○運転免許試験の適正な実施について(依命通達)
令和8年3月10日
達(運免)第136号
[原議保存期間 5年(令和13年3月31日まで)]
[有効期間 令和13年3月31日まで]
みだしのことについては、令和8年4月1日から施行することとしたので、運用上誤りのないようにされたい。
記
1 趣旨
運転免許試験は、運転免許制度の基幹をなすものであり、その運用が適正に行われなければ、運転者管理の実効性を期することができない。
試験業務の体制や実施方法を検討する際に活用するものとして「試験業務点検表」を別添1のとおり定め、運転免許試験の適正化を図るものである。
2 適性試験
(1) 視力検査
ア 視力検査器
視力の検査は、道路交通法施行規則(昭和35年総理府令第60号)第23条に規定されているとおり、万国式試視力表により行うこととされている。
しかし、これ以外の視力表でもその性能が万国式試視力表と同等のものであれば、使用することは差し支えない。
イ 測定方法
視力表と被検者との距離は5メートルとし、照度は視標上をおおむね300ルクスから500ルクスとし、室内の照度はそれ以下とする(別添2「視力検査基準」を参照)。
測定は被検者の視力値を検査する必要はなく、運転免許(以下「免許」という。)の種類に応じた基準に達しているか否かを検査するものである。したがって、合格基準及びその前後の視標を5、6回示し、その過半数を正答した者は、合格基準に達したものということができる。
また、視力については矯正視力を含むものとされているが、矯正には眼鏡のほかコンタクトレンズ(角膜矯正用コンタクトレンズを含む。)も含まれる。
しかし、通常、眼鏡の概念に入らない望遠鏡式のものは、眼鏡と認めることは不適当である。
ウ 視野の測定
一眼の視力が0.3に満たない者(一眼が見えない者を含む。)については、視野が必要条件となるが、視力を矯正して合格基準に達した者の視野の測定は、支障がある場合を除き、矯正した状態で測定すること。
なお、視野を必要条件としない者で側面視野が左右150度に達しないものについては、自動車等を運転することが著しく道路における交通の危険を生じさせるおそれがあると認めるときは、十分な周囲の安全確認等に関する必要な安全教育が行われるよう配意すること。
(2) 色彩識別能力
ア 合格基準
色彩識別能力の検査は、赤色、青色及び黄色を見分けることができれば合格基準に達したこととなる。したがって、通常の者が見て赤色であるものが褐色に見えたとしても前記の三原色の区分(三原色の色紙を何枚か混ぜ、その中から、赤色、青色、黄色を区分する)ができればよい。
イ 試験の色彩濃度
交通信号の実物模型により検査する場合は、その色彩濃度を信号と同様のものとし、また、色紙を使用する場合の色彩番号は、JIS Z 8721準拠の標準色票による赤色、青色、黄色とするのが適当である。
(3) 深視力
深視力の測定は、視力を矯正して合格基準に達する者については、視野測定と同様にその矯正した状態で測定する。したがって、視力測定の際に使用した眼鏡と異なる眼鏡を使用して深視力を測定させることは適当でない。
(4) 聴力
聴力の測定方法は、10メートルの距離で普通自動車の警音器の音が聞こえるか否かについて検査するが、その方法については、試験コース等屋外で被検者を後ろ向きに立たせて警音器を数回鳴らし、その過半数以上聞こえた者を合格とする。
なお、一般受験者について、機器を用いて前記の方法以外の方法で検査する場合でも、合否を決定する最終検査は、前記の方法によること。
(5) 運動能力
道路交通法施行令(昭和35年政令第270号)第38条の2第4項に規定する身体の障害以外の障害を有する身体障害者に免許を与える場合の補助装置(装具)又は自動車の種類の限定等をどのようにするかは、その障害の程度、補助手段等を個別具体的に審査し決定すべきであるが、この審査は技能試験官等からなる委員会を設け、適正に判断することが望ましい。
なお、身体障害者に与える免許の種類・条件等の基準は、「身体障害者に対する適性試験(運動能力)実施の標準について(通達)」(令和5年3月30日付け警察庁丙運発第7号)のとおりとする。
3 学科試験
学科試験の実施については、「学科試験の適正な管理について(依命通達)」(令和8年4月1日付け達(運免)134号)に示したところにより実施するほか、次の点に留意すること。
(1) 問題の適正化
学科試験の問題については、例題を参考としつつ作成し、案の段階で運転免許課長が直接審査に当たること。
