○福島県警察における障がいを理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令の制定について(通達)

令和3年12月14日

達(務)第410号

[原議保存期間 5年(令和9年3月31日まで)]

[有効期間 令和9年3月31日まで]

みだしの訓令を制定し、平成28年4月1日から施行することとしたので、運用上誤りのないようにされたい。

1 制定の趣旨

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)は、第10条第1項において、地方公共団体の機関は、法第7条に規定する事項に関しその職員が適切に対応するために必要な要領を定めるように努めることと規定している。このことから、職員が法を理解した上で障がい者へ適切に対応するため、福島県警察における障がいを理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令(平成28年県本部訓令第4号。以下「訓令」という。)を制定したものである。

2 訓令の要点

(1) 不当な差別的取扱いの禁止及び合理的配慮の提供(第3条及び第4条関係)

職員は、事務又は事業を行うに当たり、不当な差別的取扱いにより、障がい者の権利利益を侵害してはならず、障がい者の社会的障壁の除去のために必要な合理的配慮を提供しなければならないものとした。

(2) 所属長の責務(第5条関係)

障がいを理由とする差別の解消を推進するために必要な職員への指導など、所属長の責務を定めた。

(3) 相談等の取扱い(第6条関係)

障がい者等からの相談、苦情の申出等の取扱いについて定めた。

(4) 研修及び啓発(第7条関係)

障がいを理由とする差別の解消の推進を図るため、職員に対して研修及び啓発を実施するものとした。

3 留意事項

訓令第3条及び第4条の職員が注意すべき事項について、別紙のとおり定める。

別紙

第1 不当な差別的取扱いの基本的な考え方

障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)は、障がい者に対して、正当な理由なく、障がいを理由として、財・サービス又は各種機会の提供を拒否し、提供に当たって場所、時間帯等を制限し、障がい者でない者に対しては付さない条件を付ける等により、障がい者の権利利益を侵害することを禁止している。ただし、障がい者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではない。したがって、障がい者を障がい者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障がい者に対する合理的配慮の提供による障がい者でない者との異なる取扱い及び合理的配慮の提供等をするために必要な範囲でプライバシーに配慮しつつ障がい者に障がいの状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たらない。

職員は、不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障がい者を、問題となる事務又は事業について、本質的に関係する諸事情が同じ障がい者でない者より不利に扱うことである点に留意する必要がある。

第2 正当な理由の判断の視点

1 正当な理由に相当するのは、障がい者に対し、障がいを理由に財・サービス又は各種機会の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないといえる場合である。職員は、正当な理由に相当するか否かについて、具体的な検討をせずに正当な理由を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、障がい者及び第三者の安全の確保、財産の保全、損害発生の防止その他の権利利益の観点に加え、県警察の事務又は事業の目的、内容、機能の維持等の観点に鑑み、具体的場面又は状況に応じて総合的かつ客観的に判断することが必要である。

2 職員は、正当な理由があると判断した場合は、障がい者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。

第3 不当な差別的取扱いの具体例

1 次の具体例は、不当な差別的取扱いに当たり得る。

(1) 障がいを理由に窓口対応を拒否する。

(2) 障がいを理由に対応の順序を後回しにする。

(3) 障がいを理由に書面の交付、資料の送付、パンフレットの提供等を拒む。

(4) 障がいを理由に説明会、シンポジウム等への出席を拒む。

(5) 障がいを理由に、事務又は事業の遂行上、特に必要ではないにもかかわらず来庁の際に付添人の同行を求めるなどの条件を付け、又は特に支障がないにもかかわらず付添人の同行を拒む。

2 職員は、不当な差別的取扱いに関し、次の点に留意する必要がある。

(1) 不当な差別的取扱いに相当するか否かについては、第2で示したとおり、個別の事案ごとに判断されること。

(2) 前項各号の不当な差別的取扱いの具体例については、正当な理由が存在しないことを前提としていること。

(3) 前項各号の不当な差別的取扱いの具体例については、あくまでも例示であり記載されている具体例だけに限られるものではないこと。

第4 合理的配慮の基本的な考え方

1 障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)第2条において、「合理的配慮」は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されている。

