○銃砲刀剣類所持等取締法上の認知機能検査の運用について(依命通達)
令和4年5月19日
達(生企)第269号
[原議保存期間 10年(令和15年3月31日まで)]
[有効期間 令和15年3月31日まで]
みだしのことについて、次のとおり定め、令和4年5月19日から施行することとしたので、事務処理上誤りのないようにされたい。
記
1 検査の趣旨
散弾銃を猟場に置き忘れて帰宅するなど、加齢に伴う認知機能の低下によると思われる事案が発生していることを踏まえ、銃砲刀剣類所持等取締法(昭和33年法律第6号。以下「法」という。)第4条の3第1項及び第7条の3第3項の規定により、都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、銃砲若しくはクロスボウ(以下「銃砲等」という。)又は刀剣類の所持の許可又は銃砲等の所持の許可の更新を受けようとする者の年齢が75歳以上の場合には、検査を実施することとされ、その者の認知機能の低下を的確に把握するとともに、本人にその認知機能の低下を自覚させ、注意を促すこととされている。
また、法第4条の3第2項及び第7条の3第3項の規定により、公安委員会は、検査を受けた者で、当該検査の結果が銃砲刀剣類所持等取締法施行規則の一部を改正する内閣府令(令和4年内閣府令第34号)による改正後の銃砲刀剣類所持等取締法施行規則(昭和33年総理府令第16号。以下「府令」という。)に規定する一定の基準に該当するもの(以下「基準該当者」という。)に対し、介護保険法(平成9年法律第123号)第5条の2に規定する認知症であるかどうかについて、公安委員会が指定する医師(以下「指定医」という。)の診断を受け、当該医師の診断書を提出すべきことを命ずること(以下「受診等命令」という。)ができることとされている。
2 検査の概要
(1) 検査の対象者
検査を受ける必要がある者は、法第4条の規定による銃砲等又は刀剣類の所持の許可を受けようとする者(以下「所持許可申請者」という。)で、許可申請書を提出した日における年齢が75歳以上のものである。
また、法第4条の3の規定は、法第7条の3第3項で許可の更新について準用されていることから、法第7条の3第1項の規定による猟銃若しくは空気銃又はクロスボウの所持の許可の更新を受けようとする者(以下「更新申請者」という。)で当該許可の有効期間が満了する日における年齢が75歳以上のものも検査を受ける必要がある。
なお、所持の許可の有効期間が満了する日の異なる猟銃若しくは空気銃又はクロスボウを複数所持している者については、更新ごとに検査を受ける必要がある。
(2) 検査の方法及び判定の基準
ア 検査の方法
検査は、次の方法により行うこととする(府令第14条)。
(ア) 検査を行っている時の年月日、曜日及び時刻を記述させること(以下「時間の見当識」という。)。
(イ) 16の物の図画を当該物の名称及び分類と共に示した時点から一定の時間が経過した後にその名称を記述させること(以下「手がかり再生」という。)。
イ 基準該当者を判定するための基準
基準該当者を判定するための基準は、次の数式により算出した数値が36未満であることとする(府令第15条)。
1.336×A+2.499×B
(この式において、A及びBは、それぞれ次の数値を表すものとする。
A 時間の見当識により記述された事項についての次に掲げる数値の総和
1 検査を行った時の年が記述されている場合には、5
2 検査を行った時の月が記述されている場合には、4
3 検査を行った時の日が記述されている場合には、3
4 検査を行った時の曜日が記述されている場合には、2
5 記述された時刻と検査を行った時の時刻との差に相当する分数が30未満の場合には、1
B 手がかり再生により名称が記述された物について、次に定めるところにより算出した数値の総和
1 一定の時間が経過した後において分類を再び示す前に名称が正しく記述された物の数に2を乗じて得た数値
2 一定の時間が経過した後において分類を再び示す前に名称が正しく記述されなかった物のうち、分類を再び示した後に名称が正しく記述されたものの数に1を乗じて得た数値)
