○ツキノワグマの出没による人身被害防止のための対応について(通達)
令和7年10月30日
達(地企・生企)第456号
[原議保存期間 5年(令和13年3月31日まで)]
[有効期間 令和13年3月31日まで]
昨今、県内各地の山林、畑地のみならず、住宅街等におけるツキノワグマの出没が多発しており、ツキノワグマの目撃情報及び人身被害が過去最多となるなど、地域住民の日常生活に多大な不安を与えている。
ツキノワグマが出没した際の警察の対応については、これまで、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の一部改正について(令和7年9月30日付け達(生企・生環・地企・交企・交規)第429号。以下「依命通達」という。)等により指示してきたところであるが、最近の状況を踏まえ、改めて、ツキノワグマの出没による人身被害の防止のための警察の対応について、下記のとおり取りまとめたので、適切に対応されたい。
記
1 基本的な考え方
ツキノワグマの市街地への出没防止や出没した際の排除を含むツキノワグマの保護管理は、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(平成14年法律第88号)に基づき福島県及び市町村(以下「自治体」という。)の事務とされているが、市民生活の安全安心を司る警察においても市町村をはじめとする関係機関・団体と連携しつつ、安全確保の呼びかけや避難誘導、警戒活動等を行うことにより、地域住民の安全確保を最優先に対応していくことが重要である。
また、同法第34条の2に基づく緊急銃猟(以下「緊急銃猟」という。)等を市町村が実施する際は、警察は必要な協力を行うことが求められている。
2 平素の備え
(1) 警察署における担当部門について
警察署における担当部門について、ツキノワグマの出没に対する各種情報発信、現場における広報・警戒、避難誘導等における初動対応は地域部門が担当すること。
警察官職務執行法(昭和23年法律第136号。以下「警職法」という。)第4条第1項及び緊急銃猟に係る規定については、生活安全部門が担当すること。
しかしながら、本件対応は、一時的に多数の要員を必要とし、また当直体制中に行う場面も多々あることから、状況に応じて上記担当のみによらず、地域住民の安全確保を最優先に組織全体で迅速に対応すること。
(2) 自治体との連絡・協力体制の構築
ツキノワグマが出没した際の昼夜間における自治体担当者や連絡先等を把握し、速やかな連携が図られるよう、連絡体制を確保すること。
特に、閉庁時間帯における速やかな連携を確保するため、事前に閉庁時間帯の対応手順等を確認しておくなど、警察、自治体担当者双方に対応の遅れが生じないよう配意すること。
(3) 対応訓練の実施
関係機関・団体によるツキノワグマに関する研修会や会議等の実施予定を確認するほか、関係機関・団体からの研修会等出席依頼に対しては、関係者が積極的に参加し、想定訓練等を通じて自治体との役割分担を明確化するなど、迅速に対応を行うことができる体制の構築を行うこと。
また、各署においては、活動する警察官の受傷事故防止を念頭に置き、各種装備資機材の活用方法に関する訓練を実施すること。
(4) 教養の実施
ツキノワグマ出没時に適切に対応するため、警職法をはじめとした関係法令、ツキノワグマの生態や装備資機材の活用方法等に関する教養を実施すること。
(5) 装備資機材の整備
関係所属においては、ツキノワグマが出没した際に従事する警察官が対処するために必要となる装備資機材の整備に努めること。
3 ツキノワグマによる人身被害等認知時の対応
(1) 通報者の安全確保及び適切な状況判断
ツキノワグマの出没に関する110番通報等がなされた場合には、通報者の安全確保を第一に考慮し、必要に応じて現場からの速やかな避難等を指示すること。
通報者の安全が確保された後、ツキノワグマの出没時刻、地域(市街地・山岳等)、出没数、人身被害の発生の有無等について詳細に聴取すること。
聴取結果等を踏まえ、当該通報のツキノワグマによる人身被害事案への該当性及び更なる人身被害発生のおそれの程度を評価し、これに応じて必要な取組を行うこと。
(2) 自治体への迅速な連絡及び協力体制の確立
ツキノワグマによる人身被害等を認知した場合は、速やかに自治体担当者に連絡して情報共有の上、協力して必要な対応を行うこと。
(3) 地域住民への広報・情報発信