合理的配慮は、障がい者が受ける制限は、障がいのみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるものとのいわゆる「社会モデル」の考え方を踏まえたものである。法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、行政機関等に対し、その事務又は事業を行うに当たり、個々の場面において、障がい者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施についての合理的配慮を求めている。つまり、合理的配慮とは、障がい者の権利利益を侵害することとならないよう、障がい者が個々の場面において必要としている社会的障壁の除去のための必要かつ合理的な取組であって、その実施に伴う負担が過重でないものである。

このことから、職員は、合理的配慮に関し、次の点に留意する必要がある。

(1) 合理的配慮は、県警察の事務又は事業の目的、内容及び機能に照らし必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること。

(2) 合理的配慮は、障がい者でない者の比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること。

(3) 合理的配慮は、事務又は事業の目的、内容及び機能の本質的な変更には及ばないこと。

2 合理的配慮は、障がいの特性又は社会的障壁の除去が求められる具体的場面若しくは状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものである。

また、合理的配慮は、障がい者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について、第5に掲げる要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応がなされるものである。さらに、合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変わり得るものである。

職員は、合理的配慮の提供に当たっては、障がい者の性別、年齢、状態等に配慮するものとする。

なお、合理的配慮を必要とする障がい者が多数見込まれる場合、障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、その都度の合理的配慮の提供とは別に、4の環境の整備を考慮に入れることにより、中・長期的なコストの削減及び効率化につながる点は重要である。

3 障がい者の意思の表明は、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示、身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達等、障がい者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられる。

また、意思の表明には、障がい者からの意思表明のみでなく、知的障がい、精神障がい(発達障がいを含む。)等により本人の意思表明が困難な場合には、障がい者の家族、支援者、介助者、法定代理人等コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明を含む。

なお、職員は、意思の表明が困難な障がい者が、家族、支援者、介助者、法定代理人等を伴っていない場合等意思の表明がない場合であっても、当該障がい者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるときは、法の趣旨に鑑み、当該障がい者に対して適切と思われる配慮を提案するために建設的対話を働き掛けるなど、自主的な取組に努めることが望ましい。

4 合理的配慮は、障がい者等の利用を想定して事前に行われる建築物のバリアフリー化、介助者等の人的支援、情報の利用しやすさの向上等環境の整備を基礎として、個々の障がい者に対して、その状況に応じて個別に実施される措置である。したがって、各場面における環境の整備の状況により、合理的配慮の内容は異なることとなる。また、障がいの状態等が変化することもあるため、特に、障がい者との関係性が長期にわたる場合等には、提供する合理的配慮について、適宜、見直しを行うことが重要である。

5 職員は、県警察がその事務又は事業の一環として実施する業務を事業者に委託等する場合は、提供される合理的配慮の内容に大きな差異が生ずることにより障がい者が不利益を受けることのないよう、福島県警察における障がいを理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令(平成28年県本部訓令第4号)を踏まえた合理的配慮の提供について、委託等の条件に盛り込むよう努めることが望ましい。

第5 過重な負担の基本的な考え方

1 職員は、過重な負担について、具体的な検討をせずに拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、次に掲げる要素等を考慮し、具体的場面又は状況に応じて総合的かつ客観的に判断することが必要である。

(1) 事務又は事業への影響の程度(事務又は事業の目的、内容又は機能を損なうか否か。)

(2) 実現可能性の程度(物理的・技術的制約及び人的・体制上の制約)

(3) 費用又は負担の程度

2 職員は、過重な負担に当たると判断した場合は、障がい者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望ましい。

第6 合理的配慮の具体例

1 次の具体例は、合理的配慮の提供に当たり得る。

(1) 合理的配慮に当たり得る物理的環境への配慮の具体例

ア 段差がある場合に、車椅子・歩行器利用者にキャスター上げ等の補助をする、携帯スロープを渡すなどする。

イ 配架棚の高い所に置かれたパンフレット等を取って渡す。パンフレット等の位置を分かりやすく教える。

ウ 目的の場所までの案内の際に、障がい者の歩行速度に合わせた速度で歩き、又は前後左右若しくは距離の位置取りについて障がい者の希望を聞く。

エ 障がいの特性により、頻繁に離席の必要がある場合に、会場の座席位置を扉付近にする。

オ 疲労を感じやすい障がい者から別室での休憩の申出があった際、別室の確保が困難であるときはその旨を当該障がい者に説明し、対応窓口の近くに長椅子を移動させて臨時の休憩スペースを設ける。