ウ 検査の実施時期等
(ア) 所持許可申請者については、許可申請書を受理した後に検査を実施すること。また、更新申請者に対する検査は、当該許可の有効期間が満了する日の2月前から1月前までの間に行うこと(府令第16条第1項)。
なお、更新申請者については、許可更新申請書を受理する際に検査を実施することを原則とするが、事前に連絡を取った上で日時を指定し、一定の人数を集めて検査を実施することも可能である。
(イ) 次に掲げる者から、それぞれに定める期間内に道路交通法の一部を改正する法律(令和2年法律第42号)による改正後の道路交通法(昭和35年法律第105号)第97条の2第1項第3号イに規定する認知機能検査等(以下「道交法上の認知機能検査等」という。)を受けたとして、そのことを証明する書類の提示があった場合は、検査を受けたものとみなすこととする(府令第16条第2項)。
○ 所持許可申請者
当該許可に係る銃砲所持許可申請書、クロスボウ所持許可申請書又は刀剣類所持許可申請書を提出した日以後
○ 更新申請者
当該許可の有効期間が満了する日の5月前から1月前までの間
なお、道交法上の認知機能検査等の結果の取扱い等に関する運用上の留意事項については、別に定める。
エ 検査の実施者及び実施場所
検査は、署において銃砲等又は刀剣類の所持の許可の事務を担当する職員のうち、検査の実施に必要な技能及び知識に関する講習を受けた者が実施する。検査は、医療に関する資格や専門の知識を備えていない者が実施することを前提として、記憶力、判断力等の認知機能の低下の状況を見分けるための簡易な検査として作成されたものであるから、職員が実施しても信頼性に欠けるものではない。
また、検査は、署内の適宜の場所において実施することを原則とする。署内において検査場所が確保できないなどの事情がある場合には、署以外の場所において実施することも可能であるが、検査対象となる者は高齢者であることから、いずれの場合においても、静かで落ち着いて受検できる場所を選定すること。
オ 検査等の実施要領
検査及びその結果の通知については、別に定める認知機能検査実施要領により実施すること。
(3) 受診等命令
ア 受診等命令
公安委員会は、基準該当者に対しては、受診等命令をすることができる。この場合、公安委員会は、受診等命令をすることができるのであって、必ずしも受診等命令をしなければならないものではなく、申請書に添付された診断書等から判断して認知症に該当することが明白であるとき、認知症以外の欠格事由に該当し許可等がなされないことが明白であるとき等においては、受診等命令をする必要はない。
なお、受診等命令は、申請者に対する処分に当たるが、行政手続法(平成5年法律第88号)第3条第1項第14号に該当するため、同法第2章から第4章の2までの規定は適用されない。
イ 受診等命令の方法
受診等命令は、通知の確実性及び後日の紛議防止の観点から、名宛人に対して受診等命令書(銃砲刀剣類所持等取締法に基づく事務取扱いに関する訓令(平成23年県本部訓令第2号。以下「訓令」という。)様式第16号)により通知すること。
ウ 指定医の指定の基準
指定医については、銃砲刀剣類所持等取締法第4条の3第2項等の規定による医師の指定に関する規則(平成21年福島県公安委員会規則第6号)に基づき指定し、銃砲刀剣類所持等取締法の規定により医師を指定した件(平成29年福島県公安委員会告示第67号)で告示している。
3 運用上の留意事項
(1) 検査の実施に関する留意事項
ア 検査と採点に用いた検査用紙及び採点補助用紙は、銃砲刀剣類所持許可台帳(訓令様式第22号)に編てつした上で保存し、その保存期間は3年とすること。
イ 検査結果を通知する書面の副本の保存期間は、1年とすること。
(2) 受診等命令に関する留意事項
ア 指定医の診断に要する費用は、診断を受ける申請者が自ら負担することとなる。
イ 申請者が認知症であるかどうかについては、医師の診断書等に基づき、公安委員会が自らの責任において判断すべきものである。
ウ 申請者が検査を受けず、又は受診等命令に応じなかった場合には、所持の許可又は更新をしてはならない(法第5条第2項)。