また、不正の防止、公平性確保の観点から、各免許ごとに少なくとも10数種類程度の試験問題を作成するように留意すること。
試験問題作成後においても、常時、各試験問題ごとの正答率等を把握し、適宜問題の差替えを行うなどして試験問題の適正管理に努めること。
(2) 不正受験の防止
ア 問題の作成、印刷、保管及び出題決定を適切に行うこと。
イ 同一試験室において少なくとも2種類以上の問題を配布して実施すること。ただし、受験者が少ない場合は、この限りでない。
ウ 受験用机は、1名用が好ましいことはいうまでもないが、その他の場合であっても、不正を行うことが困難となるように創意工夫をすること。
エ 受験者の着席順は、受験申請順とせず、無作為に又は一定のルールに従って着席順序を変えること。
オ 試験官数は一室(受験者100名程度)に責任者以下3名以上を基本とし、受験者50名を超えるごとに担当者1名を追加するように努めること。
4 技能試験
技能試験の実施については、「運転免許技能試験実施基準について(通達)」(令和8年2月4日付け警察庁丙運発第2号)に示したところにより実施するほか、次の点に留意すること。
(1) 次番者同乗
大型自動車免許、中型自動車免許、準中型自動車免許、普通自動車免許、大型自動車第二種免許、中型自動車第二種免許及び普通自動車第二種免許に係る試験に当たっては、不正受験を防止するとともに、採点について誤解を招くことのないようにするため、次番者を後部座席に乗車させること。
なお、受験者が1名であるなどの理由により次番者の同乗が困難である場合は、次番者の代わりに職員等が同乗する方法のほか、受験者の動静や技能試験官の採点状況等の映像及び音声を、ドライブレコーダー、車内カメラ等に録音・録画する方法(一定期間保存され、当該技能試験後に映像及び音声を確実に確認することができるものに限る。以下「録音・録画方法」という。)としても差し支えないものとするが、録音・録画方法とした場合の当該技能試験状況を録音・録画したデータ(以下「映像記録等」という。)については、事後の検証が可能となるよう一定期間保存すること。ただし、当該技能試験の担当技能試験官及び受験者以外の者が、技能試験終了後直ちに映像記録等を技能試験の開始から終了まで早送り等することなく確認し、問題が認められなかったことを、確認者、確認日時等と共に記録する場合は、この限りでない。
(2) 自動二輪車免許に係る技能試験の事故防止
大型自動二輪車免許及び普通自動二輪車免許(以下「自動二輪車免許」という。)に係る技能試験にあっては、受験者に乗車用ヘルメット、手袋、長袖服、長ズボン及び靴を着用させ、事故防止を図るとともに、単独走行が可能であるかどうかを見極めて行うなど、事故防止に努めること。
(3) 試験官の言動
技能試験中のトラブルの多くは、技能試験時の接遇に起因するものであるので、受験者に対する言動については特に注意し、運転上の重大な欠陥又は今後の運転練習の努力目標について簡潔な指示助言を行うなど適切な接遇に努めること。
(4) 事故の場合の措置
技能試験中の事故に備え、全ての試験車について強制保険及び任意保険(対人・対物賠償及び人身傷害)に加入するか、又はこれと同等の補償ができるような措置を講ずること。
また、試験車の破損修理は原則として本県警察の一般修理費から支出すること。
また、受験者に対して、あらかじめ、技能試験中に事故を起こした場合は、運転者である受験者が責任を負うこととなる旨を説明しておくこと。
(5) 指定制と即日制
技能試験には、試験日を指定する指定制と技能試験を申請日に行ういわゆる即日制の2つの方法がある。
指定制は、試験体制に応じて試験が行われ、試験場の練習場所化を防止できるが、待ち日数が著しく長引くおそれがあることから、技能試験を効率的に行うことにより、待ち日数はできる限り短縮するよう努力すべきである。
即日制については、技能試験不合格者に対しては少なくとも1日~2日の練習期間をとるよう教示するなどにより、連続した日における受験を避けるよう勧奨すること。
(6) 路上練習
道路交通法(昭和35年法律第105号)第96条の2において、運転免許試験を受けようとする者(指定自動車教習所の卒業証明書を有する者等を除く。)は、過去3月以内に5日以上、道路において自動車の運転の練習(以下「路上練習」という。)をした者でなければならないと規定されているところ、当該規定は道路において行う技能試験(以下「路上試験」という。)の安全を担保するためのものであることから、路上試験を受けようとする者については、路上試験を受験する日前3月以内に5日以上の路上練習をしたことを確認することで足り、適性試験及び学科試験を受けようとする者については、当該確認の必要はないことに留意すること。
