅威への対処の重要性や警察に対する国民の期待について職員の自覚を促すとともに、教養・研修等の各種人材育成に向けた取組に臨む職員に対し、具体的な事例を紹介し、同対処に必要となる専門的な知識及び技能の修得の重要性を認識させるほか、高度なサイバーセキュリティに係る民間資格試験や、より上級の能力検定の合格等、能動的かつ継続的な自己研さんを奨励し、職員の意識改革を促すこと。

(2) 環境の整備

技能指導官等による教養実施体制の強化、サイバー空間の脅威の情勢に応じた教養資料や演習環境の整備等により、知識及び技能の研さんに意欲的な職員が対処能力の向上に効果的に取り組めるような環境を整備すること。

(3) 顕著な取組に対する賞揚

顕著な取組に対する賞揚は、職員の意欲の向上を図るとともに、同種の事案に対する対処能力の強化につながることから、サイバー犯罪対策課長は、サイバー空間の脅威への対処に係る各種取組を適切に評価し、積極的な賞揚の上申を行うこと。

6 人材育成計画の策定

サイバー人材の育成計画については、別に定める。

サイバー空間の脅威への対処に係る人材育成方針の策定について(通達)

令和3年11月2日 達(生環、務、生企、地企、刑総、交企、公)第343号

(令和5年4月1日施行)

体系情報
生活安全部
沿革情報
令和3年11月2日 達(生環、務、生企、地企、刑総、交企、公)第343号
令和5年3月20日 達(務)第126号