ツキノワグマによる人身被害等を認知した場合は、迅速な情報発信がなされるよう自治体や教育機関等と速やかに情報共有するとともに、関係機関・団体と連携した現場付近での広報、地域住民に向けた防犯メールや防災無線等の媒体による広報を実施することにより、更なる人身被害の発生を防止すること。
(4) 現場対応
ア 地域住民の安全確保
地域住民の避難誘導、現場周辺に対する立入規制、警戒活動等により、地域住民の安全確保を図ること。
現場周辺において警察車両による警戒活動を行う場合には、赤色警光灯、車載マイク等を活用するなどして、地域住民等に対する注意喚起を行うこと。
イ 児童生徒の安全確保
学校やその周辺及び通学路においてツキノワグマの出没事案が発生した場合は、学校関係者と連携し、登下校時間帯における警戒を行うなど児童生徒の安全確保を図ること。
また、教育委員会や学校等から、児童生徒の安全確保に関する相談・要望・協力依頼等を受けた場合については、必要な助言・協力等を行うなど適切に対応すること。
ウ 人身被害発生時における被害者の捜索・救助
ツキノワグマによる人身被害の負傷者又は行方不明者(以下「被害者」という。)を確認した場合には、消防をはじめとする関係機関・団体やハンターと連携し、被害者の捜索・救助に当たること。
特に山岳における捜索・救助については、ツキノワグマとの遭遇による二次被害のおそれが高いことから、当該地域におけるツキノワグマの生態について知見のある者から助言を受けるなど、ツキノワグマによる被害者への執着を含めた現場の状況をあらかじめ十分に見極め、必要に応じてツキノワグマの排除を先行させるなど、関係者と計画を立てた上で活動に当たること。
また、登山者の避難誘導や注意喚起については、状況に応じ、例えば関係機関・団体と連携した登山者の把握・呼びかけや航空機を活用した登山者の救助といった、市街地とは異なる対応を要することに留意し、本部地域企画課と連携して対応すること。
エ 受傷事故防止
装備資機材を有効活用し、警察官の受傷事故防止に努めること。
ツキノワグマによる人身被害においては、顔面を含む頭頸部の損傷によって重傷に至る事例が多く確認されていることから、ヘルメット・耐刃手袋の着装を徹底し、特に頭頸部への攻撃による受傷事故防止に留意すること。
また、防護用の楯やクマ撃退スプレー等の装備資機材を最大限に活用し、受傷事故の防止を徹底すること。
さらに、現場臨場時、周辺にはいまだツキノワグマが潜んでいる可能性があることを念頭に置き、必要がある場合のほか、不用意に車両から降りないこと。
このほか、現場に臨場する関係機関・団体の職員やハンター等についても、受傷事故防止のための適切な対応がとられるよう配意すること。
4 排除等への協力
(1) 緊急銃猟
ツキノワグマが市街地に出没した場合において、緊急銃猟、はこわな等による捕獲、追い払い等のうちいずれの対応をとるかの判断は市町村において行われるものであるところ、状況に応じて、市民生活の安全と平穏を速やかに確保するなどの観点から必要な助言を行うこと。
また、市町村において緊急銃猟の実施に向けた検討がなされる場合には、依命通達に基づき、関係機関・団体と連携しつつ、適切に対応すること。
(2) 警職法第4条第1項に基づく駆除
ツキノワグマが住宅街等に侵入し、現実・具体的に危険が生じ、特に急を要する場合は、警職法第4条第1項の規定に基づき、警察官がハンターに対して猟銃の使用による駆除を命じることができることとされている。
緊急銃猟の実施に向けた対応が行われている状況においてもこの運用に変更が生じるものではなく、例えば、突如としてツキノワグマが暴れ出すなどの事態が生じ、特に急を要する場合には、警職法第4条第1項に基づく駆除について検討する必要があることに留意すること。
警職法の適用は、担当部門等の特定の警察官が行うものではなく、全ての警察官が行い得るものであることから、警察署の幹部は、警職法の解釈、命令を行う場合の具体的な状況等に関する教養を適宜実施し、すべての警察官が理解を深めておくこと。
また、住宅街等でのツキノワグマの徘徊や居座り等の状況がある場合は、原則として警部補以上の者を現場責任者として臨場させ、自治体等の緊急銃猟への対応方針の確認や必要な調整、警職法第4条第1項の適用の検討等を行わせること。
特に当直体制時は、限られた勤務員の中から現場責任者を選定する必要が出てくることから、事前に当直責任者との調整を図るほか、係間での連携にも配意し、閉庁時間帯においても適切に対応のできるよう、体制を整えておくこと。