別添1
試験業務点検表
項目 | 着眼事項 |
[申請受付] | |
1 受付担当者には、運転免許関係法令に精通している者を配置しているか。 | 一度誤って申請を受け付けると、誤った免許証の交付、個人番号カードへの特定免許情報の記録又は免許情報記録の書換え(以下「免許証交付等」という。)を行うこととなることを踏まえ、受付担当者には幹部又は経験豊富な係員を配置しているか。 |
2 受付担当者は、受付時に審査点検すべきことを十分承知しているか。 | 受付担当者が申請書の記載事項及び添付書類(住民票の写し、試験の一部免除を証するもの等)の内容について点検すべきことを十分承知し、点検が正しく行われているか。 |
3 受付人員は十分か。 | 受験者を長時間待たせることのないよう必要な人員を配置しているか。 |
4 手数料納付は適切に行われているか。 | 証紙の売りさばき、支払い及び消印の時期は適切か。 |
[適性試験] | |
1 人定方法は十分か。 | 写真と本人の照合、簡単な応問等を実施しているか。 |
2 視力検査の方法(照度、検査器具)は適切か。 | 検査器具は法定又はこれに準じるものであるか、視標上の照度は300ルクスから500ルクス程度であるか。 試視力表に変色又はほこりの付着はないか。 |
3 色彩識別能力の判定はどのような物で行っているか。 | 色紙の色彩濃度は所定のものか。 |
4 身体障害者に対する審査の体制はできているか。 | 経験豊富な技能試験官等による合議制をとっているか。審査の記録は明確にされているか。 |
[学科試験] | |
1 試験問題の起案・審査は誰が行うか。 | 起案は幹部が行い、委員会等で十分審査されているか。 |
2 印刷に当たって外部に漏れるおそれはないか。 | 問題の印刷は責任者の監督の下で又は外部に漏れるおそれのない場所でなされているか。 |
3 問題の内容及び章・節別の出題割合は適切か。 | 「学科試験の出題形式、出題範囲及び出題基準等について(通達)」(令和5年3月30日付け警察庁丁運発第46号)に適合しているか。 |
4 完成問題の保管は誰が行っているか。 | 課(場)長又は次長が厳重に保管しているか。 |
5 試験当日の出題決定は誰が行うか。 | 試験担当課長等が決定しているか。 |
6 出張試験の場合の保管、管理は適切か。 | 不正防止、公平性の確保の観点から、具体的実施方法を細部にわたって検討しているか。 |
7 同一試験室で何種類の問題を使用するか。 | 同時に使用する問題数は最低2種類以上としているか。 |
8 着席順は任意か指定か。 | 着席は指定することが不正防止上の要件であるが、指定の方法に工夫がなされているか。 |
9 机は1名だけか、その他の場合隣席との間に間仕切り等の工夫がなされているか。 | 不正のできない環境づくりに配意の足りない点はないか。 |
10 試験官の人員は十分か。 | 一試験室に責任者以下3名以上とするよう配意しているか。 |
11 受験者の人定はどのように行うか。 | 写真との照合、応問等により行っているか。 |
12 試験官の定型的な注意事項を決めているか。 | 携帯電話を使用した不正行為の防止のため、試験における禁止事項及び不正・違反行為に対する制裁措置等の定型的な必要事項の説明を、確実に行うようにしているか。 |
13 試験官の履物は革靴か運動靴か。 | 巡回試験官の所在を察知できないことにより監視の目的が達せられるが、このような配慮がなされているか。 |
14 受験者の途中退室を認めているか。 | 受験者の途中退室を認めることは好ましくないが、やむを得ず認める場合は不正防止について留意されているか。 |
15 問題と答案用紙の回収はどのようにするか。 | 試験問題の紛失防止と答案提出間際における答案用紙のすりかえ防止に配慮しているか。 |
16 学科試験終了者のとるべき行動について指示がなされているか。 | 試験場内に案内表示等を掲示することにより、受験者の行動を円滑にしているか。 |
17 採点は1答案について何回行うか。 | 手作業で採点を行う場合は、採点者以外の者が点検を行っているか。 |
18 合格基準に近接した得点の合格者及び不合格者については、他の採点者が点検しているか。 | 慎重を期する観点から、別の採点者が再採点しているか。 |