カ 不随意運動等により書類等を押さえることが難しい障がい者に対し、職員が書類を押さえ、又はバインダー等の固定器具を提供する。

キ 災害又は事故が発生した際、館内放送で避難情報等の緊急情報を聞くことが難しい聴覚障がい者に対し、手書きのボード等を用いて、分かりやすく案内し誘導を図る。

(2) 合理的配慮に当たり得る意思疎通の配慮の具体例

ア 筆談、要約筆記、読み上げ、手話、点字、拡大文字等のコミュニケーション手段を用いる。

イ 会議で使用する資料等について、点字、拡大文字等で作成する際に、各々の媒体間でページ番号等が異なり得ることに留意して使用する。

ウ 視覚障がい者に会議で使用する資料等を事前送付する際、読み上げる機能を有するソフトウェアに対応できるよう電子データ(テキスト形式)で提供する。

エ 意思疎通が不得意な障がい者に対し、絵カード等を活用して意思を確認する。

オ 駐車場等で通常、口頭で行う案内を、紙にメモをして渡す。

カ 書類記入の依頼時に、記入方法等を障がい者の目の前で示し、又は分かりやすい記述で伝達する。障がい者の依頼がある場合は、代読、代筆等の配慮を行う。

キ 比喩表現等が苦手な障がい者に対し、比喩、暗喩、二重否定表現等を用いずに具体的に説明する。

ク 障がい者から申出があった際に、ゆっくり、丁寧に、繰り返し説明し、内容が理解されたことを確認しながら応対する。また、なじみのない外来語は避ける、漢数字は用いない、時刻は24時間表記ではなく午前又は午後で表記するなどの配慮を念頭に置いたメモを、必要に応じて適時に渡す。

ケ 会議の進行に当たり、資料を見ながら説明を聞くことが困難な視覚若しくは聴覚に障がいのある委員又は知的障がいを持つ委員に対し、ゆっくり、丁寧な進行を心掛けるなどの配慮を行う。

コ 会議の進行に当たっては、職員等が委員の障がいの特性に合ったサポートを行うなど、可能な範囲での配慮を行う。

(3) ルール及び慣行の柔軟な変更の具体例

ア 順番を待つことが苦手な障がい者に対し、周囲の者の理解を得た上で、手続の順番を入れ替える。

イ 障がい者が立って列に並んで順番を待っている場合に、周囲の者の理解を得た上で、当該障がい者の順番が来るまで別室又は席を用意する。

ウ スクリーン、手話通訳者、板書等がよく見えるように、スクリーン等に近い席を確保する。

エ 車両乗降場所を施設出入口に近い場所へ変更する。

オ 警察施設の敷地内の駐車場等において、障がい者の来庁が多数見込まれる場合は、通常、障がい者専用とされていない区画を障がい者専用の区画に変更する。

カ 他人との接触、多人数の中にいることによる緊張等により、発作等がある障がい者の場合は、緊張を緩和するため、当該障がい者に説明の上、障がいの特性又は施設の状況に応じて別室を準備する。

キ 非公表又は未公表情報を扱う会議において、情報管理に係る担保が得られることを前提に、当該障がい者の理解を援助する者の同席を認める。

2 職員は、合理的配慮に関し、次の点に留意する必要がある。

(1) 合理的配慮については、第4で示したとおり、具体的場面又は状況に応じて異なる多様かつ個別性の高いものであること。

(2) 前項各号の合理的配慮の具体例については、第5で示した過重な負担が存在しないことを前提としていること。

(3) 前項各号の合理的配慮の具体例については、あくまでも例示であり記載されている具体例だけに限られるものではないこと。

第7 留意点

別紙中「望ましい」と記載している内容は、それを実施しない場合であっても、法に反すると判断されることはないが、障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念及び法の目的を踏まえ、できるだけ取り組むことが望まれることを意味する。

福島県警察における障がいを理由とする差別の解消の推進に関する対応要領を定める訓令の制定に…

令和3年12月14日 達(務)第410号

(令和3年12月14日施行)

体系情報
警務部
沿革情報
令和3年12月14日 達(務)第410号