○福島県警察デジタル化推進基本方針の策定について(通達)

令和4年2月7日

達(務、情、生企、地企、刑総、交企、公)第35号

[原議保存期間 5年(令和9年3月31日まで)]

[有効期間 令和8年3月31日まで]

県警察におけるデジタル化施策については、福島県警察総合対策検討委員会の下部組織として福島県警察デジタル化推進分科会を設置し、中長期的な視点から県民の利便性の一層の向上や警察業務の更なる効率化・高度化を図っているところであるが、この度、デジタル化施策を更に加速するため、令和7年度末までの5年間において講ずべき具体的な取組方針を別紙のとおり制定し、令和4年2月7日から施行することとしたので、積極的かつ効果的な推進に努められたい。

別紙

福島県警察デジタル化推進基本方針

第1 総則

1 趣旨

日本社会は人口減少が急速に進行しており、特に経済活動を支える生産年齢人口の減少は著しく、デジタル技術の活用による生産性の向上等の変革なくして持続的な経済成長の実現は困難なことから、その変革を加速するため、政府では行政のデジタル化を強力に推進している。

警察に関連する施策では、運転免許証の交付、更新等の手続に関し、国民の利便性向上や負担軽減が検討されているほか、それ以外の警察行政手続でもオンライン化の対象拡大が進められている。また、オンラインによる転出届・転入予約を可能とする引越しワンストップサービスや、刑事手続に関して電子データでの書類作成、オンラインによる令状の請求・発付等を可能とする刑事手続のIT化についても、関係省庁で検討が進められている。

県警察においても、このような社会の変化に適応し、科学技術分野の発展、自然災害の激甚化・頻発化、感染症のまん延等により新たに生じ、又は変容する治安上の課題に適切に対応していくためには、デジタル技術の活用によって県民等の利便性を一層向上するとともに、デジタル・ワークスタイルを実現し、従来の手法を見直して得られた人的資源を必要な分野に再配分して警察機能を最大限に発揮できる組織を確立する必要がある。更にこれらの取組は、優秀な人材の確保や、育児、介護等のために時間的制約がある職員、障がい等のために社会生活上の制約がある職員の能力発揮に向けた働き方改革の実現という観点からも重要である。

本基本方針は、これらの達成に向け、県警察のデジタル化施策を計画的に推進するため、中長期的に講ずべき具体的な取組方針を示すことにより、県警察のデジタル化の更なる加速化を図ることを目的とする。

2 対象期間

令和3年度から令和7年度末までの5年間とする。

ただし、個別の施策について、その内容に応じて期間を設定している場合はこの限りでない。また、施策の推進状況や国におけるデジタル・ガバメントに関する検討状況、警察を取り巻く情勢等に変化が生じた場合には、所要の見直しを行うこととする。

3 推進体制

総合的にデジタル化施策を推進するため、県本部に設置した福島県警察デジタル化推進分科会(以下「分科会」という。)により、第2に示す施策をはじめとするデジタル化施策に関する推進状況の点検、把握、必要な調整等を行う。

第2 具体的な施策

1 デジタル技術を活用した利用者中心の行政サービス改革

(1) BPRの推進

利用者中心の行政サービスを実現する上で、デジタル化は目的ではなく、あくまでも手段と認識することが重要である。このため、どのような技術が使えるかという発想ではなく、利用者がサービスを受ける際にどのような手続方法が最適かという観点から、利用者のニーズ、利用状況、現場の業務、費用対効果等を詳細に把握・分析した上で、利用者と接する窓口業務等だけでなくそれに関連する部内の業務までを含めた既存のプロセスや制度の見直しを行うなどして、BPR(Business Process Re-engineeringのことであり、業務改革をいう。以下同じ。)を推進する。

(2) 行政のデジタル化の積極的な推進

ア 国が取り組む行政等のデジタル化への確実な対応

運転免許の管理等を行う運転者管理システムをはじめとする警察情報管理システムについては、都道府県警察等が個別にシステム整備を行っており、整備・維持に係るコストの増大などの課題があるほか、行政手続の更なる利便性向上のため、都道府県警察等が活用する共通基盤を整備し、他のシステムとの連携も含めた警察情報管理システム全体を合理化・高度化する取組が進められている。

このため、県警察においては、これらの国主導の変革に適応しつつ、共通基盤へのシステム移行、関連する県警察のシステム更改、ネットワーク回線の速度増速等に確実に対応する。