19 合格発表までの所要時間は。 | 著しく採点時間が長くなることは、接遇上好ましくないので、一時的に他の係員も動員するなど採点の体制について考慮しているか。 |
[技能試験] | |
1 試験官、受験者、試験車及び試験コースの割当てはいつ誰が行うか。 | 当日の朝、試験担当課長が割り当てることとするなど、あらかじめ予測できないようにする配意がなされているか。 |
2 コース説明は適切か、どのような方法で実施するか。 | 図上説明、徒歩説明、模範運転等の際、受験者が十分納得するように行っているか。 |
3 受験者の人定は適切か。 | 写真照合、応問等によって行っているか。 |
4 大型、中型、準中型、普通自動車による試験には、次番者を同乗させているか。 | 不正を防止するとともに、採点上の誤解を受けないようにするため、次番者を同乗させているか。また、次番者の同乗が困難な場合には、職員の同乗、録音・録画方法等の措置を講じているか。 |
5 試験官の言動は適切か。 | 「意見箱」の備え付け等によって受験者の意見を聞くことにより、受験者接遇の向上を期するようにしているか。 |
6 試験コースは何種類設けているか。 | 「運転免許技能試験実施基準について(通達)」(令和7年2月28日付け警察庁丙運発第18号)に適合しているか。 |
7 試験車の整備は適切か。 | 試験車は、全免許種別について備え付けてあるか。 試験車の整備は完全に行われ、事故防止及び試験の公平性の確保に配慮しているか。 |
8 試験車が公安委員会提供車以外の場合は、指定をしているか。 | 所定の「指定行為」をしているか。 |
9 試験車の手数料は適切に徴収されているか。 | 試験車が公安委員会以外の者が所有する車両である場合の使用料の徴収は、警察職員以外の者が行っているか。特に出張試験の際の使用料の取扱いについて誤解を受けないように十分配意しているか。 |
10 指定制の場合は、申請後何日が指定となるか。 | 指定日数をできる限り短くするよう体制の充実を図っているか。 |
11 即日制の場合は、不合格者に対して練習期間をとるように教示しているか。 | 1日~2日の練習期間をとって受験するように教示しているか。 |
12 路上試験受験者に対する路上練習の確認は適正に行われているか。 | 路上試験受験者に対して、路上試験受験日前3月以内に5日以上の路上練習を行っていることを確認しているか。 |
13 申請から免許証交付等までに何回出頭しなければならないか。 | 可能な限り出頭回数を少なくするよう努めているか。 |
14 申請日から免許証交付等までおおむね何日か。 | 可能な限り短縮できるような体制、事務の流れ等を検討しているか。 |
15 免許証交付等時の講習を効果的に行っているか。 | 講習が形式に流れることのないように留意しているか。 |
別添2
9 視力検査基準(文部科学研究費総合研究視力研究班 萩原朗ほか)抜粋
[1] 視力検査器具の分類内容
[1・1] 標準視力検査装置
検査距離5m用に作成され、それを使用して実施する検査の正確さに重点をおくもの。
[4] 視力検査実施基準
[4・1] 視力の記載は原則として小数視力による。
[4・2] 視標の照明は、標準視力検査法にあっては350ないし650rlxの視標背地輝度、准標準視力検査法にあっては視標面照度400ないし800lxとして行う。
[4・3] 検査室の照度は50lx以上で、視標輝度を上回らない照度とする。被験眼の視野内には光源や明るい窓(屋外と通じる窓)がないのが望ましい。
(注) 光源にはおおいをつけ、窓には厚地のカーテンをかける。
なお、准標準視力検査装置使用の場合は、被験者からみて側壁の窓はおおうに及ばない。
[4・6] 一眼のしゃ閉
一眼をしゃ閉して他眼の視力を検査する場合、しゃ閉眼を圧迫してはいけない。
[4・7] 視標の指示
視力を正確に測るには視標をひとつひとつ指示すべきである。
[4・8] 検査時間
視標を指示してから被験者の応答を3秒間待たねばならない。
[4・9] 明順応
検査室に被験者を入れ、2分間以上経過してから検査を開始する。
(注)
1 照明学会雑誌 昭和40年2月号
2 標準視力検査法とは、ランドルト環による検査である。
3 准標準視力検査法とは、文字、数字による検査である。
4 rlx(ラドルクス)とlx(ルクス)の相違は、測定方法が異なるが、1,000lxがおおむね800rlx当たる。