○「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」に基づく対策の推進について(依命通達)

令和5年7月31日

達(少対、捜一)第301号

[原議保存期間 3年(令和9年3月31日まで)]

[有効期間 令和9年3月31日まで]

みだしのことについては、次のとおりであるから実効ある対策を推進されたい。

1 趣旨

弱い立場に置かれたこどもや若者が性犯罪・性暴力の被害に遭う事案が後を絶たない現状等を踏まえ、本年7月26日、「第8回性犯罪・性暴力対策強化のための関係府省会議・第13回こどもの性的搾取等に係る対策に関する関係府省連絡会議合同会議」において、「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」(以下「緊急対策パッケージ」という。)が決定されたことから、警察においても緊急対策パッケージに基づき警察各部門の連携はもとより関係機関・団体等とも連携し、こども・若者の性被害防止のための対策を推進するものである。

2 緊急対策パッケージにおける警察に係る施策

緊急対策パッケージのうち、警察に係る施策は下記のとおりである。

(1) 改正刑法等による厳正な対処、取締りの強化(緊急対策パッケージⅠ1(1))

ア 第211回国会において、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律(令和5年法律第66号)及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律(令和5年法律第67号)が成立し、公訴時効の延長に関する規定は令和5年6月23日、その他の規定のうち主要な罰則に関する部分は同年7月13日に施行されたところである。これにより、

・ いわゆる性交同意年齢を「13歳未満」から「16歳未満」に引き上げ、13歳以上16歳未満の者に対する性的行為について、相手方が5歳以上年長の場合には処罰し得ることとする。

・ 改正前の強制性交等罪、準強制性交等罪などの要件を改めて不同意性交等罪などとし、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という文言を用いて統一的な要件として規定するとともに、「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕きょうがくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること」や「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること」等、そのような状態の原因となり得る行為や事由を具体的に列挙し、より明確で判断のばらつきが生じない規定とする。

・ 16歳未満の若年者が性被害に遭うのを未然に防止し、その性的自由・性的自己決定権の保護を徹底する観点から、16歳未満の者に対して、わいせつの目的で、不当な手段を用いて面会を要求した者等を処罰することとする。

など、こどもや若者に対する性犯罪のより的確な処罰が可能となった。本改正等の趣旨・内容について、関係府省が連携し、また、関係機関や団体の協力も得て、国民に広く周知を図る。また、こどもや若者に対する性犯罪に対して、改正後の刑法等の関係法令の内容及び趣旨を踏まえ、法と証拠に基づき、厳正に対処していく。

イ 時代とともにこどもの福祉を害する犯罪に係る被害の形態等が変遷していることを踏まえ、加害者に対する恋愛感情に付け込んだ事案や、親族関係、雇用関係、師弟関係等を背景とした加害者の被害者に対する強い影響力を利用した事犯などについて、全国で取締りを強化し、その早期発見と被疑者の迅速な検挙に努め、被害に遭ったこどもの保護を図る。

ウ こどもの福祉を害する犯罪を含む一定の犯罪に関する通報を匿名で受け付け、事件検挙や被害者保護への貢献度に応じて情報料を支払う「匿名通報事業」について、今般の刑法改正等に伴い対象の変更・拡大を行うとともに、その一層の周知を図ることにより、潜在化しやすいこれらの犯罪を早期に認知するよう努める。

エ SNS事業者に対し、被害実態に関する情報を提供し、事業者による自発的な被害防止対策を促進しているところ、更なる被害防止対策を促進する。

(2) 相談窓口の周知広報の強化(緊急対策パッケージⅠ2(1))

性犯罪・性暴力の被害を受けたこどもや若者が相談しやすくなるよう、都道府県警察の性犯罪被害相談電話につながる全国共通番号「#8103(ハートさん)」や全国の都道府県等が設置・運営する性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(以下「ワンストップ支援センター」という。)につながる全国共通番号「#8891(はやくワンストップ)」について、こども・若者向けの広報の強化等により、これまで以上に周知徹底を図る。

(3) 相談・被害申告への適切な対応のための体制整備(緊急対策パッケージⅠ2(5))

ア こどもや男性といった多様な被害者を含む性犯罪被害者への適切な対応を行えるよう、警察官等に対する各種研修について、児童心理の専門家等や男性が被害者となる事件の捜査・支援の経験を有する職員による講義の拡充、こどもの頃に被害を受けた当事者や男性被害者の声を反映させること等を通じ、その内容を拡充する。

イ 児童から性被害等について聴取する際の供述の信用性等の担保のため、代表者聴取を見据え、捜査部門と児童相談所や学校、ワンストップ支援センターとの連携を図るとともに、児童相談所職員との合同研修やスクールカウンセラー等を含めた学校職員への研修を実施するなどして、児童から適切な聴取を行うことができる捜査員等の育成・能力向上を図る。

ウ 性犯罪の捜査においては、被害の届出をためらっている場合も含め、早期の段階で、被害者の希望に応じ、身体等に付着した証拠資料を採取することが重要であることから、これまで産婦人科を対象に行ってきた証拠採取キットの配備について、泌尿器科、肛門科、小児科に広げることを検討する。また、不同意性交等事件の捜査への医師の協力を確保するため、協力謝金の拡充を検討する。

3 緊急啓発期間

緊急対策パッケージにおいて、本年8月及び9月の2か月間を「こども・若者の性被害防止のための緊急啓発期間」とし、啓発活動を集中的に実施することとされた。

各署にあっては、期間中、緊急対策パッケージの趣旨を踏まえ、警察内の各部門間の連携はもとより、関係機関・団体等とも連携し、こども・若者の性被害防止を図るための具体的な啓発活動を実施すること。

なお、現在実施中の「夏季における少年の非行防止及び犯罪被害防止のための諸対策の推進期間」で実施する施策と連動させることで効率的な推進にも配意すること。

4 その他

本対策の推進にあたっては、

・「児童の性的搾取等に係る対策の強化について(令和4年9月22日付け達(少対、生環)第417号」

・「痴漢事犯対策の更なる推進について(令和5年7月24日付け達(少対、総指、刑総、捜一、鑑)第294号)

と重なる又は密接に関連することから、これらに基づく対策の推進に配意すること。

5 添付資料

「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」

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「こども・若者の性被害防止のための緊急対策パッケージ」に基づく対策の推進について(依命通…

令和5年7月31日 達(少対、捜一)第301号

(令和5年7月31日施行)

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令和5年7月31日 達(少対、捜一)第301号