イ 行政のデジタル化の推進

広報、県民等からの問合せ対応、地域性の高い業務等の国が関与しない分野についても、県民等の利便性の向上につながるものから積極的に行政のデジタル化に取り組む。特に防犯情報、交通事故情報等の提供については、県民等に関わりが深く、デジタル技術により情報提供の最適化、防犯対策等への利活用等を図ることができることから、スマートフォン向けアプリの導入検討を進める。

また、必要に応じて、AIチャットボット(文字や音声による対話をロボットが代行するプログラムをいう。)を活用した各種問合せや簡易的な相談の常時・即時対応化、電子決済の導入による手数料等の支払方法の多様化、ボランティア活動を一層身近に感じられるデジタルサービスの導入による活動に参加しやすい環境の形成、事業者と連携した安全・安心関連デジタルサービスの普及拡大等といった県民等の利便性の向上、音声入力支援ソフトを活用した高齢者・障がい者への窓口対応等の充実、庁舎図面の電子化による打合せ等に係る建築業者の業務負担の軽減その他のデジタル技術の活用についても検討を行っていく。

2 業務におけるデジタル技術の活用

(1) AI、RPA等のデジタル技術の活用

業務におけるデジタル技術の活用は、職員の事務作業を軽減し、生み出された時間及び人的資源を新たな治安上の課題への対応に充てることが可能になるため、効率化が見込まれるものから優先的に行う。具体的には、継続・反復的に行われる業務、意思決定や判断に直接関わらない業務(入力・転記作業、形式審査等)、長時間を要している事務作業等から、BPRを実施した上で、AI(Artificial Intelligenceのことであり、人工知能関連技術をいう。以下同じ。)、RPA(Robotic Process Automationのことであり、人間に代わって一定のルールに基づき自動的に処理を行う事務の自動化技術をいう。以下同じ。)、音声入力等の導入に早急に取り組むこととする。

特に内部管理業務(勤務管理、給与、福利厚生、旅費等の業務をいう。)については、先端技術導入の好事例としてよく知られ、得られる知見が大きいこと、また、紙ベースの作業が多く残存し、かつ作業量が膨大であり効率化のメリットが高いと判断されることから、電子申請・決裁・保管、重複作業の解消等を前提とするシステムの構築を進める。

(2) デジタル・ワークスタイルの実現のための環境の整備

デジタル化の効果を最大限に発揮するため、また、自然災害の激甚化・頻発化や感染症のまん延等への懸念が高まっている中、非常時においても警察業務を適切に継続していくためには、県警察における業務やワークスタイルをデジタルに対応したものに早急に変革していく必要がある。

具体的には、モバイル端末・通信事業者閉域網を活用できる環境の構築を進めると同時に、電子決裁の導入、書面・押印・対面手続の見直し等によるペーパーレス化を推進し、本来の勤務場所でなくとも円滑に業務を行える環境を整備し、モバイル勤務をはじめとするデジタル・ワークスタイルの実現に取り組んでいく。

特にモバイル端末等を活用できる環境の構築は、児童虐待、自然災害等における現場対応の迅速・的確化が期待できるため、早急に取り組むこととする。あわせて、モバイル勤務やテレワークの効率性を高めるため、電子会議システムの機能拡充、インターネット利用時におけるデータ移行の利便性向上のほか、より円滑な情報共有を可能とするチャット等のコミュニケーションツールの導入に向けた検討を行う。

3 デジタル化を実現するための基盤の整備

(1) データ連携の促進等新たな価値の創出に向けた取組の実施

行政手続のワンストップサービスなど社会全体の効率化を実現するとともに、スマートシティ(新しい技術や各種官民データを活用したサービスの提供等により社会課題の解決と新たな価値の創出を図る都市又は地域をいう。以下同じ。)、モビリティサービス(地域住民や旅行者一人一人の移動ニーズに対応して複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索、予約、決済等を一括で行うサービスをいう。)等の新しいサービスを創出するためには、社会全体の基盤となるデータの整備・活用が必要であるといわれている。本県では、福島イノベーション・コースト構想やスマートシティの実現に向けた取組が進められており、データ連携等によってリアルタイムの人流・交通流に対応した効果的な交通指導取締り、信号機の設置運用及び防犯カメラの活用、効率的な避難誘導等が実現できる可能性があることから、先進的取組を行っている県内の地方公共団体等と連携し、オープンデータ(地方公共団体や事業者が保有する官民データのうち一定のルールにより誰もが容易に利用できるように公開されたデータをいう。)に関する対話等を通じて、県警察における活用の可能性及び県警察に対するニーズを把握するための取組を行う。

(2) デジタル化施策に係る統括管理

現在、県警察におけるデジタル化施策を総合的かつ戦略的に推進するため、分科会の下、県本部警務課が情報管理課と連携してデジタル化施策の総括(取組の進捗管理、総合調整等)を担当していることから、その統括管理を継続して推進する。また、特に部局横断施策や予算額の大きい事業については、関係所属の綿密な情報共有に配意する。

(3) IT人材の確保・育成

県警察におけるセキュリティ・IT人材の着実な確保・育成を図るため、福島県警察サイバー人材育成計画(令和元年6月14日付け達(生環、務、生企、地企、刑総、交企、公)第237号)等に基づき、セキュリティ・IT分野における橋渡し人材(情報通信技術に関する一定の専門性と所管業務に関する十分な知識、技能、経験等を有する職員で、情報通信分野の高度専門人材と各業務部門との橋渡しをする者をいう。)の確保・育成、職員のデジタルリテラシー向上に関する取組等を継続して推進する。

システムの内製については、緊急性、保秘性、費用対効果等を十分に検討して真に必要なものを開発することとし、それ以外のものは予算措置により対応することとする。県警察としてシステム内製化をどこまで目指すべきかについては、今後のIT人材の確保・育成状況や政府の動向を踏まえつつ、更に検討を進める。

(4) 最適なシステムの整備

ア システムの導入・更新時における費用対効果の向上

システムを導入・更新する際は、安易な前例踏襲を排し、社会情勢の変化と組織の現状を踏まえた抜本的なBPRを通じて、新規・既存を問わずシステムやその機能について、要求要件の精査、データの標準化、事業者からの提案への過度の依存によるベンダーロックイン(発注者が特定の事業者を利用し続けなくてはならない状態をいう。)からの脱却といった検討を行うとともに、組織全体の業務の合理化・高度化を推進し、費用対効果の一層の向上に取り組む。

イ システムの共通化の推進

システムの整備に当たっては、警察組織全体のシステムの有効性の向上、重複する機能の排除及び取り扱うデータの効果的な活用に十分配意し、県警察が管理する仮想サーバ(警察共通基盤連携等システム)の活用、国が整備する共通基盤への集約その他システムの共通化を推進する。

(5) 情報セキュリティ対策・個人情報保護

情報セキュリティ対策を確保するため、費用対効果や業務効率を総合的に判断し、情報の利活用とのバランスを図った上、警察情報セキュリティポリシーを的確に運用し、情報セキュリティ対策を推進する。

また、個人情報保護を徹底するため、福島県警察の個人情報等の管理に関する訓令(令和5年県本部訓令第11号)等の適正かつ円滑な運用を図る。

(6) 職員の意識改革の徹底

BPRの推進には、職員の意識を改革し、現状を改変不能なものと考える姿勢や慣習への無意識な追従を取り払い、一人一人が自ら創意工夫する姿勢を絶えず持ち続けられるようにしていくことが重要であるため、その浸透に向けた取組を行う。また、職員からの業務改善の提案、意見等は、デジタル化の着眼点としても重要であるほか、デジタル化に対する意識改革・行動変容にもつながることから、提案等を受けた幹部職員や主管課は既成概念にとらわれず積極的に採用に向けた検討を行うよう配意する。

(7) デジタルデバイド対策

県民等に関わりの深い分野については、デジタルデバイド(情報格差)をなくし、年齢、障がいの有無、性別、国籍、経済的な状況等にかかわらず誰一人取り残されない形でデジタル化のメリットを広く及ぼすため、デジタル機器に不慣れな人でも容易に扱える操作設計や画面の多言語化などを推進する。

(8) 広報

前記(7)のデジタルデバイド対策を踏まえながら、県警察ホームページを中心に、県警察の施策や県民等に必要な情報を丁寧かつ分かりやすく発信する。

福島県警察デジタル化推進基本方針の策定について(通達)

令和4年2月7日 達(務、情、生企、地企、刑総、交企、公)第35号

(令和5年9月27日施行)

体系情報
警務部
沿革情報
令和4年2月7日 達(務、情、生企、地企、刑総、交企、公)第35号
令和5年3月28日 達(県サ)第143号
令和5年9月27日 達(務、情、生企、地企、刑総、交企、公)第355号